孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  増加するメキシコ国境を超える不法移民 米の厳しい対応で移民は更にカナダへ

2023-03-19 22:41:09 | 難民・移民

(放置されたトレーラーの中から救出された移民ら=5日、メキシコ東部ベラクルス州(ロイター時事)【3月3日 時事】)

【1台のトレーラートラックの荷台に移民343人】
メキシコ国境を越えてアメリカに流入しようとする不法移民の問題は、トランプ前政権の「壁」建設や、共和党系南部州知事が比較的移民に寛容な民主党系のニューヨークやワシントンなどにバスで不法移民を送り付ける・・・といったアメリカ社会の分断・対立を象徴する深刻な問題となっています。

不法移民側からすれば、多くの悲劇をももたらす命がけのアメリカ流入ですが、よくあるのが移民仲介業者がトラックなどに大勢の移民を押し込んで国境を超えようとして、暑さや酸欠窒息などで多くの犠牲者を出す事故。
下記事件は、そうした犠牲者は出さなかったものの、その数の多さに驚きました。

****放置トレーラーに移民343人=3割が付き添いなしの未成年―メキシコ****
メキシコ入国管理局は6日、東部ベラクルス州の幹線道路脇に放置された1台のトレーラートラックの荷台から、移民343人を救出したと発表した。うち103人は保護者の付き添いがない未成年という。

グアテマラなど中米諸国から米国への不法入国を図ったが、途中で運転手が摘発を恐れて逃亡したとみられる。

トレーラー内は2層に改造されており、窒息しないよう空気穴や扇風機が設置されていた。移民らは狭い空間に膝を抱えるようにして詰め込まれていたが、死傷者は伝えられていない。【3月3日 時事】 
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1台に343人も乗れるものかと驚きました。冒頭写真で見ると相当に長いトレーラーみたいですが・・・。いずれにせよ、中は想像を絶する状況でしょう。大昔の「奴隷船」を連想するような感じも。

トレーラー内は2層に改造されているということで、相当なビジネス投資がなされた車両です。移民搬入で頻繁にこれまで使用されてきたのでしょう。

【バイデン政権 不法移民対策強化】
不法移民が増大する状況に、野党・共和党側からは、その寛容な姿勢が移民を呼び込んでいると批判されるバイデン政権ですが、一方で、感染対策を建前にした「タイトル42」による即時の強制送還などトランプ前政権と同じような対応に与党・民主党内の左派からも批判が出ています、

****バイデン米政権、新たな国境管理策を提案 数万人が入国拒否の恐れ****
米バイデン政権は21日、メキシコ国境からの不法移民の流入を阻止するための新たな国境管理策を提案した。同政権にとってこれまでで最も広範な不法移民対策となり、数万人の入国が拒否される恐れがある。

計画の詳細がオンラインで公表された。30日間の意見公募を経て最終案をまとめる。

提案によると、米国に入国するのに既存の合法的な経路を使わなかったり、米国に向かう途中の通過国で保護を求めなかったりした移民は、特定の例外に該当しない限り、自動的に難民の資格がないとみなされる。

人権団体の全米市民自由連合(ACLU)は、今回の提案を活動家から「通過禁止措置」と呼ばれたトランプ前大統領の規制になぞらえ、裁判で争う方針を示した。

バイデン氏は大統領就任当初、トランプ前政権下で縮小された難民希望者の受け入れを復活させると約束していた。しかし過去最大規模の移民流入への対応に苦慮。移民擁護派や一部民主党議員からトランプ流の入国制限を強めていると批判を浴びている。【2月22日 ロイター】
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【移民労働を必要としているアメリカ経済】
上記のような話からは、どうやって移民流入を防ぐか・・・といった面ばかりが強調されますが、一方でアメリカ経済が移民労働を必要としており、そのことが移民をアメリカにひきつける磁石ともなっているようです。

移民が嫌われる経済的理由として、移民の流入によって仕事が奪われるといったことがよくありますが、アメリカの場合は事情が異なるようです。

****米移民労働者は「売り手市場」 賃金も急騰****
サービス業の雇用主は時間給職の空きを埋めるのに苦労

仕事を求めて米国に来る移民たちは今、近年にないほど迅速かつ良い条件で職を得ている。雇用主やエコノミストらによると、多くの場合、移民労働者は米国人労働者と同水準の賃金を受け取っているという。

(中略)今年1月の失業率は3.4%と、53年ぶりの低水準だった。多くの中小企業は、米国生まれか、帰化した労働者を十分に確保することができず、割増賃金を払って移民労働者を雇っていると話す。

これは過熱気味の労働市場のもう一つの側面だ。こうした市場環境を映して、賃金と物価が押し上げられており、米連邦準備制度理事会(FRB)は、インフレを抑制するために利上げを続けるよう圧力を受け続けている。

首都ワシントンでレストラン「ローリオル・プラザ」を経営するルイス・レイエスさんは、料理人や皿洗いが不足していることから、大規模な移民コミュニティーがある地域の地下鉄の駅やバス停で求人のチラシを配布した。「人手不足は深刻だ。ひどいストレスを感じている。サービスを提供するために何をすべきかを考えるとしばしば眠れなくなる」と話した。

レイエスさんは、大部分が移民で構成されるスタッフをつなぎ留めるため、賃金を引き上げ、手当てを充実させた。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前には、クリスマスのボーナスとして無料の昼食券を配布していたが、昨年12月には「レストランの魂である、厨房(ちゅうぼう)で働く人たち」に250~5000ドル(約3万3000~66万円)のボーナスを現金で支給した。

米国で仕事を探す移民には、有効な労働許可証を得ている者と得ていない者がいる。移民の中には、不法に国境を越えながら逮捕されるのを回避し、友人や親類などの地下のネットワークを頼って仕事を探す者もいる。

そのほか、入国時に亡命を申請している者も多い。申請後の裁判所での手続きには数年かかるため、彼らはそれを待つ間に労働許可証を取得することができる。労働許可証の取得は、より高い賃金につながる。

季節労働ビザを付与されている移民もいるが、ビザの発給件数は需要を満たすのに全く十分ではないと、雇用主らは指摘する。

許可なく米国で働いている移民の賃金を追跡する公式の統計はないが、エコノミストは米国から中南米への送金額に基づくと、賃金は上がっているようだと述べる。世界銀行は2022年の中南米への送金額が前年比9%以上増え、1420億ドルになったと推計している。

ベネズエラでは料理人として働き、昨年9月にワシントンに到着した直後は建設関係の仕事に就いていたというフレディ・モロンさんによると、より良い仕事を見つけるたびに収入は上がっていった。あっせん業者は建設、電気、配管関係の仕事ができる人を探していたという。日給はおよそ150ドルだった。

モロンさんはその後、ピッツバーグに移動し、日給約170ドルで住宅を塗装する安定した仕事に就いた。これにより、ベネズエラにいる妻と子どもたちに月に最低300ドルを送金できている。

国境を越える不法移民の急増
2022年度(21年10月~22年9月)に南部国境で逮捕された不法移民は、過去最高の220万人に達した。その大半は、メキシコ、中米諸国、キューバおよびベネズエラから来ていた。

バイデン政権は、新型コロナのパンデミックを受けて発動した「タイトル42」など、いくつかの国境管理措置を延長した。タイトル42は移民を迅速に退去させるのに使われている。議会は国境警備政策に関する議論を続けている。

給与水準の上昇と就業機会の増加は、国境地帯に移民が押し寄せるのを米国が防ぐことを難しくしている。コロナ感染拡大の初期段階では、移動制限と米国のビザ申請処理ペースの遅れから、移民の数が急減した。しかし、米経済活動が再開されると、国境を越えて来る人々が急増した。

また、中南米での経済状況の悪化や、キューバやニカラグアなどでの圧政も、何十万人もの移民を生み出す要因になった。

2020年終盤以降、不法入国した約260万の人々が、亡命申請の手続きを進める間、米国内にとどまることを認められている。亡命申請が承認されるまでには5年か、あるいはそれ以上の時間がかかる可能性があるが、彼らは申請の約1年後には社会保障番号(SSN)と、申請が承認されるまで有効な労働許可証を手に入れることができる。

またバイデン政権は、一時保護資格(TPS)の名で知られる制度を大幅に拡大した。TPSは、戦争や天災で混乱が起きている諸国からの不法入国者を送還の対象から外し、彼らに労働許可証を付与する措置だ。移民政策研究所(MPI)の分析によれば、バイデン政権はベネズエラやハイチからの不法入国者を中心に、既に70万人以上にこうした保護措置を適用している。

こうした移民の求職者と、就労先候補を結び付ける上で、ソーシャルメディア上の非公式のネットワークが役に立っている。多くの移民はこうしたネットワークのおかげで、米国で就業先が用意されていることを、母国を離れる前から知っている。

メキシコのユカタン半島のマヤ系住民のコミュニティーは、フェイスブックを通じて、米西海岸の親戚から通知を得ている。最近アップされた情報は「清掃スタッフを求む。時給は16~18ドル。勤務時間はさまざま」という内容だった。

グアテマラの人々は、フェイスブックの投稿やティックトック(TikTok)のビデオで伝えられる求人情報をシェアしている。そのうちの一つは「緊急に人手が必要。仕事は米国でのクリスマスベリーの収穫作業。勤労意欲があり非常に責任感の強いグアテマラ人を求む」というものだった。(中略)

労働許可証のない人を働かせている雇用主は法的なリスクを冒すことになる。バイデン政権は、こうした雇用主の取り締まり策を強化する意向を表明している。労働者本人を逮捕し、強制送還することが多かったトランプ前政権の重点対策を転換する方針だ。

移民労働者は労働許可証があればSSNを取得できるが、中には偽の労働許可証を購入している人もいる。こうしたケースでは、雇用主が給与天引きで税金を払う。多くの不法滞在労働者も、今後の移民申請の際に役立つことを見込んで、自発的に税金を払っている。

米国は近年、労働者不足から、雇用主が季節労働で低賃金の外国人労働者を雇用できる「H-2B」ビザの発給数を増やしているが、その数はまだ雇用主の需要を大きく下回っている。

H-2Bプログラムを支援する米業界団体、シーズナル・エンプロイメント・アライアンス(季節雇用同盟)のエグゼクティブ・ディレクター、グレイ・デラニー氏は「レストランに行く米国人なら誰しも、人手に関してこの国が抱えている現実の問題を目の当たりにする」と話している。【2月8日 WSJ】
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【アメリカの厳しい移民対応で、移民は更にカナダへ】
アメリカ当局の労働許可と難民認定における移民への厳しい対応は、アメリカから更にカナダに向かう移民を増加させているとのこと。その結果、今度はカナダ政府が対応に苦慮・・・・

****「安全な」米からカナダへ不法入国、難民申請が急増****
ペルーで書籍販売の仕事をしていたスレマ・ディアスさん(46)は、誘拐されて体を痛めつけられ、金を奪われるという悲惨な体験をした後、故国を離れて米国で安全な生活を手に入れようとした。ところが米国でディアスさんを待っていたのは、住む家がない厳しさと、何とか見つけた非正規の病院清掃員の職場でのセクハラ被害だった。

ニューヨーク市が無料のバス切符を配布しているという情報を耳にしたディアスさんは早速、わずかな望みにかけてバスに乗車し、カナダ国境近くの町プラッツバーグに向かった。そこからタクシーで「ロクサムロード」を通ってカナダに不法入国し、難民申請したのだ。

こうしたカナダへの不法入国者の難民申請は急増しており、ディアスさんのようにニューヨーク市や各支援団体が料金を負担したバスでたどり着いた人も多く含まれている。

カナダのトルドー首相には、国境にやって来る難民申請者への入国制限を強化するようバイデン米大統領との間で合意しろと迫る声が日々強まりつつある。

カナダのフレーザー移民相は最近、米首都ワシントンでマヨルカス国土安全保障長官と不法入国者問題を協議。トルドー氏は、今月23―24日にオタワを訪れるバイデン氏とこの問題を話し合う考えを示している。

現在、米国で難民申請を目指していた人たちの多くは、審査期間の長さや難民認定の厳格さに阻まれて計画を断念せざるを得ない、というのが複数の政府高官や当の申請者を取材して判明した実情だ。

2月下旬のある雪の日、40人弱の難民申請希望者がスーツケースを引きずったり、バックパックを担いだりしながら、ニューヨーク州からカナダのケベック州へと重い足取りで進む光景が見られた。

ディアスさんにとって、プラッツバーグまで片道約150ドルのバス料金をニューヨーク市が支払ってくれるというのは、何カ月も前から温めていた考えを実行するこの上ない好機で「まるで奇跡のようだった」と話す。昨年6月に米国に到着した後、移民裁判所への出頭時期として示されたのは2024年1月。手続きに時間がかかり、身動きが取れないと感じたという。

ニューヨーク市は2007年から、他の都市や国で支援が受けられると証明できたホームレスに対してバス切符や航空券を配る取り組みを続けている。幾つかの難民支援団体も昨年8月に無料のバス切符配布を始めたが、費用の問題で11月に打ち切った。

アダムス市長は、同市や提携する慈善団体がそうした切符をどれだけ購入したかは明らかにしていない。

市長報道官は、あくまで難民申請希望者らが目的地を選んでいると説明。「ニューヨーク市がカナダのどこかに人々を送り込んでいるのではないことは明確だ。われわれは難民申請をしようとしている人々がニューヨーク市であれ、別の場所であれ安定した生活ができるよう手助けをしている」と述べた。

米国土安全保障省は、米国の難民申請制度における審査期間についてコメントを拒否。バイデン政権は議会に対して、包括的な移民法制を整備するよう求めている。

いずれにせよ昨年、米国からカナダに不法入国した難民申請者は約4万人と、新型コロナウイルスの感染対策に伴う規制が続いていた2021年の9倍に膨れ上がり、19年の1万7000人近くと比べても2倍以上に達した。カナダ政府のデータによると、今年1月だけで5000人前後が不法入国したという。

同じくカナダ政府のデータに基づくと、昨年9月末までの1年で同国が受け入れた不法入国の難民申請は全体の46%。一方で米移民裁判所がこの間、難民認定した不法入国者の割合は14%だった。

昨年末の段階でカナダと米国で難民申請手続き中の件数は、それぞれ7万件強と78万8000件前後だ。

カナダではナイジェリアとハイチ、コロンビアの出身者が不法入国者の半分近くを占めていることが、カナダ移民・難民委員会のデータで分かる。

<カナダの魅力>
カナダと米国は「安全な第三国」協定の定めに従って、正式な国境管理所を経た難民申請希望者をお互いに送り返すことができるが、ロクサムロード経由のような不法入国者には同協定は適用されない。

あるカナダ政府高官は、米国側はこの協定の範囲を両国国境全域に拡大することに乗り気ではないと明かした。

シラキュース大学のトランザクショナル・レコーズ・アクセス・クリアリングハウスによると、米国では難民申請者が移民裁判所に出頭するまで平均で4年余りも待機しなければならない。また米国市民権・移民業務局の規定では、難民申請してから労働許可が得られるまでにも最低半年はかかる。

ニューヨーク市で難民申請希望者の支援をしているチームTLC・NYCのディレクター、イルゼ・ティールマン氏は「人々は労働許可と難民認定のヒアリング機会を得るまでのあまりの長さにがっかりしている」と述べた。

カナダ移民・難民委員会によると、同国では19年の難民認定審査期間は15カ月だったが、昨年1─10月には25カ月に延びている。それでも米国に比べると短い。

そんなカナダを目指して、ニカラグアからやってきた難民申請者の1人がレイモンド・テリオルトさん(47)だ。カナダは亡くなった父が生まれた国で、今もいる親族を頼ろうとしたからだ。

テリオルトさんはニカラグア政府を批判した影響で、小さなシーフードレストランの開業を当局に妨害され、安定した仕事を見つけるのに苦労していた。このためまず昨年11月、メキシコから米国に入り、ニューヨーク市から自腹で140ドルのバス料金を支払ってプラッツバーグに着いた後、今はカナダ政府が料金を負担しているナイアガラの滝近くにあるホテルに滞在している。

カナダ行きの決断に満足しているというテリオルトさんは「(カナダの方が)より人道的でサポートが手厚い。米国では飢え死にしても自己責任だ」と違いを強調した。

ただカナダのケベック州政府は、こうした難民申請者の増加で施設の収容能力や基本的なサービスの提供態勢がひっ迫しつつあると悲鳴を上げる。同国連邦政府は、昨年6月から合計で5500人を超える難民申請者を別の州に移していると明らかにした。

<国境閉鎖がもたらすリスク>
だからと言ってカナダが難民申請者に対して国境を全面的に閉ざせば、彼らをより危険なルートで不法入国させかねない、と専門家は警告している。

昨年、米国からカナダのマニトバ州に入ろうとしたインド人の家族4人が凍死。オタワ大学のジェイミー・チャイ・ユン・リュー教授(移民法)は「(国境閉鎖は)人々をもっと危険な選択と行動に駆り立て、より多くの悲劇が起きるだろう」と語った。【3月19日 ロイター】
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ニューヨーク市が無料のバス切符を配布・・・移民対応に苦慮するニューよーくなどの状況は2月2日ブログでもとりあげましたが、南部から送り付けられた移民を持て余し、どこかよそに厄介払いしたいといった思惑でしょうか。

テキサス州の国境地域から送られた移民を乗せたバスが首都ワシントンのハリス副大統領宅近くに極寒のクリスマスイブに到着した件では、ホワイトハウスは「アボット知事は連邦政府や地元当局と一切調整することなく、クリスマスイブの氷点下の気温の中、道端に子どもたちを置き去りにした」と批判も。

まるで犬や猫のようにあっちへやったり、こっちへやったり・・・・というか、いまどき犬や猫を氷点下の気温の中、道端に置き去りにすれば激しい批判を浴びます。人間なら許されるのでしょうか。
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