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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー・ロヒンギャ問題 沈黙を守るスー・チー氏へ強まる批判 未だ収束していない民族浄化

2018-03-20 21:23:48 | ミャンマー

(豪シドニーで開催された同国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の特別首脳会議に出席するミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問(2018年3月18日撮影)【3月18日 AFP】
何の話題のときの写真かはわかりませんが、いかにも“身動きが取れず苦悩を深めるスー・チー氏”あるいは“高まる批判に苛立ちを強めるスー・チー氏”といった感がある写真です)

講演キャンセルの理由は? 抗議集会に訴追を求める動きも
ミャンマー西部ラカイン州のイスラム系少数民族ロヒンギャが国軍等の暴力による民族浄化として隣国バングラデシュ島に追放されたこと、および、その状況が一向に改善しないことに関し、沈黙したままのスー・チー氏の最高指導者としての責任を問う声が強まっています。

そのスー・チー国家顧問はオーストラリアを訪問していますが、体調不良で講演をキャンセルしたとのこと。

****スーチー氏、体調不良で講演キャンセル 訪問先の豪州****
オーストラリアを訪問しているミャンマーの国家顧問アウンサンスーチー氏が、体調不良を理由に、シドニーで20日に予定していた講演をキャンセルした。

シドニーのシンクタンク、ローウィー研究所は19日、スーチー氏の体調がすぐれないことから、20日の講演を中止せざるをえなくなったと発表した。講演後は、聴衆からの質問を受け付けるはずだったという。

講演が取りやめになった数時間後、ミャンマー政府報道官はCNNの取材に対し、スーチー氏は時差ぼけで多少体調を崩したが、今は回復してオーストラリア在住のミャンマー団体と過ごしていると説明した。日程を調整し直して講演を行う予定はないとしている。

スーチー氏は東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議に出席するため17日にシドニーに到着。19日には首都キャンベラで、オーストアラリアのターンブル首相と会談した。

シドニーでは17日の首脳会議に合わせて、スーチー氏に対する抗議集会が開かれていた。

ミャンマー政府は、少数派イスラム教徒のロヒンギャに対する「民族浄化」を行ったとして国際社会から非難されている。隣国バングラデシュに逃れたロヒンギャは、過去半年で少なくとも68万8000人に上る。

オーストラリアのロヒンギャ団体はスーチー氏に対する抗議運動を展開。ターンブル首相に対し、スーチー氏との会談ではミャンマーの人道危機について話し合うよう求めていた。

ターンブル首相が18日の記者会見で語ったところによると、スーチー氏はASEAN首脳会議で行った演説の中で、ロヒンギャ危機に対応するための人道支援や対策の強化を呼びかけたという。【3月20日 CNN】
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“スーチー氏に対する抗議集会が開かれていた”という風当たりが強い状況ですから、質疑でのそうした批判を回避した・・・・と、どうしても思ってしまいます。

オーストラリアでは、「普遍的管轄権」に基づいて、「人道に対する罪」でスー・チー氏を裁くように求める動きも出ています。

****スーチー氏の裁判、豪弁護士が求める ロヒンギャ問題で****
ミャンマーの少数派イスラム教徒ロヒンギャの約70万人が国外に逃れた問題でオーストラリアの人権派弁護士らが16日、アウンサンスーチー・ミャンマー国家顧問を豪州で裁くよう、豪ビクトリア州の地裁に申し立てた。ロヒンギャを国外に追放した「人道に対する罪」を犯したとしている。
 
豪州は2002年、人道犯罪や戦争犯罪などについて、起きた国や加害者の国籍に関係なく自国で裁く権限があるとする「普遍的管轄権」を採用。今回の申し立てもこれに基づく。
 
スーチー氏は17、18の両日に開かれている豪州と東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会議のためにシドニーを訪問中。ロヒンギャ問題への対応に批判が高まるなか、豪州に住むロヒンギャの人々の求めに応じて、この時機を狙って申し立てた。
 
弁護士らの発表では「ミャンマー治安部隊のロヒンギャに対する殺害やレイプなどを含む犯罪が幅広く目撃された」としたうえで「スーチー氏は治安部隊による強制的な国外追放に対して(それを止められる)自らの権限を行使してこなかった。強制追放を認めたことになる」と申し立て理由を説明している。
 
