孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ウクライナ東部  強行突破したロシアの支援トラック団  攻勢を強める政府軍  26日に多国間首脳会議

2014-08-23 22:47:00 | 欧州情勢

(20日夜 ウクライナ首都キエフの独立広場で行われた軍事パレード https://www.youtube.com/embed/TrBlHJOfikM?rel=0 )

ウクライナ「許容しがたい国際法違反だ」 ロシア「これ以上の遅れは容認できない」】
ウクライナ政府軍と親ロシア派武装勢力との戦闘が続くウクライナ東部へのロシアによる大規模な支援物資移送トラック団(280台)については、援助物資だけでなく武器・弾薬等が隠されているのではないか、人道支援を名目にしたロシアの軍事介入ではないか・・・との疑惑もあって、ロシア側が強行すれば新たな火種になることも懸念されていました。

ロシアによれば、支援物資は食料、医薬品、寝袋など12種類の計1856トンとされており、12日にモスクワを出発。

当初は戦闘地域を避けるため、ボロネジからウクライナ北東部ハリコフ州を経由してドネツク、ルガンスク両州に入る予定でしたが、ウクライナ側が拒否したため、ルガンスク州との国境に向かうルートへ変更。

ウクライナ政府は16日、「赤十字国際委員会(ICRC)による人道支援物資」と認める決定を出し、赤十字国際委員会(ICRC)が活動主体となることを条件に移送が認められる運びとはなりましたが、中身のチェックが進まず、トラックは検問所に留め置かれる状態が続いていました。

この間にもウクライナ政府軍は、親ロシア派のドネツクに次ぐ拠点都市であるルガンスクへの攻勢を強め、ウクライナ軍報道官は20日、親ロシア派が支配してきた東部ルガンスク州の州都ルガンスクで、大半の地区を奪還したと発表。

足止めされていたロシア支援団はしびれをきらした形で、ウクライナ政府の同意がないまま、22日に国境を強行突破して約50キロ先のルガンスクへ向かう事態となりました。

****ロシア支援車列、国境突破=親ロ派先導、ウクライナ同意なし****
政府軍と親ロシア派の戦闘が続くウクライナ東部ルガンスク州に向けたロシアの人道支援物資のトラック約280台が22日、ウクライナ政府の同意がないまま国境を強行通過し、一部が州都ルガンスクに到着した。

赤十字国際委員会(ICRC)でなく、同州を支配する親ロ派が先導しており、ロシアの「人道介入」に国際社会の懸念が高まるのは必至だ。

ICRCは予定された先導を断念した理由について「ルガンスクでは砲撃戦が続き、安全の保証が得られていない」と説明した。

ウクライナは「(ロシアによる)侵入」(保安局)、「国際法違反」(外務省)と猛反発した。

ロシアの人道支援物資を積んだトラックは21日以降、国境の検問所で足踏み状態が続いていた。
プーチン政権はルガンスクでの食料・飲料水不足などの深刻化を背景に、「強行突破」を決断したもようだ。

26日に予定されるロシア・ウクライナ首脳会談を前に新たな火種になる可能性もある。【8月22日 時事】 
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ウクライナのポロシェンコ大統領は「検査を受けず、赤十字国際委員会(ICRC)の付き添いも無いまま100台以上のトラックが入国したのは許容しがたい国際法違反だ」と非難する声明を発表。

一方、ロシア外務省は越境に先立ち「これ以上の遅れは容認できない。ロシア側は行動することを決定した」との声明文を発表しています。

ウクライナ側は「ウクライナ政府も、赤十字国際委員会もトラックに詰まれた物資の中身を知らない」と批判していますが、少なくともロシア側が積み荷の検査を拒否したといった話はないようですので、おそらくロシアが言うように民生支援物資だったのでしょう。

また、検査についてはウクライナ側が本気で行えば、いくら280台とはいっても、そんなに日時を要するとも思えませんので、ロシアからの住民支援を嫌い、あるいはルガンスク攻略への支障を恐れて、ウクライナ側が意図的に遅らせていたのでは・・・と推測されます。

北大西洋条約機構(NATO)のラスムセン事務総長は22日、無断越境について「ロシア自身がたきつけ続けてきた地域の危機を深めるだけだ」と厳しく痛烈に批判しています。

アメリカ国家安全保障会議のヘイデン報道官も22日、事前の合意に反して、物資の完全なチェックを行わず赤十字国際委員会(ICRC)の付き添いもない上、規定ルートを24時間以内に往復するとの手順も守られていないとロシア政府を批判する声明を発表しています。

これに対し、プーチン大統領は同日、ドイツのメルケル首相と電話協議し、「ロシアの人道支援に対するウクライナ側の露骨な引き延ばしを考慮し、出発の決定がなされた。更なる遅滞は容認され得なかった」と主張しています。【8月23日 毎日より】

ルガンスクに物資を届けたトラックの一部は、すでにロシアに戻り始めています。

****ロシアの人道支援トラック、ウクライナを出てロシアに戻り始める****
ロシアがウクライナ東部の親露派支配地域に支援物資を送るためとして派遣したトラックの一部が23日、ロシアに帰り始めた。欧州安保協力機構(OSCE)の監視員が明らかにした。

ロシア国境にある「ドネツク(Donetsk)」と呼ばれる検問所を監視するOSCEのポール・ピカール監視団長代理はAFPに対し、トラックが通過し始めたが正確な台数は分からないと述べた。

一方、ロシア通信は税関職員の話として、「トラックの最初のグループ34台の通関検査が終わり、 それらの車両はロシア国内に戻った」と伝えた。税関職員によると、6グループのトラックが税関を通ってロシア国内に戻る見通しだという。

トラックの車列は、ロシア政府、ウクライナ政府、赤十字国際委員会がトラックの通過について合意形成を模索する間、ウクライナ国境に近いロシア領内で1週間足止めされていた。

その間ロシア政府は一部のトラックの積み荷を報道陣に公開し、水、食料、医薬品、発電機など約1800トンの支援物資を運んでいると発表していた。

しかしトラックの車列は22日、ウクライナ政府の許可を得ず、赤十字の監視員も付けないまま越境してウクライナ領内に入った。

ロシアの国営テレビによると、トラックの車列は22日夜にウクライナ東部のルガンスクに到着し、支援物資を積み下ろしたという。

ロシア政府は支援物資を積んだトラックは280台だと発表していたが、OSCE監視団は22日に出した声明で、ウクライナ領内に入ったトラックは6グループの227台しか数えていないと発表していた。【8月23日 AFP】
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ウクライナ側はルガンスクの大半の地区を奪還したと発表していますが、親ロシア派の先導でそのルガンスクに向かった物資はどのようにして住民の手にわたるのでしょうか?

ロシアに戻るトラックで、親ロシア派に対するロシアの軍事支援の証拠となるようなものが運び出されたというようなことはなかったのでしょうか?

“トラックが通過し始めたが正確な台数は分からない”・・・・そんなアバウトな対応でいいのでしょうか?
よくわからない点はあります。

ロシア軍はウクライナ国境地域に「短期間でウクライナを侵攻できる相当な部隊」(アメリカ国家安全保障会議のヘイデン報道官)を配備しているとされています。

NATOによると、総数は約2万人。アメリカ国防総省のカービー報道官は22日、ロシア軍の増強が先週、続いていたことを明らかにしています。

26日にウクライナのポロシェンコ大統領、ロシアのプーチン大統領、EUなどが参加してベラルーシの首都ミンスクで開催される多国間首脳会議では今回の件が問題とされるでしょうが、とりあえずは、上記ロシア部隊が動くような事態にならなかっただけでもよかった・・・とも思えます。

ルガンスクの大半を奪還 ドネツクを包囲】
戦況は、先述のように政府軍が親ロシア派を追い詰める形になっています。
ウクライナ政府軍はルガンスクの大半を奪還したとしており、最大の拠点都市ドネツクの市街戦も想定される状況になっています。

****100万都市、迫る本格市街戦 ウクライナ軍、親ロ派拠点包囲 東部・ドネツク****
ウクライナ東部の政府軍と親ロシア派との武力衝突が、同派最大拠点で人口約100万の都市ドネツクに及び、本格的な市街戦に突入する恐れが出てきた。

包囲網を狭める軍は住民に退避を呼びかけるが、都市機能がまひしており、もはや逃げることも困難だ。(中略)

ドネツク市内では、今月上旬から、銃撃や砲撃、爆発が中心部に及んでいる。病院が激しい銃撃を受けて1人が死亡したほか、11日には刑務所が攻撃を受けて受刑者が死亡し、約100人が脱走する事件も起きた。いずれも誰が攻撃したのか不明だ。(中略)

ドネツクでは夜ごと砲撃や銃撃の音が響きわたる日が1カ月続いた。8月に入って軍が「ドネツク包囲完了」を発表すると、総攻撃の情報が広がり、住民はパニックに陥ったという。(中略)

国連難民高等弁務官事務所によると、ウクライナ東部の避難民は8月4日現在、公的機関に登録されただけで10万2642人。6月初旬の38倍にもなった。

しかし、ドネツクから南に約100キロのドネツク州マリウポリの市社会サービス局は、ドネツクと周辺からの避難民の数が、8月第2週の約1500人から、第3週には急に千人前後に減ったとする。

何度も施設を破壊されながら避難の足の役割を果たしていた鉄道が、戦闘激化で完全に止まったからだ。(後略)【8月19日 毎日】
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財政破たん状態のウクライナに攻勢かける資力があるのか・・・という点については、“経済的に破たん寸前のウクライナは、IMFから融資を受けています。IMFは公式通り、ウクライナ政府に歳出の削減やガス価格の引き上げといった財政改革を求めていますが、ウクライナ政府は実質的にIMFからの融資を戦費に流用しているとみられます。いわば西側の総がかりでウクライナ政府を支援していると言っても、過言ではないでしょう。”【8月23日 六辻 彰二氏 YAHOOニュース】とのことです。

ポロシェンコ政権内では東部の完全制圧を目指す声も
当面は、26日に開催される多国間首脳会議で停戦を含めて協議されます。

ただ、現在の政府軍に有利な戦況を考えると、ウクライナ側に今停戦に応じるインセンティブは弱いようにも思えます。

一方、ロシア・プーチン大統領にとっては、このまま親ロシア派が制圧されることになると、国際的に孤立した上に、ウクライナにおける足場を失い、直接占拠したクリミアを除くウクライナ本土が完全に欧米側に取り込まれてしまうという“戦略上の失敗”になります。

なんとか親ロシア派を残存させた形で停戦に持ち込みたいところではないでしょうか。
そのためにウクライナ国境のロシア軍をちらつかせて欧米側を牽制しようとの思惑でしょうが・・・・。

ただ、ロシアとしても、このまま親ロシア派との繋がりを続けていると、マーレシア航空機撃墜事件や18日の避難民バス砲撃事件のように、深みにはまる恐れもあります。

****ウクライナ:政府軍、親ロシア派が停戦条件に言及****
ウクライナ東部で続く政府軍と親ロシア派武装勢力の戦闘を巡り、双方の指導部が18日、停戦条件に言及した。

17日にベルリンで行われたウクライナ、露、仏、独の4カ国外相会合でロシアが「停戦の必要性」を強く主張したことを受けての動きとみられる。

ただ、条件の隔たりは大きいうえ、ポロシェンコ政権内では東部の完全制圧を目指す声も強く、戦闘停止は現実的となっていない。

ウクライナのクリムキン外相は18日、停戦に不可欠な条件として(1)対露国境の実効性ある管理確立(2)全欧安保協力機構(OSCE)による監視活動の保障(3)人質解放での進展−−を挙げた。

親露派に対するロシアからの軍事支援の流れを断ち切ることを重視している模様だ。

対する親露派組織「ドネツク人民共和国」の「首相」ザハルチェンコ氏は「道理にかなう提案があれば、交渉に応じる」と述べつつ、「我々を『国家』と認める必要がある」と強調した。

水面下では、双方の組織内で変動が起きている。親露派側では「首相」のボロダイ氏、「国防相」のストレルコフ氏ら、ロシア出身の強硬派指導者が相次いで辞職し、地元出身者と入れ替わった。

ポロシェンコ政権でも、主戦派のパルビー前国家安全保障国防会議書記が同会議のメンバーから除外された。

カーネギー国際平和財団モスクワセンターのトレーニン所長は、親露派内部の変化について「将来の交渉へ向けて、より確実な布陣にしようとの(プーチン政権の)意図が示唆されている」と自身の論考で指摘。

ロシアが送付した人道支援物資に関しては「国際社会の関心を戦闘から人道危機へと移す狙いがあり、ロシア国内での『行動』の要求にも応えるものだった」と分析した。

一方、ウクライナ安保会議の報道官は18日、東部ルガンスク近郊で避難民を乗せたバスなどの車列が、親露派武装集団の多連装ロケット砲の攻撃を受けたことを明らかにした。

ロイター通信によると、報道官は19日、これまでに15人の遺体を収容したと説明した。
親露派集団の指導者は車列への砲撃を否定しているという。

ルガンスクは親露派の拠点の一つで、戦闘の激化により避難民が続出している。【8月19日 毎日】
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ウクライナ東部での約4か月前の戦闘開始以来、死者の合計は2200人を超えています。
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