孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

エボラ出血熱 流行中心地を隔離へ 欧米も感染拡大を警戒

2014-08-02 23:08:39 | 疾病・保健衛生

(治療を受ける感染者 “flickr”より By Médecins Sans Frontières https://www.flickr.com/photos/126392347@N06/14772299882/in/photolist-ovnU6y-oaovaZ-ovcyLo-otoZTj-o8N8Ur-ov8knp-ovnZAw-o8N9a6-o8NbD3-ovpFHM-ozpMYr-oxKS9x-ovGMU8-ox1ZV2-oy2Drp-ouc3SQ-ovp1UW-ofWcmi-oxp4TW-oysoJn-oe6gH8-ovXKVw-op4RPU-osrYY3-oh8aQT-oyfaoL-oxN6id-odQnyX-odTWgV-ocZjnV-odPX9H-ouQzWm-og7Q3o-oznMLg-owKiAp-ozxd3K-ogruCq-oxEsP4-o7Zwwq-otjkUG-oxtR8D-osbrrf-oxhLFF-odWo3F-owcvcL-oy9oKB-osHKDa-ofWk27-oex6TB-ofUF8W)

死者729人 WHO「緊急事態」認定も検討
6月24日ブログ“西アフリカで深刻な「エボラ出血熱」流行 「もはや制御不能」とも”(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140624)で取り上げた、3月に西アフリカで発生したエボラ出血熱は、「もはや制御不能」という悲観的な見解どおり、感染拡大は史上最悪の規模となっています。

エボラ出血熱は確実な治療法がないうえ、致死率が50〜90%と極めて高く、感染者の体液などに触れると感染するとされています。また、アフリカでは、葬儀の際にお別れの儀式として死者の体に直接触ることがあり感染拡大の一因になっているとも指摘されています。

世界保健機関(WHO)は7月31日、エボラ出血熱により729人が死亡したと発表しています。前回ブログのときから倍増しています。

****西アフリカで猛威、死者最悪の729人、渡航自粛勧告相次ぐ****
西アフリカでエボラ出血熱が猛威を振るっている。3月から始まった感染拡大は史上最悪の規模となり、世界保健機関(WHO)は7月31日、729人が死亡したと発表した。

関係各国は非常事態を宣言するなどして封じ込めに全力を挙げており、欧米諸国も感染の連鎖を防ごうと対策に乗り出した。
                 
感染が広がっているのはギニア(死者339人)、シエラレオネ(同233人)、リベリア(同156人)の3カ国。国境を接していないナイジェリアでも1人が死亡し、空路による感染拡大の懸念が欧米に広がった。(後略)【8月2日 産経】
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この間の感染拡大の様子は、各紙報道の見出しをいくつか並べてみてもよくわかります。

エボラ熱死者、500人突破=WHO【7月9日 時事】
エボラ出血熱流行、ギニアに対応センター開設へ WHO【7月12日 AFP】
西アフリカのエボラ出血熱、死者600人超える WHO【7月16日 AFP】
西アフリカのエボラ流行、治療施設の主任医師が感染 シエラレオネ【7月24日 AFP】
ナイジェリア:エボラ出血熱感染で初の死亡者【7月26日 毎日】
エボラ出血熱が広がる西アフリカ、リベリアが国境を封鎖【7月29日 AFP】
エボラ感染、「山火事」のように広がる 米当局が警告【7月29日 AFP】
エボラ出血熱 リベリアが緊急対策【7月31日 NHK】
エボラ出血熱 シエラレオネが緊急事態宣言【8月1日 NHK】
エボラ出血熱:WHO、対策会議を開催…西アフリカ首脳と【8月1日 毎日】
エボラ出血熱:WHO事務局長「人命損失は壊滅的な規模」【8月2日 毎日】
制御不能の速さで拡大=エボラ熱で首脳会議【8月2日 時事】
エボラ出血熱 WHO「緊急事態」か判断へ【8月2日 NHK】


最後のWHO「緊急事態」については、もし緊急事態と判断されれば、感染が国境を越えて西アフリカの3か国以外の国にも広がるおそれがあり、状況が極めて深刻だと認定されることになります。

アフリカ以外への感染拡大も懸念
一連の感染拡大のなかで、ナイジェリアでも死亡者が出たことは、アフリカ最大の都市部への拡大、及び航空機を利用した移動に伴う遠隔地での感染拡大の危険性を窺わせるものとして注目されています。

****エボラ出血熱、アフリカ以外に広がるか****
現在のエボラ出血熱の流行は、過去最大級の規模と言われている。世界保健機関(WHO)によると、今年2月以降1100人近い人々がウイルスに感染し、少なくとも660人が死亡している。

この数字にはまだ、ある死亡例が含まれていない。25日に死亡したリベリア政府関係者だ。世界の公衆衛生の当局はこうしたケースを恐れていた。

Q:リベリアの政府関係者パトリック・ソーヤー氏の死亡がとりわけ気掛かりなのはなぜか

A:ソーヤー氏は、アフリカ最大の都市であるナイジェリアのラゴスに到着して間もなく死亡した。ラゴスには2100万人近くが暮らしている。
同氏は航空機でリベリアの首都モンロビアからラゴスに入った。リベリアでは少なくとも129人がエボラ出血熱で死亡している。
WHOは、エボラ出血熱がリベリアや、最も被害を受けているもう2カ国、つまりギニア(313人が死亡)とシエラレオネ(224人が死亡)から近隣諸国に広がる可能性があると警告してきた。
また、エボラ出血熱にかかった人が航空機で移動すれば、アフリカ以外に広がる可能性が高まる。(後略)【7月29日 WSJ】
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この事態を受けて、アメリカ疾病対策センター(CDC)は28日、エボラウイルスは山火事のように広がると警告を発し、西アフリカへの渡航者は通常以上の予防策をとるように呼び掛けています。

