孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国が世界における存在感を着実に強める流れの中で日本は?

2017-01-01 22:31:23 | 中国

【1月1日 CNN】

【アフリカ 「一般の市民は中国に対して好意的な感情を持っている」】
圧倒的な資金力を背景にアフリカへの投資・支援を拡大して、その影響力を拡大している中国ですが、従来は資源獲得を目的とした投資が多かったのに対し、最近ではインフラ整備への投資が主流となっているようです。

また、貿易をとおした安価な中国商品の氾濫も、中国の存在感を住民の目に焼き付けるところとなっています。

ただ、中国資本による工事と言っても、中国人労働者を大量投入して工事の形が多く現地住民の雇用拡大に役立っていないとか、環境問題等で現地との住民とのトラブルが起こるなどのニュースも絶えません。

マダガスカルからの下記ニュースもそんなトラブルのひとつです。

****ビジネス面で存在感拡大の中国、反発強めるマダガスカル住民****
アフリカ南東沖のインド洋に位置するマダガスカルで、金鉱山の開発を予定していた中国企業が現地住民の激しい反発に直面し、空のテントとたばこの吸い殻を残して遂に撤退した。

中部ソアマーマニンの小さな町はここ数か月、中国の産金業者ジウシンに対する抗議活動にのみ込まれてきた。

ジウシンは面積7500ヘクタールの鉱区で40年間の金採掘免許を取得。これを受けて住民は毎週木曜日にデモを行い、鉱山の操業で農業が危険にさらされる恐れがあると主張した。
 
これが一因となり、新たに押し寄せている中国出資者らへの反感がマダガスカル全土に広がった。中国はマダガスカルにとって最大の貿易相手国であるものの、中国の存在感が高まりつつあることへの嫌悪感が、ソアマーマニンだけでなく全国各地で公然と示されるようになった。
 
中国は天然資源の確保を目的にアフリカにおいてビジネス面で存在感を拡大し、市場には中国製品があふれている。こうした状況を背景に、アフリカでは反中感情が高まりつつある。【12月18日 AFP】
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中国自身にも、これだけ投資・支援しているのに、結果が十分に伴っていないのでは・・・という疑念・反省もあるようです。

****なぜだ! 中国人はこんなに支援してるのに! アフリカ人は日本に期待=中国報道****
安倍晋三首相は2016年8月末に開かれた第6回アフリカ開発会議(TICAD6)で、今後3年間で官民あわせて総額300億ドル(約3兆5178億円)の投資を行う方針を示した。

だが、現時点では中国のほうがアフリカ進出で日本を先行している状況にあり、アフリカに対する影響力という点でも中国のほうが日本を上回っていると言えよう。

しかし、中国メディアの今日頭条はこのほど、「中国人はアフリカのために一生懸命汗を流し、金も使っているというのに、なぜアフリカ人は日本に期待を寄せるのか」と疑問を投げかける記事を掲載した。

記事はまず、アフリカで広まっているという1つのジョークを紹介。アフリカ人の子どもが母親に「万物を創造した神様」の居場所を訊ねたところ、アフリカ人にとって身の回りのすべてのモノが中国製であることから、母親は「神様は中国にいる」と答えるという笑い話だ。

アフリカ人にとって「メード・イン・チャイナ」がいかに身近で、必要不可欠な存在であるかを示すジョークだが、記事は「アフリカ人の衣食住はすべてにおいてメード・イン・チャイナなしでは成り立たない」と論じた。

だが、ケニアのナイロビなどでは「街で見かける車のほとんどが日本車」であると伝え、信頼性の高さから人気となっていることを紹介。
一方、アフリカ進出では中国のほうが日本より先行しているにもかかわらず、アフリカで中国車を見かけることはまずないと伝え、「自動車」を通じて日本はアフリカ人の対日観を良好なものにしていると論じた。

また、ナイロビ中心部には日本の援助によって整備された道路があり、道路の中心には日本の援助によるものであることを示す石碑が存在すると紹介。

また、もともと片側4車線の道路を整備する計画であったが、現地の人びとがマラソンやランニング好きであることを把握していた日本は片側2車線に計画を変更、歩道を広くしたことで現地の人びとはゆったりと走ることができるようになったと紹介した。

