孤帆の遠影碧空に尽き

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アメリカ・民主党予備選  “本選では勝てない”とされる左派サンダース氏の躍進に困惑する民主党

2020-02-23 23:21:50 | アメリカ

(22日、テキサス州の選挙集会で拳を突き上げるバーニー・サンダース氏=AP【2月23日 朝日】)

【“フロントランナー”の地位を固めるサンダース氏】
アメリカ大統領選挙の予備選第3戦となる西部ネバダ州党員集会が22日に行われ、ニューハンプシャー州予備選に続いて急進派サンダース上院議員が圧勝したことは報道のとおり。

****サンダース氏が連勝=中南米系の支持圧倒―米大統領選民主指名争い第3戦****
米大統領選の民主党候補指名争いの第3戦、西部ネバダ州党員集会が22日(日本時間23日)行われた。サンダース上院議員(78)が2位以下に大差をつけて勝利を確実にした。サンダース氏はニューハンプシャー州予備選に続く連勝。今後の指名争いに大きな弾みをつけた。
 
サンダース氏は、今回カギを握った中南米系から圧倒的な支持を得た。22日夜、支持者の前で「ここネバダで世代と人種を超えた連合を築いた。この連合は全米を席巻する」と勝利宣言した。
 
CNNテレビによると、開票率23%の時点で、サンダース氏は得票率46.2%で2位にダブルスコアをつける勢い。バイデン前副大統領(77)が23.6%で、以下、ブティジェッジ前サウスベンド市長(38)が13.9%、ウォーレン上院議員(70)が8.9%と続いている。【2月23日 時事】 
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緒戦で一躍注目されたブティジェッジ氏は、マイノリティーからの支持を強みをとする民主党にあって、緒戦の白人系が多い地域と異なる人種的に多様な州でどこまで支持をのばせるかが注目されていましたが、ヒスパニックの多いネバダでは支持をのばせず、厚い壁に阻まれた形になっています。

一方、オバマ政権時代からのつながりで、そうしたマイノリティーからの支持が高かったバイデン前大統領ですが、マイノリティー支持層もサンダース氏に浸食され2位。まあ、2位ということで首の皮1枚でなんとかつながった・・・とも。

いずれにしても、「民主社会主義者」を自任するサンダース氏が、貧富の格差が拡大するアメリカ社会にあって学生ローンの重圧などに苦しむ若者らの熱烈支持を受け “フロントランナー”“本格候補”の立場を印象付けることになっています。

****(2020米大統領選 分極社会)若者が支える、78歳革新派 広がる貧富の差、怒り****
1月31日、米アイオワ州デモインのイベント会場。若者を中心に約2千人が集まるなか、声が響いた。
「収入にかかわらず、すべての米国民が高等教育を受けられるようにすべきだ。公立大学の無償化と学生ローンの免除をともに実現しよう」
 
話していたのは、民主党の大統領候補を目指すバーニー・サンダース上院議員(78)。音声のみの参加だったが、支持者からは大きな歓声が上がった。(中略)

サンダース氏の主張は、米社会では「極端」と受け止められがちだったが、ここに来て勢いを増す。支えるのは、若者だ。

米メディアが党員集会参加者に行った調査では、17~29歳の48%がサンダース氏支持と答えた。この世代でブダジェッジ氏の支持率は19%、同じく穏健派のバイデン前副大統領(77)はわずか3%。逆に、65歳以上では33%がバイデン氏を支持し、サンダース氏は4%。世代間で大きな違いが出た。
 
他州でも、若い世代はサンダース氏に期待を寄せる。ニューヨークのバーテンダー、カイル・デランシーさん(32)は「富裕層に高い税金を課す税制政策を最も評価している。ほかの候補は口だけ。ちゃんと実行できるのはバーニーだけだ」と語る。

金融危機直後の2009年、ペンシルベニア州の私立大学を卒業した。学費などをまかなうため、卒業時に背負った学生ローンは総額で7万3千ドル(約800万円)あった。
 
卒業後に初めて就いた仕事は年収3万ドル。ローンの返済が滞り、利息が加わって10万ドルにまでふくれあがった。現在も利息だけで年間の支払額が6千ドルにのぼり、元本が返済できる見通しはたたない。「今の米国社会には、持続不可能なことがたくさんありすぎる。貧富の差は広がるばかり」と憤る。
 
貧富の格差の拡大や多額の学生ローン。米国の若い世代には「将来に希望が持てない」との思いが広がる。こうした閉塞感(へいそくかん)が、大統領選の行方を左右する可能性がある。【2月9日 朝日】
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【若者だけでなく、広がるサンダース氏への支持】
若者らの熱烈支持だけでなく、その主張への支持も広がり、更に、マイノリティーの支持も拡大しています。

****【米大統領選】サンダース氏の党候補指名に現実味 国民皆保険への拒否感薄れる?****
11月の米大統領選に向けた民主党の候補指名争いの第3戦、西部ネバダ州党員集会でサンダース上院議員(78)が他候補に大差をつけて勝利を確実にしたことは、サンダース氏が「本格候補」として党候補指名を獲得することへの現実味が徐々に増してきたことを意味する。
 
ネバダ州でのサンダース氏の勝因の一つは、最大都市ラスベガスなどのサービス業従事者が加盟する「料飲業者組合」(組合員数約6万人)の組合員の多くが同氏の支持に回ったとみられることだ。
 
組合執行部は20日、「どの候補も支持しない」と表明し、サンダース氏の公約である「国民皆保険」に批判的な立場を示したが、実際には同氏の訴えは組合員らに浸透していた。
 
ラスベガスの高級カジノホテル「ベラッジオ」で開かれた党員集会に参加したホテル従業員、ホセ・アルバレス氏(57)は「組合は会社側から健康保険制度を勝ち取ったが、解雇されたり、会社が倒産したりすれば保険を失うことになる。国民皆保険は納得できる政策だ」と主張した。
 
ネバダ州での結果が、民主党を支える組合勢力の間でサンダース氏への抵抗感が減っている兆候であるとすれば、今後の指名争いで同氏が支持をさらに拡大していく公算は大きい。(後略)【2月23日 産経】
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****サンダース氏、黒人支持率でもバイデン氏に並ぶ=WSJ/NBC調査 ****
今秋の米大統領選に向けた民主党候補の指名獲得争いで、黒人有権者の間でジョー・バイデン前副大統領の支持率が大きく低下し、バーニー・サンダース上院議員とほぼ並んだ。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とNBCニュースの最新世論調査で明らかになった。 
 
民主党の予備選が人種的に多様性に富む州に移ろうとする中、バイデン陣営にとって懸念すべき結果となった。 
 
バイデン氏はこれまで黒人の支持率の高さを頼りにしていた。2019年のWSJ/NBC調査では、予備選で投票する予定だとした黒人有権者の半分程度が、バイデン氏を支持すると回答していた。だが今月の調査では、バイデン氏とサンダース氏は共に3分の1弱の黒人の支持を獲得した。 
 
今月29日に投票が実施されるサウスカロライナ州の民主党有権者のうち黒人は約6割を占める。代議員数の多い南部の保守的地域にも黒人有権者は多い。29日に開かれるネバダ州の党員集会が、初めて人種に多様性がある州での戦いとなる。(中略) 

この調査によれば、バイデン氏またはサンダース氏が民主党候補に決まった場合、トランプ氏の黒人支持率は1桁台高めで16年並み。一方、クロブシャー氏またはブティジェッジ氏が対抗馬になったと想定すると、黒人によるトランプ氏の支持率は15%以上に上がる。(中略) 

黒人有権者は、男女問わず大統領としてのトランプ氏の仕事ぶりを圧倒的に支持していない。ただ大統領の仕事ぶりを評価したのは黒人女性が6%、黒人男性が24%で、性別に開きが見られた。(後略)【2月22日 WSJ】
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サンダース氏であれば、バイデン氏と同程度に民主党有力支持基盤である黒人票をつなぎとめることができる・・・ということのようです。

【“本選では勝てない”サンダース氏躍進に困惑する民主党指導部】
しかし、急進的な左派サンダース氏では、無党派層をとりこめず、本選ではトランプ大統領に惨敗する・・・というのが一般的な見方であり、民主党指導部もサンダース氏の勢いが止まらないことに困惑しています。

****「左派ではトランプに勝てない」 米民主党の穏健派、サンダース氏に危機感 ****
(中略)サンダース氏のニューハンプシャー州での勝利を後押ししたのは、格差解消や医療保険制度改革などの大幅な「変革」を求める若者や低所得者層らだ。

米メディアが実施した合同出口調査によると、18~29歳の民主党支持者の53%がサンダース氏に投票した。また、同氏に投票した31%が「医療保険」を、35%が「収入格差」を候補者選びの際に最重要視する政策上の懸案に挙げた。
 
また、自身を「非常にリベラル」と位置付ける同党支持者の48%、「どちらかといえばリベラル」の26%がサンダース氏に投票。「民主社会主義者」を自称するサンダース氏は同じ左派のウォーレン上院議員を退け、党内左派の広範な支持を確保しつつある。
 
しかし、調査会社ギャラップが11日発表した全国世論調査では「社会主義者の大統領候補に投票しない」との回答が53%に上った。「投票する」は45%。また、当選に向け支持獲得に不可欠な無党派層の45%が「投票しない」としており、サンダース氏が本選に進んだとしても苦戦を強いられるのは避けられない。

実際、民主党の中道穏健派は、サンダース氏が本選候補に指名されればトランプ大統領に敗れる恐れが強い上、大統領選と同時に行われる上下両院選にも悪影響が出かねないとして危機感を募らせつつある。

下院民主党の中道派議連の代表を務めるブリンディシ議員はニューヨーク州の地元紙に10日、「サンダース氏が本選候補になっても支持しない」と明言した。(後略)【2月12日 SankeiBiz】
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特に、サンダース氏が代議員数で1位ながらも過半数は得られず民主党大会になだれ込んだ場合の大混乱も民主党内では懸念されています。

****米民主党内に広がるサンダース大統領候補への深刻な不安****
米大統領選民主党候補者争いで急進左派バーニー・サンダース氏(78)への支持が拡大するにつれて、同党主流派の間では、11月大統領本選でトランプ再選のみか、議会選挙でも、上院で多数を占める共和党に下院奪回も許すのではないかとの不安が広がり始めている。(中略)

しかし、かねてからその急進的主張ゆえに異端視され、立候補前までは「無所属」の立場をとってきた同氏だけに、党内主流派からは、警戒と懸念の声が上がり始めている。

このままの勢いを保ち多勢の各州代議員とともに7月党大会になだれ込むことになれば、大会そのものが大混乱を引き起こすのみならず、11月大統領選での大敗につながりかねないという不安だ。(中略)

公共放送PBSは去る1月8日のニュース番組で、オバマ前大統領の選挙参謀を務めたレーム・エマヌエル前シカゴ市長の以下のような批判コメントを伝えた:
 
「サンダース候補は『民主社会主義者』を自認し、国民皆保険への揺るぎなき支持を表明しているが、こうした立場では2020年大統領選のカギを握る不確定のスイング州swing statesの賛同を得られない。最後の“戦場”となるこれらの州の票を勝ち取るためのメッセージを持った候補が必要だが、サンダース民主党候補ではますますそれが困難になる」(中略)

主要メディアも懸念示す
2月12日付ニューヨーク・タイムズ紙は、「サンダース候補指名がもたらす下院選敗退を穏健民主党議員が懸念」と題する以下のような記事を掲載した:
 
「明らかに左傾化路線を歩むサンダースが指名レースの先頭を走り始めるにつれて、中道的立場の議員たちの間から、このままではホワイトハウス奪回のチャンスを逃すのみか、下院多数保持もできなくなるとの不安が増大しつつある。

とくに、前回2018年中間選挙で共和党議員を打ち破り初当選した1期生議員たち十数人は、11月選挙で手ごわい共和党候補から“社会主義政党”のレッテルを貼られ苦戦を強いられているだけに、サンダース候補の主張を支持にくい立場にある」
 
「上院選でも、民主党はこれまで、4議席上積すれば多数体制を奪回できるとして、勝算が高いとされるノースカロライナ、アリゾナ、コロラド、メーンの4州での選挙戦に力点を置いてきた。しかし、その後サンダース候補の存在が目立ち始めるにつれて、情勢は厳しくなりつつある。共和党から『民主党はサンダーズ党』と攻撃されることで、民主党候補による反撃を難しくさせている」(中略)
 
ではそのサンダース候補がこれまでの選挙戦を通じ、具体的に内外政策めぐり、どのような主張を続けてきたかを振り返る必要がある。
 
まず内政だが、①中間、低所得者層向け住宅建設支援②家賃統制③所得格差是正④最低賃金引上げ⑤新設富裕者税⑥公立カレッジ授業料の無償化ーーなど、徹底した弱者救済の経済政策が中心だが、これら以外に最も関心を集めているのが、オバマ前政権下でスタートした医療保険改革「オバマケア」を改め、国民全員が国の運営する保険加入を義務付ける「国民皆保険」制度の導入だ。
 
しかし、実現には莫大な資金を必要とし、中間所得者層の税負担増につながることから、ブティジェッジ、バイデン候補ら民主党中道派は、いきなり皆保険ではなく、現行制度の拡大や公営保険と民間保険のハイブリッド方式を提唱している。
 
一方、外交・安全保障面では、①国防予算削減②アフガン、イラク、シリアなどからの米軍撤退③TPP(環太平洋経済連携協定)、USMCA(米・メキシコ・カナダ貿易協定)などの多国間協定に反対―などを表明、トランプ政権以上に「アメリカ・ファースト」の色彩が濃厚な内容となっている。
 
