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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

欧州  アメリカの反対にもかかわらず進む欧州各国でのファーウェイ5G参加容認の流れ

2020-02-16 23:47:50 | 欧州情勢

(【2月7日 日経】
【トランプ大統領を激怒させたイギリスの自己主張】
米英関係は「特別な関係」とも言われますが、EUを離脱するイギリスにとって、アメリカとの関係は今まで以上に重要なものになると思われます。 

しかし、それにしてはファーウェイの5G利用やデジタル課税でアメリカとの対立が目立ちます。

もちろん、重要な関係ということ、追随することは別物であるのは当然ですが、それにしてもイギリスの強気の背景に何があるのか・・・と訝しく思うことも。アメリカとの関係維持に自信があるが故の自己主張なのか・・・。

一方、アメリカの反発の激しさは、「なぜ、アメリカの言うことに従わないのか!」といった、驕りみたいなものも感じられます。

****ファーウェイの5G利用は「狂気の沙汰」 米が英政府に警告****
イギリス政府が中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の第5世代移動通信システム(5G)を導入しようとしていることについて、アメリカ政府が「狂気の沙汰だ」と警告した。

イギリスは今月にも、国内通信網の「非中核」部分にファーウェイの技術を採用するか決める予定。
これに対し、マット・ポッティンガー副顧問(国家安全保障担当)が率いるアメリカの代表団は、ファーウェイの技術を使った際のセキュリティーリスクを証明するとして、新たな証拠をイギリス政府に提示した。

ドナルド・トランプ米大統領はかねて、この件についてボリス・ジョンソン英首相に圧力をかけている。
アメリカ政府は昨年、セキュリティー上の懸念があるとして、米企業がファーウェイ関連の68の企業に部品や技術を提供しないよう制限した。

イギリスの情報機関はかねて、国家安全保障上の問題は見当たらず、ファーウェイの技術を5Gインフラに組み込めるとの技術評価を下している。

しかし13日に行われた協議でアメリカ側は、この評価を真っ向から否定するとする技術情報を大量に提示した。アメリカ側の関係筋は、資料の内容については言及しなかった。

この動きは、イギリス政府が5G網についての決定を下そうとしている中、トランプ政権によるロビー活動の最終段階だと考えられている。

アメリカ政府は各国に対し、ファーウェイ製品を使用した場合、情報共有について再審査を受けることになると警告していた。

一方イギリス政府は、そのような再審査を受けても大きな変更には至らないだろうと示唆している。

情報局保安部(MI5)のアンドリュー・パーカー長官はフィナンシャル・タイムズの取材で、イギリスがファーウェイの技術を使ったとしても、それが英米の情報共有の関係に悪影響を与えるとは「考えられない」と話した。(後略)
【1月14日 BBC】
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****英政府、5Gで華為技術製品の限定使用容認 米国の要請に応じず****
英政府は28日、次世代通信「5G」で中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)製品の使用を限定的に認めると発表した。同日に開催した安全保障会議で正式に決定した。
 
トランプ米政権は安全保障上の理由で華為製品の完全排除を同盟国に強く働きかけているが、これに応じない形になった。欧州連合(EU)からの離脱後に始まる米国との貿易交渉に影響を及ぼす可能性が指摘されている。
 
英政府は同日、ネットワークの安全を維持する方法として、華為製品を5Gネットワークの中核部分から排除するとした上で、非中核部分に限って採用する方針を示した。原子力発電所や軍事施設など安全保障上重要な通信網から排除するという。
 
しかし、華為製品は低コストであることなどから、すでに通信事業者が英国でアンテナなどに利用しており、英政府は完全排除は困難と判断したとみられる。
 
ジョンソン氏が、テレビ番組で華為のスマートフォンを用いて「自撮り」する様子が放映されていたほか、華為の使用をめぐり「肝心なのは消費者の利益」とも発言している。【1月28日 産経】
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ジョンソン首相が華為のスマートフォンを用いて「自撮り」・・・・トランプ大統領が激怒しそうですね。

*****米高官、英のファーウェイ容認に「失望」****
トランプ米政権高官は28日、ジョンソン英政権が次世代通信規格「5G」のネットワークに中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の製品を部分的に使用することを決めたことについて「英国の決定に失望した」と述べた。
 
トランプ大統領も同日、ジョンソン英首相と電話で会談した。ホワイトハウスは「通信網の安全確保策」などについて協議したとしており、トランプ氏が華為製品の使用を撤回するよう要請した可能性がある。
 
米政権高官は「5Gネットワークのいかなる部分であれ、信用の置けない業者の管理下に置くことは安全な選択肢ではない」と指摘し、安全保障の観点から華為製品を排除すべきとの考えを改めて示した。(中略)

欧州ではドイツも華為製品の導入を事実上認めるなど、華為の参入を受け入れる国が拡大しつつある。【1月29日 産経】
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****米、英と情報共有制限するか未定 華為の5G問題でカドロー氏****
米国家経済会議(NEC)のカドロー委員長は30日、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]による第5世代移動通信システム(5G)への参入を英国が限定的ながら認めたことを受け、英国との情報共有を制限するかどうか決定していないと表明した。(後略)【1月31日 ロイター】
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****米国務長官、5G巡り英との緊張緩和図る 中国の脅威強調****
ポンペオ米国務長官は30日、次世代通信規格「5G」通信網への中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)参入を巡る米英間の緊張緩和を図る一方で、中国共産党は現代の最大の脅威であるとの見方を示した。

ジョンソン英首相は28日、5G通信網へのファーウェイの参入を限定的に容認すると発表した。

2日間の日程で英国を訪問中のポンペオ氏は記者団に対し、「国民の情報や国家安全保障上の情報が行き交うネットワーク上で、それらの情報を得る法的権限を中国共産党が持てば、それはリスクになる」とした上で、「米英が意見の対立解消に向けて協力する道筋を見つけると確信している」と指摘。安全保障上の機密情報を共有するファイブアイズ(米英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)は健在と述べた。

さらに、中国共産党を「われわれの時代の重大な脅威」と見なしていると言及。米国とその同盟国が軍事力や技術力を確保し、今世紀が欧米諸国の原則によって統治されていることを確実にするよう求めた。

また、ポンペオ長官は米英間の「特別な関係」は依然として良好と強調し、欧州連合(EU)離脱後の英国との通商協定を優先したいと指摘。「(オバマ)前政権は、英国がEUを離脱するなら、米国は英国との通商交渉を後回しにするとの見解を示していたが、われわれは英国を最前列とする意向がある」と述べた。【1月31日 ロイター】
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トランプ政権としては、なだめたり、すかしたり、恫喝したり・・・・といった感じですが、トランプ大統領はもっと直情径行です。

****トランプ氏、英首相に「激怒」=ファーウェイ容認で―新聞報道****
7日付の英紙フィナンシャル・タイムズは、トランプ米大統領が先月行ったジョンソン英首相との電話会談で激怒したと報じた。次世代通信規格「5G」網への中国通信機器最大手・華為技術(ファーウェイ)の参入を一部容認した英政府の決定が原因。米国はファーウェイの排除を求めていた。
 
会談での具体的なやりとりは不明。ただ同紙は、英当局者が「米大統領の言葉の強さに驚いた」と伝えている。【2月7日 時事】
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この問題は、短期的には米英間の外交に悪影響を与えています。

****英首相、訪米計画「棚上げした」 5G巡りトランプ氏との対立懸念****
15日付英紙タイムズは、ジョンソン英首相が今月中にも行うとみられていた訪米計画を「棚上げした」と伝えた。英政府は第5世代(5G)移動通信システムに中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)製機器の採用を容認しており、排除を求めるトランプ米大統領との衝突を懸念し先送りしたとみられている。

トランプ氏との会談は、6月の米国での先進7カ国首脳会議(G7サミット)まで実現しない見込みだという。
 
ジョンソン氏の訪米日程は公式に発表されていなかったが、昨年12月の総選挙での大勝を受け、今年1月にも実施するとの情報があった。【2月16日 共同】
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【ドイツ・フランスもファーウェイ容認へ】
ドイツも、アメリカの圧力に加え、国内に根強い反対論がありますが、メルケル首相は“ファーウェイの参加容認で押し切る構え”とも。その理由に関して、下記記事は「中国市場はドイツ経済の生命線」とのメルケル首相の考えを指摘しています

****ドイツが5Gでファーウェイを選ぶ理由****
5G(次世代通信規格)構築をめぐる米中間のデジタル覇権争いで、ドイツのメルケル政権はやはり、中国を選ぶ方向に舵を切りつつある。

中国の通信機器最大手ファーウェイ(華為技術)の参加する5G構築に対しては、ドイツでも、中国によるスパイ活動やサイバー攻撃への不安が高まっており、政権および与党内でも、不協和音がかまびすしい。

しかし、メルケル首相は事実上、ファーウェイの参加容認で押し切る構えだ。

 ◇ファーウェイ反対論
折しもドイツでは、欧州連合(EU)の大使として複数国に駐在した経歴を持つ元ドイツ外交官ら3人が、中国のためにスパイ行為を働いていた容疑で、家宅捜索を受ける事件が明るみに出たばかりである。

そのあおりで、5Gをめぐる判断が左右されるとの観測も出ていた。しかし、中国と「戦略的パートナーシップ」を築き、中国市場をドイツ経済の「生命線」と見なすメルケル政権は、スパイ事件に動じることなく、ファーウェイ反対論を抑え込もうとしている。

5G問題では、与党キリスト教民主同盟(CDU)内部も紛糾した。(中略)

伝統的に親中の立場を取る連立パートナーの社会民主党(SPD)も、ファーウェイ参加に反対する姿勢を表明している。【2月2日 佐藤 伸行氏 時事】
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フランスも、アメリカの意向に反してファーウェイの参加を容認する方針です。

****フランス、ファーウェイを5G網から排除しないと明言****
フランスは13日、同国の次世代通信規格「5G」網から中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)製品を排除しない方針を明らかにした。その一方で、同社は制約の対象になり得ること、また欧州企業が優先される可能性も示唆した。
 
ブリュノ・ルメール経済・財務相は民放BFMに対し、「ファーウェイに対する差別はない…ファーウェイはフランスの5Gからは排除されない」と明言。
 
その上でルメール氏は、特に核関連施設や軍事施設周辺では「フランス政府は国益を守るための予防策を講じる」と述べ、またノキアやエリクソンといった「欧州の通信企業を優先することがあり得るのは理解できる」という見方を示した。
 
米政府を筆頭に、ファーウェイは中国政府と過度に密接な関係にあり、同社製品がスパイ活動に悪用されるのではないかと危惧する声もある。同社はこうした批判を断固否定している。
 
ドナルド・トランプ米大統領は既に、米企業にファーウェイとの取引を禁じており、同盟諸国にも同様の対応を求めている。 【2月13日 AFP】
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【デジタル課税でもアメリカ利害と衝突するイギリス】
イギリスはグーグル、フェイスブック、アマゾンなど巨大IT企業にデジタルサービス税を課税する件でも、フランスがアメリカと“休戦”したのに対し、アメリカとの対立がみられます。

****英がデジタル課税「4月導入」表明 米は「こちらも勝手に課税する」と警告****
英国のジャビド財務相は22日、スイスで開催中の世界経済フォーラム(ダボス会議)の討論会で、巨大IT企業を対象とした「デジタル課税」を予定通り4月から導入すると表明した。これに対し、同席した米国のムニューシン財務長官は報復措置を取る考えを示し、米英の対立が鮮明になった。
 
(中略)ジャビド氏は、国際的な課税ルールができるまでの「一時的な措置」としたが、ムニューシン氏は「デジタル企業に勝手に課税するのなら、米国も(英国の)自動車会社に勝手に課税することを検討する」と警告した。
 
デジタル課税を巡っては、導入方針だったフランスのルメール経済・財務相とムニューシン氏が同日、ダボスで会談。会談後、ルメール氏はツイッターに「ムニューシン氏と解決に向けて前進するための共通の枠組みで合意した」と投稿し、フランスが税の徴収を2020年末まで先送りする代わりに、米国も同年末までフランス製品に対する制裁関税の発動を見送る“休戦”で合意したことを明らかにした。(後略)【1月23日 毎日】
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【欧州も、アメリカ同様、「自国第一」を求めているだけ】
上記のような欧州各国の動向は、欧州とアメリカの間の溝・亀裂を示しているとの指摘があります。

****米欧同盟の亀裂を露呈、米側が中国やロシアの脅威に結束を求めるも欧州はそっぽ****
米国のポンペオ国務長官、エスパー国防長官が15日、ドイツで開かれた「ミュンヘン安全保障会議」に登壇し、中国やロシアの脅威への対応で欧州に結束を求めた。英独仏から応じる声はなく、米欧同盟の亀裂があらわになった。
 
ポンペオ氏は、中国の通信機器大手「華為技術」(ファーウェイ)について「中国情報機関のトロイの木馬だ」と危険性を主張。第5世代(5G)通信網への華為製品導入に傾く欧州側をけん制した。

ロシアやイランに対しても、米欧がともに対抗すべきだと促した。エスパー氏も「華為と5Gは、(中国の)邪悪な行為の見本のようなもの」と訴えた。
 
続いて登壇したマクロン仏大統領は、華為問題には触れなかった。中国については、デジタル産業への巨大投資で欧州は遅れをとったと指摘し、「欧州の戦略が必要だ」と述べた。ロシアについては「欧州にとっては隣人。米国とは違う」と位置づけ、対話の必要性を訴えた。
 
会議初日の14日には、ドイツのシュタインマイヤー大統領が、米中の競合こそ、平和の妨げになると主張した。トランプ米政権は「自国第一」を掲げ、「国際社会という概念を拒絶した」となじった。
 
5G網への限定的な華為参入を認めた英国は、会議に閣僚級の代表を派遣しなかった。ジョンソン英政権の決定に対し、ポンペオ氏は失望を表明し、改めて華為排除を求めていた。【2月16日 産経】
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ただ、トランプ大統領の言動が「亀裂」を印象付けている面もありますが、基本的には各国がそれぞれの国の利害をもとに行動しているというだけのことでしょう。

敢えて言えば、アメリカが自国の行動には「自国第一」を掲げて国際協調を無視しながら、欧州などにはアメリカ主導での協調を求めるあたりに、身勝手さも。

5Gへのファーウェイ参加の問題は、セキュリティーの問題、米中の覇権争いの問題が表向きありますが、根底には中国企業の技術なしには世界標準から遅れてしまう、アメリカも中国企業に代わるものを提供できないという現状があります。

中国と覇権を争うアメリカとしては中国企業の技術を使う訳にはいかない、だからと言って「お前らも使うな」と言われても欧州各国はおいそれとはアメリカに従えません。

 

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