孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  復興に向けて

2007-11-11 14:12:26 | 国際情勢

(米軍予備役である写真の女性は、アフガニスタン西部のヘラート地域で地元の孤児院を訪問するボランティアチームを率いています。この日、服・おもちゃ・お菓子と“PRTが暖房のためのヒーター・燃料購入を認めた”という知らせを持って、子供達のもとを訪れました。 “flickr”より By Claude Croteau)

今月6日、アフガニスタン北部バグラン州の製糖工場(国際支援で建設)で、視察国会議員団を歓迎する行事のさなか自爆テロが発生、52人が死亡(国会議員6名を含む)、106人が負傷する事件がありました。
犠牲者の大半が、歓迎ための花束を手にしていた地元小学校の児童だったそうです。
これまで比較的治安が良いとされた北部の治安悪化を示す事件とも懸念されています。
民生支援が進む北部の治安までも悪化すれば、アフガン復興がこれまで以上に停滞することになります。

なお、攻撃に関与する武装勢力の実態は不明な点が多く、タリバンとの連携も指摘されるイスラム原理主義の元軍閥グループ、ヘクマティアル派の関与を指摘する声もあるそうです。【11月7日 毎日】

アフガニスタンではNATO指揮下のISAFによるタリバン勢力との戦闘が続いていますが、一方で、カルザイ大統領は9月9日、「和平は交渉抜きでは達成できない」と、タリバン等武装勢力と交渉する用意があることを表明しました。【9月9日 時事】
このような動きに若干期待はしたものの、その後の関連報道を見ないこともあって、その実効性には疑問を持っていました。
しかし、この「話し合い」の呼びかけは全く進展がなかった訳ではなく、“地方政府へのタリバン参加”というかたちで動いてはいるようです。

****地方政府、広がるタリバン登用 3州で255人、行政区長も*****
アフガニスタン北西部バドギス、ファリヤブ両州政府に、旧支配勢力タリバンのメンバーがそれぞれ約100人ずつ計210人採用され、行政区長に任じられた人物もいることがわかった。両州の警察幹部らが毎日新聞に明らかにした。
地方政府へのタリバン参加は、中部ガズニ州に続き計3州となった。タリバンに和解を呼びかけているカルザイ大統領の和平路線の一環で、全国に同様の動きが広がる可能性が出てきた。
タリバンの参加は、タリバン支持者を抱える地方では行政運営が円滑になる側面もある。「タリバンのいないカブール(中央政府)と違い、地方はタリバンも反タリバンも隣り合わせで暮らしている。敵視政策だけでは地方に混乱と暴力を強いるだけ」(バドギス州警察幹部)だからだ。
ただタリバンの地方行政への浸透は、武力だけでなく政治力もタリバンに与えることになる。
タリバン側は「全外国軍の撤退が政府との和解条件だ」と国際治安支援部隊(ISAF)などを狙った自爆攻撃も続けている。
カルザイ政権は外国軍の力を背景に政権を維持している。地方の治安回復と政治的安定を狙ったタリバンの職員採用は、矛盾を抱えた政策とも言えそうだ。【11月10日 毎日】
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最初のガズニ州でのタリバン登用は、この地で発生した韓国人拉致事件が契機になったようです。
記事にもあるように“矛盾を抱えた政策”ではありますが、タリバンと一般住民の線引きもはっきりしないような地域にあっては、敵視政策だけでは治安回復は出来ないと思われます。
こうした共存を視野に入れた取組みの進展を期待します。

アフガニスタンの治安回復にとって重要な問題として、戦闘を担うアフガニスタン国軍の育成と並び、警察組織の育成もあります。
“タリバンと共謀して、タリバンが地元の民間人や輸送車を襲い略奪しても、取り締まらない。”といった警察官の腐敗問題が、タリバンの行動を自由にし、武器や麻薬の運搬を可能にしているという指摘があります。
警察官の腐敗の背景には、給料が適切に支給されてないという問題があるそうです。
警察組織の育成をドイツから引き継いだ米軍よると、警察官の給与を月額70USドルから100USドルにあげる予定だそうですが、タリバンが参画者に与える額は、かつて100USドルで現在は250USドルとのこと。【11月9日 IPS】
こんな面でタリバンに負けていては、治安回復などは難しいと言わざるを得ません。

米国主導の多国籍軍、ISAFの「地方復興支援チーム」(PRT)は、無償の医療援助や道路・学校の補修を行うことで地元住民との協力関係を築こうとしています。
米軍のカンダハル周辺の前線基地で活動を続けている医療班メンバーは「我々が医療援助活動を終えた後、村人の米軍に対する態度は一変した。タリバンを支持する住民は確実に減少している」と語っています。
また、別の米軍関係者は、このような援助活動は武装組織に関する情報収集にも役立っているとして、「住民は自らの安全が確保できていると感じれば、武装勢力を掃討するため機密情報でも話してくれる」と話しています。
これに対しては、「米軍は情報さえ得ればここからすぐ立ち去り、次はタリバン兵が村を襲撃にやって来る。だから話せないのだ」との住民の声もあります。【10月23日 IPS】

日本国際ボランティアセンター(JVC)はISAFのPRTを批判しています。
「これまでターリバーンや他の反米・反政府武装勢力に対する急襲作戦、空爆を行っていた米軍戦闘部隊が、ある日突然ISAF/NATOの旗印を掲げるようになった。住民にとってもISAFと米軍を中心とする対テロ戦闘部隊とはもはや区別できない状態になったのである。」

「PRT部隊は住民に薬剤と生活物品のばら撒きを行い、夜間には射撃訓練まで行った。住民に対する軍による宣撫および情報収集活動とみなされている。」

「戦争と復興が同時に進行するアフガニスタンの復興支援の現場では、軍との距離を保つことが活動を継続できる環境を維持することに繋がる。米軍が導入し現在NATO/ISAFの管轄下全国25箇所で展開している地方復興支援チーム(PRT)は、軍事活動と復興支援活動の境界を曖昧にすることで、中立の原則を盾として活動してきたNGOなどの援助団体が活動できる領域を狭めている」
http://www.ngo-jvc.net/jp/notice/notice20071016_afghanstatement.html )

アフガニスタンの安定にとって復興支援が重要なことは言うまでもないことですが、そのありようについては様々な意見があります。


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