これに対し、バイデン候補らは基本的に、対外コミットメントの維持、多国間貿易協定支持の立場であり、サンダース候補との間では大きな見解の相違がある。
 
民主党全国委員会が最も懸念するのは、かりにサンダース氏が代議員獲得数1位で党大会に臨んだとしても、それまでに過半数に達していなかった場合だ。

サンダース勝利を願うトランプ
その場合、“スーパー代議員”と呼ばれる各州の有力政治家、地名士など771人からなる別の集団、さらに2位以下の候補が抱える各州代議員たちを交え、最終的に誰を党候補にするかをめぐり様々な取引や“談合”が会場内で繰り広げられることになる。“brokered convention”と呼ばれ、大混乱を招き、党本部としては最も避けたいシナリオだ。
 
さらにその場で、サンダース候補では11月本選でトランプ氏に勝てないとみて党本部主導で中道派の他の候補を最終的に選ぶことになった場合、それまでサンダース氏を支持してきた代議員および全米の有権者がそのまま党方針に従うかどうか疑わしい。

サンダース氏もついに民主党を離れ、無所属候補としてトランプ氏相手に本選で戦いを挑む構図も否定できない。その結果、3者間の争いとなった場合、トランプ勝利がほぼ確実となる。(中略)

逆に、再選を狙うトランプ陣営としては、今後もサンダース氏の健闘を大いに期待したいところだろう。(後略)【2月18日 斎藤 彰氏 WEDGE】
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【サンダース氏の熱烈支持層・勢いを警戒するトランプ陣営】
“サンダース氏の健闘を大いに期待したい”トランプ陣営・・・ということですが、当のトランプ大統領はサンダース氏に警戒感を示しています。

****米大統領選 トランプ大統領 サンダース氏への警戒感示す ****
アメリカのトランプ大統領は11日、ホワイトハウスで記者団に対し、民主党の候補者選びについて「サンダースよりも、ブルームバーグが相手になったほうがよっぽどいい。ブルームバーグはカネで支持を広げているが、サンダースには本物の支持者がついている」と述べ、全米の支持率で首位に立ったサンダース氏への警戒感を示しました。(後略)【2月12日 NHK】
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おバカ候補、泡沫候補と揶揄されながら、熱狂的支持者をつかみ、予備選・本選を勝ち抜いた自身の姿がサンダース氏の勢いに重なるのでしょうか?あるいは(戦いやすい)サンダース氏勝利を導くための戦略的発言?

もっとも、トランプ氏だけでなく、トランプ支持層でもサンダース氏を警戒する声は強いようですから、あながち戦略的発言でもないのかも。

****サンダース氏の勢い警戒=「4年前より楽勝」予想も―トランプ氏支持者****
混戦が続く米民主党の大統領候補指名争いを、トランプ大統領の支持者はどう見ているのか。

第3戦の地ネバダ州で21日、トランプ氏の支持者約100人に聞き取りを行ったところ、「最も手ごわい」候補としてサンダース上院議員を挙げる人が最多だった。若者の強い支持で勢いに乗る同氏への警戒を浮き彫りにした。(中略)
 
サンダース氏を選んだのは38人だった。理由として「教育もタダ、医療もタダという現実離れした政策によって、政治の教養がない若者にうまく取り入っている」と女性(52)が指摘。一方で「トランプ氏に対抗できる支持基盤があるのは彼だけだ」と考える男性(50)もいた。
 
2番目はブルームバーグ前ニューヨーク市長で24人。女性(60)は「他の候補にない経歴があり、『トランプを止めろ』という党内の声を吸い上げる力がある」と警戒した。

一方、新星ブティジェッジ前サウスベンド市長は経験不足と同性愛者であることを懸念する声が多く、8人にとどまった。
 
「脅威となる候補はいない」という回答も目立った。左派と中道派の路線対立を念頭に女性(62)は「何を求めているのか民主党は自分たちでも分からなくなっている。(僅差で勝利した)2016年よりも楽な戦いになる」と予想した。
 
これに対し、無罪評決が下された弾劾裁判以降、トランプ氏がツイッターで司法の問題に口出しするなど尊大さが目に付くようになったと指摘する男性(70)もいた。トランプ氏にとって、民主党よりも「最大の敵は自分自身かもしれない」と語った。【2月22日 時事】 
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今後の注目点は、スーパーチューズデイから参戦する元ニューヨーク市長で億万長者のマイケル・ブルームバーグ氏がどれだけの支持を得られるか・・・ということですが、ヒラリー・クリントン元長官を副大統領候補として検討しているとも報じられています。

なお、この件に関しては、攻撃しやすいヒラリー登場は、トランプ陣営は大歓迎のようです。【2月17日 FNN PRIMEより】

 

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