孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ウクライナ危機  アメリカはロシアの今後の軍事行動を注視 「強力な制裁」は現段階では控える

2022-02-22 22:51:45 | 欧州情勢
(【2月22日 時事】)

【一方的独立承認 「平和維持」を名目にロシア軍を現地に派遣】
ロシアのプーチン大統領がウクライナ東部の親ロシア派2地域の独立を承認する大統領令に署名し、「平和維持軍」の派遣を命じたことは全てのメディアが報じているといころ。

****ウクライナ東部 ロシアが一方的に国家の独立承認 なぜ…?****
(中略)
1. なぜ国家の承認に踏み切った?
(中略)一方的な国家の承認は、これまでウクライナ政府側に迫ってきた停戦合意をロシアがみずからほごにすることにつながります。

欧米からの制裁強化も覚悟のうえでプーチン大統領は2014年のクリミアに続いて今度はウクライナ東部を確実に影響下に置く道を選んだことになります。

2. 「平和維持」部隊派遣へ 侵攻の可能性は?
「軍事侵攻」はない、というのがロシアの立場ですが、プーチン大統領は国防省に対して「平和維持」を名目にロシア軍を現地に派遣することを指示しました。ロシアによる軍の駐留につながる可能性があります。(中略)

まずはロシア軍がいつ、どれほどの規模で展開するのかが焦点です。もし展開すれば、それがさらに恒久的な駐留につながるのか見極めていく必要があります。(中略)

3. プーチン大統領 強硬姿勢に変化は?
プーチン大統領が強硬でなかったことは、これまでもありません。欧米側の制裁も含めた反応もみながら、引き続きNATOにウクライナを加盟させないことなど要求を突きつけ続けるとみられます。

ウクライナ東部の一部地域に部隊の前進を決めたことで、軍事侵攻がありうると脅しをかけ続けて安全保障をめぐる交渉を有利に進めたい意向があると思われます。

4. 衝突回避に必要なことは?
ロシアが交渉をしたいのはアメリカで、双方があらゆるレベルで対話を維持させることが何よりも大事です。アメリカとしても米ロの外相会談など対話、チャンネルは継続させてロシア側の真意を見極めて大規模な侵攻を抑止したい考えとみられます。

ただロシア側が最も重視するNATOの不拡大の問題では、アメリカは一歩も引かない構えです。またロシア軍が東部の一部地域に派遣されることでウクライナ軍との衝突が起きないかも懸念されます。

ウクライナ情勢はロシアが一方的に国家承認したこと、部隊の派遣を決めたことでさらに情勢が複雑に動いています。

5. アメリカはどう出る?
バイデン政権高官は今後の対応について慎重な説明に終始しています。この高官は「ロシア軍は過去にもウクライナに駐留しており、派兵は新しい動きとは言えない」とも述べて、強力な制裁は科さない可能性を示唆しました。

現時点で「軍事侵攻」と明確に位置づけないのは、ここで「強力な制裁」を科してしまえばロシア軍による大規模な侵攻を抑止するためのカードを早々に失いかねないことがあります。

さらにこの段階での強力な制裁はロシアにエネルギー依存しているヨーロッパ各国の支持を得にくいという考えもあるとみられます。

6. アメリカにロシアの行動を抑える秘策はあるか?
何とか外交によって事態の打開をはかりたいというのが本音で、24日に予定されているロシアとの外相会談を開く可能性は残しています。

一方で「弱腰」と映る対応をとることもできません。このため政権高官は「このあと数時間、ないし数日のロシアの行動を注意深く観察し相応の対応をとる」と述べて、ロシア軍の動き次第では強力な制裁を科す可能性があることをにおわせ、けん制しました。(後略)【2月22日 NHK】
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昨日ブログにも「ロシア・プーチン大統領のウクライナに関する基本戦略は、東部地域を自主権を持たせた状態で今のままウクライナに残し、その東部への影響力行使を「梃」にしてウクライナ全体へ影響を行使すること、具体的にはこれ以上の西側接近、NATO加盟を阻止することでしょう。」と書いたように、私的には今回のプーチン大統領の決定は意外な感もありました。