ただ、豪州での普遍的管轄権での起訴は司法長官(閣僚)でないとできない規定になっており、訴追へのハードルは高い。起訴されれば、スーチー氏は裁判所への出頭を求められる。【3月17日 朝日】
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もちろん、実際に起訴されるようなことはないのでしょうが、ミャンマー民主化の期待を込めてノーベル平和賞が授与されたスー・チー氏を取り巻く空気は様変わりもしています。

豪・ASEANの特別首脳会議でも厳しい意見が出されたものと思われます。

****豪・ASEAN首脳会議、ロヒンギャ問題を議論 スー・チー氏からも説明****
オーストラリアのシドニーで18日、同国とミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問らが出席する東南アジア諸国連合の特別首脳会議で、イスラム系少数民族ロヒンギャの問題が議論された。
 
スー・チー氏は、ミャンマーのラカイン州で政府軍によるロヒンギャ弾圧を逃れ隣国バングラデシュに70万人近くのロヒンギャが流出している事態にも沈黙を貫き続け、国際社会からの激しい批判にさらされている。
 
ロヒンギャの人道危機問題は、シドニーで同日まで開かれた豪・ASEANの特別首脳会議でも主要な議題となった。
 
オーストラリアのマルコム・ターンブル首相は会議後の記者会見で「ラカイン州での状況を、長時間かけて議論した」と述べた。スー・チー氏自身からも、ロヒンギャ問題に関して時間をかけた話があったという。
 
今年のASEAN議長国を務めるシンガポールのリー・シェンロン首相も同じ記者会見で、ロヒンギャをめぐる現在の状況は「ASEANの全加盟国の懸念事項だが、ASEANは干渉したり結果を強要したりはできない」と述べた。
 
そのうえで両首相は、ロヒンギャ問題の長期的な解決策に到達するための取り組みを支援し、ロヒンギャ難民らへの人道的支援を提供していくと述べた。【3月18日 AFP】AFPBB News
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強まるミャンマー政府とスー・チー氏の責任を問う声
国軍への影響力を彼女が有していないことや、国民一般のロヒンギャへの嫌悪感が強く、世論を味方につけての動きもとれないこと、それどころか、ロヒンギャへの宥和的な対応をとれば国民世論から批判を受けかねないことなど、スー・チー氏が置かれている政治状況が難しいものであることは事実ではありますが、民主化運動の象徴としての期待が大きかっただけに、沈黙を守るスー・チー氏への失望も大きなものとなっています。

また、依然としてロヒンギャの厳しい状況が続いていることに関しては、やはり政治の責任者として、“権限がない”云々では済まされないでしょう。

****ミャンマーのロヒンギャ迫害に「大量虐殺の性質」 国連特別報告者****
ミャンマーの人権問題を担当する国連の李亮喜(イ・ヤンヒ)特別報告者は12日、ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャに対する迫害は「ジェノサイド(大量虐殺)の性質」がみられると指摘し、迫害の責任はミャンマー政府にあるとの認識を示した。
 
仏教徒が多数派のミャンマーでは軍がロヒンギャの掃討作戦に乗り出した昨年8月以降、70万人近いロヒンギャが北部ラカイン州から隣国バングラデシュに避難している。
 
ロヒンギャに対して兵士や自警団員らが放火や殺人、レイプに及んだとする証言もあり、米国や国連は民族浄化の疑いがあると非難する一方、ミャンマー政府はロヒンギャ武装集団「アラカン・ロヒンギャ救世軍」による襲撃に対応したものだとして、迫害を断固否定している。
 
しかし李氏は12日の国連人権理事会で、ラカイン州でのロヒンギャ迫害について「ジェノサイドの性質を有しているとの確信を強めている」と述べ、「最大級の強い言葉で説明責任を求める」と糾弾した。
 
