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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー北東部で中国系少数民族と政府軍の戦闘 中国国内には介入を求める声も

2015-02-24 21:37:36 | ミャンマー

(2月17日、ミャンマー・コーカン地区ラウカイで起きた戦闘で、避難する住民=ロイター・共同【2月22日 東京新聞】)

中国系コーカン族側が中国人雇い兵を使っているとの見方も
ミャンマー北部カチン州で少数民族コーカン族と政府軍の戦闘が拡大していること、この地域には木材など密貿易のために多数の中国人が入っており、戦闘激化で足止め状態になっていること、もともと少数民族の問題は、密貿易の利権の問題と表裏の関係にあることなどは、2月15日ブログ「ミャンマー ロヒンギャ問題でも、少数民族との停戦でも“黄信号”」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150215)でも取り上げました。

戦闘は依然として続いており、むしろ拡大の様相を呈しているようです。

****ミャンマー北東部の戦闘拡大=和平交渉・総選挙に影響も****
中国との国境に近いミャンマー北東部シャン州コーカン地区で9日に始まった国軍と中国系少数民族コーカン族武装勢力の戦闘は2週間が経過したが、沈静化の兆しはなく拡大の様相を見せている。

政府が全国停戦協定締結を目指して少数民族武装勢力と進めている和平交渉や、今秋予定される総選挙に影響を及ぼしかねないとの見方も出ている。

コーカン族武装勢力は、2009年まで支配下に置いていたコーカン地区の奪回を目的に攻撃を開始したとされ、兵力は2000~3000人とみられている。

ミャンマー政府は17日、コーカン地区に非常事態を宣言し戒厳令を発令したが、その後も戦闘は終息せず、政府系メディアによると、23日の交戦で国軍要員3人と武装勢力6人が死亡した。政府側発表ではこれまでに双方合わせて100人以上の死者が出ている。

国軍は、ミャンマー政府と対立するカチン独立軍(KIA)など一部の少数民族武装勢力も戦闘に加わってコーカン族武装勢力を支援しているほか、コーカン族側が中国人雇い兵を使っているとの見方を示している。【2月24日 時事】 
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コーカン族は、もともとは中国から移住した漢民族で、言語も中国語系であることから、中国との関係は非常に強いものがあります。

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コーカン族の祖先は、17世紀に雲南省から移住した明朝の遺民であると考えられ、楊姓の土司が支配した。

1885年にイギリスが上ビルマを併合した後も、楊氏は事実上の藩王とみなされ、依然としてコーカン地区の実権を握っていた。

ビルマ独立後は上ビルマと下ビルマが統一され、土司政権は終わりを告げた。その後の内戦を経て、コーカンは「ミャンマーシャン州第一特区(コーカン)」となった。

1997年の推計で、コーカン族は近年雲南省から移住した人々と合わせてミャンマーの中国系住民の30~40%を占める。【ウィキペディア】
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坂本馨氏のブログ(http://blog.livedoor.jp/airin5/archives/66172855.html)によれば、反清復明を掲げる明の残党がミャンマー北部に逃げ込んで拠点を構えてゲリラ戦を展開したのが、コーカン族の由来とのことです。

その後、この地域では中国共産党政権へゲリラ戦で抵抗する国民党残党が入り込み、勢力を保ったこともあります。

ミャンマー・タイ・ラオス、更には中国との国境地帯で、中央政府の勢力が行き届かないことも多いこの地域は、以前からシャン族、ワ族、コーカン族、カチン族、ビルマ共産党、中国共産党、国民党残党、「麻薬王」クンサー率いる麻薬組織等々が入り乱れる一筋縄では行かない地域でもあり、ケシ栽培による麻薬取引がそうした勢力の資金源ともなり、「黄金の三角地帯」とも呼ばれたエリアでもあります。

****中国人傭兵が戦闘に参加」 コーカン族との戦闘でミャンマー国軍が批判****
ミャンマー政府軍幹部は23日までに、北東部シャン州で続く少数民族コーカン族の武装勢力との戦闘で、武装勢力側が元兵士の中国人を雇い兵として戦闘に参加させていると批判した。AP通信などが伝えた。
 
ャンマーの英字紙イレブン(電子版)によると、同高官は21日、首都ネピドーでの会見で、コーカン族との戦闘で拘束した「中国の市民」8人が中国人の戦闘参加を認めた、と説明した。

国境近くでは、中国の軍将校と市民らが軍事的な助言や指導を行っているとも話しているという。

会見では、武装勢力側から押収した銃器などの写真も示し、中国雲南省との結びつきが強い、シャン州のワ族武装勢力との関与を指摘。

北部カチン州などの武装勢力もコーカン族を支援しているとして非難した。コーカン族側は中国人雇い兵の存在を否定している。【2月23日 産経ニュース】
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中国系コーカン族を支援しているされるワ族はモン・クメール(カンボジア)系の少数民族で、中国雲南省南部とミャンマー北部シャン州、ラオス北部に暮らしています。

ワ族武装組織は“背後では中華人民共和国が影響力を行使していると考えられており、装備には中国製の物が多い。制服・制帽なども中国製、もしくは中国製のものを模倣した国産品を使用している。”【ウィキペディア】ということで、中国の影響力が強い組織のようです。

カチン族のカチン独立軍や、問題となっているコーカン族も、同様に中国の支援を受けているとも言われています。

中国のミャンマー少数民族武装組織への支援については“2013年現在、ミャンマー政府が親中路線を転換しつつある事から、中国からUWSA(ワ族武装組織「ワ州連合軍」)に対する軍事援助が再び活発化している。その中には、Mi-17ヘリコプターやTY-90地対空ミサイル(en)等、重装備の供与も含まれているという。”【ウィキペディア】という事情もあるようです。

ただ、いくら少数民族を支援しても、少数民族側がミャンマー全体を掌握することはあり得ず、ミャンマー政府の機嫌を損ねるだけのようにも思うのですが。
少数民族への影響力をてこにして、ミャンマー政府との交渉を有利に進めたいという思惑でしょうか。

ミャンマー少数民族の武装組織と政府軍の戦闘と言うと、映画ランボーのイメージもあります。
また、高野秀行氏の「南西シルクロードは密林に消える」(講談社)では、ミャンマー少数民族武装勢力は、ちょっと“ゆるい”感じも受けます。(高野氏のソマリアの著書も同様な感じがあります)

しかし、少数民族側が軍用ヘリコプターや地対空ミサイルを装備しているとなると、政府軍としてもなかなか大変です。

中国ネットでは“コーカン地区は中国にとっての『クリミア』” 中国政府は慎重姿勢
更に、中国人雇い兵となると、まるでロシアのクリミア・ウクライナ東部への介入をも思わせます。

実際、コーカン族が中国系であり、避難民が雲南省に流れ込んでいることから、中国国内では介入を求める声も強まっているそうですが、今のところ中国政府にはロシアのような介入の意図はないようです。

****ミャンマー戦闘で中国雲南省に難民流入 中国政府、世論に介入迫られる****
ミャンマー政府軍と、同国北部の中国系少数民族コーカン族など複数の武装勢力との内戦が今年初めに勃発し、戦火から逃れるために3万人以上の難民が国境を越え中国に流れ込んでいる。

中国の世論は同じ民族的起源を持つコーカン族に同情し、「人民解放軍を派遣すべきだ」との強硬論が高まっているが、本格的な対立は避けたい中国当局は国民に冷静を呼びかけ、火消しに躍起になっている。

コーカン族はミャンマー北東部の中国雲南省と隣接する地区に約20万人が住み、明末などに移住した中国人の子孫といわれる。今も中国の生活習慣を残し、中国語を話す人が多い。周辺の他の少数民族と同様、ミャンマー政府軍とは別に独自の軍隊を持っている。

今年1月、ミャンマー北部の少数民族、カチン族が、森林の過度な伐採などを理由に政府軍と衝突し、内戦が始まった。隣接するコーカン族の集落も巻き込まれて参戦したが、政府軍の攻勢で主要な町が次々と奪われ、約3万人の難民が雲南省に流れ込んだ。

コーカン族のリーダー、フォン・キャ・シン(彭家声)氏(85)が2月上旬、世界中の中国人と華僑に向けて「コーカン地区は古来の中華の領土。海外に捨てられた同胞を助けてほしい」と中国への復帰を示唆する声明を発表し、中国国内でコーカン族支援の機運が一気に高まった。

インターネット上では、「コーカン地区は中国にとっての『クリミア』で、中国もロシアに見習って併合すべきだ」といった書き込みが多く寄せられている。習近平体制が推進する愛国主義教育に伴い民族主義が高揚していることが主張の背景にあると指摘される。

しかし中国政府は、難民を積極的に受け入れたものの、「軍の派遣」を求める民間の声には距離を置く。外務省の報道官は定例記者会見で「中国はミャンマーの主権を尊重している」と繰り返し強調。

共産党機関紙、人民日報傘下の環球時報も社説で「中国社会の各方面は冷静さを保ち、早まった態度を取るべきではない」と呼びかけた。

中国にとってミャンマーは、パイプラインなどを通じてエネルギーを確保すると同時に、近隣外交を展開する上で不可欠な重要国だ。

コーカン問題に深く介入すればミャンマーとの関係が悪化し、国際社会から批判される危険も高く、慎重姿勢を崩していない。【2月23日 産経】
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中国系コーカン族にしても、それを支援するカチン族やワ族の武装勢力も、中国の支援を受けていると言われています。

反政府少数民族武装組織を支援しながらも、ミャンマー政府との正面切っての衝突は避けたい・・・という話のようです。

もちろん、中国にとってはミャンマー政府との関係が最大の関心事ですから、そういう話にもなる訳ですが、だったら少数民族側へ圧力をかけて停戦を仲介すれば・・・とも思うのですが、そう簡単な話でもないようです。
コメント
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