西アフリカ以外の国においても、航空機による感染者の移動以外にも、西アフリカでボランティア活動などを行っている者が感染するリスクが拡大しています。

****エボラ流行地から撤収=患者と接触の2人隔離―米組織****
途上国にボランティアを送り出す米政府組織「平和部隊」は30日、エボラ出血熱が流行しているギニア、リベリア、シエラレオネの西アフリカ3カ国で活動するボランティア計340人を国外に一時退避させると発表した。

平和部隊はギニアに102人、リベリアに108人、シエラレオネに130人のボランティアを派遣している。

ロイター通信によると、平和部隊はエボラ熱に感染し死亡した患者と接触していたボランティア2人を隔離。経過を観察しているが、2人にエボラ熱の症状は見られないという。【7月31日 時事】 
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****エボラ熱封じへ欧米も厳戒*****
(米疾病対策センター)CDCは31日、感染が広がる3カ国への不要不急な渡航を控えるよう求める米国居住者向けの勧告を出した。

勧告は3段階のうち最も高い「レベル3」で、2003年の新型肺炎(SARS)の際にも出された。ドイツとフランスの外務省も同様の勧告を出した。

AP通信などによると、米国人医師らが現地で活動中にエボラ熱に感染し、本国に搬送され治療を受ける予定だ。【8月2日 産経】
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欧米諸国だけでなく、アフリカへの経済進出が進む中国も対策を進めています。

****エボラ出血熱で北京市表明「備えある。患者発生すればすぐ分かる****
西アフリカでエボラ出血熱の感染が過去最悪の規模に達したことを受け、北京市疾病予防コントロール・センターのホウ星火副主任は、同市内で感染の疑いが持たれる病例が出た場合、「速やかに発見できる」体制を整えるなど、準備を整えたと説明した。中国新聞社が報じた。(「ホウ」は「广」の中に「龍」)
(中略)
エボラ出血熱が流行しているのは、アフリカ西部のギニア、ナイジェリア、シエラレオネ、リベリアが中心で、中国から同4国に出かける観光客は少ない。

しかし中国では建設やエネルギー関連でアフリカに進出する企業も多い。多くの場合、中国人作業員を現地に派遣する。【8月1日】
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感染の中心となっている地域をすべて隔離して、人の動きを制限
発生の中心国であるギニア、シエラレオネ、リベリアでは学校の閉鎖、人が集まるイベントやデモの禁止、国境の封鎖などの緊急対策が取られていますが、治療法がないエボラ出血熱に対しては、結局のところ人の移動を禁じて封じ込める以外に対策がないようです。

****ギニアなど3か国、エボラ出血熱の流行中心地を隔離へ****
ギニア、リベリア、シエラレオネの3か国は1日、700人以上の犠牲者を出し史上最悪の流行となっているエボラ出血熱について、関係国の首脳らが出席した緊急会議で、流行の中心となっている同3か国の国境が接する地域を封鎖して隔離すると宣言した。

上記3か国とコートジボワールが加盟しているマノ川同盟のハジャ・サラン・ダラブ事務局長は「われわれは、発生数の70%以上を占めている国境をまたぐ地域に集中して、国家間レベルの重要かつ特別な措置を取ることで合意した」と述べた。「これらの区域は警察と軍が隔離する。これらの区域内で隔離される住民には物質的な支援が与えられる」

コートジボワールと世界保健機関(WHO)も出席した今回の会議では、1億ドル(約103億円)の対応策も発表された。

この地域の医療保健サービスを強化して治療、検査、接触者追跡を効果的に行うことや、各国の衛生法規に従った埋葬の実施、医療従事者にインセンティブ、治療、防護措置を提供して職場復帰を促すことなどが合意された。

ダラブ事務局長は隔離地帯の正確な範囲は明らかにしなかったが、流行の中心地はシエラレオネ東部のケネマから、ほぼ300キロメートル離れたギニア南部のマセンタまで広がっている。【8月2日 AFP】
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発生地域を隔離・・・・映画のアウトブレイクものではよく見られるシチュエーションです。
映画などでは、感染拡大を防ぐため感染地を封鎖して、中にいる者が外に出ることを銃で禁止し、基本的にそれらの者の命は見捨てる・・・・といった場面がよく描かれます。

今回の“隔離”が具体的にどのようになされるのかは知りません。
「これらの区域は警察と軍が隔離する。これらの区域内で隔離される住民には物質的な支援が与えられる」ということからは、映画の場面にも近いような事態も想像されますが、“この地域の医療保健サービスを強化して治療、検査、接触者追跡を効果的に行う”とも言っていますので、“見捨てる”訳でもないのでしょう。

ただ、“隔離”という形で強権的に人の移動を制限しようとすると、そこから密かに抜け出そうとする者も出てきます。

それらの者は、衛生・治安当局の管理をかいくぐって秘密裡に移動することになるので、思わぬ感染拡大を招く危険もあるようにも思えます。
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