李氏はミャンマーへの入国を同国政府から禁じられているが、生きたまま火をつけて殺害するといった無差別殺人に関する「信頼ある報告」があったと懸念を口にした。

また、責任について「命令を下した人々と暴力に及んだ人々を追求しなければならない」と言及し、迫害を放置した政府指導部にも責任があると強調した。
 
ロヒンギャ迫害をめぐってはゼイド・ラアド・アル・フセイン国連人権高等弁務官も先週、ミャンマーでの残虐行為の刑事告発も視野に入れた新たな国際調査団の組織を呼び掛けた。【3月13日 AFP】
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****スー・チー氏にも「責任ある」 ロヒンギャ迫害で国際調査団長****
ミャンマーのイスラム教徒少数民族ロヒンギャ迫害に関し国連人権理事会が設置した国際調査団のダルスマン団長は12日、「調査の結果、大規模な暴力があったのは明らかで、国際法違反の犯罪といえる」と指摘した。

ミャンマー指導層の責任にも言及し、アウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相にも責任があるとの見方を示した。ジュネーブで共同通信のインタビューに応じた。
 
ダルスマン氏は12日、人権理で調査結果を報告。ミャンマー政府が入国を認めないため、周辺諸国でロヒンギャ難民ら600人以上から迫害の実態について聞き取り調査をした。【3月13日 共同】
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進まぬ帰還作業 未だに続く民族浄化の動き どういう資格で帰還できるのか?】
70万人近くが難民化したロヒンギャのバングラデシュからの帰還は、今年1月23日からを予定していましたが、作業が遅れています。

ミャンマー政府は14日、「帰還を進める準備はできている」と述べ、また、ラカイン州のロヒンギャが居住していた地域で、国際メディアに取材を許可する意向も表明しています。

こうした動きは、メディアを通じて帰還への取り組みを公開し、高まる国際批判をかわす狙いがあると思われます。

ただ、作業は遅延しています。

****身元確認374人にとどまる=ロヒンギャ帰還でミャンマー****
ミャンマーのミン・トゥ外務次官は14日、ネピドーで記者会見し、西部ラカイン州から隣国バングラデシュに逃れたイスラム系少数民族ロヒンギャの帰還に向け、身元確認できたのは374人にとどまっていることを明らかにした。次官は「374人については受け入れる用意がある」と明言した。
 
バングラデシュはこれまでに帰還対象者8032人のリストを送ってきたが、指紋や顔写真がないなどの不備が多かったという。

ミャンマー政府は身元が確認できなければ帰還を認めない方針。両国は1月23日の帰還開始で合意していたが、先送りされたままとなっている。【3月15日 時事】
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そもそも、ロヒンギャが居住していた地域での安全も確認されず、暴力の責任の所在も明らかにされていない状況で、ロヒンギャの多くが帰還を拒んでいると報じられています。

ラカイン州ではいまだにロヒンギャ追放・民族浄化に向けた力が働いているとも言われています。

****ミャンマー(ビルマ):ロヒンギャを飢えに追い込む作戦 帰還は時期早尚****
ミャンマーは、依然としてロヒンギャに対する民族浄化を続けている。食糧補給の道を断つ「強制的飢餓」もその一つだ。国連が発表した。

この卑劣な民族浄化作戦は、アムネスティがロヒンギャの人びとへの聞き取りで確認した事実とも一致し、疑いようもない事実である。

ロヒンギャの難民たちは口々に、真綿で首を締めるような兵糧攻めで、住み慣れた土地から追い出されている様子をアムネスティに語った。

この状況では、バングラデシュのロヒンギャ難民の本国送還は、はなはだ時期尚早だ。安全が確保され、安心して自主的に帰国できるようになるまで待つべきだ。

ミャンマー当局は、武力であろうと強制的飢餓であろうと、ロヒンギャの人びとを追い出すいかなる作戦も停止すべきである。また、国際社会は今こそ、武器の禁輸や特定の制裁など実効性ある対応を取らなければならない。

背景情報
アムネスティは2月7日の記事で、ロヒンギャの人びとが、食糧を断たれ、所持品を盗まれ、子どもを含む女性たちが性的暴力を受けるという民族浄化がいまだ続いている状況を報告した。【3月13日 国際事務局発表ニュース】
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****ロヒンギャの「民族浄化」は今も継続 国連の人権問題担当者が主張****
ミャンマー北部ラカイン州でイスラム系少数民族ロヒンギャに対する暴力が横行している問題で、国連の人権問題担当特使は6日、同国では現在も恐怖と強いられた飢えを伴う「民族浄化」が続いていると主張した。
 
