((日本からの中国への支援物資のラベルには)宛先のほかには、日中の国旗と共に「加油(がんばれ)!中国」というメッセージ。さらに下部には、小さな文字で、「山川異域 風月同天」と書かれていた。【2月3日Jタウンネット】
【日本からの心温まるメッセージが多くの中国人の感動を呼んでいる】
新型コロナウイルス肺炎は死者が1500人を超え、この先の見通しもわからない情勢です。
その影響は、疾病による犠牲者にとどまらず、経済・社会・政治の広範な分野に及んでおり、その影響は今後更に深刻化することが予想されています。
そうした状況ですから、今回のウイルス騒動がもらした「効果」と言い方をすれば不謹慎のそしりはまぬがれませんが、あえて明るい面を探せば、中国への日本の官民レベルの多方面の支援によって、これまでの日中間の歴史問題のくびきから一歩踏み出せたような反応が中国国内で見られることでしょうか。
****日本にこんなに良くしてもらって、われわれはどうお礼をしたらいいのか=中国メディア****
中国メディア・今日頭条は12日、「日本よ、こんなにしてくれて、中国はどうやってお礼をすればいいのか」とする記事を掲載した。
記事は、10日の夜に安倍晋三首相が自民党の幹部会を開き、同党の国会議員が1人あたり5000円を議員報酬から控除し、新型コロナウイルス感染拡大抑止に取り組む中国に寄付することを決めたと紹介。
これまで中国に友好的だったか、反中的だったかに関わらず寄付を行うとし、二階俊博同党幹事長が「友好的な隣国として当然のこと」と語ったことを伝えた。
また、二階氏が7日に中国大使館を訪れて、孔鉉佑中国大使に対して「日本国ができることはいかようなことでも対応したいと思っているから、遠慮なくお申し出頂きたい」と述べ、中国とともにウイルスと戦う意向を示したとしている。
さらに、今回のウイルス感染拡大を巡っては、日本各地からマスクやゴーグル、防護服などの支援物資が続々と届けられるとともに、漢文を用いた応援メッセージも数多く送られたとし、「中国人は感動しない訳にはいかなかった」と評した。
そのうえで「中国を助けることが、自身を助けることになるということを日本も良く知っているから支援をするという面もある。とはいえ、これは本当に心からの支援であり、まさに雪中に炭を送る行為ではないか」とするとともに、中国人は恩と恨みをしっかり区別して対応する民族であり、受けた恩には報いるのが当然の礼儀であるとする一方で「日本よ、あなたは中国に難題を差し向けた。日本の今回の行動に対して、中国はこれからどうやって返礼をすればいいのだ」とし、非常に大きな恩義を抱いたことを表現している。【2月14日 Searchina】
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上記のような、日本からの支援に感動を禁じ得ない、日本への感情が今回の件で変わった・・・・という類の記事は連日紹介されています。
もちろん、日本側の真意をいぶかる声もありますが、それにしても・・・という声が多いようです。
*****日本はなぜ「新型肺炎」でこんなに我が国を支援してくれるのだろうか=中国メディア****
日本は新型肺炎問題を抱える中国に、いち早く支援を行ったことで中国から大いに感謝されている。4日には、中国外交部の華春瑩報道局長が「日本政府だけでなく多くの地方企業がマスクやゴーグル、防護服などの防疫物資を自発的に寄贈してくれた」と謝意を表明している。中国メディアの今日頭条は9日、日本はなぜこんなに中国を支援してくれるのかと疑問を投げかけ、分析する記事を掲載した。
今回の新型肺炎の問題では、中国への支援は世界各地から寄せられているが、なかでも日本の政府や地方自治体、企業、団体による支援が広く伝えられるということは、これまであまりなかったことだ。
実のところ、日本はこれまでも様々な形の支援をしてきたが、中国ではあまり多く語られることはなく、中国人の多くが知らないままだ。
対中ODAが実施されたことも多くの中国人は知らないが、約40年間にわたり、有償資金協力(円借款)、無償資金協力、技術協力の総額約3兆円以上の援助が行われてきた。
記事は、2008年の四川大地震では日本からいち早く救援隊が駆け付け、義援金や必要物資が送られ、2011年の東日本大震災の際には逆に中国からの支援を受けたと紹介。記事は、日本と中国は互いに困難な時期に助け合ってきたので、今回も日本は中国に特別の支援を示してくれたのだと分析している。
記事に対して、「中国は恩を忘れない国だ」、「隣国なのだから助け合うべき」など、日本の支援に感謝し、日中関係の親密さに好意を見せる意見が多く寄せられているが、中国が日本を特に持ち上げているのは、春に予定されている習近平国家主席の訪日を意識してのことだという見方もある。
中国の日本に対する態度は、米国への批判的な態度とは対照的という指摘もあり、いろいろな思惑がありそうだ。
とはいえ、日本の支援が広く伝わり感謝されていることはうれしいことである。【2月13日 Searchina】
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おかげで、旧日本軍を荒唐無稽な悪者にしたてることが多い抗日ドラマにも変化が出ているとか。
****日本の支援に感謝!中国山西省のテレビ局、抗日ドラマの放送休止****
中国版ツイッター・微博(ウェイボー)上の投稿によると、中国山西省のテレビ局、山西衛視は9日、それまで放送していた連続ドラマ「紅高粱」(紅いコーリャン)を別のドラマに差し替えた。
山西衛視は、視聴者からの問い合わせに、「ドラマのこの後の20話には反日的な内容が含まれている。日本が最近、中国の感染症との闘いに、前例のないほどの友好を示していることに鑑み、後の20話についてはしばらく放送を見合わせることにした。ドラマ全話は今後、再放送されることになる」と回答したという。【2月13日 rコードチャイナ】
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今回の日本からの支援が中国側の琴線に触れた理由のひとつに、「日本の友人たちの漢詩大会状態になっている」との声まで上がるぐらいに、支援物資の漢詩が添えられることが多く、そのことが日本と中国の文化的な深い絆を再認識させていることがあるようです。
****援助物資に漢詩添え 日本からの心遣い 中国で話題「受けた恩は何倍にも」****
「遼河雪融 富山花開 同気連枝 共※春来」(遼寧で雪が解ければ 富山で花が咲く 同じ木でつながる枝のように 春が来るのをともに望む)
新型肺炎が広がる中国に対し、日本から漢詩や中国古典の一節を引用したメッセージを添えてマスクなどの支援物資を送る動きが相次いでいる。
粋な心遣いは中国で「同じ漢字文化圏ならでは」とインターネットで拡散され、病気との闘いが続く緊張感の中、明るい話題になっている。
富山県は10日、友好都市の中国東北部・遼寧省へマスク1万枚を発送。段ボール箱の一部に冒頭の漢詩をつづった紙を張り付けた。作者は同省出身の県職員、孫肖さん(40)。漢詩のルールに従って、両地を結ぶ思いをつづった。「互いに寒い土地。事態が早く落ち着き、楽しい春が来てほしい」と話す。
京都府舞鶴市が大連市に宛てたメッセージは「青山一道同雲雨 明月何曾是両郷」。唐の王昌齢による詩の一節
だ。同市によると「風も雨も乗り越えた親友同士 別々の場所で同じ月を見ている」という意味を込めた。
マスクを送る際に同市みなと振興・国際交流課内で相談し、大連からの国際協力員、曲振波さんのアドバイスを受けて決定した。
苦境が続く中国ではSNSを通じて日本側の支援に関する話題が広がり、主要メディアも相次いで報道。中国では小学校から漢詩をしっかり習い、クイズ形式のテレビ番組が人気を集めるほど教養として浸透している。「受けた恩は何倍にもして返さなくてはならない」と、中国の故事成句を盛り込んだネットの書き込みも目立っている。
中国のネットで日本からの支援が紹介される際に付記されることの多いのが「山川異域 風月同天」。武漢の大学などへマスク2万枚以上を送った日本青少年育成協会(東京都)が添えた言葉だ。
奈良時代の皇族、長屋王が唐の高僧、鑑真を日本に招く際に送ったとされる詩の一節。同協会は中国語検定HSKを日本で実施していて、中国の大学教員を日本に招く機会も多い。
「土地は違っても、同じ空の下で自然の営みは変わらない」との意味を込めた狙いを同協会の本田恵三事務局長は「中国の人たちに最も伝わりやすい方法だと考えた」と話し、中国での盛り上がりに「思わぬ反応だったが、気持ちが伝わってうれしい。早く肺炎が終息し、交流を続けたい」と話した。 ※は目へんに分 【2月13日 毎日】
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日本からの漢詩に対する中国国内の好意的評価に対し、一部に「それにひかえ、中国は・・・」といった声も出ていることを諫める記事も出ているとのことですから、逆に言えば、それほど日本からの「漢文メッセージ」が話題になっていることでしょう。
****日本からの漢文を称賛し、中国メディアをやゆするのは間違い―中国紙編集長****
2020年2月12日、中国紙・環球時報の胡錫進(フー・シージン)編集長が自身の微博アカウント上で、新型ウイルス感染拡大に対する日本からの「漢文応援メッセージ」をめぐるネット上の議論に苦言を呈する文章を発表した。
胡氏は、ここ2日の間に中国のネット上で日本からの支援物資に付された漢文のメッセージが称賛されていることを紹介するとともに、「中国人が発するのは『武漢頑張れ』『中国頑張れ』ばかりだ」と比較し、中国政府系メディアを「教養がない」と揶揄(やゆ)する書き込みが拡散していると紹介した。
その上で、「漢文自体は素晴らしいし、間違いなく日本人の善意によるものだろう。しかし、漢文を『武漢頑張れ』と比較することは間違っている」と主張。「対比は一部ネットユーザーが不満やうっぷんを晴らすために書き込んだものである」との見解を示している。(後略)【2月14日 レコードチャイナ】
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いずれにしても“今回の新型コロナウイルスの大流行は、まさに未曾有の事態とも言えるが、一方で様々な場面で助け合いの精神も見られている。日本からの心温まるメッセージが多くの中国人の感動を呼んでいる。”【2月15日 Searchina】ということであれば、深刻な災いが続く中で、ややほっとするものがあります。
ウイルス騒動以前の訪日観光客の増加による日本理解の進展と相まって、今後の日中関係の基礎を形作るものでしょう。
【技術革新・社会変化を加速させる面も】
今回のウイルス騒動が社会に与える影響ののなかには、中国の「超監視社会」だか「幸福な監視社会」だかを更に進める動きがある一方で、SARSがネット通販を加速させたように、将来に向けての技術変化を加速させるという作用もあるのでは・・・との指摘も。
****中国、最先端技術フル活用 ビッグデータで感染者追跡/ワクチン開発にAI 新型肺炎****
新型コロナウイルスによる肺炎の感染が深刻な中国で、感染の蔓延(まんえん)を防ごうと、ビッグデータや最先端技術が活用されている。非常事態のなか、個人情報が当局に使われることに「やむなし」との声がある一方、「プライバシーはどうなる」との懸念もある。
■「手配犯扱い」批判も
「この便に乗っていた人を至急探しています!」
中国各地の地方政府のホームページ(HP)には、感染者が利用した交通機関を公表し、濃厚接触が疑われる人に現地の保健衛生当局への連絡を呼びかけるメッセージが並んでいる。
情報は具体的で、感染者が乗った高速鉄道や飛行機、バスなどの便名や運行日時、車両番号などが掲載されている。
たとえば山東省政府は1月下旬、煙台市内で確認された感染者の分刻みの足取りをHPに掲載した。
1月20日 11時12分 三連区駅から公共バス乗車 11時26分 和平家電駅で下車――
監視カメラなどで把握した情報とみられ、「まるで指名手配犯扱いだ」との批判も出た。
詳細な情報が開示される裏には、交通当局の協力がある。鉄道当局は感染者追跡のためのビッグデータ分析専門チームを立ち上げ、感染者の移動経路情報を各地の保健衛生当局に提供。中国の航空各社やバスの運行当局も同様で、感染者が乗っていたとして13日までに公表された列車や飛行機、長距離バスなどは計約750便にのぼる。
保健衛生当局と交通当局がタッグを組んだ大追跡により、国家衛生健康委員会によると、13日までに中国本土で追跡できた濃厚接触者は49万人を超える。
これに対し、SNS上では「非常事態だから仕方がない」との意見と、「中国からプライバシーという言葉は完全に消えた」といった批判が入りまじり、賛否が割れている。
感染対策に企業も最新技術を続々と投入している。
多くのIT企業が拠点を置く北京市の中関村。2年後の冬季五輪に向けて整備された高速鉄道の清河駅では高性能カメラが構内を歩く人々に向けられている。
新華社通信によると、カメラは顔認証機能で個人を特定し、同時に赤外線で体温も計測できる。発熱が確認されれば、直ちに係員が誘導して検査する仕組みだ。技術は検索大手・百度が提供し、今月2日から運用が始まった。
ほかの企業も競うように支援に乗り出している。
感染者が集中する湖北省武漢市。突貫工事で完成した火神山病院では、通信キャリアの中国電信と通信機器大手・華為技術によるテレビ電話での遠隔診療システムを導入。9日に北京の軍の病院と結んで初の遠隔診療が行われた。
IT大手アリババ集団は、新型肺炎のワクチン開発を促進するため、世界各地の公共研究機関に自社の人工知能(AI)の計算機能を無料で提供している。
中国では、2002~03年のSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した際、感染を恐れて外出を控える人が続出。そのときに可能性を感じ取った人々がネット通販を始め、その後の中国のニューエコノミーをリードした面がある。
今回の新型肺炎では、人手不足に悩む医療現場や、接触感染の危険を減らすための在宅勤務の現場で、遠隔コミュニケーションの技術が今まで以上に積極的に使われている。その経験が新たなイノベーションの創出につながると期待する声も企業の間で出ている。【2月15日 朝日】
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