孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

新型コロナのパンデミック加速 対応を欠けば膨大な犠牲者も 必要とされる国際協調体制

2020-03-27 23:38:37 | 疾病・保健衛生

(タイの規制強化で、首都バンコクから出身地・出身国に戻るため数万人が殺到した高速バスターミナル(タイ・バンコク市内【3月27日 FNN PRIME】)

【今後の適切な対応がなければ死者は何百万人とも、4000万人とも 貧困層が多く、医療体制のぜい弱な国での対応が焦点】
WHOの発表などによると、26日の時点で、感染者の数は前日に比べて4万9219人増えて46万2684人、死亡した人は2401人増えて2万834人と、2万人を超えました。【3月27日 NHK】

今後の“可能性”については、空恐ろしい数字も。あくまでも、適切な対応がとられなかったときの“可能性”の数字ですが。

****WHO事務局長「何百万人が死ぬ可能性」「パンデミックは加速度的に拡大」****
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は26日、主要20か国・地域(G20)首脳のテレビ会議に参加し、新型コロナウイルスの感染拡大を巡り、「すべての国が積極的な行動を取らなければ、何百万人もの人が死ぬ可能性がある」と述べ、強い危機感を表明した。WHOが発表した。
 
テドロス氏は会議で、世界の感染者数が10万人に達するまで67日間かかったのに対し、30万人から40万人に増えるのには2日間しか要していないと指摘した。

「このパンデミック(感染症の世界的流行)は加速度的に広がっている。これは国際的な対応を要する、地球規模の危機だ」と述べ、各国で医療体制を強化する必要性を強調した。【3月27日 読売】
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更にショッキングな数字も

****「対策なければ死者4000万人も」 英専門家チーム ****
(中略)イギリスの「インペリアル・カレッジ・ロンドン」の感染症の専門家チームは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響について、各国の最新の状況をもとに分析した結果を公表しました。

それによりますと、各国が今後有効な対策をとらなければことしだけで世界で4000万人が死亡するとしています。

一方で、外出制限や自宅での隔離などの強力な対策を感染拡大の初期段階で実行し、感染を調べる検査を数多く実施すれば、大幅に状況を変えることができ、亡くなる人は130万人に減少すると分析しました。

ただこうした対策はワクチンが開発されるまである程度の期間続ける必要があり、社会的、経済的にも痛みを伴うため、貧困層が多く、医療体制のぜい弱な国は大きな影響を受けることになると警告しています。

専門家チームは、「各国は、急速に広がる感染にまとまって迅速に行動する必要がある」などとコメントしています。【3月27日 NHK】
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今までのところ、感染は中国や欧米といった比較的国家体制がしっかりし、ある程度の医療体制を有する国で広まっていますが、おそらく検知されていない「静かな感染拡大」は全世界に及んでおり、今後はインドなどの南アジア、中東、アフリカなど、“貧困層が多く、医療体制のぜい弱な国”が感染の中心になると思われます。

そして犠牲者の数、市民生活のダメージも、現段階を超えるレベルになることも予想されます。

【タイでは非常事態宣言 出稼ぎ労働者数万人の帰国で一時的には周辺国に感染拡大も】
18日まで滞在していたタイでは、帰国日前後から日増しに規制が強化され、非常事態宣言も。

****タイ全土に非常事態宣言 県境などに検問所350カ所****
タイ政府は26日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、全土に非常事態を宣言した。外国人の入国を原則禁止し、高齢者らの自宅待機や県境を越える移動の自粛などを強く求めている。4月30日まで。
 
タイではここに来て感染者数が急増。26日時点で1045人、うち死者は4人で、非常事態宣言はこうした状況を受けた。
 
パブやマッサージ店、娯楽施設などが全土で閉鎖され、大規模な集会なども禁止される。外国人の入国は労働許可証所持者など一部の例外を除いて禁止され、例外措置の対象者も渡航にあたり健康状態の保証書が求められる。

これに先立ち、感染者が多いバンコク首都圏では22日からショッピングモールなどが閉鎖され、飲食店も持ち帰りを除き営業が禁止されている。
 
県境を越える往来の自粛を求めたことを受け、全国の約350カ所に検問所が設置された。中部サムットプラカーン県とバンコクとの境では26日、警察官らが車を止め、運転手らに質問するなどしていた。
 
公共交通機関の運行も制限され、バンコク市内のバスターミナルは26日、閑散としていた。警備員の男性(49)は「22日ごろまではターミナル内がごった返していたが、バスの行き先が減り、一気に人が来なくなった」と話した。
 
北部チェンライ行きのバスを待っていたウィーラパン・パンティさん(38)はバンコクで感染が広がったことから、チェンライ県当局から「入県許可」を得て実家に戻るという。「バンコクの服飾品の工場で仕事をしていたが、実家に戻るために辞めた。早く戻りたい」と話した。【3月26日 朝日】
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タイのこうした措置は、タイ国内にとどまらず、周辺国へ影響を及ぼします。
出稼ぎ労働者などのタイからの出国者が急増することで、少なくとも一時的には周辺国へ感染を拡散させることにもなります。

****東南アジアで感染爆発リスク…移民数万人が拡散****
3月22日、外国人の出稼ぎ労働者数万人が、タイの首都バンコクから一斉に脱出して帰国の途についた。新型コロナウイルス感染抑制策の強化で、彼らの仕事先の商業施設などが一時閉鎖となり、出稼ぎ労働者が生活の糧を失ったためだ。

しかし帰国先のカンボジア、ミャンマー、ラオスでは、彼らがウイルスを自国に持ち帰るのではないかとの警戒感が高まっている。

爆発的な感染拡大を防ぐために有効とされる都市封鎖措置(ロックダウン)だが、一時的に各地での感染拡大を誘発する可能性もある。

出稼ぎ労働者6万人が大挙出国 
タイの首都バンコクにある高速バスターミナルに22日、数万人の外国人労働者が殺到した。その多くはタイと国境を接するミャンマー、カンボジア、ラオスの三カ国から働きに来ている出稼ぎ労働者だった。仕事先の閉鎖で職を失い、バンコクから一路、帰国を急いでいた。

少子高齢化が進むタイでは、隣国ミャンマーやカンボジア、ラオス出身の多くの外国人労働者が単純労働の一部を担っている。その数はタイ全土で400万人以上にも上り、バンコクでも町を歩くとレストランや建設現場など、様々な場所で外国人労働者の姿を見かける。

しかし3月22日、バンコクで商業施設の閉鎖などが始まったことに加え、タイ政府が隣国との国境閉鎖を突然決めたため、大急ぎで母国に戻ろうとする労働者が高速バスターミナルに殺到した。

当時のバスターミナルは満員電車のように人々がひしめき合っていて、タイの内務省は数日間で、6万人の外国人労働者が帰国したと発表した。

タイの感染者はバンコクが4割
こうした出稼ぎ労働者が帰国先のミャンマーやカンボジアなどにウイルスを持ち込んでしまうのではないかとの警戒が強まっている。タイは東南アジアで2番目に感染者が多く、全感染者のうち4割がバンコクに集中しているからだ。

タイからの新型コロナウイルス流入の懸念は既に現実になりつつある。タイの保健省は3月24日、バスターミナルを利用していた33歳のタイ人男性が新型コロナウイルスに感染していたと発表した。男性はタイ北部チェンライに帰郷後に発症し、感染が判明したという。男性は、集団感染が発生したバンコク市内のバーで働いていたことも分かった。

森の中で自主隔離も…ミャンマーの危機感
最も多くの出稼ぎ労働者がタイから帰国したのはミャンマーだ。国境に到着したミャンマー人の出稼ぎ労働者は、数日間で3万人を超えた。不法労働者も多いため、実際にはこの倍以上の人数に上るとの指摘もある。

地元当局は全ての帰国者に対して、検問所での検温など健康チェックを行うことに加え、14日間の自主隔離を義務付けた。

しかし帰国者の中にも新型コロナウイルスの影は早くも忍び寄っている。

地元メディアは、帰国者の11人に発熱症状が出ていたことが分かり、病院に搬送されたと報じている。出稼ぎ労働者はミャンマーの都市部ではなく地方から来た人が多く、仮に感染していた場合は、ウイルスが地方部まで運ばれ、国全体に散らばってしまう恐れがある。

こうした感染拡大を防ぐため、帰国した村民をしばらくの間、受け入れない決断をする村落も出てきている。

また帰国者の中にも、故郷での自主隔離を諦め、森の中で隔離期間を過ごすことを決めた人たちが現れた。仮に村にウイルスが持ち込まれれば、医療体制が整っていないため、村全体が危機に陥る。このことを理解した上で、帰国した出稼ぎ労働者も自主的に行動を取り始めている。

カンボジアでも発熱者の情報
隣国カンボジアにも大量の出稼ぎ労働者が帰国している。カンボジア政府によると、これまでに4万以上がタイから帰国した。

地元政府は、行政と警察が連携して帰国者の追跡や監視体制を構築しているとしているが、これだけ多くの人を完全に追うのは困難だ。

すでにプノンペン郊外の村では、経過観察中の帰国者から38度以上の高熱を発熱した人が出たとの情報も出ている。地元当局は、これからしばらくの間は帰国者の動向に神経を尖らせることになる。

日本でも、海外から帰国した人が国内にウイルスを持ち込むケースが相次いでいる。3月19日以降、海外で感染したと疑われる感染者は連日10人以上確認されている。

しかし、ミャンマーやカンボジアは、帰国した人の数が万単位と、桁違いに多い。

感染拡大を防ぐための「ロックダウン」だが、これが出稼ぎ労働者の大量移動を引き起こし、一時的に東南アジア各地での感染拡大を誘発するリスクが現実化してきている。帰国者による感染拡大を封じ込められるかが、これらの国では今後数週間の焦点となる。【3月27日 FNN PRIME】
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ミャンマー、カンボジア、ラオス・・・いずれも“貧困層が多く、医療体制のぜい弱な国”であり、いったん火が付けば鎮火は難しいでしょう。

【いまだ脆弱な国際協調体制】
上記事例にも見るように、適切な各国の対応に加えて、国際間の協調も不可欠です。感染拡大のほか、医療支援の面でも。

ただ、これまでのところ各国は自国のことで手いっぱいという感じで、国際的な協調体制が脆弱なままです。

****コロナ対策、先進国と途上国の格差大きく G20指導力にハードル****
20カ国・地域(G20)はテレビ会議形式の首脳会議の後で出した声明の冒頭で、新型コロナウイルス感染の世界規模の拡大に「団結の精神」で立ち向かう意思を示した。

保健や医療、財政のレベルに大きな差がある先進国と貧困国が同じ危機に直面するなか、指導力を発揮すべきG20には高いハードルが待ち受けている。
 
声明によると、関係国の財務相と保健相が数カ月のうちに合同会議を行い、世界保健機関(WHO)の報告の下で必要な医療、財政支援を協議する見通しだ。
 
声明で、G20首脳は「タイムリーで透明性ある情報の共有」の必要性を訴えた。欧州の先進各国でさえ感染者・死者数に開きが生じているなか、国境を越えて広がる「見えない敵」との戦いに情報共有が欠かせないことは間違いない。
 
しかし、感染拡大の原因をめぐって米中が批判し合う事態となっているほか、イランなど実態を隠蔽していると指摘される国もある。事実に基づく情報の共有を実現しなければ、収まった感染拡大の再発などで「いたちごっこ」が世界中で続く恐れもある。
 
また、声明はアフリカでの感染拡大を「深く懸念する」と表明した。アフリカでも貧しい国が多いサハラ砂漠以南では検査態勢が整っていない上、医療機関がごく少数しかない国もあるとされる。感染者・死者数の把握さえおぼつかないのが実情だ。
 
紛争や貧困に端を発する難民や避難民への対処も不可欠だ。シリア内戦では560万人が難民となり、ミャンマーの少数民族ロヒンギャは70万人以上がバングラデシュに避難した。リビアなどから密航船で欧州を目指す人の流れも絶えず、こうした集団では感染が一気に広がりかねない。
 
ロイター通信は当事国の政府筋の話として、通常のG20首脳会議でも意見の相違を埋めるために数カ月前から準備を行っているとし、テレビ形式の会議だけで細部を詰めた合意に達するのは難しいとの見方を伝えた。
 
差し当たり連帯を確認したが、G20が実効性ある対策を打ち出せるかは今後、どれだけ結束できるかにかかっているといえそうだ。【3月27日 産経】
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指導的な役割を果たすべきWHOにも批判が向けられる状況。

****WHO、新型ウイルスのパンデミックで再び矢面に****
国連の世界保健機関は病気が流行するたびに、過剰反応をした、あるいは逆に行動が遅過ぎたなど、批判を受けてきた。だが今回の新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)への対応ほど、強い非難にさらされことは過去にもほぼ例がない。
 
WHOは2009年のH1N1型インフルエンザ流行時、騒ぎ過ぎだと言われた。その5年後、アフリカ西部でエボラ出血熱の感染が拡大した時には、対応が遅過ぎると批判された。エボラ出血熱の流行では、1万1000人以上が亡くなった。
 
この反省から改革を行ったWHOは即時対応班を設置。コンゴ民主共和国でエボラ出血熱が2度拡大した際には、支援に当たってきた。
 
そのWHOが、昨年末中国・武漢で発生した新型コロナウイルスをめぐり、十分に迅速かつ強力な対応を怠ったとして、再び矢面に立たされている。
 
中国の怒りを買うことを恐れて警告を遅らせた、パンデミック宣言が遅過ぎた、一貫した国際対応の調整に失敗したとの非難を浴びている。
 
さらに、感染拡大を抑えるには公共の場の閉鎖の必要性が共通認識になりつつあるとみられる中、WHOはこういった措置に関しては指針を出していないに等しい。
 
専門家らは、中国の初期対応には多くの批判材料があるという点では意見が一致している一方で、中国が新型ウイルスの遺伝子情報を速やかに共有し、拡散を食い止めようと強硬な封鎖措置を講じたことなど、同国が正しく行ったことを評価したという意味では、WHOは間違っていなかったという声も多い。

「初期段階で中国の過ちを指摘して中国を孤立させていたら、失策だっただろう」と語ったのは、WHOの予防接種プログラムを統括するアン・リンドストランド氏。
 
中国政府の協力は必要不可欠だったとして、「テドロス事務局長は正しいことをした」という見方を示した。
 
テドロス事務局長も、自身とWHOとが中国の圧力に屈したとする指摘を一蹴し、WHOが加盟諸国と築いてきた協力関係を強調。
 
テドロス氏は今月の記者会見で「加盟国から何が来ようとも圧力とは受け取らない」と述べた。
 
一部からは、今回の新型ウイルス感染症のパンデミックにより、真逆の問題が浮き彫りになったのではないかという声も聞かれている。加盟国の方こそWHOからの圧力を感じる必要があるにもかかわらず、そもそもWHOにそれだけの力がない、という指摘だ。
 
スイス・ジュネーブにある国際開発高等研究所の世界保健センターのスーリー・ムーン氏は「テドロス氏とWHOはオーケストラを指揮しようと奮闘しているが、奏者らが協力していない」と話した。 【3月27日 AFP】
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イギリス元首相のブラウン氏は一時的に「世界政府」を設立するよう呼び掛けたとのことですが、もちろん各国政府は聞く耳など持たないでしょう。

****元英首相が「世界政府」を提案=新型コロナ、医療・経済危機に対応****
英国のブラウン元首相は世界の主要国の指導者に対し、一時的に「世界政府」を設立するよう呼び掛けた。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、医療・経済両面での危機に対応するためだという。英紙ガーディアンが26日に報じた。
 
報道によると、ブラウン氏は「これは一つの国で対応できる問題ではない。協調した世界的な対応が必要だ」と指摘。まずは医療で緊急対応が必要だとしながらも「医療に介入すればするほど、経済を危機にさらすことになる」と述べた。
 
その上で、強い権限を持つ世界的な「タスクフォース(特別作業班)」をつくり、ワクチンの共同開発のほか、中央銀行による金融緩和や政府による財政出動での協調、新興国からの資本流出の阻止などに取り組むよう求めた。【3月27日 時事】 
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正論ではありますが、可能性はゼロ。
ただ、そうした発想を持って、国際的な協調に尽力することは必要です。

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