孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  新型コロナ感染拡大で様変わりのトランプ政権と国民生活

2020-03-20 22:32:12 | アメリカ

(14日、米シカゴの国際空港に到着し、長蛇の列を作る人たち=AP。米国が11日に欧州の大半の国からの入国を制限すると発表したこともあり、この日は旅行者が殺到した。【3月20日 朝日】)

【全土で感染者1万人超え カリフォルニア州では外出禁止令】
新型コロナウイルス感染拡大の主戦場は東アジアから欧州に移っていますが、アメリカの感染拡大も急速に進んでいます。

(なお、公式に感染者数増加が報じられる上記以外地域でも、昨日とりあげた東南アジア・インドのように、検知されないまま感染が広がる「サイレント・エピデミック」(静かな感染拡大)が進行している危険性が強く存在しています)

アメリカは、フランスともに感染者数が1万人を超えています。しかもここ数日の増加は急ピッチです。

****米、新型コロナ感染1万人突破 死者150人に増加****
米疾病対策センター(CDC)は19日、18日夕時点の新型コロナウイルス感染者が1万0491人と、前日から3404人増加したと発表した。死者も53人増え、150人に達した。【3月20日 ロイター】
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特に危機感を強めているのがカリフォルニア州で、全土に外出禁止令が発令されています。

****米カリフォルニア州全土に外出禁止令=4000万人対象―新型コロナ****
米西部カリフォルニア州のニューサム知事は19日、新型コロナウイルスの感染対策として、約4000万人の全住民に対し、食料の買い出しや通院など必要な場合を除き自宅にとどまるよう命じた。

感染が住民の半数以上に広がる恐れがあるとして、医療体制の崩壊を防ぐため、期限を定めずに大規模な外出禁止に踏み切った。
 
サンフランシスコ市と周辺郡が17日から住民の不要不急の外出を制限しているが、これを州全土に拡大した。重要インフラは維持し、食料品店、薬局、銀行などは営業を認められる。

米メディアによると、同州では900人以上の感染が確認されており、ニューヨーク州などに次いで全米で3番目に多い。
 
知事は、今後8週間でカリフォルニア州の人口の56%が感染するという予測を提示。病院の収容能力を2万人近く上回る入院患者が発生すると指摘し、「われわれが行動を変えれば、流行のピークを抑えることができる」と住民に協力を呼び掛けた。
 
また、米海軍の病院船マーシーを9月1日までロサンゼルス港に配備するよう要請する書簡を18日付でトランプ大統領に送ったことも公表した。もう1隻の病院船コンフォートは、多数の感染者が出ているニューヨーク市に派遣される見通し。【3月20日 時事】 
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“今後8週間でカリフォルニア州の人口の56%が感染するという予測”というのは、州内の感染者が現状のペースで増え続けた場合の話で、その予測の現実性はどうでしょうか?おそらく、最悪の仮定の話でしょう。
もし、人口の56%が感染したら感染者数は約2550万人となるとされています。

【「弱者」ホームレスの感染拡大の問題】
56%云々より現実性がありそうなが、州内に多く暮らすホームレスでの感染拡大、それがもたらす医療崩壊の危険です。

****米加州、8週間で6万人超のホームレスが新型コロナ感染の恐れ=知事****
(中略)ニューソム知事はフェイスブックに投稿した演説で、「今後8週間で、州内の路上で生活する10万8000人のホームレスのうち、罹患率が56%程度とすると、6万人超の感染者が出るとの結果となった。これは州民にとって、そして医療システムにとって大きな懸念となる」と述べた。

また、感染者のうち入院する人の割合が20%前後なので、感染者数がモデリング通りに増加すれば病院がパンク状態になると指摘した。【3月19日 ロイター】
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数字はここでも“罹患率が56%”の想定によるものですが、その数字自体はともかく、疫病に対しても貧困者やホームレスのような「弱者」は防災手段が限定されており(ホームレスの方に、頻回の手洗い・消毒をと言っても仕方がないでしょう)、一般の人々より高率の感染が予想されます。

また、ホームレスの感染以前の健康状態・栄養状態を考えると、感染後の重症化のリスクも高いように思われます。
そうした事態になれば、知事の懸念する医療崩壊も現実のものとなってきます。

【一転して矢継ぎ早の対策を急ぐトランプ政権】
急速に拡大する感染を目の当たりにして、これまで楽観論に終始していたトランプ大統領は持ち前の“変わり身の早さ”を見せています。

****トランプ氏が主張一転「ずっと前からパンデミックと…」****
トランプ米大統領は17日の会見で、新型コロナウイルスの感染拡大について「パンデミックと呼ばれるずっと前から、私はこれがパンデミックであると感じていた」と述べた。

これまでは「米国は制御できている」などと楽観的な発言が目立っていたが、米国内の状況が深刻化するなか、「脅威を過小評価してきた」との批判をかわす狙いがあるとみられる。
 こ
れまでトランプ氏は「うつりやすいウイルスだが、我々は素晴らしく制御できている」(15日の会見)などと自信を見せていただけでなく、コロナ対応を巡る政権批判は民主党の「新たなでっち上げだ」(2月28日の集会)などと語っていた。

ところが、3月16日の会見で一転して「世界のどこでもコントロールできていない」と、米国でも拡大を抑え込めていないことを認めた。
 
17日の会見では、感染拡大の脅威を認めるようになったのは、「米国内の死者が最悪の場合は100万人規模になる恐れがある」との予測が影響したのか、と質問が出た。トランプ氏は「(自分の姿勢は)変わっていない。真のパンデミックであることはずっとわかっていた」と否定した。
 
世界保健機関(WHO)は今月11日、コロナウイルスの感染拡大を世界的な流行を意味する「パンデミック」の状態と認定した。【3月18日 朝日】
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「やれやれ・・・・」といった感もありますが、最近トランプ大統領がしきりに中国の初期対応における透明性の欠如を批判したり、「中国ウイルス」といった言葉を使ったりしているのは、責任を中国に押し付けようとの姿勢でしょう。(中国の初期における隠蔽の問題は、それはそれとして重大ですが)

結果、国民批判の矛先が中国・アジアに向く危険性が増します。
NYで「コロナヘイト」続発…マスクないアジア人に罵声、暴行も”【3月19日 読売】

トランプ大統領の話はともかく、アメリカもようやく新型コロナ対策を本格稼働させています。

****トランプ氏、国防生産法を発動へ 民間企業に人工呼吸器など生産指示可能に****
トランプ米大統領は18日、ホワイトハウスで記者会見し、新型コロナウイルスへの対応で必要な人工呼吸器やマスクなどの確保のため、民間企業に増産を求める「国防生産法」を発動する考えを示した。

また、米海軍が管理する「病院船」2隻を、ウイルス対策に追われる病院の補完のために活用する方針も発表した。
 
国防生産法は朝鮮戦争で必要な物資を確保するため1950年に制定された法律で、民間企業に特定物資の生産を指示する権限を大統領に付与する。戦争だけではなく、大規模災害などでも適用が可能と解釈されてきた。

トランプ氏は「人工呼吸器は大量にあるが、いまだかつてないほどの数が必要になっている」などと語り、必要があれば増産を求めると強調した。(後略)【3月19日 毎日】
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国境管理も規制を強化しています。

****アメリカ・カナダ国境一時閉鎖 トランプ大統領「ウイルスとの戦争状態」****
アメリカのトランプ大統領は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、カナダとの国境を貿易などを除き、一時的に閉鎖すると発表した。

トランプ大統領は18日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、カナダとの国境を30日間閉鎖すると発表した。

不要不急の人の往来が対象で、貿易など物流は続けるとしているが、経済面の影響は避けられない状況となっている。【3月19日 FNN PRIME】
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カナダとは合意の上での決定で、カナダのトルドー首相はオタワで記者団に、娯楽や観光目的で米国との国境を越えることはもうできないと述べたうえで「2国間のサプライチェーンを維持することが極めて重要だと、両国政府は認識している。食料、燃料、命を救うための医薬品がどちらの国の人々にも確実に行きわたるようにする」と語っています。【3月19日 ロイターより】

メキシコとの国境については閉鎖しませんが、違法入国者をメキシコに即時送還させるための法令を施行する方針を示しています。【3月19日 ロイターより】

また、日本を含むほとんどの国で、ビザの発給業務を一時的に停止すると発表。

****アメリカがビザ発給一時停止 日本含む約100カ国で****
(中略)アメリカ国務省は18日、各国のアメリカ大使館などで行うビザの発給業務を、ほとんどの国で一時的に停止すると発表した。

ビザ発給業務再開については、「できるだけ早く再開するが、現時点で具体的な見通しは立っていない」と説明していて、各国大使館のウェブサイトをチェックするよう呼びかけている。

東京にあるアメリカ大使館によると、面接が必要なビザの発給は、19日から停止されるが、観光など短期滞在のビザ免除制度は対象外で、影響は受けないという。【3月19日 FNN PRIME】
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更に自国民の海外渡航も中止を勧告。

****米国務省、国民に海外渡航中止を勧告 帰国も促す****
米国務省は19日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界全域を対象に、4段階の警戒の最高レベルの「レベル4」(渡航中止)を発令した。

これに伴い、全ての海外渡航を中止するよう米国民に勧告し、海外に滞在する米国人も原則として、直ちに帰国の準備をするよう求めた。
 
レベル4の警戒は通常、戦争が続いていたり、米国と国交がなかったりする国が対象。強制力はないが、国務省として渡航中止を強く求める内容となる。新型コロナウイルスの感染をめぐって国務省はこれまで、中国やイタリア北部など一部地域をレベル4とし、世界全域は「渡航の再検討」を求めるレベル3の警戒を出していた。
 
国務省は19日の発表で、期間を定めずに海外に滞在する用意がある米国民を除き、帰国するよう求めた。また、多くの国が渡航制限や隔離などの措置を取り、国境閉鎖も相次いでいることを踏まえ、「海外に渡航すれば、当面は米国に戻れない可能性がある」と指摘した。【3月20日 朝日】
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また、経済対策として「現金給付」の提案も。
17日、ムニューシン米財務長官は共和党上院議員らに対し、新型コロナウイルス対策で行動しなければ、米失業率は20%に達し、経済が長期的な打撃を受ける可能性あると警告していましたが、そうした事態に備えての対応です。

****トランプ政権、総額54兆円の現金給付提案 新型コロナによる失業など経済打撃緩和へ****
トランプ米政権が、新型コロナウイルス感染拡大を受けた経済対策として、総額5000億ドル(約54兆円)の個人への現金給付を検討していることが18日、米財務省が議会に提示した文書で判明した。

トランプ政権が検討中の総額1兆ドル(約107兆円)規模の経済対策第3弾の一環で、店舗閉鎖や失業などの経済的ショックを緩和する狙いがある。(中略)
 
このほか、渡航制限で打撃を受ける航空業界への緊急融資に500億ドル▽観光、レジャー産業などの業界支援に1500億ドル▽中小企業の資金繰り支援に3000億ドル――などが盛り込まれた。(後略)【3月19日 毎日】
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ニューヨーク州では、在宅勤務が義務付けられることになっていますが、いずれ、全国に波及すると思われます。

****米・NY州 企業や店舗に在宅勤務義務づけ****
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、アメリカのニューヨーク州では、州内のすべての企業や店舗に対し、在宅勤務の導入が義務づけられた。

ニューヨークのクオモ州知事は18日、州内のすべての企業や店舗に対し、在宅勤務の導入を義務づけると発表した。出勤する従業員の割合は50%未満にするよう指示している。スーパーや薬局など日常生活に不可欠な業種は除外するという。(後略)【3月19日 日テレNEWS24】
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なんだか、「あれもこれも」といった対応の慌ただしさですが、それだけ“尻に火が付いた”状況でもあるのでしょう。

【クオモNY州知事「今は共和党だの民主党だの言っている場合ではない。我々はひとつだ!助け合わなければ解決できない!」】
この困難に対し、これまでの「分断」を解消して、国民の一致団結した対応を求める動きも。

なお、下記記事の「自己効力感」という言葉は、私はあまり馴染みがありませんでしたが、「自分がある状況において必要な行動をうまく遂行できると、自分の可能性を認知していること」といった意味合いのようです。

****自己効力感の国アメリカが震えた日 “分断の国”はコロナでひとつになった****
自己効力感の国アメリカが震えた日
アメリカ人は「大丈夫、きっとできる」という自己効力感が非常に高い国です。一体どこにそんな根拠があるのかと思うような時でも、心配より自信が先に来ます。

私が移住して以来そんな国が震えるのを見たのは9.11以来今回のコロナで2度目です。「なんとかなる」の明るさが国民性のアメリカ人が、外出にはゴム手袋をし、社会的距離を置き、見えない敵に震えています。

(中略)でも今のワシントンDCはまるでゴーストタウン。3月13日に非常事態宣言が出て以来全ての文化的イベントはキャンセルとなり、3月16日以降は10人以上の集まりは禁止、レストランやカフェはテイクアウェイのみ。

映画館・ジム・劇場は閉まり、スーパーや薬局以外のお店はほとんど閉まっています。町の中心部にある3つの大学は休講で学生はすでに寮を出ていて閑散としています。2週間前とは大違いです。

天と地の差の2週間
それまでは死者が出たとはいえコロナはまだ「アジアの問題」という感がありました。手洗いやマスクをするよういち早く周知を徹底した日本とは違い、全くのんびりしていたのです。(中略)

ですがアメリカで最初のクラスターとなったワシントン州以外でも感染が確認されるに従い、コロナは徐々にアメリカでも人の話題に上るようになっていきます。

そして最初にCDC(アメリカ疾病予防管理センター)が作ったコロナ検査薬が機能せず 検査して欲しくても検査薬がないという状態に陥り人々が慌て始めたのです。

CDCのサイトには「症状があったらかかりつけの病院に電話して」とありますが、たったそれだけです。そこに追い打ちをかけるように感染が爆発的に拡大し非常事態宣言に至ります。

のんびりした日常からたった2週間の出来事でした。2月末のスーパーではアルコール消毒剤がBuy one get one freeでひとつ買ったらもうひとつおまけについてくる、というくらい危機感がなかったのに。

愛する人を守るために
1日で1200人以上の感染者が出るアメリカで、人々はパニックに陥ってこの国は機能しなくなってしまうのではないか?多くのアメリカ人がそんな不安を抱えていることと思います。ですがそんな時、「そうそう!これがアメリカよ」という声を聞くことができました。

アメリカでも最も感染が拡大している州の一つニューヨークのアンドリュー・クオモ知事(民主党)の言葉は3月17日に中継されて以来繰り返し放送されています。

「今は共和党だの民主党だの言っている場合ではない。我々はひとつだ!助け合わなければ解決できない!」は感動的でした。最初のイージーな対応を批判されているトランプ大統領だけど、今は真剣に取り組んでいるからその下に集結しよう。メッセージはとてもクリアで人々の心に刺さったと思います。

トランプ政権以来分断の国となったアメリカで、久しぶりに国がひとつになった感があります。(中略)

今はブルブル震えているアメリカだけど、強いリーダーシップと一人一人の愛する気持ちが一緒になって、きっとコロナに打ち勝つ!そう思わせる何かがこの国にはあるのです。やっぱり自己効力感の国だからかな。(後略)【3月19日 ボーク重子氏 FNN PRIME】
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