孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ  主要課題棚上げで停戦合意 問われぬ責任 いつかまた“次”が

2014-08-27 23:21:00 | パレスチナ

(停戦を“勝ち取った”ことを喜ぶガザの子供 10年後は戦闘員となり、また戦うのでしょう “flickr”より By Joe Topichak https://www.flickr.com/photos/124795662@N03/14859856048/in/photolist-oD7DuC-oTCmqS-oTNdVw-oDtPQ5-oVqpRr-oVpxak-oU26QU-oDjuLn-oVueeh-oCYwL3-oD82F1-oD82Rm-oD82VQ-oD82SU-oD82Nq-oTvyx1-oD2rMj-oVEkjx-oDy7WU-oTWozW-oDz7MR-oU2qcU-oVEjRD-oTU8W1-oVxkHH-oVxkCx-oVxkMa-oVxkCH-oVxkC2-oVxkMk-oVUc7J-oTAZuq-oD7Dcf-oVJDYc-oV5aSp-oVGAj8-oTWwoG-oTU8BJ-oDtf4N-oV9yHM-oVqiNt-oTNdMW-oDA8uG-oV9z2c-oCVBFm-oD9aAM-oVNRxU-oV4j1z-oDGtn6-oVEkX6)

主要課題先送りで、交渉は難航も
イスラエルとガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスは26日、期限を決めない長期的な停戦で合意し、50日間にわたって続いた両者の戦闘は“ひとまず”収束しました。

******************
エジプト政府が発表した声明によりますと、合意には、イスラエルがガザ地区の再建を進めるため、経済封鎖を緩和して支援物資や建設資材を円滑に運び入れることや、ガザ地区の沿岸で漁業ができる範囲を拡大することなどが盛り込まれました。

一方で、イスラエルが求めていたガザ地区の非武装化や、ハマスが要求した経済封鎖の抜本的な解除については、1か月以内に交渉を再開するとしていて、先送りされたものとみられます。【8月27日 NHK】
******************

ガザ地区の非武装化や経済封鎖の抜本的な解除という基本的な課題については先送りして、とりあえず停戦したという感じです。

****ガザ戦闘:停戦合意 和平実現、高いハードル 主要課題棚上げ***
パレスチナ自治区ガザ地区を巡る戦闘で、イスラエルと自治区を拠点とするイスラム原理主義組織ハマスは26日午後7時(日本時間27日午前1時)から、無期限停戦に入り、双方の戦闘は止まった。

停戦合意は、ハマスが要求するガザ封鎖解除やイスラエルが求める武装解除など主要課題について議論を棚上げしたままで、交渉は難航も予想される。

交渉団メンバーのハマス幹部、アブマルズーク氏は「パレスチナの人々による(イスラエル占領に対する)抵抗の勝利を確固たるものにする理解に達し、交渉を終えた」と述べた。

一方、イスラエルのネタニヤフ首相の報道官は同日夜、「エジプトの提案する無期限停戦を受け入れた」とする声明を発表した。

合意では、これまでの交渉で双方の間で隔たりが大きかったハマス側の武装解除や、包括的なガザ地区の封鎖解除など主要課題については約1カ月をめどに協議を進めるとしている。

ハマスのロケット弾攻撃にさらされてきたイスラエル南部の市長らは停戦合意について「テロへの屈服だ」と述べ、政府の対応を批判。南部の住民の約6割は攻撃再開を恐れて避難したままで交渉の行方は不透明だ。

米国のケリー国務長官は同日の声明で「強く支持する」と歓迎する一方、「これは(無期限停戦の)確定ではない」とも明言し、長期的な和平実現には追加交渉が必要との厳しい見通しも示した。

戦闘が本格化した7月8日以降、パレスチナ側は市民を中心に2100人以上が死亡、約10万人が自宅を失った。イスラエル側は兵士64人と市民6人が死亡した。【8月27日 毎日】
********************


イスラエルについて言えば、今朝のTVニュースによれば、地上戦開始直後は82%にものぼったネタニヤフ首相の支持率が現在は38%に急落しているとのことで、長引く戦闘への不満が表面化しているようです。

また、地下トンネルの相当数を破壊するという現実的戦果も得ていますし、19日の戦闘再開後、2006年のイスラエル兵拉致事件に関与したとされるハマスの軍事部門「カッサム旅団」の幹部3人(うち2人はガザ南部の司令官)を殺害することにも成功しています。

