goo blog サービス終了のお知らせ 

孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

紛争地域では新型コロナの「効用」で戦闘の停止も 懸念される難民キャンプやガザ地区の状況

2020-03-23 21:25:28 | 疾病・保健衛生

(トルコ国境付近にあるシリア難民キャンプの子供たち【2018 年 4 月 12 日 WSJ】 こういう環境でウイルスが蔓延すれば、その結果は悲惨です)

【リビア 新型コロナに備え、戦闘の一時停止】
新型コロナウイルスは、日本だろうが、欧米だろうが、アフリカ、あるいは南米アマゾン奥地だろうが、おかまいなく広がってきます。 紛争地でも。

ほんの10日ほど前までは、内戦が続くリビアでは、紛争のせいで外部からの流入者が少ないため、ウイルスも入ってこないと言う人々もいました。

****内戦で「ウイルスフリー」? リビアに思わぬ恩恵、感染者ゼロ****
新型コロナウイルスの感染は現在100以上の国と地域に広がっているが、内戦が続くリビアでは、国際社会との「隔離」がウイルスの脅威を和らげているかもしれないと考える国民が多くいる。

保健当局は人混みを避けるよう勧告しているが、若者たちは内戦の意外な肯定的な側面に気付き、イタリアのサッカーセリエAの試合を見ようと首都トリポリのカフェに集まっている。

トリポリで唯一機能している空港が閉鎖されており、外部世界とのつながりも限られていることから、多くの近隣諸国とは異なり、リビアはこれまでのところ新型コロナウイルスの影響を和らげられている。
 
カフェのテレビでサッカーを見ていた大学生は「リビアにいる自分たちはウイルスから保護されている。首都は包囲されているし、陸路や空路も閉ざされている」と持論を展開し、「恐れるべきものは何もない」と語った。
 
一方、医薬品の貿易会社を営む男性は、衣料品マスクや手袋といった衛生用品の在庫が不足していると語った。
 
新型コロナウイルスの影響が拡大しているイタリアと地中海を挟んで向かい合うリビアだが、当局によると同国ではこれまでのところ感染者は確認されていない。【3月13日 AFP】
********************

つい目と鼻の先に新たな震源地イタリアがあって、ウイルスフリーなんてあるだろうか?と疑問にも。
武器・弾薬の調達、難民の流入など、いくら紛争地リビアでも、それなりの人の移動はあります。
感染者がいないのは、単に検査体制がとられていないからという理由ではないでしょうか。

万一、リビアのような紛争地にウイルスが入ると、効果的な防御対策が取れないだけに悲惨な状況ともなりかねません。

統治者も、そのあたりの危機感はあるようです。

****リビアが非常事態宣言 暫定政権、空港など閉鎖*****
内戦で国家分裂状態にあるリビア暫定政権のシラージュ首相は14日、新型コロナウイルスを巡り非常事態を宣言した。国内で感染者は確認されていないが、ロイター通信によると予防的措置として16日から全ての港や空港を閉鎖するという。
 
シラージュ首相は大学や学校を2週間休校にすると表明。結婚式場や人が集まるカフェも休業にするとしている。【3月15日 東京】
*******************

毎日が非常時のリビアにあって「非常事態宣言」って何だろうか?と突っ込みたくもなりますが、賢明な判断でしょう。

更に、新型コロナの脅威に備えて「停戦」も合意されたようです。

****分裂のリビア 新型コロナウイルスで戦闘一時停止に同意 *****
(中略)リビアでは、独裁政権が崩壊したあと国が2つに分裂し、去年4月以降、西部の暫定政府が拠点を置く首都トリポリ周辺に東部の軍事組織が攻め込み、激しい戦闘が続いてきました。

新型コロナウイルスへの感染がリビアの周辺国でも広がる中、国連などは対策を迅速に進めるため、戦闘の停止を呼びかけてきましたが、西部の暫定政府と東部の軍事組織は、21日にかけて相次いで声明を出し、戦闘の停止を受け入れる意向を示しました。

国連の報道官は21日、それぞれの声明を評価したうえで「人道目的での戦闘の停止が、持続的な停戦という形に変わることを望んでいる」とする声明を出し、国連は恒久的な停戦につながることに期待を示しています。

リビアではこれまでに何度も停戦が呼びかけられ、双方の勢力が停戦に合意したこともありましたが、戦闘が完全に収まったことはなく、今回、果たして停戦が実現するのかどうか注目されます。【3月23日 NHK】
******************

新型コロナに備えて・・・と言うよりは、膠着状態の戦闘に疲れていた両勢力が新型コロナを口実に・・・・といったところが本音ではないかとも思いますが、何はともあれ、「停戦」が実現するなら結構な話です。

アメリカ・欧州など国民間の分断が進んでいた国々において、新型コロナという外敵に対して国民の結束が見られるようになったことに並んで、数少ない新型コロナのもたらした「効用」かも。

更に進んで、全世界が一致団結した行動をとれるようになれば、その「効用」も大きなものとなるだろうに・・・とも思います。

【ウイルス拡散も伝えられるシリア 懸念されるシリア難民キャンプ】
リビア同様に内戦が続くシリアでは、すでにウイルスが拡散しつつあります。

****内戦のシリアでコロナ初感染 流行の見方も****
内戦中のシリア・アサド政権の保健省は22日、シリアで初めての新型コロナウイルス感染を確認したと発表した。国営シリア・アラブ通信が伝えた。

一方、シリア人権監視団(英国)は同日、アサド政権の勢力下で既に約130人が隔離されており、感染が流行しているとの見方を伝えた。
 
内戦による混乱で実態は不明だが、アサド政権は内戦でイランによる軍事支援を受けているほか、シリア隣国のイラクやレバノンでも感染が拡大している。
 
保健省によると、感染者は外国からの到着者で、既に適切な処置を受けているとした。【3月23日 共同】
*******************

今回の感染者は海外から来た20歳代の人物とのことですが【3月23日 朝日より】、イランから多くの人員が入っていますので、感染拡大は避けられないでしょう。

シリアのような紛争国で効果的な防御対策がとれないのは前述のとおりですが、最も感染拡大のリスクが大きいのが衛生状態が劣悪な環境に多くの人々が密集する難民キャンプです。

****シリア避難民にコロナ感染危機 手洗い困難、テントで密集****
内戦中のシリアの避難民に新型コロナウイルスの感染が広がる危険性が指摘されている。

反体制派の最後の拠点、北西部イドリブ県では、アサド政権の攻勢で100万人近くの避難民がトルコ国境近くに身を寄せる。

劣悪な医療体制に加え手洗いのための水不足、密集したテント生活などで感染防止に十分な距離を取りにくいなど悪条件がそろう。
 
米紙ニューヨーク・タイムズが23日までに伝えたところによると、イドリブ県のキャンプでは一つのテントに十数人が身を寄せている状況が見られる。支援団体幹部は「週に1回も手を洗えない子どもがいる」と指摘したという。【3月23日 共同】
********************

いったん火が付けば、その火は瞬く間に・・・という事態が懸念されます。

【パレスチナ・ガザ地区でも感染者 イスラエルとの戦闘行為はコロナ対応で小康状態】
難民キャンプ同様に劣悪な環境に多くの人々が密集し、「天井のない監獄」「世界最大の監獄」とも言われるパレスチナ・ガザ地区にもウイルスは進入したようです。

*****新型コロナ パレスチナ自治区ガザで初感染 「監獄」での拡大に懸念***** 
パレスチナ自治区ガザで22日、新型コロナウイルスの感染者が初めて確認され、拡大への懸念が高まっている。

イスラエルが人や物資の出入りを厳しく制限して「世界最大の監獄」とも呼ばれる状態が10年以上続き、経済悪化に加えて衛生・医療態勢への不安も大きい。国際機関は「感染が広がれば対応が追いつかなくなる」とし、隔離施設の増設など水際対策に全力を挙げている。
 
ガザ保健当局は22日、パキスタンからエジプト経由で入境したパレスチナ人2人の感染が初確認され、隔離したと発表した。広さ約365平方キロのガザには約200万人が住む。人口密度は約5500人で大阪府や神奈川県を上回る。
 
ガザに隣接するイスラエルの感染者は千人を超えた。皮肉にも、イスラエルが「監獄」と称されるほどヒトとモノの出入りを厳しく制限してきたことが感染拡大を防いだ形だ。
 
ガザは2007年、対イスラエル強硬派のイスラム原理主義組織ハマスがパレスチナの内部抗争で勝利して実効支配した。イスラエルはテロを警戒し、巨大な検問所を設けて不審人物や物資に目を光らせてきた。
 
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)などによると、ガザの住民の95%は清潔な水が使えず、電気は1日8時間しか来ない。稼働していない工場が多く、失業率、貧困率ともに50%を超える。
 
UNRWAの保健局長でアンマン在住の清田明宏さん(59)は、「感染が確認された場合、当初の対応はできると思う」とする半面、「住居環境が劣悪で医療サービスの能力にも問題があり、感染が一気に広がって対応不能になる危険性がある」と懸念する。
 
UNRWAは17日、ガザなどのパレスチナ難民の感染防止のため、今後3カ月間に1400万ドル(約15億5千万円)が必要だとする緊急声明を出した。イスラエル寄りの政策を打ち出してきた米政権は18年、UNRWAへの資金拠出の中止を表明している。
 
イスラエルで感染が拡大した今月に入り、ハマスとイスラエル軍は互いに目立った攻撃を仕掛けていない。感染防止に双方が躍起となる中、新型コロナが新たな軍事衝突を和らげる役割を果たしている格好だ。
 
「世界よ、監禁される気分はどう?」。現地の教員の男性(47)によると、ガザからはこうしたメッセージがSNS上にアップされている。隔離を強いられている欧米など世界各国の人々に、ガザの住民の閉塞感を理解してもらう好機と考えているようだ。【3月23日 産経】
**********************

“新型コロナが新たな軍事衝突を和らげる役割を果たしている”・・・・ここでもウイルスの「効用」ですが、万一ガザ地区で感染拡大した場合、満足な医療物資もないだけに取り返しのつかない事態になります。

【アフガニスタン 捕虜交換交渉をせかせる新型コロナ】
ウイルスを意識した政治的動きはアフガニスタンでも。

****アフガン政府・タリバンがテレビ会談=和平合意後初、新型コロナで急ぐ****
アフガニスタン政府と反政府勢力タリバンが22日、双方が拘束した捕虜の釈放に関しテレビ会談を行った。米国のハリルザド・アフガン和平担当特別代表が同日、ツイッターで明らかにした。

両者の協議実施は、2月末に米国とタリバンが和平合意に調印して以降初めてとみられる。和平交渉の進展に向け、米国が歩み寄りを求めた形だ。
 
米国がテレビ会談という形式で双方に協議を急がせた背景には、新型コロナウイルスのアフガンでの感染拡大があったもようだ。

ハリルザド氏は「コロナウイルスの脅威により、捕虜釈放はさらに緊急性を増した」と強調。捕虜の衛生状態悪化の懸念があることを示唆した。【3月23日 時事】 
*****************

“協議は2時間以上インターネットの電話を通じて行われ、双方が捕虜の釈放のほかに戦闘行為の抑制や、恒久的な停戦に向けて取り組むことも表明した。”【3月23日 毎日】とも。

2月末に署名されたアメリカとタリバンの和平合意では、3月10日の国内各勢力による和平交渉初日までに「タリバン側最大5000人、政府側最大1000人の捕虜釈放」が明記されました。

しかし交渉前の5000人の釈放を主張するタリバンと、段階的な釈放を求める政府側が対立。和平交渉も延期になっていました。

新型コロナにせかされる形で合意が進展すれば、これも新型コロナの「効用」でしょう。

なお、アフガニスタン政府はガニ大統領と、同氏と大統領選挙を戦ったアブドラ氏の対立・二重権力状態が続いていますが、ポンペオ米国務長官が23日、アフガンの首都カブールを訪問。両者の仲裁を図るとみられています。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする