
(イラン核開発協議ではあまり顔が見えない中国ですが、イランを訪問した中国の王毅外務大臣は15日ザリーフ外相と会談、「イランと6カ国の核協議は、良好なプロセスを辿っている」と語っています。【2月15日 Iran Japanese Radio】)
【期限が迫るなかで、イラン側からは交渉手順についての異論も】
イランの核開発をめぐる交渉については、1月16日ブログ「イラン 94年のテロ事件がアルゼンチンで政治問題化 18日から核問題交渉再開 決断する段階」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150116 でも取り上げました。
18日にジュネーブで行われたイランと欧米など6か国の高官協議は、「雰囲気は非常に良かったが、多くの進展があったとは思わない」(フランス政府高官)ということで、双方の主張の隔たりを埋めることはできず、改めて2月初旬に再開することで一致し、終了しました。
昨年11月のウィーンでの協議で包括合意できず交渉期限を延長し、3月末までの「枠組み合意」、6月末までの最終合意を目指していますが、残された時間も少なくなっています。
事態の進展を図るべく、アメリカはケリー国務長官が22日にジュネーブでイランのザリフ外相と会談する予定になっています。
****<核問題>22日ジュネーブで米国イラン外相会談****
米国務省は19日、ケリー国務長官が22日にジュネーブでイランのザリフ外相と会談すると発表した。
イラン核問題の包括的解決を目指す国際協議の一環で、3月末に迫る枠組み合意の期限をにらみながら協議全体の前進を図る構えだ。
これに先行して米国からは19日にイラン核交渉の米代表であるシャーマン国務次官(政治担当)がジュネーブ入りし、イラン側と協議する。欧州連合(EU)高官も同席する。(後略)【2月20日 毎日】
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しかし、イラン側からは“3月末までの「枠組み合意」、6月末までの最終合意”という「2段階合意」への異論が示されており、協議は難航が予想されます。
****米・イランが直接協議へ 核問題巡り20日から ****
・・・・6カ国とイランは昨年11月、今年3月下旬までに枠組み合意を結び、詳細を詰めた上で6月末までの最終合意を目指すことで一致した。
だが、イランの最高指導者ハメネイ師は今月8日、欧米側が枠組み合意後に要求を拡大する可能性があるとして、2段階での合意を目指す方向について突然反対を表明し、一括合意を主張した。
イラン外務省のアフハム報道官も18日の会見で「2段階での合意はあり得ない」と明言した。
今後の協議では、交渉手順についても対立が深まる恐れがある。【2月19日 日経】
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確かに、詳細を詰めきらないままに枠組み合意しても、後で紛糾する可能性が多々ありますが、いきなり一括合意となると、何も形が示されないまま時間だけが過ぎることにもなりかねません。
【妥協を拒む国内外の強硬派】
交渉による解決を目指しているオバマ大統領は、当然ながら更なる期限延長については「現時点では役に立たない」と述べ、イラン側の決断を求めています。
****<イラン核>交渉延長、米大統領は消極的姿勢****
オバマ米大統領は9日、イラン核問題の包括的解決を目指す国際協議について、3月末の枠組み合意、6月末までの細部の詰めという期限の延長は「現時点では役に立たない」と述べ、消極的な姿勢を強調した。
また、「彼らが決断すべき時が来ている」とも述べ、包括合意の成立はイラン側の判断によるところが大きいとの認識を示した。メルケル独首相との会談後にホワイトハウスで行われた共同会見で述べた。
オバマ大統領は、これまで国連安全保障理事会常任理事国(米英仏露中)とドイツの6カ国がイランと行ってきた協議は、暫定合意でイランのウラン濃縮活動を事実上凍結するなど成果が出ていると改めて強調。
両陣営の溝は「十分に狭まった」と説明し、イランに示された提案は、平和的な原子力開発を認めつつ核兵器開発は阻止できるものだと述べた。
一方で、「イラン国内には(核問題での妥協を拒む)強硬派がおり、国内政治もある」と述べ、「包括合意が最終的に成立するかはまだ分からない」と語った。【2月10日 毎日】
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「国内には(核問題での妥協を拒む)強硬派がおり、国内政治もある」のは、アメリカも同様です。