昨年8月にミャンマー軍がロヒンギャ掃討作戦に乗り出して以降、兵士や自警団員らによるロヒンギャへの暴力、殺人、レイプ、放火についての証言が絶えない。
 
国連人権担当アンドリュー・ギルモア事務次長補はバングラデシュのコックスバザールにある難民キャンプで新たに到着したロヒンギャの人々と対面した後、「ロヒンギャの民族浄化は続いている。コックスバザールで私が見聞きしたことからは、それ以外の結論を導くことができると思えない」と主張した。
 
また「暴力の性質は、昨年における流血の事態および集団レイプの激発というものから、恐怖と強いられた飢えという軟性のものに変わった」と指摘。
 
同氏はミャンマー政府がロヒンギャの帰還受け入れを開始すると約束したものの、近い将来に可能となることは「あり得そうもない」と述べ、「ミャンマー政府が世界に対して、ロヒンギャの帰還者を受け入れる用意があると言い立てているが、一方で同時に軍はロヒンギャをバングラデシュに追い立て続けている」と話した。【3月6日 AFP】*****************

帰還するにしても、どういう資格・地位で帰還するのか、ミャンマー国民として帰還できるのか、外国人として受け入れるのか・・・・も問題になります。

****援助金よりも安全の担保を」ロヒンギャ問題に見る日本の責務****
・・・・ミャンマー外務省は「2年以内に全員を帰還させる」と宣言。日本政府もこれに対し、1月12日に河野太郎外務大臣がアウンサンスーチー国家顧問と首都ネピドーで会談し、ロヒンギャ難民帰還のために「ミャンマー政府に寄り添う」として約25億円の支援を申し出た。

これらの動きはあたかも事態が平和裏に収束へ向かっているかの印象を与えた。

しかし、決してそうではなかった。筆者は帰還開始が決まった1月16日にクトゥパロンの難民キャンプを訪れた。冒頭のコメントはそのときにコミュニティーの長とも言える75歳の老人から聞いた言葉である。

「故郷には誰もが帰りたいと思っている。しかし、ミャンマー政府が提唱している帰還と再定住はとうてい受け入れることはできない。我々は帰っても国籍のないまま外国人として登録されるのだ。収容されてラカイン州の外に行くことも就労の自由もない。何よりもまた迫害の恐怖に晒されて殺されてしまうことが怖い」

そもそもロヒンギャに対する民族浄化は、1982年に制定されたビルマ市民権法によってミャンマー国籍を剥奪され、違法移民におとしめられて合法的に行われてきた。

今回の合意に基づいて帰国を果たしたとしてもその地位は何ら変わらず、しかも外国人として自ら登録してしまえば、父祖の土地を完全に放棄することになり、いつ何時再び追いたてられるか分からない。【3月17日 AERAdot.】
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更には、ロヒンギャの集落に、治安部隊の施設を設営しているとの情報も。

****ミャンマー政府、ロヒンギャ集落に治安施設を設営か アムネスティが報告書****
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは12日、ミャンマー政府が軍の掃討作戦によって壊滅状態になったイスラム系少数民族ロヒンギャの集落に、治安部隊の施設を設営しているとする報告書を発表した。

ミャンマー政府は北部ラカイン州から隣国バングラデシュに避難している何十万人ものロヒンギャの帰還を進めているが、計画に疑念を抱かせる事態となっている。
 
アムネスティは報告書「ラカイン州の再生」で、ロヒンギャの集落で軍用施設やその他の建造物が今年に入って急増していると、入手した衛星写真と取材を基に指摘している。
 
アムネスティで危機対応を統括するティラナ・ハッサン氏は施設について、「ロヒンギャが帰還すべき場所にミャンマー当局が建設をしていることを示している」と説明。また、建設において現存する家屋が破壊されたケースもあるという。
 
アムネスティは衛星写真に写っているのが一部の地域であることを認めているものの、写真にはロヒンギャの帰還予定地に治安部隊の設備やヘリポート、道路が造られている様子が捉えられていると主張している。(後略)【3月12日 AFP】
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こうしたロヒンギャ民族浄化の動きが未だ収束していないことを推察させる情報が報じられる現状では、ミャンマー政府が本気でロヒンギャの帰還を進めようとしているとは考えにくく、沈黙を守るスー・チー国家顧問が批判の矢面に立たされるのはやむを得ないことでしょう。

 
コメント (2)
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