ただ、どうでしょうか。ウクライナ東部を独立国としてロシア勢力下の明示的に置くことで、これまで「ロシアもおおっぴらにはウクライナに手をださない。同様に、西側もウクライナ政府との関係は一定にとどめる」というバランスは崩れ、今後ウクライナ政府への欧米側の関与はより明確になり、ウクライナは緩衝地帯としての側面がなくなり、西側とロシアのホットな前線がウクライナ東部に明確にひかれる形にもなります。

僅かな東部地域を手にする一方で、残りの大部分のウクライナを西側に追いやることにも。

それはロシア・プーチン大統領にとっては、あまり「賢明な策」とは思えませんが・・・

同様なことは、ジョージアでもクリミアでも言えます。
世間一般はプーチン大統領の力による侵略・勢力圏拡大を言い立てていますが、実際にはロシアは自らが築いた壁の内側に閉じこもる、あるいは閉じ込められる形にもなっており、壁の外のはるかに広いエリアを西側・NATOがその影響下に置くことにもなっています。ロシアは自らの手で自分の首を締めているようにも思えます。

【バイデン政権 広範な制裁を発動するような侵攻には相当しないとの見方】
「平和維持軍」の派遣というのは微妙な側面も。
これまでもロシア側公式見解と異なり、現実的にはロシアはウクライナ東部に関与していましたので、今回の「平和維持軍」の派遣というのは、ある意味「現状追認」とも言えます。(もちろん、今後の実際の「派遣」の実態にもよりますが)

ロシア軍のウクライナ侵攻にあたるのか、厳しい制裁を発動すべきものになるのか・・・西側対応も微妙。

****ウクライナへの軍派遣、広範な対ロ制裁につながらず=米高官****
バイデン米政権の高官は21日、ロシアのプーチン大統領がウクライナ東部の親ロシア派2地域の独立を承認する大統領令に署名し、「平和維持軍」の派遣を命じたことについて、より広範な制裁を発動するような侵攻には相当しないとの見方を示した。ただ、ウクライナへの全面的な侵攻はいつでも起こり得ると指摘した。

米政権高官は、親ロシア派の実効支配地域への軍派遣はロシアが既に行っていることで、広範な制裁にはつながらないと説明した。

政権高官は「ロシア軍がドンバス地域に移動することは新たな動きではない。過去8年間ロシアはドンバス地域に軍を配備してきた。現在、よりあからさまでオープンな方法でこれを行う決定をしている」と述べた。

バイデン大統領は21日、ロシアが独立を承認したウクライナ東部の2地域について、米国人による貿易や投資を禁止する大統領令に署名した。米国人による当該地域への「新規投資」を禁止するほか、「当該地域から米国へ直接、もしくは間接的にモノやサービス、技術を輸入すること」を禁止する。【2月22日 ロイター】
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****「ロシアの行動は想定内 外交解決は可能」アメリカ政府の制裁は限定的****
日本時間の22日朝、ロシアのプーチン大統領が、ウクライナ東部の親ロシア派武装勢力を独立国家として承認した。
この一方的な承認を根拠に、ロシア軍がウクライナ国内に入ることになる。(中略)

アメリカ政府の関係者はロシアの行動について、想定内で「外交交渉による解決」が可能な段階であることに変わりはないと話している。

プーチン大統領が、親ロシア派を一方的に独立承認したことを受け、アメリカ政府は即座に制裁を発表した。
しかし対象は、親ロシア派が実効支配するウクライナ東部の一部地域に対する「限定的」なもので、ロシアに対する全面制裁は発動されなかった。

ホワイトハウス高官も、親ロシア派が実効支配する地域には、「8年も前からロシア軍が駐留している」と指摘していて、今回のプーチン大統領の命令を受けて、ロシア軍が現地に入った場合、「軍事侵攻」という「越えてはいけない一線」とするか、明らかにしていない。

バイデン大統領はツイッターで、日本などの同盟国と今後の対応を話し合っていると明らかにしていて、外交的解決に望みを持ちつつ、経済制裁のタイミングなどについても見極めているものとみられる。【2月22日 FNNプライムオンライン】
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前出【NHK】は、こうしたアメリカの対応について、ロシア軍による大規模な侵攻を抑止するためのカードをとっておきたい思惑、および現段階での強力な制裁はロシアにエネルギー依存しているヨーロッパ各国の支持を得にくいという配慮と説明しています。

【米ロ首脳会談、行われない公算大】
そのEUは、22日午後にパリで緊急の外相会議を開き、ロシアへの制裁について協議することになっていますが、注目されているパイプライン「ノルドストリーム2」の扱いについて、ドイツ・ショルツ首相は手続き停止を明らかにしています。

****独首相、ロとガス管稼働手続き進めない考え****
ドイツのショルツ首相は22日の記者会見で、ロシアがウクライナ東部の親ロシア派地域の独立を承認したことを受け、ロシア産天然ガスをドイツに送る海底パイプライン「ノルドストリーム2」の稼働手続きを進めない考えを示した。【2月22日 共同】
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フランス・マクロン大統領の仲介で行われることになっていた米ロ首脳会談は「行われない公算大」とのこと。

****米ロ首脳会談、行われない公算大 米政権高官****
米政権高官は21日、記者団に対し、バイデン大統領とロシアのプーチン大統領の首脳会談は行われない公算が大きいとの見通しを示した。ロシアが対ウクライナ軍事行動に踏み切る可能性が高いことを示す諜報(ちょうほう)や現地の情報を踏まえた判断だという。

ホワイトハウスのサキ報道官は20日、バイデン氏がブリンケン国務長官とロシアのラブロフ外相の24日の会談の後、どこかの時点でプーチン氏と会談することに「原則」合意したと発表。会談の条件として、ロシアがウクライナにこれ以上侵攻しないことを挙げていた。

この当局者は、会談が有意義でウクライナ危機に有益な影響をもたらす可能性があると判断した場合、バイデン政権がプーチン氏との関与を進める用意はあるが、ロシアのさらなる軍事行動を示す諜報から首脳会談の開催は不可能になるだろうと語った。

この当局者はさらに、ウクライナの北方、東方、南方での状況を基にすると、ロシアは引き続き軍事行動の準備を進めており、今後数時間または数日内に実行する可能性が高いと説明。「ロシアが明らかに軍事行動を起こしそうな状況で、軍事行動を起こさないことを前提にした会談を約束することはできない」と述べた。【2月22日 CNN】
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“ロシアがウクライナを侵攻・占領した場合に殺害もしくは強制収容所送りにするウクライナ人らのリストを作成している”という情報もありますが、ロシアは全面否定しています。

****露、ウクライナ侵攻後の「殺害・収容リスト」作成か 米が国連に警告****
緊迫するウクライナ情勢をめぐり、バイデン米政権が国連に対し、ロシアがウクライナを侵攻・占領した場合に殺害もしくは強制収容所送りにするウクライナ人らのリストを作成していると警告する書簡を送ったことが明らかになった。21日付の米紙ワシントン・ポストなどが報じ、バイデン政権高官が同日確認した。

書簡は20日、在ジュネーブ国連機関の米代表を務めるクロッカー氏がバチェレ国連人権高等弁務官に送付した。ロシアがウクライナを侵攻・占領すれば、プーチン政権が過去に反体制派に対して行ってきた「暗殺や拉致、不当拘束、拷問」といった弾圧が、同国の反露派などに対しても行われる恐れがあると指摘。露軍が標的とする人物のリスト化を進めているとの「信頼できる情報がある」と強調した。

それらの標的には、ロシアの活動に反対するジャーナリストや反汚職活動家、ウクライナに亡命中のロシアやベラルーシの反体制派、宗教・民族・性的マイノリティー(少数派)も含まれるという。政権高官は21日、「(標的となり得る)個人や団体には警告を発している」と語った。

同紙によると露大統領府のペスコフ報道官は「そのようなリストは存在しない。フェイクだ」と全面的に否定した。【2月22日 産経】
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【プーチン大統領の屈折・鬱積したウクライナへの思い】
理屈の上ではロシアにとって得策ではないという個人的な感想は冒頭のとおりですが、一連のロシアの行動の背景に、プーチン大統領の現状への強烈な不満があるのは間違いありません。

****プーチンがウクライナに軍派遣命令 演説で歪んだ歴史認識と怨みを吐露****
<西側のあらゆる外交努力を反故にしかねない命令を下し、ウクライナの独立さえ否定する演説をしたプーチン。バイデン政権が見守る最後の一線は、ウクライナ東部の親ロ派地域より奥へ、ロシア軍を侵攻させるのかどうかだ>
(中略)
長年の不満をぶちまけたプーチン
プーチンは(ウクライナ東部地域の独立を承認する)演説の中で、ウクライナに対する攻撃的な姿勢を撤回する考えはないことを示し、冷戦の幕開けや何世紀も前のロシア帝国の歴史にまで遡る、西側諸国に対する長年の不満を改めて強調した。

「ウクライナは我々が(旧ソ連時代に)彼らに与えた全てのものを無駄にしただけではなく、彼らがロシア帝国から受け継いだ遺産、なかでもウクライナを併合したエカテリーナ2がもたらしたものまで台無しにした」とプーチンは述べた。

脅しを織り交ぜた長い演説の中で、プーチンはウクライナがロシアとの歴史的なつながりを無駄にしたと厳しく非難。ウクライナがロシアに対する軍事攻撃を計画し、また核兵器を入手しようとしていると、言いがかりをつけた(ウクライナは、ソ連の崩壊と冷戦の終結を受けて核兵器を手放した数少ない国の一つ)。

プーチンはまた、ウクライナが2014年で当時の親ロシア派政権に対する大規模な抗議活動が起きたとき、ロシア系住民を殺害したイスラム主義のテロ組織を支援したと主張したが、その証拠は提示しなかった。

プーチンはデスクを前にして座り、ふんぞり返るような姿勢を取ったり、手振りを交えたりしながら、ウクライナ政府やNATOに対する不満を述べ立てた。

アメリカがNATOの東方拡大を促してきたことへの長年の恨みや、ウクライナが独立国家であるという事実さえも容認できない考えを示した。

旧ソ連を構成した複数の共和国はロシアを去るべきではなかったし、独立したウクライナなど存在すべきではないとプーチンは言った。

アメリカおよびNATOから武器を提供されたウクライナは、ロシアにとって軍事的脅威になり得ると主張した。

「ウクライナが(大量破壊兵器を)入手すればすぐに、ヨーロッパの状況は大きく変わるだろう」とプーチンは述べ、アメリカがウクライナからいつでも軍事攻撃できるとつけ加えた。実際は、多くの米軍部隊は1週間以上前にウクライナから撤収しているが、プーチンは「彼らは我々の首にナイフを突きつけている」と主張。「我々としては対応を取らざるを得ない」と述べた。

現在のウクライナは「アメリカの植民地と化している」
またプーチンは、現在のウクライナは「西側の傀儡(かいらい)政権が動かす植民地」だと述べ、西側諸国がウクライナの政治に介入していると非難。

また8年前に選挙で選ばれた親欧派のウクライナの指導者たちが、過去にテロ組織を組織したと述べ、「我々は彼らの名前を知っており、あらゆる手を尽くして彼らを罰するつもりだ」とつけ加えた。

フォーリン・ポリシーは以前、ロシアがウクライナ占領後に殺害または収容を計画している親欧米派の政治家や反体制派、ジャーナリストのリストを作成したという情報を、アメリカが入手したと報じている。

プーチンの軍派遣命令は、西側首脳による外交努力を大きく後退させるものだ。バイデンは、フランスのマクロン大統領の仲介でプーチンと会談することに「原則的に」合意したばかりだった。この合意は反故になるのか、米政府はまだ発表していない。米政権高官は、いずれにせよ今後も外交努力は続くだろう、と語った。【2月22日 Newsweek】
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