イランへの不信感が強い野党・共和党は、イランのペースで時間稼ぎがなされているとし、制裁強化でイランへ圧力をかけるべきだとしています。
しかし、現時点での制裁強化は協議の枠組みを破壊してしまう危険が大きすぎます。
****<米国>民主党が対イラン追加制裁法案を2カ月凍結****
米民主党のメネンデス上院議員は27日、自らが野党共和党の上院議員とまとめた対イラン追加制裁を可能にする法案に関し、3月24日までにイラン核協議で枠組み合意が達成されない場合に限り可決を目指す意向を、他の民主党議員らとオバマ米大統領に書簡で通知したと明らかにした。米上院銀行委員会の公聴会で述べた。
イラン核問題の包括的決着を目指す国際協議は3月末までに大枠で合意し、6月末までに技術的細部を詰めた包括合意の達成を目指している。
メネンデス議員らの対応により、少なくとも約2カ月は追加制裁法案が可決されない可能性が高まった。
オバマ大統領は、法案についてイラン側の反発を招き交渉を決裂させかねないとして、議会を通過しても拒否権を発動する意向を示している。【1月28日 毎日】
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こうした議会事情を考えると、3月末までに何らかの成果を示せないと、オバマ大統領も苦しい状況に追い込まれそうです。
“(核問題での妥協を拒む)強硬派”は国外にも存在します。
イランの核開発を、安全保障上の脅威として絶対に容認しないイスラエルです。
アメリカ・オバマ政権は、このイスラエルに対し異例の批判を行っています。
****イスラエルに異例の批判=イラン核協議めぐり―米****
アーネスト米大統領報道官は18日の記者会見で、イラン核問題の外交解決に取り組む主要6カ国とイランの協議に関連し、強硬姿勢のイスラエル政府が「米国の交渉方針を一部で正確に伝えていないのは疑いない」と述べ、異例の批判を展開した。
報道官はイスラエルを念頭に、イラン核協議の内容をめぐって「都合の良い情報だけが切り取られ、米国の立場を歪曲(わいきょく)するため利用されている」と懸念を表明。
一方で、米政府がさまざまなレベルでイスラエルに情報提供していることも併せて主張した。【2月19日 時事】
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イスラエルを支援する立場にあるアメリカですが、イラン問題やパレスチナ問題をめぐって、保守派で強硬な姿勢を崩さないイスラエル・ネタニヤフ首相と、アメリカ・オバマ大統領のそりが合わないのは以前からの話です。
****オバマ氏、イスラエル首相と会わない 共和党議員の訪米要請に不快感?****
オバマ米大統領は、3月に訪米を予定するイスラエルのネタニヤフ首相と会わない意向であることが、22日明らかになった。
野党共和党のベイナー下院議長がホワイトハウスに「頭越し」で訪米を要請し、大統領報道官がこれに不快感を表していた。
ネタニヤフ首相は、ベイナー下院議長の招きで、米上下両院合同会議で、イランの核問題などについて演説する見通しになった。米メディアによると、ネタニヤフ氏側は、ホワイトハウスに事前に相談をせず、訪米を決めたという。
イラン核問題を巡っては、オバマ政権が対話に前向きなのに対し、共和党はイランへの追加制裁法案の可決を通じた強硬路線を主張しており、双方は鋭く対立している。
ネタニヤフ首相は、イランとの交渉に反対する立場だ。同首相が事前に相談もなく、米議会で共和党の「応援演説」をすると決めたことに、オバマ政権はカチンときた模様だ。
ネタニヤフ氏の訪米について21日、アーネスト大統領報道官は「国の指導者が外国を訪問するときは、その国の指導者に連絡を取るのが外交儀礼だ」と不快感をあらわにした。
22日になって、ホワイトハウス・国家安全保障会議の報道官は「米大統領が、選挙を控えた国の指導者や候補者に会わないのは、長く続けてきた慣例だ」と説明。
ネタニヤフ氏が3月17日に総選挙を控えていることを理由に、オバマ氏が面会しない方針を明言した。ケリー国務長官もネタニヤフ氏と会わないという。【1月24日 朝日】
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【ハメネイ師からの返書、「国籍不明の戦闘機」・・・イラン側の真意は?】
アメリカ・オバマ大統領は、イランとの協議に先立ち、最高指導者ハメネイ師に書簡を送っています。
****イラン最高指導者が米大統領に返信=対イスラム国には答えず―新聞報道****
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は13日、オバマ大統領が昨年10月にイランの最高指導者ハメネイ師に送った書簡に対し、同師からこの数週間内に返信があったと伝えた。イラン外交官が明らかにしたという。
オバマ氏は書簡で、イラン核協議の包括合意を前提に過激組織「イスラム国」への対応で共同戦線を張ることなどを提起。
イラン外交官によると、ハメネイ師はオバマ氏に敬意を表したものの、対イスラム国については態度を明確にしなかった。
イラン核問題の外交解決を目指す主要6カ国とイランの協議は、3月末までの政治合意を目指している。ハメネイ師は合意に向けて経済制裁の全面解除を求めており、交渉は難航している。【2月14日 時事】
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オバマ大統領からハメネイ師への書簡は、2009年に大統領に就任しイランとの対話を進めると表明して以来。公表されているもので5通目ぐらいになるのではないでしょうか。
イラン側の「ゼロ回答」とも報じられていますが、書簡が送られれ、それへの返信があったこと自体は好ましことでしょう。
アメリカとイランの関係は、表に出てくる話だけではよくわからないところが多々あります。
ハメネイ師は、“対イスラム国については態度を明確にしなかった”とのことですが、イランは対「イスラム国」空爆を実施した模様で、アメリカとの関係改善を模索していると見る向きもあります。
****国籍不明の「謎の戦闘機」も****
・・・さらに世界を驚かせたのが、イスラム国に攻撃を仕掛ける「国籍不明の戦闘機」の存在だ。
昨年12月に中東の衛星テレビ局、アルジャジーラが攻撃の様子を放送したという。CNNやウォールストリート・ジャーナルなどによると、戦闘機は外形からアメリカ製のF-4ファントム戦闘機と推定されたが、周辺で運用しているのは、アメリカと国交を断ち、犬猿の仲のイランだけだった。
イラン政府筋はこの空爆の事実を認め、「アメリカと連絡を取り合っているわけではない」などと説明。米国防総省のカービー報道官も「軍事行動についてイランと調整はしない」と述べたが「(イランの攻撃は)全体としてポジティブな効果がある」と肯定的にとらえていることを明らかにした。
イランは昨年9月にはアメリカの空爆に反対を表明しており、関係各国にとっては驚きの展開だ。(中略)
イランは同じシーア派の政権であるイラクを支持しており、そのイラク政権を脅かすイスラム国は「地域の安定を脅かす存在」として敵視してきた。また、イスラム国という「共通の敵」の出現でアメリカとの関係改善を模索していると見る向きもある。
イスラム国の殲滅に向けて展開される空爆だが、そこには各国それぞれの思惑が渦巻いている。【2月18日 産経】
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一方、核協議を一層難航させることにもなる悪材料も報じられています。
****イラン、核開発疑惑解明への協力怠る・・・IAEA****
国際原子力機関(IAEA)は19日、イランが核兵器開発疑惑の解明に必要な協力を怠っていると指摘する報告をまとめ、同機関の加盟国に配布した。
報告によると、イランはIAEAとの間で、核兵器製造に直結する高性能爆薬の起爆実験に着手したとする疑惑などについて、昨年8月までに情報提供すると約束していたが、期限から半年過ぎても履行していない。
イランと欧米など6か国は、3月末までに核問題の最終的な解決に向けた枠組みでの合意を目標としている。6か国は、核兵器開発疑惑の解明について、核問題を最終的に決着させるために欠かせない柱の一つと考えている。【2月20日 読売】
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イランとの核協議が決裂することは、イスラエルのイラン核施設空爆の懸念といった国際緊張を著しく高めることになります。その影響は中東情勢を介して日本にも及びます。
また、アメリカの制裁強化で改革に前向きと言われているイラン・ロウハニ政権は求心力を失い、国内で保守派の影響力が強まることにもなります。
そうしたことを考えると何とか協議での成果を期待したいところですが、世の中にはことさらに対立を好む人々も多く、なかなか・・・・。