孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  ロシア・プーチン大統領をどこまで支援すべきか慎重に見極め中

2022-02-24 23:15:17 | 中国
(2月4日、プーチン大統領と会談した習近平国家主席【2月20日 Newsweek】)

【プーチン大統領の尋常ならざる情念】
ロシアがウクライナ東部地域の独立承認に引き続いて、ウクライナへの軍事進攻を開始したことは周知のとおり。

事態は始まったばかりで、現在進行中であり、今後の展開はわかりません。
東部2州の全域制圧を目指すのか、首都キエフまで侵攻してウクライナ政府の転覆を目指すのか・・・。

私は、これまでも取り上げてきたように、「侵略者」のレッテルを西側から貼られ、西側世界から孤立し、将来的に長期にわたる経済制裁にさらされる・・・ロシア・プーチン大統領はそういう甚大なリスクをおかしてまで軍事進攻することはないのではないか、そんなことを行ってもロシアにとって得にはならないのではないか・・・と考えていましたので、見込み違いをしていました。

「やる、やる・・・とは聞いていたけど、ほんとにやるもんだね・・・」といった感じですが、見込み違いを犯した大きな理由はプーチン大統領の激しい「情念」みたいなものを読み違えたことでしょう。

言い方をかえれば、プーチン大統領はもはや損得とか理性の問題を超えた、長年鬱積してきたウクライナ・西側世界への不満、尋常ならざる激しい思いに突き動かされているようにも。

****兄弟民族に銃口の愚挙 政権転覆、中立化が狙いか****
外交努力で戦火を避けられるとの淡い期待はついえた。ロシアのプーチン大統領は、同じ東スラブの兄弟民族であるウクライナ人の血を流す愚挙に出た。

東西冷戦の終結後に形成されてきた欧州の国際秩序に武力で挑戦し、親欧米傾向を強めたウクライナを自らの「勢力圏」に引き戻す思惑だ。

21日に独立を承認したウクライナ東部地域の「住民保護」を名目に、ウクライナの軍事力を破壊して政権転覆や国の中立化に持ち込む方針とみられる。

1991年のソ連崩壊以降、旧共産陣営に属した国々が相次いで北大西洋条約機構(NATO)入りした。NATOは防衛組織であり、加盟は各主権国家の安全保障上の判断に基づく。プーチン氏はこの現実を認められなかった。

24日の演説でプーチン氏は、NATOの「拡大」がロシアの利益を考慮しないものだったと不満をぶちまけた。
プーチン氏の意識の中で、「主権国家」とは核兵器を保有し、同盟国の意向にも左右されずに行動できる大国を指す。

プーチン政権は昨年12月、ウクライナをめぐる軍事的緊張を高めつつ、米国に安全保障協議を持ちかけた。ウクライナなど旧ソ連諸国をNATOに加盟させないとの「確約」を米国から取り付けようとした。

米国はミサイル配備などについて協議する姿勢を示したが、偏執的な思考に取りつかれたプーチン氏に侵攻を思いとどまらせることはできなかった。

プーチン氏のウクライナに関する言説は最近、ゆがんだ歴史観を反映して激しさを増していた。21日の演説では「ウクライナは完全にロシアによって創られた」などと独立国家の正統性すら否定していた。

24日のテレビ演説でプーチン氏は「特別軍事作戦」の目的として、独立を承認した親露派地域の「住民保護」と並び、ウクライナの「非軍事化」や「非ナチス化」を挙げた。

最近のプーチン政権は、14年に自ら惹起(じゃっき)したウクライナ東部紛争を親露派に対する「ジェノサイド(集団殺害)」と称し、ウクライナ政権を「ナチス」になぞらえていた。

プーチン氏はウクライナの東部紛争関係者を「法廷にかける」とも述べており、政権転覆まで視野に入れている可能性が高い。同時に、戦闘が大規模化してロシア軍の犠牲が増えた場合には露国内でも反発が予想される。【2月24日 産経】
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もちろん冷徹な戦略家でもあるプーチン大統領が今後、理性的に「おとしどころ」を関係国と協議してくれることを願っていますが。

【中国 ロシアへの一定に理解は示すものの、過度の肩入れは避ける】
現段階では戦闘状況は予測できませんので、関係国、昨日のアメリカに続き、中国の対応について。

もちろん昨今の中ロ蜜月、対米共闘の構図のなかで、ロシアの行動に一定の理解を示し、欧米とは明確に一線を隠しています。

****中国、ウクライナ情勢で自制呼び掛け 「侵攻」ではないと主張****
中国外務省報道官は24日の定例会見で、ウクライナ情勢に関わる各国に自制を求めた上で、ロシア軍の行動について、海外メディアが表現するようなウクライナへの「侵攻」ではないとの認識を示した。【2月24日 ロイター】
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ただ、ロシアの行動に理解は示すものの、それ以上にロシア支援で動くという感じでもなく、一歩引いて様子を見るような雰囲気も。

そのあたりは、内政不干渉を旨とする中国外交政策の基本、ウクライナと中国の関係、台湾問題への跳ね返り、更には米ロ対立で「漁夫の利」を得ようとする思惑などが関係していると推測されます。

****ウクライナ侵攻で微妙な中国 肩入れ避ける理由は****
ロシア軍がウクライナに侵攻したことに対し、中国は米露を含む各国に「自制」を呼び掛けることに終始した。

中国は、台湾問題や新疆(しんきょう)ウイグル自治区などの分離・独立運動に波及することや、ロシアに巻き添えを食う形で国際的に孤立感を深めることを警戒。対米共闘で連携を強めるロシアを非難することはないものの、侵攻に肩入れすることも慎重に避けている。

「各国が自制を保ち、情勢を制御できなくなることを避けるよう呼び掛ける」
中国外務省の華春瑩(か・しゅんえい)報道官(外務次官補)は24日の定例記者会見で、ウクライナ情勢についてこう繰り返した。

記者からは「ロシアの行為は侵略か」「非難しないのか」といった、中国の認識や立ち位置を確認する質問が相次いだが、華氏は「ウクライナ問題は非常に複雑な歴史的な背景と経緯がある」などと正面からの回答を避け続けた。

ウクライナ問題をめぐる中国の立場は微妙だ。ロシアとは近年、ともに対立する米国を前に関係強化を進めてきた。米英などが北京冬季五輪で政府代表を派遣しない「外交的ボイコット」に踏み切った中、数少ない主要国の指導者として開会式に参加したプーチン露大統領には借りがある。

一方、中国はウクライナとも巨大経済圏構想「一帯一路」など、経済を中心に強固な関係がある。北京のシンクタンク研究員は「ロシアもウクライナも中国の重要なパートナーだ。中国は自制し、慎重に発言する必要がある」と述べ、双方に配慮が必要な中国の難しい事情を指摘した。

ロシアがウクライナ東部の親露派支配地域の「独立」を承認したことを中国が認めれば、台湾問題などへの波及も懸念される。王毅(おう・き)国務委員兼外相は19日に「各国の主権、独立、領土保全は守られるべきだ。ウクライナも例外ではない」とロシアにクギを刺すような発言をしている。

今秋に習近平総書記(国家主席)の3期目入りを目指す共産党大会を控え、内政、外交ともに混乱を避けたいのが本音だ。ウクライナ問題をめぐり米欧との関係がさらに悪化することは得策ではないという計算が働いているとみられる。【2月24日 産経】
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中国・ウクライナの関係は、“中国とウクライナは非常に仲がいいわけでも悪いわけでもない一方で、良好な経済、貿易関係を築きつつあることにも注目。ウクライナは「一つの中国」の方針と「一帯一路」戦略を支持し、2019年以降はロシアに代わって中国が最大の貿易パートナーとなっているほか、中国からもエンジニアリング企業やエネルギー企業がウクライナに大量投資を行っていると紹介した。”【2月24日 レコードチャイナ】

中国の思惑には欧州との関係も。“中国がロシア側に就けば欧州諸国を敵に回すことになり、米中両国が対立する中での欧州との関係悪化は自国の利益を損なうという思惑もあると指摘している。”【同上】

「ロシアへの支援問題について、北京はためらいを見せてもいる。今月初めには王毅(ワン・イー)外相がロシア側に理解と支持を示したが、ここに来て『各国の主権と領土の完全性は保障、尊重されなければならない。ウクライナも例外ではない』と態度を転換させた」(独紙フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング)【2月23日 レコードチャイナ】との指摘も。

【北京 プーチン・ロシアをどこまで助けるのか慎重に検討】
もともと中ロ蜜月、準同盟関係とはいっても、ロシアが中国を必要としているほどは、中国はロシアを必要とはしていないという立場の優劣もあり、中国は必ずしもロシアに縛られる必要はありません。

“ロシアの対外貿易における中国の割合が20%であるのに対し、中国の対外貿易におけるロシアの割合はわずか2.4%であるなど、ロシアにとっての中国の重要性が、中国にとってのロシアの重要性よりもはるかに大きくなっている”【同上】

****プーチン氏をどこまで助けるか 熟慮する中国****
中国がロシアのウラジーミル・プーチン大統領をどの程度支援すべきか、そして両国の連携をいかに保つかについて、中国の最高指導部は連日、水面下で議論を重ねている。(中略)

プーチン氏が2月4日に北京で習氏と会談し、冬季五輪開会式に出席して帰国してから1週間以上がたつが、煮え切らない議論が続いている。異例なほど長期にわたる議論は、公にはロシアを支援する習氏の姿勢とは裏腹に、中国にとって状況がいかに差し迫り、慎重を要するかを浮き彫りにしている。

北大西洋条約機構(NATO)の拡大にロシアが反対していることに習氏が表明した支持は、ウクライナ情勢を巡って中国が示したロシア支持の姿勢として最も明確なものだ。ロシアは米国主導の同盟諸国に対し、NATOの不拡大を主として要求している。
 
中国はこれまで、ロシアによるウクライナ侵攻を支持することを慎重に避けてきた。だが、2月4日の習氏とプーチン氏による共同声明は、冷戦時代の初期以来の緊密ぶりを示すものだった。

このことが中国の当局者の間で不安をかき立てていると、政府に近い関係者は明かす。中国の外交政策において抜本的な転換を示唆していたからだ。
 
「NATO拡大に反対するロシアを支持することで中国が失うものは何もないが、ウクライナを侵攻した場合にロシアが直面する経済制裁の回避を手助けするというのは全く別の問題だ」。ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)ボローニャ・インスティテュートのセルゲイ・ラドチェンコ教授(国際関係論)はこう話す。
 
北京冬季五輪のまっただ中、最高指導部メンバーたちは屋内に閉じこもり、中国が直面する現実と原則を中心に議論してきたと、事情に詳しい関係筋は明かす。
 
同関係筋によると、中央政治局常務委員会がどのような決定を下すかは、今後のウクライナ情勢次第だという。
中国の外交政策は、建国後間もなく当時の周恩来首相が表明した「平和五原則」を踏襲しており、他国の侵略や内政干渉を支持しないとの立場を取る。中国がロシアによる2014年のクリミア併合を認めなかった根拠もここにある。

欧州の安全保障問題でロシアと深く関わることは、欧州諸国をさらに遠ざけ、米国側に向かわせる恐れがあると中国は認識している。
 
習氏は16日、プーチン氏が帰国してから初めてウクライナ問題を巡り発言した。国営メディアによると、フランスのエマニュエル・マクロン大統領との電話会談で、習氏は「ウクライナ問題の包括的な解決」に至るため、ウクライナでの紛争終結に向けてドイツ、ロシア、ウクライナ、フランスが2014年に始めたノルマンディー協議のような対話を利用することを求めた。
 
もっと現実的なレベルでは、中国はロシアの脅威にさらされかねない地域における自国の経済上、安保上の権益を守る必要性を感じている。とりわけ、ウクライナは習氏が提唱する巨大経済圏構想「一帯一路」に参加している。
 
中国国有企業は近年、ウクライナのプロジェクトに巨額の投資を行っている。両国は2020年の終わりに一帯一路での協力を深化させることに合意した。
 
その一方で、中国は中央アジアで広範囲にわたる原油・ガスパイプラインのネットワークを構築してきた。パイプラインが通る多くの国々は旧ソ連構成国だ。
 
「プーチンは中国にとって大きな頭痛の種だ」。こう語るのは米外交問題評議会の中国研究シニアフェロー、カール・ミンズナー氏だ。「旧ソ連の領土にロシアが介入するという先例は、中国の中央アジアパイプラインへのリスクを高めることになるだろう」
 
加えて、旧ソ連地域でロシアの介入を許せば、中央アジアでの同国の支配力を弱めようとする中国の長期的な取り組みも台無しにする恐れがある。
 
(中略)国営メディアは、ウクライナに武器を供与し、ロシアの脅威を誇張しているとして米国と同盟諸国を非難しつつ、交渉が必要だとするウクライナの公式見解を繰り返している。(中略)

今のところ、中国がロシアに提供している最も具体的な支援は、ロシアから石油・ガスを購入する契約に関わるものだ。ロシアによると、その規模は推定1175億ドル(約13兆5670億円)で、契約期間は20年以上に及ぶ。契約条件は明らかにされていない。
 
中国の当局者の中には、エネルギー価格が高騰しているさなかにそのような長期契約に縛られることが理にかなうのか、懐疑的な向きもある。政府の経済顧問の一人は、中国に有利になるよう条件について交渉してもいいはずだと語った。
 
中国の指導者たちはまた、ロシアがウクライナを侵攻した場合、米国による制裁をロシアが回避するために中国がかなり手助けすれば、自国も米国から金融や貿易面で制限措置を受けるリスクについても検討しているという。
 
中国とロシアの関係は歴史的に不安定だ。(中略)習氏が国のトップに上り詰めた約10年前、米国との関係がそれぞれ悪化していた中国とロシアは再び接近し始めた。ロシアは中国の核兵器早期警戒システムの開発に手を貸し、中国はロシアのエネルギーを大量に購入するようになった。
 
習氏が中国指導者として2013年に初めて訪れた国はロシアだった。習氏とプーチン氏はこれまで38回会談している。
 
両首脳が2月4日に共同戦線を示した後、2人が一緒に写った写真はほとんどない。五輪開会式が行われた翌日の国賓を迎えた昼食会の場に、プーチン氏の姿はなかった。国営メディアは昼食会の出席者について「外国の要人」とだけ伝えた。プーチン氏はすでに中国を離れていた。
 
「中国もロシアも、一方が何かかき乱すようなことをした場合、自国の権益を完全に犠牲にする義務があるとは思いたくない」。独裁政治の専門家であるアメリカン大学のジョセフ・トリジアン氏はこう語った。【2月17日 WSJ】
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ロシアがアメリカの金融制裁でドル決済から締め出されると、必然的に中国に助けを求めることになり、中国が進める「デジタル人民元」の普及を加速させるというあたりも中国の念頭にはあるでしょう。

【ウクライナ危機と台湾問題を同列に扱う議論に不快感】
日本などでは、ロシアのウクライナ侵攻を許せば、次は中国の台湾侵攻だ・・・と両者をセットにする見方も多くあります。

実際、中国にとって武力侵攻のハードルは下がるでしょう。
ただ、“独立承認”という点では、中国は台湾がウクライナと同次元で扱われることは嫌がっているようです。

****ウクライナ危機と台湾問題の比較に不快感 中国外務省報道官****
中国外務省の華春瑩報道官は23日の定例記者会見で、ロシアの脅威に直面しているウクライナの情勢と台湾問題を比較して同列に扱うのは、「台湾問題の歴史に関する最も基本的な理解の欠如を示す」ものだとして、不快感を示した。
 
報道官は「台湾はもちろんウクライナではない」と指摘した上で、「台湾は中国の領土の不可分の一部であり続けてきた。これは、歴史的かつ法的に反論の余地のない事実だ」と強調した。
 
台湾の蔡英文総統は同日、ウクライナ危機が中国からの侵攻の脅威に長年さらされている台湾の士気をそぐことに利用されていると主張。華報道官の発言はこれを受けたもので、「(台湾当局は)不見識であり、ウクライナの問題を注目の話題に仕立て上げている」と批判した。 【2月23日 AFP】
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台湾・蔡英文総統は中国がウクライナ情勢に乗じて何らかの動きを起こすことに強い警戒感を示しています。
こうした台湾側の発言を、中国は「ウクライナ問題を利用」と批判しています。

****蔡英文総統 台湾海峡周辺の軍事動向 監視と警戒強化など指示****
ウクライナ情勢をめぐる緊張が高まっていることを受けて、台湾の蔡英文総統は23日、中国の脅威を念頭に、軍などに台湾海峡周辺の軍事動向の監視と警戒を強化することなどを指示しました。

(中略)蔡総統は「ロシアがウクライナの主権を侵害している」と非難するとともに「台湾は国際社会の一員として、争いの平和的な解決に向けて関与したい」と述べました。

そして、台湾海峡周辺の軍事動向について監視と警戒のレベルを上げ、あらゆる事態にすぐに対応できる備えを引き続き強化するよう、軍などに指示しました。

さらに「地理的にも、国際的なサプライチェーンの重要性においても、台湾とウクライナの情勢は全く違う」としながらも、海外の勢力と域内の協力者が台湾の民心に影響を与える目的で偽の情報を流すことなどへの備えを強化するよう各機関に求めました。

23日の発表では中国を名指ししていませんが、蔡総統は先月、「台湾は長く中国の軍事的な脅威に直面し、ウクライナが置かれた立場をわが事のように感じる」と述べていて、中国がウクライナ情勢に乗じて何らかの動きを起こすことに強い警戒感を示しています。

中国報道官「ウクライナ問題を利用」と批判
ウクライナ情勢を受けて台湾で中国への警戒感が強まっていることについて、中国政府で台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室の馬暁光 報道官は23日の記者会見で「台湾の民進党当局は、アメリカや西側の世論に歩調をあわせて、ウクライナ問題を利用していわゆる中国の軍事的脅威を悪意をもって騒ぎ立てている。現在の台湾海峡の緊迫した情勢の根本的な原因は民進党当局と台湾独立勢力が外国勢力と結託して独立をはかろうと挑発を繰り返していることにある」と述べ、蔡英文政権を批判しました。【2月23日 NHK】
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