孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ・中国  世界経済の命運を握る両国関係

2009-02-03 20:52:10 | 国際情勢

(“Made in China”のタイトルがありますので、中国の工場の様子でしょうか。
年末にアレクサンドラ・ハーニーの「the China Price 中国貧困絶望工場」を読みかけ、忙しさで中断しています。
驚くべき低価格で世界を席巻している中国製品については、労働環境の悪さ・安全性の問題・公害など多くの問題があることは皆が指摘しているところです。
しかし、一方で消費国の輸入業者も実質的にはそれらを黙認している事実、それによって消費者が安価な製品を得ている事実、また中国にあっては、労働環境が劣悪であろうと労働者側が長時間の金を稼げる仕事を求めている・・・といった現実もあります。
“flickr”より By DBarefoot
http://www.flickr.com/photos/dbarefoot/173943741/)

米ロ間のミサイル防衛(MD)計画をめぐる緊張緩和の動きについては1月28日ブログで取り上げたところですが、米ロ関係と並んで、今後の世界情勢の軸となるのが米中関係です。
先月末、中国の人民元について、米中間でちょっとしたやりとりがありました。

【人民元 操作の疑念】
****自国通貨を操作していない=中国、ガイトナー発言を否定*****
中国人民銀行(中央銀行)は1月24日、ガイトナー次期米財務長官が「オバマ大統領は中国が自国通貨を操作していると信じている」と発言したことについて、操作はしていないと表明し、ガイトナー発言を否定した。国営通信の新華社が伝えた。

新華社によると、人民銀行の蘇寧副総裁は「こうした発言は事実ではなく、誤解を招きかねない」と指摘するとともに、「保護貿易主義につながりかねない弁解は避けるべきだ。なぜなら、危機との闘いに何の役にもたたないだけでなく、世界経済の健全かつ安定した発展を危うくするからである」と述べた。
中国商務省もこうした主張を退け、通貨の安定を維持することを約束している。

外国からの強い圧力を受けて、中国は2005年半ばに人民元と米ドルとの事実上の固定を解除することを決めた。それ以後、元相場は対ドルで約20%上昇し、中国の輸出業者は人為的に低く抑えられた通貨により、不公正に優遇されているとの批判を和らげる一定の役割を果たした。ただ、08年になってから元相場は対ドルでほとんど変動せず、中国政府は主要輸出企業を破綻に追い込むのを懸念しているのではないかとの憶測も出ていた。【1月25日 時事】
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【アメリカへの“警告”】
こうしたやりとりが背景にあってか、欧州諸国を歴訪している中国の温家宝首相がロンドンで、米国債について「今後も買い続けるのか、どのくらい買うのかは中国の需要や外貨(資産)の安全性と価値を保つ必要性に基づいて決める」と述べ、米国債を大量に買い増してきたこれまでの方針を見直す可能性を示唆したと報じられています。【2月2日 時事】
この発言は、中国側のアメリカに対する“警告”であるとも言われています。

【一蓮托生の関係】
ブッシュ前政権に比べてオバマ政権のほうが中国に対し、通商摩擦と人権問題では強硬姿勢を取るだろうと多くの観測筋は予測しているそうです。【2月2日 AFP】
ただ、このAFP記事でも“中国が存在感をさらに増し、北朝鮮問題からイランの核問題、地球温暖化抑制までオバマ政権が優先する課題への影響力も強まるにつれ、中国との対話はますます必須となりつつある。国際金融市場の崩壊で示されたように、世界1位と3位の経済大国の運命は分かちがたく結ばれている。”と書かれているように、今や米中関係は一蓮托生の関係にあるのが実態です。

中国にとってもアメリカは自国経済の成長を支える取引先であり、アメリカにとっても世界経済の牽引車ともなりつつある中国経済の動向は関心が持たれるところです。

****米国も注視する中国不動産暴落の恐怖****
(前略)だが、不動産暴落の懸念は付きまとう。何より不動産バブルが崩壊すると、銀行は直接打撃をこうむる。中国経済が今崩壊したら世界恐慌を引き起こしかねない。オバマ政権も中国経済の今後を注視せざるを得ない。
米中関係には、貿易摩擦による人民元切り上げ圧力、ダンピング訴訟問題など課題が多い。
1月27日、米国際貿易委員会(ITC)は、マットレスなどに使用されている中国製バネをダンピングと認定し、反ダンピング関税をかけることを決めた。このままオバマ米大統領が拒否権を発動しなければ、上乗せ関税が適用されることが決まる。

しかし、そうした中国への圧力によって、米国産業が復活し、経済が回復するという簡単なものではない。中国発金融危機ともなれば、世界、とりわけ米国への影響は甚大だ。
オバマ大統領は、中国との巧みな外交で、両国間に山積する課題を良き解決へと導くことができるのか。オバマ新政権と中国との今後の関係が、世界経済の命運を握っているとも言えそうだ。【柏木理佳 2月3日 DIAMOND online】
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外交関係ですので、お互いに国内世論を意識した多少のブラフなどはあるでしょうが、基本的には緊密な関係を保たないと自分の首を絞める結果になってしまう関係にあります。
そうはわかっていても、国内世論等の関係で次第に批判の応酬がエスカレートして、抜き差しならない関係に陥ることもままあることです。
米中ともに、賢明な舵取りを期待したいものです。


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