これ以上続けても増大するガザ住民の犠牲に国際批判も高まりますので、もうこのへんで・・・といったところでしょう。

ハマスの方は、ガザ住民の被害が膨らんでおり、不満の矛先がイスラエルと同時に自分たちに向く危険もあります。また、兵士や幹部の犠牲、ロケット弾の消耗など、長引き戦闘の負担が大きくなってきているのではないでしょうか。

7月末時点での、双方の兵器・兵士に関する“収支決算”は以下のようにも報じられています。
8月に入って11日間ほどの停戦期間はありましたが、現在は更に消耗が進んでいることになります。

****ハマスのロケット弾、6割を消費か ガザ戦闘****
パレスチナ自治区ガザでのイスラエル軍とイスラム組織ハマスの軍事衝突で、イスラエル軍は31日までに、今月8日の交戦開始以降、ハマスは保持していたロケット弾の約6割を消費したと主張した。同軍の報道担当者がCNNに明らかにした。

作戦開始の時点でハマス保有のロケット弾総数は推定で約1万発。
このうちイスラエル領内へ発射されたのは2600発以上。イスラエル軍が迎撃ミサイル「アイアンドーム」などで撃ち落としたのは3000発以上としている。

ただ、ハマスはガザ地区内にイスラエル軍が把握していない多数の地下トンネルを築いている可能性があり、より多数のロケット弾の所持も考えられる。

米ワシントン近東政策研究所によると、これらロケット弾の多数はイランやシリアが供与しているが、ガザで製造されているのもある。

アイアンドームのミサイル1発の価格は約6万2000米ドル(約639万円)。これまで500発以上を発射しており、総費用は3100万ドル以上となる。英軍事情報企業ジェーンズによると、同ミサイルの発射装置の製造費は約5000万ドル。

米シンクタンクのランド研究所は、同ミサイルの性能改善はここ数カ月間で顕著だが、イスラエルはコスト増加の問題に直面していると指摘した。

イスラエルが発見、破壊などしたハマスの地下トンネルは今月28日の時点で計32。トンネル破壊がイスラエルの軍事作戦の主要目標の1つだった。ただ、同軍の報道担当者はこれらトンネルの総数の情報は入手していないことを認めた。

同軍によると、地下トンネルの建設費用は1カ所につき約300万ドルとしている。

また、これまでの軍事作戦で殺害したハマスの戦闘員らは300人以上。米国務省はハマスの戦闘員の全体数は数千人規模と見ている。これとは別に民兵組織がありその総数は9000人との情報がある。

一方、イスラエルの正規軍は約17万6000人。今回の作戦に伴い一部の予備役も招集した。予備役兵士の総数は数十万人規模とされる。

同軍は31日、予備役兵士1万6000人を新たに招集していると発表。これで今回の軍事作戦に駆り出された予備役兵士は計8万6000人となった。【7月31日 CNN】
*****************

“「アイアンドーム」などで撃ち落としたのは3000発以上”と“(「アイアンドーム」を)これまで500発以上を発射”の関係はよくわかりません。

いずれにしても、ハマスもロケット弾を無尽蔵に保有している訳でもないですから、一定数を残して停戦しないと“次”がなくなります。相当にロケット弾を消耗していることも考えられます。

イスラエルにとっても、戦闘は金食い虫です。

問われることもない2000人超の犠牲者を出した戦闘の責任
“イスラエル政府当局者は26日、ロイター通信に、今回の合意はハマスが7月中旬に拒否した、無条件での戦闘停止を柱とする停戦案と基本的には同様のものだとの認識を示し、ハマスに大きな譲歩はしていないことを強調した。”【8月27日 産経】

“譲歩”云々はともかく、確かに基本的課題は先送りであり、このような内容で停戦できるならもっと早い段階で停戦できなかったのだろうか、戦闘は避けられなかったのだろうか・・・2000人超える犠牲者はなんだったのか・・・という感もあります。

ハマス側は当然のように“成果”を誇示しています。
“ハマス政治部門のナンバー2、アブーマルズーク氏は26日、ネット上で、停戦合意は「(ハマスによる)抵抗の勝利だ」と宣言”【同上】

“発表を受けて、ガザ地区では、パレスチナの旗を手にした市民が大勢、街に出て停戦を祝っています。”【8月27日 NHK】

TV画像では、停戦を祝う人々の中には銃を手にした覆面のハマス戦闘員風の人物も多く見受けられます。
おそらく「経済封鎖解除を勝ち取った!勝利した!」と誇示するのでしょうが、実際はどうでしょうか?

「停戦を勝ち取った」ということで、多大な犠牲を住民に強いたことへのハマス自身の反省もなく、おそらく住民からその責任を問われることもあまりないのでしょう。

その結果、いつかまた“次”が起こり、さらなる犠牲者がでます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする