孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イスラム社会の女性  マララさんの自伝出版 シリア難民家族の重苦しい戦いの日々

2013-03-29 23:37:51 | 女性問題

(シリア難民のキャンプ 多少の援助はあるものの、そこでの生活は寒く、不衛生で厳しいものがあります。しかし、キャンプを出て街で暮らすとなると、どのように生計を立てるかという問題に直面します。“flickr”より By muslimhandsuk http://www.flickr.com/photos/muslimhandsuk/8560395122/ ) 

すべての少年少女に学校に通う権利を求める運動の一環になれば
女性が教育を受ける権利を訴え、パキスタンでイスラム武装勢力に頭部を撃たれて重傷を負い、その後イギリスでの治療で奇跡的な回復を見せているマララ・ユスフザイさん(15)が自伝を出版することになったそうです。契約金は300万ドル(約2億8000万円)前後と報じられています。

****マララさん、自伝出版へ 「教育受けられない子たちの物語****
・・・・自伝のタイトルは『I Am Malala(私はマララ)』。
マララさんは「この本が世界中の人の手に渡り、一部の子どもにとって教育を受けることがいかに難しいかを理解してもらえれば」との声明を発表。「自分のことも語りたいけれど、(この本は)教育を受けられない6100万人の子どもの話でもあります。すべての少年少女に学校に通う権利を求める運動の一環になればと思います。これは、子どもたちが持つ基本的な権利です」と自伝に対する思いを語った。

出版元が公開した自伝の抜粋で、マララさんは銃撃された日のことを次のように回想している。「学校が終わり、友達や先生たちと一緒に、スクールバスとして使われていたトラックの荷台のベンチにぎゅうぎゅう詰めに腰掛けていた。荷台の後ろだけ開放されたトラックに窓はなく、ぶ厚いプラスチックの板が両脇に付いていただけで、板は黄ばんで砂埃にまみれ、何も見えなかった。後ろの隙間からほんの少しだけ見えた空に、たこが揚がっているのが見えた。そのたこは私のお気に入りの色、ピンクだった」

マララさんは昨年10月9日、スクールバスに乗っているところをイスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」に銃撃され、英国に渡り治療を受けた。順調に回復し、今月からは英イングランド中部バーミンガムの学校に通っている。【3月29日 AFP】
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父親のジアウディンさんは現在、マララさんが主張する教育の権利を支援する、英国前首相のゴードン・ブラウン国連グローバル教育担当特使の特別顧問を務めており、家族全員でパキスタン人の多いバーミンガムで暮らしています。【3月20日  AFPより】

マララさんの考え・行動には父親の影響も大きいとは思いますが、彼女が伝えるメッセージがパキスタンやアフガニスタン、更には世界の教育機会に恵まれない状況に置かれている女性の社会環境改善の一助となることを期待します。

パキスタンからは、マララさんが経験した悲劇と同様の事件が報じられています。

****パキスタンで女性教師が銃撃され死亡*****
パキスタン北西部で26日、女性教師がオートバイに乗った男らに銃撃されて死亡した。

事件があったのは、パキスタン北西部の都市ペシャワルとアフガニスタンとの国境の間に位置するジャムルド。地元当局によると、教師のシャフナズ・ナジズさん(41)は勤務先の公立女子小学校に向かう途中、学校から200メートル付近でオートバイに乗った男らに撃たれて死亡した。男たちはそのまま逃走した。(後略)【3月28日 AFP】
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難民家族の生計を支える少年
ところで、先日、ヨルダンで暮らすシリア難民家族とその家族を支えて働く少年に関するドクメンタリー「僕らに春は来るのか~シリア難民の子どもたち~」を、番組途中からですがTVで観ました。

番組内容は“泥沼の内戦が続くシリア。隣国・ヨルダンに避難したアンマール君(12歳)は、政府軍に妹を殺され、父は反政府の自由シリア軍に参加した。ヨルダンではシリア難民が急増し、キャンプも飽和状態。困窮するなかで一家を支えるために働く子どもも多い。激化する内戦は、子どもや女性に大きな犠牲を強いている。異国で懸命に生きるシリア難民の子どもたちを7か月間にわたって見つめた。”というものです。

番組の趣旨どおり、一家を支えて懸命に働く少年の姿はけなげとしか言いようがありません。もちろん、番組にふさわしい家族・少年を選んでのことで、難民の子供たちすべて同じという訳ではないでしょうが。

自由シリア軍のシリア内での戦闘が報じられていますが、あらためて、メンバー各自の背後にいる家族はどうのような状況にあるのか・・・という問題も考えされます。

一時的に家族のもとに戻った父親は、再開の喜びもそこそこに仲間からせかされるようにシリアでの戦闘に戻っていきます。
これまで母親・兄弟を支えてきた少年は、シリアに戻らないように父親に哀願します。「家族を養うのが父親の役目じゃないか!」
父親は激しく少年をしかります。「ここは空爆もない。何が不満なんだ! 仲間がシリアで俺を必要としているのだ!」「僕たちだって父さんが必要だよ!」と少年。

ある少年は家族を養うために朝から夜まで働き続け、それでも行き詰る生活に疲れ、家族に「もういやだ。自分たちでなんとかしろよ。俺はシリアに行って自由シリア軍として戦う!」と苛立ちをぶつけます。

弾丸が飛びかい、爆弾がさく裂する戦場。一方、残された家族を支えて働く少年の日々も、出口が見えず、苦しさが募る消耗戦のような戦いです。

働く機会のない女性
観ていて気になったのが女性の立場でした。
日本でも、多くの国々でも、父親が不在、あるいは何らかの事情で働けないというのであれば、子供より先ず母親が何とか経済的手段を探すところですが、番組の中の母親は子供に経済的苦境を訴えるだけで、働きづくめの少年を苛立たせます。
姉は、友人の不幸を聞いて寝込んでしまい、携帯でコーランを聞くだけです。

大根畑に残った大根にかじりつき、その惨めさに嗚咽した後に立ち上がり、神に挑戦するかのように「神よ お聞き下さい。この試練に私は負けません。 家族に二度とひもじい思いはさせません。 生き抜いてみせます! たとえ盗みをし、人を殺してもでも! 神よ 誓います。二度と飢えに泣きません!」と独白するスカーレット・オハラのような女性は登場しません。

もちろん、彼女らが家族の経済的支えとなれないのは彼女らのせいではなく、女性に働く機会を認めていないイスラム社会の問題です。イスラム社会にあっては女性は男性に保護されるべき存在であり、一家を支えて働く存在ではありません。

それを当然のこととして受入れ生きる女性と暮していれば、結果として、男性側も“女性は男性に保護されるべき存在”という社会的価値観に疑いを持つこともなく育ちます。

このような社会システムは、シリア内戦のように成人男性が戦闘に参加した場合、残された家族はどうなるのか?という問題をもたらします。

“女性は男性に保護されるべき存在”という社会から、女性も男性と同様に生きる権利を主張できる社会に変えていくためには、先ずは教育でしょう。
そうした意味で、マララさんのメッセージが更に広く伝わることを期待します。

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