中国もアフリカへの進出を積極化し、支援も行っているが、「中国人がアフリカのために一生懸命汗を流し、金も使っているというのに、それでもアフリカ人が日本に期待を寄せる」理由は、日本の支援は現地のニーズに合わせた内容であることを紹介している。【12月26日 Searchina】
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何事につけ反省は重要なことで、これまでの中国の支援・投資にかけていたもの、たとえば、現地ニーズへの配慮などを重視するようになれば、アフリカ諸国にとっても幸いなことですし、そういう形で中国の思考様式が、札束で頬を叩くようなものから変化していくのであれば、日本としても中国と“まともな付き合い”をしていくうえで資するものがあるでしょう。

上述のように、トラブル等は多々ある中国の投資・支援ではありますが、一面においては、それは量的に拡大するなかでは不可避なものもあり(日本の支援事業でも現地トラブルが皆無という訳でもないでしょう)、全体的な観点から言えば、やはりそうした投資・支援、商品流通の拡大をとおして、中国の存在感が高まっているし、今後もますますその流れは強まるであろうと考えるべきでしょう。

****アフリカは中国をどう見ているのか<1> 中国マネーを歓迎****
小規模な食品事業から巨大な鉄道建設プロジェクトに至るまで中国がアフリカ全土で投資を拡大する中、将来的な対中依存に警鐘を鳴らす声が出てきている。

だが、このほど発表された報告書によれば、アフリカの人々は実際には中国の投資家を歓迎しているという。

報告書はアフリカの研究者らが参画する調査プロジェクト「アフロバロメーター」がまとめたもの。
これによると、アフリカの人々の63%は中国の持つ影響に対して「やや好意的」もしくは「非常に好意的」な見方を示した。

一方、「やや否定的」もしくは「非常に否定的」な見方を示した回答は15%にとどまっている。

報告書の共著者で同プロジェクトを統括するエニウェイ・チングウェティ氏は、アフリカには中国に対する否定的な言説もあるとしつつも、「アフリカに対する貢献度から、一般の市民は中国に対して好意的な感情を持っていると思う」と述べる。

中国に対する態度は国ごとに異なる。マリ(中国に好意的な回答者は92%)やニジェール(同84%)、リベリア(同81%)といった国の人々は中国の進出を特に歓迎している。

アフリカの人々が最も歓迎しているのは中国の文化や言語ではなく、中国からもたらされる投資の可能性のようだ。中国への好意的な見方に最も寄与している要素は何かという質問に対しては、インフラ投資との回答が最上位に来た。

アフリカにおける中国のインフラ投資額は他のどの国よりも多い。エチオピア、ケニア、タンザニア、アンゴラといった国が中国資金の最大の受け皿になっている。

チングウェティ氏によれば、アフリカにおける中国のビジネス活動で主要な位置を占めているのはインフラ開発だ。今回の報告書によれば、中国は小規模事業や食品店への投資も行っているという。

報告書の筆頭著者であるボツワナ大学のモゴポディ・レコルウェ教授は、手頃な価格の自動車や携帯電話をアフリカにもたらしている点も中国に対する好意的な見方の要因となっていると指摘。

「こうした商品はかつて非常に高価だったが、今では市場にあふれているため価格が下落した。以前は人々の手が届かなかった商品も購入できるようになった」と述べる。

レコルウェ教授によれば、アフリカ諸国とのビジネスの機会を探っているのは中国だけではない。フランス語圏を中心に旧宗主国が今でも影響力を保っているという。

だがチングウェティ氏は、一部の国では旧宗主国の影響力に陰りが見られるようだと指摘。米国と中国がアフリカにおける主要なプレーヤーになっているとの見方を示す。【1月1日 CNN】
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東南アジアで「新たなファン獲得」】
アジアにおける中国の存在感の拡大は、南シナ海問題に見るように、その手法の良し悪しは別として、もはや大きな流れとなっており、これまでのカンボジア・ラオスといった国々加え、最近はフィリピンやインドネシアなども中国との関係を強化しています。

トランプ次期大統領のTPP離脱宣言が近々行われれば、その流れは一層加速するでしょう。
中国も、それを見越して東南アジア諸国への接近を強めています。

****中国が東南アジア諸国への接近強める、「新たなファン獲得*****
2016年12月14日、シンガポール英字紙ザ・ストレーツ・タイムズは、「中国は東南アジアに新たなファンを獲得した。経済面でのメリットを与えられる存在だ」とする記事を掲載した。環球時報(電子版)が伝えた。


