孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  人口減少という現実に危機感 「あの手この手」の対応も

2023-03-02 23:45:22 | 中国

(【2月4日 WEDGE】)

【予想されていたことではあるものの、中国人口減少の衝撃】
中国政府は1979年から2015年まで、夫婦が産める子どもを1人に制限する「一人っ子政策」を導入。政策の影響で少子高齢化が進むようになると、今度は16年からは2人目、21年から3人目を解禁しました。

しかし、少子化はとまっておらず、当局公式予測より8年早く2022年度末で人口減少に転じています。また、高齢化も進行しています。

広く予想されていたことではありますが、やはりインパクトのある現実です。

****中国本土の総人口、61年ぶり減少…昨年末時点で14.1億人****
中国の国家統計局は17日、香港、マカオを除く中国本土の総人口が2022年末時点で14億1175万人となり、前年から85万人減少したと発表した。

毛沢東が進めた大増産運動「大躍進」の失敗で多くの餓死者を出した1961年以来、61年ぶりの人口減少となった。今後も人口減が続けば、習近平シージンピン政権が進める強国路線に影響する可能性もある。

出生数は956万人で、前年比106万人の減少となり、6年連続で前年を下回った。死亡数は1041万人だった。人口1000人当たりの出生率は6・77人となり、過去最低を更新した可能性が高い。

中国政府は、人口が増えすぎないように調整する「一人っ子政策」を2015年末で廃止した。21年には第3子の出産も解禁したものの、出生数の回復にはつながっておらず、少子高齢化が加速している。

発表によると、22年末時点で、65歳以上の人口は2億978万人で、総人口に占める割合は21年の14・2%から14・9%に拡大。男女別では、男性が女性より約3200万人多かった。

中国政府系調査研究機関の中国社会科学院は19年、中国の人口が29年にピークを迎えて30年から減少するとの予測を発表していたが、8年早まった。

女性1人が生涯に産む子供の推計数を示す合計特殊出生率は現在の1・3から大幅に向上する公算は小さく、今後も人口減少が続く可能性がある。

国連が昨年7月に公表した人口推計によると、1990年に約8億6100万人だったインドの人口は2022年に1・6倍の14億1200万人に増加。23年のうちに中国を超え、50年に16億6800万人に達すると予測されている。【1月17日 読売】
*********************

農村部からの大量の安い労働力“農民工”によって支えられた「世界の工場」という経済モデルがもはや過去のものとなり、新たな経済モデルを求められています。

しかも、「世界の工場」を支えた大量の農民工は急速に高齢化が進み、国民が十分に豊かになる前に、高齢化社会の負担が増していくという「未富先老」が現実味を増しています。

そうした基本構造以外にも、早すぎる人口減少は「就職難」「結婚難」といった問題も惹起し、社会の不安定化につながります。

****中国で始まった人口減少 その裏側にある、2つの切実な「大問題」****
中国国内事情に詳しい講談社編集次長・近藤大介氏が(中略)中国の人口が61年ぶりに減少に転じた背景について解説した。

近藤氏は人口減少の背景について、「中国は1980年代から2015年までおよそ35年間一人っ子政策を続け、その結果、急激に子供が減る反面、高齢化が進み、人口ピラミッドがいびつな形となった」と指摘した。

また一人っ子政策を推進した鄧小平氏の政策について、「“大事な子供を全員、大学に入れよう”と、大学の数を急速に増やした。経済発展をするためには高学歴の若者を増やす必要があるという側面もあった。ところが、去年大学を卒業した中国人は1076万人、今年は1100万人以上。中国経済は減速しており、大卒の全員が就職するのは到底難しく、就職難に陥っている。これを『卒業即失業』と呼び、流行語になっている。」と述べた。

中国の人口減少の裏側で問題となっているのはこうした『若者の就職難だけではない』という。近藤氏は、「中国では結婚適齢期の男性が女性より3000万人多い。3000万人という数は日本の人口の4分の1に匹敵し、大変な男女比となっている。よって男性が結婚できないという深刻な問題が起こり、さらに人口減に拍車をかけている」と解説。

その一方で、「そもそも中国が発表する人口統計は信用できるのか」という問いに対して、近藤氏は「中国は10年に1度人口統計調査を行っているが、2010年の調査時、私は調査員に“中国人”としてカウントされた。調査員は調査費がもらえるのだが、彼は2元(40円)欲しさに私を中国人にした。」と統計のずさんさも指摘した。

