(中国・湖北省武漢の駅に到着し、列をつくるマスク姿の乗客たち(2020年3月28日撮影)【3月28日 AFP】)
【武漢の封鎖緩和】
世界の主要都市で移動や経済活動の制限が強まる中で、新型コロナの震源地ともなった中国・武漢では、新規感染者数がゼロになったとされ、封鎖が一部緩和されています。
****中国・武漢の封鎖緩和、駅は帰還した乗客で混雑 出境は禁止続く***
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)の発火点となった中国・武漢では28日、2か月超続いたほぼ全面的な封鎖が部分的に解かれ、武漢駅は同市へ戻ってきた人々で混雑した。
武漢は今年1月に封鎖下に置かれ、住民の外出が禁止された他、市の郊外では往来を制限するために路上で検問が行われ、日常生活においても徹底的な規制が課された。
だが、長期間にわたった隔離は終了する兆しが見えており、国営メディアは28日午前0時を過ぎて間もなく、公式な許可を得た乗客らが初めて列車で市内に到着する様子を伝えた。
ただ、人々が市内に入境することは認められるものの出境はできず、さらに列車の多くは、数日前に予約で満席となっていた。
AFPの記者は28日、武漢駅に到着した人々でごった返し、多くの乗客らがキャリーケースを引く様子を目にした。
ただ移動禁止の強制が緩和され始めていたため、名目上は降車が禁じられていたものの、前日以前から武漢駅に停車する鉄道に乗って市内にこっそり戻る人々は一部存在していた。
27日に到着したある女性はAFPに対し、自身の娘、夫と10週間近く離れ離れになっていたと説明。
「列車が武漢に近づくと、子どもも私もとても興奮した」「鉄道は以前よりも速く動いているように感じた。娘は私たちが本当に早く家に帰りたいことを運転士が分かっているに違いないと話していた」と語った。
さらに、「娘が父親の元に走り寄るのを後ろから目にして、泣かずにはいられなかった」と話した。
海外で感染者数が増加する中、中国は現在、海外から感染者が入国するのを抑制しようと奮闘している。
武漢駅から外へ出るため、乗客らは列をつくる一方、防護服を着用した作業員は、海外から戻ってきた人々に申告を呼びかけた。
武漢に到着した人々は、健康状態が良好であることを示すため、携帯電話のアプリで「緑色」のコードを示す必要がある。
また武漢以外の中国各地でも、同市へ向かう高速列車に乗車するため、駅で長い列をつくる旅行客の姿が見られた。 【3月28日 AFP】
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「鉄道は以前よりも速く動いているように感じた・・・・」のコメントは、溢れる思いが感じられて秀逸ですね。
武漢以外の湖北省各都市では、武漢に先立って封鎖解除が進んでいます。
****湖北省の各都市、封鎖解除 武漢以外、正常化急ぐ****
中国湖北省の武漢市以外の各都市は25日、新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐために続けてきた事実上の封鎖措置を解除した。
1月下旬から航空便や鉄道を止めて外部との人の往来を制限していたが、駅などが再開した。中国政府は出稼ぎ労働者らの職場復帰を進め、経済活動の正常化を急ぐ。
ただ住民によると、労働者が職場復帰のために検査を受けて無症状感染が判明する事例が発生。中国政府は無症状の感染者は発表に含めておらず、市民の間では再流行が起きるのではないかとの不安も強い。
北京紙、新京報によると、武漢市以外の駅で切符の販売を再開した。【3月25日 共同】
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武漢では生産活動も再開されているようです。
****工場再開の武漢、賑わい戻る上海。新型コロナ「制圧後」中国は今****
(中略)
今週に入って湖北省武漢も少しずつですが街が動き出し始めたとの連絡が。まだ移動制限があるものの日常を取り戻しつつあるようです。(中略)
3月16日武漢のお客様と連絡用に作っているWeChatのグループチャットに「本日より100名体制で再稼働」と久しぶりの通知がありました。
通常は350名ほどの規模で稼働しているお客様なので1/3程度の規模でありますが、湖北省武漢市内の工場が稼働再開。
縮小している理由として2/3が外地人であるのだと思います。まだ湖北省へは外地からの移動制限がされているでしょうから、春節に田舎に戻らなかった、または武漢出身のスタッフのみで稼働再開となったようです。(後略)
【3月27日 MAG2NEWS】
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【『本当かよ?』という感じ】
もちろん、中国の公表情報に対しては懐疑的な雰囲気があります。
****麻生財務相、中国のコロナ終息アピールに「本当かよ?」****
麻生太郎財務相は13日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染源である中国が国内感染は終息に向かっていると内外にアピールしていることについて、「本当に収まったのか。そのまま素直に受け取る人のほうが少ないと思う。『本当かよ?』という感じのほうが大きい」と述べ、懐疑的な見方を示した。
一方、「(中国での終息が)本当だとすれば、いろんな話が終息していくんだと思う」とも述べ、感染の押さえ込みで金融市場の動揺が沈静化することには期待感も示した。
中国の習近平国家主席は10日、新型コロナの発生後初めて被害が最も深刻な湖北省武漢市を視察。「(感染状況に)前向きな変化があり、重要な成果が出ている」とアピールしている。【3月13日 産経】
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また、習近平氏の武漢訪問に合わせて、感染者ゼロが演出されているとの指摘もあります。
****武漢の改善、欺瞞と医師が告発 習氏視察で隔離解除、検査停止****
新型コロナウイルス感染症の被害が最も深刻な中国湖北省武漢市で、10日に行われた習近平国家主席による視察に合わせ、症状の残る多数の患者が隔離を急きょ解除され、一部の感染検査も停止されたことが19日、分かった。
隔離施設の医師が共同通信の取材に、武漢市の状況改善は欺瞞だと告発した。
医師は、習氏への配慮から対策成功アピールのため治療中の患者数を意図的に減らしていると指摘した。中国で現場の医師がこうした告発を行うのは異例。
中国政府は武漢で18日に新規感染者が0人になったと発表したが、医師は政府の集計は「信頼できない」と断言した。【3月20日 共同】
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“陽性だが無症状の人は感染者とカウントせず人数も公表しない指針”も感染拡大再燃を懸念させています。
また、上記のような「状況改善の演出」が起きる背景には、中央の厳しい圧力に地方が萎縮している統治システムの問題があるとも。
****“感染者ゼロの武漢”実は今も新たな感染者がいる?その理由****
“4日連続で新規感染ゼロ” 感染押さえ込みは予定通り?でも拭えぬ不信感
3月21日、武漢で4日連続で新規感染者がゼロになった。中国政府はすでに事実上の勝利宣言をし、今は海外からの入国者による感染拡大の食い止めに重点を置く。(中略)
中国メディアは、習主席の強いリーダーシップの元で感染に勝利した!と報じる。中国メディアでは、連日、感染との戦いを終えた医療関係者が武漢市民の感謝を受けながら地元に戻っているとのニュースを放送している。
(中略)もともと中国では地方政府による統計数字改ざんの“前科”があり、中国発表のデータに対する不信感がある。
既に感染収束までの壮大なストーリーができているのでは、と穿った見方が出てくるのもそのためだ。予定通り感染者がゼロになり、経済が元に戻り、習近平国家主席のおかげで感染に勝利――果たして、中国が描くシナリオ通りになっていくのだろうか。
“無症状の感染者は感染者とカウントしない“市民は政府に不信感
「昨夜、新たな感染者が出た。外出を控え注意を」すでに新規感染者はいないと発表されている20日、武漢のある住宅地で、こんな張り紙が出され、ネット上にも出回った。
62歳の男性が前日19日に陽性判定されたというのだ。ただ男性は咳や発熱などの症状はなかった。
地元政府は、中国政府が2月に示した“陽性だが無症状の人は感染者とカウントせず人数も公表しない指針”により感染者とされなかったが、住宅地側が間違って張り紙を出した、との調査結果を公表した。
この他、ネット上には、武漢にはまだ感染者が出ているとする文章も出回った。「ある住宅街で2例出た」「別の住宅街でも新規感染が出ている」などの内容だ。(中略)
ネットには「無症状でも周りにいたら感染するのでは?」「確かに周りに最近感染した人はいる」「無症状感染者はいるが政府の要求に合わないからカウントされない」「武漢市の発表は一言も信用出来ない」と不信感が溢れている。
統計は一定の条件のもとでやるしかないが、無症状でも他人に感染させる恐れがある中、陽性なのにカウントされていないとしたら、実際に感染拡大が抑えられているのか不安は感じる。
一方、中国ではそれに加え、統治システムが抱える問題から、「感染者ゼロ」が作り出されているのでは、、とさらに不安を感じさせる指摘が専門家から出た。
「1人の感染者も許されない」中央の厳しい圧力に地方は萎縮し・・・
3月15日、経済の専門家である北京大学国家発展研究院の姚洋院長が、論文『疫病との戦いから見る統治システムの現代化』を発表し、現体制の問題点を指摘した。この研究院は中国の社会科学や経済を研究するシンクタンクで政府に近く、このような批判は異例だ。
論文は、中国政府が、経済への深刻な影響が出る中で一刻も早い企業活動の再開を進めようとしているが進まない背景について指摘している。
姚院長は、その理由として、「地方の末端の当局者は、“1例の感染者も出してはならない”と指令を受けており、出した場合は処分される。このような状況で誰が思いきった経済対策をやろうとするだろうか」と強調する。(中略)
つまり、地元で感染者を出せば処分される、とプレッシャーを受けている地方政府は萎縮し、肝心な経済の復興に自主的に取り組めなくなっているとの批判だ。論文はその上で、「地方政府に自主権や実権を与えるべきだ」と訴えた。
この論文の指摘から感じられるのは、地方政府は誰もが、至上命題である“感染者ゼロ”、ありきで行動するようになるため、実際には感染者がいても絶対に表に出てこないのでは、という疑念だ。
処罰を恐れる地方の役人達が保身に走り、正確な情報を上に報告しない(感染者が出ても隠す)、ということが起きるのは中国では容易に想像できる。(後略)【FNN PRIME】
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コロナ禍を世界中に拡大させたのも、武漢における初期の“処罰を恐れる地方の役人達が保身に走り、正確な情報を上に報告しない”という対応であったとおもわれます。それは中国統治システムの根本的問題です。
武漢での死者数についても疑念が持たれています。
****中国武漢で死者数巡る疑念が再燃 埋葬開始、葬儀場に多数の行列****
中国湖北省武漢市で28日までに、新型コロナに感染した死者の遺骨の受け取りや埋葬が始まった。検査が追いつかず政府発表より実際の死者数が多い可能性が以前から指摘されていたが、多数の人が行列を作ったことで、市民の間で死者数を巡る疑念が再燃している。
住民によると、武漢の葬儀場では26日ごろから感染防止のため停止していた遺骨の受け取りが始まった。SNSでは受け取りや墓の購入のため、葬儀場や墓地に大勢の人が並ぶ写真が出回った。
武漢の感染による死者数はこれまでに計2538人。SNSでは行列の人数などから感染による死者は数万人に上るとの推測も広がった。【3月28日 共同】
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中国メディアによると、引き取りにきた親族らの列はおよそ200メートルに及び整理券も配られたとか。
死者数が発表より多いのか・・・実際のところはわかりませんが、“こうした映像がネットに投稿されると相次ぎ削除される事態が起きている。”【3月28日 日テレNEWS24】のような当局対応に根本的な“問題”を感じてしまいます。
【経済再建に大きく舵を切る中国政府】
問題・疑問は多々ありますが、中国の感染状況が一定に改善したのは事実で、これを受けて中国政府は経済の再建に大きく舵を切ってきます。
****中国で旅行予約再開、新型コロナ状況好転で―仏メディア****
中国紙・環球時報によると、フランスのニュースサイトLaQuotidienneは24日、「ヨーロッパで新型コロナウイルス感染症のトンネルの出口がまだ見えない中、中国人は旅行の予約を再開している」とし、次のように伝えている。
中国の大手旅行予約サイト2社によると、人々は、2カ月間の「隔離期間」を経て、4〜5月の旅行の予約を始めている。
Qunar(去哪儿)はすでに、新疆ウイグル自治区や四川省などを目的地とした1000以上の国内旅行商品を販売している。
Ctrip(携程)では、国内1400カ所以上の観光名所を予約でき、5A級観光地の4割以上が営業を再開している。
タイ政府観光庁と衛生当局は、4月の中国人観光客の再来に備え、あらゆる衛生対策を講じて信頼を得ると表明しており、中国の旅行会社は一度は失われた海外旅行を取り戻そうとしている。【3月27日 レコードチャイナ】
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個人的な関心事としては、先日タイから帰ってきましたが、感染拡大で次の旅行先が見つからないということがあります。中国の入国規制が緩和されたら、夏ごろの次の旅行先は中国ですかね・・・。それまでに入国規制がどうなっているか・・・・日本の状況次第でしょう。
****中国で「万里の長城」が入場再開 新型コロナ対策で2カ月ぶり****
新型コロナウイルス対策で閉鎖されていた北京郊外の「万里の長城」の入場が約2カ月ぶりに再開され、28日に初めての週末を迎えた。入場者数を制限し検温もするなど特別態勢は続くが、マスク姿の家族連れなどが青空の下、散策を楽しんだ。
中でも代表的な観光スポット「八達嶺」が24日に再開された。28日は朝からシャトルバス乗り場に数百人が行列。1メートルの間隔を空けるよう指示され、サーモグラフィーで体温も検査された。入場者は1日約2万人まででインターネット予約が必要だ。
中国政府は感染者の増加ペースが落ちたことを受け、全土で経済、社会活動の再開を促している。【3月28日 共同】
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飲食店の再開も始まっていますが、結構厳しい条件がつけられているようです。
****中国各地でレストランが再オープンもかなり厳しい条件付き―カタールメディア****
2020年3月25日、中国紙・環球時報はカタールの衛星テレビ局・アルジャジーラの報道を引用し、中国各地で飲食店が再オープンしているが、厳しい条件付きだと伝えた。
記事は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための措置が徐々に緩和されるにつれ、中国では多くの飲食店が営業を再開していると紹介。しかし、危険が完全になくなったわけではないため、顧客数を以前のレベルにまで戻すのは容易なことではないと指摘している。
S&Pグローバル中国が2月19日に発表したデータによると、中国のレストランの1、2月の売り上げは大幅に減少しており、第1四半期は前年同期比55%減になる見込みだという。
そのため、安徽省や江西省、江蘇省などでは、政府関係者が外食する際に少なくとも100元(約1500円)消費するよう促しており、「その主な目的は国民の外食に対する信頼性を回復させることにある」と伝えた。
だが、店内での食事の許可を得た店でも、「複雑な健康手順を必ず遵守しなければならない」と記事は紹介。これには、「4時間ごとに店員にマスクを1枚配布すること、頻繁に体温を測定すること、テーブル間の安全な距離を保つこと、2時間ごとにすべての顧客を店外に出して消毒作業を行うこと」などが含まれると伝えた。
(中略)広東式の茶餐廳を営む陳(チェン)さんは、「店を閉めて2カ月以上になるが、いまだにいつになったら完全に回復できるか分からない」と述べている。陳さんによると、支店の一つが開店許可を得て店内での飲食が可能になったが、1度に入店できる人数には制限があるという。
記事は、「中国のデータによると2019年末までで、ホテルや飲食業に従事する人の数が2600万人を超えており、このうち飲食業が約60%を占める」と紹介。これに小規模な飲食店やバー、カフェなどを加えると、その人数は「2億人近くになるとみられる」という。
記事は「現在、中国の飲食業界ではオンライン、フードデリバリー、テイクアウトなどの方法での経営が、融通の利いた効果的な方法となっている」と結んだ。【3月28日 レコードチャイナ】
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政府関係者が外食する際に少なくとも100元(約1500円)消費するよう促しており・・・というのも、中国らしい面白い話です。
いずれにしても、今回のコロナ禍で、勤務形態は在宅に、飲食業はオンライン、フードデリバリー、テイクアウトなどの方法へと、生活様式が大きく変わるのでしょう。