中国は東南アジアで貿易、投資分野で新たな一手を繰り出そうとしている。米国で保護主義を唱えるトランプ次期大統領誕生を控えた今、世界経済の先行きが不透明になったため、その動きは加速している。

世界金融大手クレディ・スイスによると、東南アジア諸国連合(ASEAN)主要6カ国に対する中国からの直接投資は今年、前年に比べてほぼ倍となった。

フィリピンやマレーシアも中国への傾斜を明確にしている。フィリピンのドゥテルテ大統領は10月の初訪中時、米国との関係を断ち切り、中国に接近すると言明。中国もフィリピンとの経済関係を強化すると表明した。マレーシアのナジブ首相も11月に中国を訪問。エネルギー、鉄道など基礎インフラ部門で、約300億ドル(約3兆4500億円)規模の経済協力で合意した。

クレディ・スイスによると、中国からASEAN主要6カ国への投資は今年160億ドル(約1兆8400億円)前後。対外投資に中国が占める割合はタイで3割、マレーシアで2割に達している。【12月16日 Record China】
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インドとの綱引きが続く南アジアでも存在感は強まる
南アジアでは、インドと中国の“綱引き”が行われています。

****中国、ネパールが来年初の合同軍事演習 インド紙報道****
インド紙ヒンズーは22日付で、中国とネパールが来年2月、対テロで初の合同軍事演習を行うことで合意したと報じた。中国には、ネパールへの影響力を強めるとともに、チベット地方の「高度の自治」要求運動がネパールへ拡大することを抑止する狙いがありそうだ。
 
ネパール国防省は報道を確認していないが、実現すれば、ネパールと安全保障や経済などで密接な関係を持つインドを刺激することになりそうだ。(中略)
 
ネパールでは昨年9月、新憲法が制定された際、親インドの南部住民「マデシ」が政治的権利の拡大を求めて政府への抗議運動を展開し、インドとの国境を封鎖した。ヒマラヤの内陸国ネパールは、ガソリンや日用品などの輸入の大半をインドからの物流に依存しており、昨年4月の大地震で被災した市民は物資不足に見舞われた。
 
新憲法成立直後にネパール首相に就任したオリ統一共産党議長は、「インドによる非公式の国境封鎖だ」と反発し、インドの関与否定をよそにもう1つの隣の大国、中国に接近。中国は大地震後、ネパールのインフラ整備支援を加速させ、カシミール地方などの領土問題で対立し、チベット亡命政府の拠点があるインドに対抗している。
 
オリ政権は今年7月、内戦時の戦争犯罪の扱いなどをめぐり、元反政府武装勢力のネパール共産党毛沢東主義派の不満を受けて退陣し、8月、毛派のダハル議長が首相に就任している。【12月22日 産経】
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親中国路線を進めたスリランカ・ジャパクサ前政権から代った現シリセナ政権は、親中国路線見直しを行っていると言われていましたが、やはり中国抜きでは難しいようです。

****スリランカのハンバントタ港、中国企業が株の80%取得へ****
スリランカ政府は14日、中国の援助で建設した南部ハンバントタ港について、スリランカ国営企業の株式の80%を中国国営企業に長期貸与する方針を明らかにした。来年1月初めの合意を目指す。

中国は、インド洋周辺で港湾整備を支援する「真珠の首飾り戦略」を進めており、地域への影響力を強めそうだ。(中略)

ハンバントタ港はラジャパクサ前大統領が2010年、自身の地元に建設した。今も残る債務13億5千万ドルの大半は、中国輸出入銀行からの年率6・3%の借り入れだ。中国企業に開発を委ねたが、新港は、完成後に沖合に見つかった巨大な岩の破壊が必要になったほか、需要が少なく、現シリセナ政権は運営に苦心してきた。
 
中国の新シルクロード(一帯一路)構想に賛同したラジャパクサ前政権が、インフラ整備などで負った中国からの債務は80億ドルに上るとされる。シリセナ政権は前政権を批判し、過度の対中依存を見直してきたものの、財政が逼迫(ひっぱく)する中、港の株式を中国へ引き渡すしかなかったようだ。(後略)【12月15日 産経】
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インド側も中国の影響力拡大を警戒していますが、伝統的にインドの影響力が圧倒的だったネパール・スリランカでも中国の存在感は確実に大きくなっています。

経済関係重視の欧州
欧州は中国共産党の一党支配・強権支配に対する拒否感がときに噴出するものの、地理的に遠いということもあって、中国との間の経済関係は重視するが、外交安全保障の関係についてはあまり関心がない・・・といったところが実態ではないでしょうか。

中国民主活動家の劉暁波氏に平和賞を授与して以降、中国との関係が悪化していたノルウェーも経済重視の観点から、中国との関係を改善させています。

****中国、ノルウェーが6年ぶりに関係正常化 「一つの中国」堅持とノルウェー 「深く反省」と中国も評価****

中国官製メディアは20日、ノルウェーのノーベル賞委員会が2010年、中国民主活動家の劉暁波氏に平和賞を授与して以降、悪化していた両国の関係が正常化したと報じた。

中国外務省の華春瑩報道官は同日、「ノルウェー側は深く反省して教訓を学んだ」とノルウェー政府の対応を評価した。
 
ノルウェーのブレンデ外相が19日、北京で王毅外相と会談し、関係正常化で合意。両国は自由貿易協定(FTA)交渉を進めることも確認した。会談後に発表された共同声明では、ノルウェー政府が「“一つの中国”政策を堅持し、中国の核心的利益を高度に重視する」と強調された。
 
中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は20日、「“中国を怒らせてはいけない”ことをノルウェーは6年かけて分かった」との見出しの社説を掲載。「一つの中国」の原則に挑戦するトランプ次期米大統領をも牽制(けんせい)した格好だ。
 
中国は劉氏への平和賞授与に、「内政干渉だ」と激しく反発。ノルウェー産サーモンの輸入を大幅に制限するなど、事実上の報復措置を発動していた。
 
ノルウェーからの報道によると、13年から政権を担うソルベルグ首相は19日、「経済大国との関係修復」がもたらす効果に期待感を表明した。一方、北極海航路の開拓に力を入れる中国にとっても、沿岸大国ノルウェーと関係強化を進めるメリットは大きい。【12月20日 産経】
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【“ウィン・ウィン”の“取引”を目指す米中
アメリカ・トランプ政権は、再三触れているように、当面はパフォーマンス的な中国バッシングを行うでしょうが。最終的には“ウィン・ウィン”の関係で“取引成立”となるのではないでしょうか。

中国への拒否感が強い“少数派”になりつつある日本
日本には、いろんな事情があって中国への抵抗感が強く存在しますが、世界で中国が存在感を強めている、これからも更に強めるであろう流れのなかでは、異質な立場になりつつあります。

****世界の国々は中国の台頭をポジティブに評価、日本とベトナムは憂慮****
2016年12月17日、環球時報は、環球世情調査センターが行った調査で、日本人とベトナム人が最も中国の台頭に憂慮を示していることがわかったと伝えた。

同センターが11月10日〜12月8日に16カ国の18歳以上の一般市民に行った調査によると、多くの国が中国の台頭にポジティブな認識を持っている一方、日本とベトナムでは依然として憂慮を示す回答が多く、中国に対するネガティブな印象が強いという。

このほか、「中国とわが国に領土問題が発生した場合、米国に介入して解決してもらいたい」との回答は昨年の2.67点から2.83点に増加し、「中国は良い隣国である」は3.13点から2.92点にやや減少したという。

分析では、「2016年、中国は前年に比べて歴史に絡む問題が減ったが、日本が南シナ海問題に手を出すという新たな問題が起き、南シナ海問題において中越関係が氷点下に冷え込んだ」とする一方、「中国が進める互恵関係はより多くの周辺国の人々に受け入れられるだろう」としている。【12月18日 Record China】
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上記調査に関しては、“世界の国々は”と言ってはいますが、一体どういう国々を対象に、どういう調査を行ったのか、よく知りません。

それはともかく、日本も単に“中国は嫌いだ”とか、“けしからん”と言っているだけではすまない流れにあることは、よく認識してしておく必要があるでしょう。

“嫌いな”“けしからん”相手とも、場合によってはうまく付き合う必要も・・・とか、なぜ日本が中国を嫌うのか改めて自問する必要もあるのでは・・・とか言うと、新年早々あちこちから怒られたりしますので言いませんが、世界の流れ、政治的・経済的影響などはよく考慮することは大切でしょう。

更に言えば、すでに答えの出ているような日米関係や、どうなるかわからないロシアとの関係より、中国とどう付き合っていくのか・・・というのが、日本にとって真正面から取り組むべき政治課題でしょう。
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