「ただ、人口減少の裏側で起こっている切実な就職難と結婚難は肌感覚で確認している」との認識を明らかにした。【1月25日 ニッポン放送NEWS ONLINE】
******************

【背景に生き方多様化】
上記の「結婚難」ということとは一見逆の現象のようでもありますが、価値観の面で言うと、敢えて結婚を急がない若者も増えており、そうした結婚や出産に対する価値観の変化が少子化の背景にあるとも指摘されています。
また、結婚が伴う経済的負担も重圧となっています。

そのあたりは、やはり深刻な少子化問題を抱える韓国や日本と共通したところでしょう。

****「恐婚」「おひとりさま」生き方多様化****
中国で急速に少子化が進む背景には、中国社会において結婚や出産に対する考え方が多様化してきている点がある。

結婚を恐れる考え方の「恐婚」や、独身が「おひとりさま」を楽しむ「単身経済」といった言葉が中国で流行し、結婚を急がない人が増えている。中国民政省によると、21年の婚姻件数は764万3千組で、前年から6%減った。減少は8年連続だ。

中国共産党は人々に自由に産む権利を与えてこなかった。人々が原則として産める人数は今も「人口・計画出産法」で定めている。だが、経済発展や女性の社会進出、教育水準の向上が出生率の低下を招くことは必然だったにもかかわらず、つい8年前まで一人っ子政策を維持し続けたことによって少子化の加速を招いたとの指摘は根強い。

中国の社会習慣も影響している。北京市の会社員女性(37)は夫と2歳の息子の3人暮らし。夫婦とも収入があり生活が苦しいわけではない。ただ、中国の習慣では子どもが結婚する際に男性側が車と住居を用意する必要があり、「次がもし男の子だったら2人分を工面しなければならず、さすがに無理だ」と話す。【1月18日 日系メディア】
********************

儒教文化の影響でしょうか、婚外子が極端に少ないことも韓国・日本と同じです。

【中央・地方政府もあの手この手 危機感のあらわれ】
もちろん中国も、あの手この手の対策をとってはいますが、大勢を変えるまでには至っていません。

****出産奨励策、効果は未知数****
中国共産党は少子高齢化と人口減少が国の経済力の衰退を招くとして、対策を講じてきた。

21年に3人目の出産を解禁するとともに、小中学生向けの学習塾を規制。家計の教育負担を和らげ、出生率向上につなげようとした。

地方政府は出産奨励策を次々打ち出し、深セン市は3人目を産むと最大で3万7500元(約75万円)を補助する制度を導入。浙江省杭州市では23年から体外受精の費用を公的医療保険の対象にする方針だ。

労働力が減ることへの危機感も強まっている。中国では定年を原則男性60歳、女性50歳(幹部職は55歳)と規定。だが、35年には60歳以上が4億人を超え、全人口の3割超を占める見込み。このため、定年を延長する方向で検討を進めている。

ただ、こうした対応が少子化に歯止めをかけるかは未知数だ。【同上】
**************************

****中国の一部省政府、結婚に30日の有給休暇 出生率向上を期待****
中国共産党機関紙、人民日報健康号は21日、国内のいくつかの省政府は結婚するカップルが増え、低迷する出生率が上昇するのを期待して、若い新婚夫婦に30日間の有給休暇を与えていると報じた。

中国では結婚の有給休暇は最低3日だが、2月以降、各省がより長期の休暇を独自に設定することが可能になった。甘粛省と山西省は30日間の有給休暇を出すようになったが、上海は10日間で、四川省はまだ3日間だという。

西南財経大学社会発展研究院のヤン・ハイヤン所長は、結婚休暇の延長は出生率を引き上げる有効な手だての1つだと指摘。結婚有給休暇の延長は主に経済の発展が比較的遅い一部の省や都市で行われており、労働力の拡大と消費の活性化が急務だとの認識を示した。

中国の2022年の出生率(人口1000人当たりの出生数)は6.77で過去最低を記録した。【2月22日 ロイター】
********************

****中国で急激な少子化…精子バンク登録で10万円も 名門大学で「頭に脱毛がない人」「身長165cm以上」が精子提供者の条件に****
最新の統計で人口減少局面に入った中国。急速に進む少子化を食い止めようと、「精子バンク」への登録が奨励されるなど、さまざまな対策が取られています。 

未婚で長女を出産した女性 「ぽっちゃりしているでしょう。この4か月が10年で一番幸せ」 中国西部の四川省に住む女性(37)。去年、結婚せずに長女を出産しました。

決断のきっかけは、父親になるはずだった男性の言葉でした。 未婚で長女を出産した女性 「『もし男の子なら結婚を考えるけれど、女の子なら結婚しない』と言われました。価値観が合う人と家庭を作るのが一番ですが、『未婚の母』を選ぶのも悪いことではないと思います」 

いまは子育てに専念していますが、ゆくゆくは仕事を再開し、自分の力で育てていくつもりです。 

去年、人口が61年ぶりに減少に転じた中国。政府はきのう、前の年と比べて人口が85万人減ったとあらためて発表しました。 

少子化対策が喫緊の課題となる中、四川省では先月からこれまで結婚している夫婦にしか認められていなかった子どもの戸籍登録が未婚者でもできるようになりました。これにより、出産時に医療保険が適用されるようになったほか、身元確認書類も発行されます。 

未婚で長女を出産した女性 「いろいろな意見はありますが、政府が支援するからこそ、(未婚での出産も)世間が受け入れやすくなります」 

シングルマザーを支援してきた弁護士は… 
シングルマザーを支援する弁護士 「これまで(出産時の)医療保険がもらえなかったので、制度改正はいいことです」 

さらに、いま中国で呼びかけられているのが… 
「精子を提供するボランティアに5000元(約10万円)を支払います」 「精子バンク」への協力です。精子を不妊で悩む夫婦に提供することで、子どもを産んでもらおうというのです。 

東部の山東省政府は先月、精子を提供した20歳から45歳の中国人男性に対し、日本円でおよそ10万円を支払うとSNSで呼びかけました。 さらに、上海の名門大学では精子を提供する人に対してこんな条件も… 「頭に明らかな脱毛がない人」 「身長は165センチ以上」 

当の男性たちはどう受け止めているのでしょうか? 「正常なことだと思います。これもある意味で良い精子を選ぶためです」 「応援します。国に貢献できるから」 

ただ、少子化の原因は晩婚化のほか、教育費などの経済的負担とみられています。 

「経済が良くなって、物価もずっと上がっています。今の給料では、自分一人しか生活できません」 「世話をしてくれる人がいなくて、子どもを産んだ後に仕事ができない」 

矢継ぎ早に打ち出される中国の少子化対策は、政府の危機感の裏返しともいえそうです。【3月1日 TBS NEWS DIG】
****************

四川省が婚外子の出生登録を認めることにした措置については、“同省の保健当局者は地元メディアとのインタビューで、シングルマザーの権利を守ることが目的だと述べ、未婚のカップルが親になることを推奨するわけではないと強調した。当局は、長期的にバランスの取れた人口開発を推進するための政策だと説明している。”【1月31日 CNN】とのこと。

中央でも議論が盛んになっています。

****中国、重要会議控え少子化対策提言相次ぐ 未婚女性の権利向上など****
中国の国政助言機関、人民政治協商会議(政協)が4日から会議を開くのを前に、メンバーから少子化対策の提言が相次いでいる。昨年、中国は60年ぶりに人口が減少し、出生率が過去最低を記録した。

あるメンバーは今週、新生児登録に関わる婚姻規定を排し、未婚女性も既婚女性と同様に不妊治療サービスを受けられるようにすべきと述べた。

政府の規則では、法的に出産が認められているのは既婚女性のみ。ただ四川省など、一部地方政府は2月から未婚者の出産を認めた。

子育ての負担を分担するために父親の育児休暇も増やすことや、2024年以降に3人目の子供が生まれた世帯の高等教育無償化、さらには独身女性の卵子凍結案も出された。【3月2日 ロイター】
*********************

上記のような案が実際に施策として行われるのか、行われたとして効果が期待できるのか、実施に伴う問題はないのか・・・等々の疑問はありますが、少なくとも危機感を持って対応しようとしているようにも見えます。

もとより中国は共産党による一党支配の国家ですが、各地の地方政府がいろんなことをやってみて、効果があれば中央でとりあげて全国展開するという点では、イメージよりはかなり弾力性のある国家なのかも。

日本も些末なところの議論に時間を使うより、混乱・トラブルは覚悟、問題があればあとから対応するといった発想で、いろいろと試行錯誤した方がいいように思います。婚外子やシングルマザー対応など「社会を変える」覚悟で。社会が変わらないかぎり、小手先の対応だけではおそらく改善も期待できないでしょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする