孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア  実際の感染は公式発表をはるかに上回る? そのなかで改憲国民投票強行の姿勢だったが・・・

2020-03-25 23:18:51 | ロシア

(病院を訪問したプーチン大統領【3月25日 ロイター】 もっとも、プーチン大統領は過去に“影武者”計画があったことを認めていますので(実際には使ってはいないそうですが)、ひょっとしたら影武者かも)


【モスクワ市長、市内の感染者数は公式発表をはるかに上回っているとの認識】
世界各地で猛威をふるう新型コロナ、これまで感染爆発はなんとか持ちこたえてきた日本も、今日東京で新たに40人の感染者とか聞くと、この先の不安も感じます。

そうしたなかで“不思議に”感染者が少ないのがロシア。
これまで感染者495人、死者1人とか・・・本当かね? トルコメディアは以下のようにも。

****【新型コロナウイルス】 ロシアで事実隠ぺいか****
ロシアで新型コロナウイルス感染症の真の次元が隠蔽されており、症例が「肺炎」と記録されていると主張された。
 
ロシア医師組合連合のアナスタシア・ワシリエワ会長は映像を公表し、同国の新型コロナウイルス感染症に関する状況に見解を述べた。

新型コロナウイルスの真の次元が隠蔽されていると主張したワシリエワ会長は、医師たちは実際の状況を隠ぺいし、保護具が不足していることに関して沈黙を強いられている。我が国が危険にさらされている。これは当局の愚行である」と述べた。

医師たちは保護具を身に着けずに患者の治療に当たることを余儀なくされていると主張したワシリエワ会長は、
「医師にウイルスに対して全世界で使用されている保護具が配布されていないことは、国民に対する犯罪である」と見解を述べた。【3月23日 TRT】
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医師組合連合の会長の発言以上に重みがあるのが、下記のモスクワ市長のプーチン大統領への発言

****モスクワの新型コロナ感染は見かけよりはるかに深刻=市長****
モスクワのソビャニン市長は24日、病院の視察に訪れたプーチン・ロシア大統領に対し、市内の新型コロナウイルス感染者数は公式発表をはるかに上回っているとの認識を示した。

市長は大統領の側近。広大なロシア国内で新型コロナがどの程度拡大しているか完全に把握できていない現状が浮き彫りとなった。

これまでにロシアで確認された感染者は495人、死者は1人で、西欧主要国の死者・感染者をはるかに下回っている。

大統領は先に事態は制御下にあると発言したが、一部の医師は公式発表がどの程度現実を反映しているかを疑問視している。

政府は24日、拡大抑制策としてナイトクラブ、映画館、児童向け娯楽施設を閉鎖した。

ソビャニン市長は大統領との会談で、「深刻な事態が進行している」と発言。感染の実数は不明だが、急速に増加しつつあると述べた。【3月25日 ロイター】
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市長が公式発表数字を否定するというのも珍しい話ですが、上記記事の印象ではモスクワでは相当な感染拡大が懸念される状況にあるようにも思えます。

ただ、ロシアメディアによると、モスクワ市長は“感染者数は500人に達する恐れがある”としていると報じており、そのくらいの数字なら現在の世界の状況からすれば“制御下にある”と言えるレベルかも。

****ロシア 全土で新たに57人が感染****
ロシア全土の14の地域で24日はこれまでのところ新たに57人の新型コロナウイルス(COVID-19)の感染例が確認されている。ウイルス対策緊急本部が発表した。

これにより、ロシアで確認された感染者数は495人にのぼった。また24日にかけての一昼夜で22人が完治し、退院している。

中でも最も感染拡大が進んでいるのは首都モスクワ。同市のソビャニン市長は感染者数は500人に達する恐れがあるとし、感染者の大多数は外国から入国した市民でウイルス検査を受けようとはせず、帰国後、そのまま自宅ないしは郊外のセカンドハウスで自主的に隔離状態にあるとの見方を示している。

ソビャニン市長はプーチン大統領に健康問題について報告した中で、今週末までにモスクワでは1日あたり1万3千件のウイルス検査を実施することをあきらかにした。【3月25日 SPUTNIK】
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【プーチン政権 求心力が低下する前に、改憲国民投票強行 プーチン氏の5選も可能に】
実際のところ、どの程度感染が拡大しているかはわかりません。

そうした状況で、政権は憲法改正の是非を問う国民投票を予定通り4月22日に実施するようです。
例の、プーチン大統領の5選も可能にする改憲です。

次期は憲法上立候補できないプーチン大統領が、憲法改正で大統領権限を弱め、別の役職について院政をしくのでは・・・と、当初は見られていましたが、急にテレシコワ下院議員(懐かしい女性ですね。人類初の女性宇宙飛行士です)の追加改憲案で、プーチン大統領の5選も可能とされています。

テレシコワ議員が突然勝手に提案することはありませんので、当然にプーチン大統領のシナリオに沿った提案でしょう。

改憲後、実際にプーチン大統領が次期大統領選に出馬するかどうかは明らかにされていません。

****露政権、コロナ横目に改憲国民投票強行へ 求心力低下に危惧****
ロシアのプーチン政権は、国内で新型コロナウイルス感染が広がりつつある中でも、憲法改正の是非を問う国民投票を予定通り4月22日に実施する構えだ。

政権にとって現状での投票実施は投票所で感染が拡大して批判を招いたり、投票率が低下したりするリスクとなる。

それでも政権が国民投票を急ぐ背景には、露経済が今後さらに悪化するとの観測も出ている中、求心力を失う前に手続きを済ませ、改憲の正当化と既成事実化を図る狙いがある。
 
1月にプーチン大統領が提出した改憲法案は既に議会で可決され、国民投票で投票者の過半数が支持すれば発効する。政権側は改憲の正当性を示すために有権者の「6割投票・7割支持」を目標にしているとされる。
 
一方、新型コロナウイルスの感染者数はロシアでも増大。3月16日は100人以下だったが、22日には400人を超えた。検査精度の低さや検査態勢の不備も指摘され、実際の感染者数はもっと多いとみられる。
 
政権側は感染予防対策として大規模イベントを禁止するなどしてきた。それにもかかわらずプーチン氏は17日、国民投票を4月22日に行うとする大統領令に署名。

プーチン氏は「(実施は)状況が許せばだ」と延期の可能性も示唆する一方、「投票所の各記入台の距離を取るなどの予防措置を講じる」とし、予定通り実施したい考えを示した。
 
現在の状況で国民投票を実施した場合、感染を恐れる有権者が投票を控えることが想定され、高い投票率での新憲法成立を望む政権にとっては痛手となる。
 
それでも政権が国民投票を急ぐ背景には、プーチン氏の5選を可能にする改憲への批判的世論が強まる前に改憲を既成事実化する思惑があるとみられている。
 
さらに今月、原油協調減産をめぐる露・サウジアラビア間の協議が決裂し、露通貨ルーブルは1米ドル=60ルーブル台から約80ルーブルに急落。今後、経済状況や家計が悪化して国民からの求心力が弱まるとの危機感も政権を焦らせる要因となっている。
 
露経済紙ベドモスチは19日付の社説で、4月22日の国民投票実施を決めた政権を「ロシアでは政治が人々の安全より重要だということを示した」と揶揄(やゆ)した。
 
ただ、感染がさらに拡大した場合、国民投票が延期される可能性も残っている。露中央選挙管理委員会は3月末にも実施か延期かを最終判断する方針だ。【3月25日 産経】
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「6割投票・7割支持」・・・投票する者はおそらく多くが支持するでしょうから7割支持は問題ないでしょう。
問題は6割投票です。

これまでの選挙でも、政権はこの投票率を上げることに躍起になっていましたので、新型コロナ蔓延となると・・・・どうでしょうか、政権としても判断が難しいところでしょう。

【政権側、ニセ野党演出で反政権票分散を目論む?】
ロシアでは、今年9月には統一地方選、来年9月には下院選が予定されています。

政権側は、過去の選挙でもわざわざ(政権側を脅かすようなものにはならない)対立候補擁立を後押しして、国民の選挙への関心を高め、いかにもまっとうな選挙戦が行われたような形を演出するといったことをやってきましたが、今後の選挙においても似たような疑似野党をつくるようです。反政権票分散の目論見とも。


****ロシアで新党乱立、ニセ野党か 「反政権票分散」の見方****
ロシアで新たな政党をつくろうとする動きが相次ぎ、この半年での届け出が30件を超えた。地元有力メディアは、新党を乱立させて「反政権票を分散させる」とする大統領府関係者の発言を報道。来年9月に下院選を控え、政権側による選挙戦略ではないかとの見方が広がっている。
 
モスクワで10日、環境政党「緑の選択」の設立総会があった。党首に選ばれたルスラン・フボストフ氏(35)は、地球温暖化の抑止などを掲げ「下院選で議席をとり、環境問題で波を巻き起こす」と訴えた。夏までに政党の認可を受け、今年9月の統一地方選にも候補者を擁立するという。
 
同党は、環境保護を前面に打ち出して欧州で存在感を増す「緑の党」を連想させる。だが、ロシアの主要独立系メディアは「緑の党のイミテーション(偽物)」と呼び、政権の支援を受ける官製野党の一つだと伝えている。
 
ロシアでは、政権による野党勢力への締め付けが続いており、新党設置には高いハードルが課されている。モスクワの選挙監視団体「ゴロス」のアルカジー・リュバレフ氏は「新党設立には最低でも8カ月はかかる」と指摘。9月の統一地方選までに認可された場合は、政権の関与があった疑いが強いとみる。
 
有力紙ベドモスチ紙は、「大統領府は多数の新党を設立し、反政権票を分散させようとしている」と語る大統領府関係者の発言を報道。

他の大手紙も「緑の選択」を含む複数の新党の名前を挙げ、政権に批判的な都市部の中間層をひき付け、既存野党の得票を減らす狙いがあるとしている。
 
プーチン大統領は、大統領任期を2期までとした憲法改正案で、自身は任期が終わる2024年以降も大統領選に出馬できる例外規定を設けた。去就は「国民の気持ち次第」と含みを持たせているが、何らかの形で権力を維持するためにも、議会での与党の過半数維持が必須になっている。【3月22日 朝日】
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政権側が関与するのは、政権を脅かすような存在にはならない「野党」であって、アレクセイ・ナワリヌイ氏のような脅威となる可能性がある存在は徹底した封じ込めが行われます。

****反プーチン運動再燃も  ロシア改憲案、大統領5選可能に*****
(中略)「反プーチン運動」の指導者の一人で15年2月に殺害されたネムツォフ元第1副首相を追悼する行進が今年2月29日にモスクワであった。

2万人以上に達した参加者からは今回の憲法改正案について「一人の権力者が勝手に変えてよいのか」との批判の声が上がった。

モスクワでは10日、新型コロナウイルスの感染拡大を警戒して、大規模な集会の開催が禁じられた。

だが、政権の長期化が経済の停滞や欧米との対立を招いたとの不満は都市部の有権者を中心に根強く、市民が「反プーチン運動」に再び動く可能性はある。

参加者と治安部隊の衝突が繰り返される事態が再現されれば、プーチン氏が24年に向けて最も重視する「安定」も損なわれかねない。【3月13日 日経】
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反プーチン運動再燃についていえば、新型コロナは政権側に集会禁止の理由を与え、感染の不安が参加者をひるませるということで、香港の反中国デモ同様に、政権側に“吉”となっています。

もちろん対応に失敗して感染が拡大すれば、“凶”に転じることも。

 

【追加】

ブログをアップしてニュースを確認したところ、改憲国民投票を延期したとの記事がありました。

ときどき、アップ直後に状況が変わっているということがあります。

 

****露、新型コロナで改憲国民投票延期 政権批判リスク考慮****
ロシアのプーチン大統領は25日、国営テレビで演説し、新型コロナウイルス対策を理由に、憲法改正の是非を問う国民投票を予定日だった4月22日から延期する必要があると表明した。ロシア経済の悪化観測が出ている中、プーチン政権は求心力が低下する前に国民投票を済ませて改憲を果たす構えだった。しかし国民投票を通じて感染が拡大した場合、政権批判の強まりを招くなど、政権にとってより痛手になると判断したもようだ。
 

プーチン氏は「最優先されるのは国民の健康だ」とし、国民投票の延期の必要性を強調。新たな期日は専門家の見解や感染状況に応じて決定されるとも述べた。露中央選挙管理委員会も延期に同意した。(中略)


露政権は改憲の正当性を示すため、国民投票では「有権者の6割投票、7割支持」を目指してきたとされる。しかし国民が感染拡大に神経質となっている中で国民投票を強行した場合、投票率や支持率が低下する恐れがあり、プーチン氏はそうしたリスクを考慮したとみられる。【3月25日 産経】

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