
(昨年2月に隣国ニジェールで「ボコ・ハラム」に誘拐されたフランス人一家7人 ビデオでメッセージを読まされています。 一家は2か月間の拘束の後、解放されました。 オランド仏大統領は身代金の支払いはなかったと強調していますが、300万ドルが身代金として支払われたとの情報もあるようです。 http://www.youtube.com/watch?v=oVdt_5GxY2M)
【人口・資源大国ナイジェリア】
西アフリカの地域大国ナイジェリアは、人口では現在世界第7位(約1億6500万人)と、第10位の日本(約1億2700万人)を上回っていますが、2050年にはアメリカを抜いて世界第3位になると予測されています。
なお、その時点では日本は1億人を割っているそうです。
****ナイジェリア世界3位に=仏研究所の2050年人口予測****
フランス国立人口研究所(Ined)は2日、2050年の世界人口予測を発表した。ナイジェリアは2013年の1億7400万人(7位)から4億4400万人に大幅に人口を増やし、インドと中国に次いで3位となる。
ナイジェリアを筆頭にアフリカ諸国の総人口は13年の11億人から24億人に激増、世界人口97億人の約4分の1を占めるようになる。
Inedによれば、アジア全体の人口は13年の43億人から52億人へと増加。日本は1億2730万人(10位)から9700万人(19位)となり1億人を割り込む。
現在12億人のインドは16億人となり中国を抜き世界1位となる。米国も3億1600万人から4億人に増加するもののナイジェリアに世界3位の座を明け渡す。【2013年10月2日 時事】
*********************
経済予測から天気予報までいろいろある予測の中でも人口予測はかなり確実性が高いものですから、2050年かどうか別として、おそらく予測は現実となるのでしょう。
別に、人口の多い少ないでその国の評価が決まるものではありませんが、それだけの市場規模を持てば、石油などの資源も豊富なナイジェリアの将来は非常に明るい・・・とも思われます。
実際、すでに現在でも市場として世界から注目されるようになっています。
しかしながら、ナイジェリアを取り上げる際にいつも言うように、この国は部族対立、腐敗・汚職の蔓延など多くの問題を抱え、人口・資源を生かすことができずにいます。
【ここ2週間で250人近くが殺害】
ナイジェリアが抱える問題のなかでも大きな問題は、南北の宗教対立です。
この国は南部のキリスト教に対し、北部はイスラム教で、しばしば宗教対立からの衝突を繰り返し、多大な犠牲者を出しています。
そうしたなかにあっても際立っているのは、イスラム系の過激組織「ボコ・ハラム」のテロ活動です。
今年2月になってからも、「ボコ・ハラム」による大規模テロが繰り返し報じられています。
****武装集団がナイジェリアの村を襲撃、100人余り殺害か****
ナイジェリア北東部ボルノ州で15日、イスラム過激派組織「ボコ・ハラム」とみられる武装集団が村を襲撃し、地元議員によると100人余りの住民が殺害された。
事件があったのは、キリスト教徒が多く住むIzghe村。Ali Ndume議員はAFPの取材に対し、「高齢女性1人を含む106人が殺された。銃で武装したボコ・ハラムの集団とみられる」と述べ、同地域での襲撃は日ごとに回数が増え残忍化していると付け加えた。(後略)【2月17日 AFP】
*****************
下記の襲撃は「ボコ・ハラム」によるものか否かはわかりません。
****ナイジェリア中部の村を武装集団が襲撃、子供9人含む13人殺害****
ナイジェリア中部で20日、武装集団が村を襲撃し、子供9人を含む13人を殺害した。当局者が明らかにした。同域では数年前から、民族・宗教間などの衝突が後を絶たない。(中略)
(事件の起きた)プラトー州は、キリスト教徒が多い南部とイスラム教徒が多い北部を分ける同国中部のいわゆる「中央ベルト」と呼ばれる地域に位置している。
イスラム教徒が多いフラニ人またはハウサ人の遊牧民らが、キリスト教徒が多いベロム人の農耕民をこれまでに何度も攻撃している。(後略)【2月21日 AFP】
********************
「ボコ・ハラム」は「西洋の教育は罪」という意味ですから、教育施設への攻撃も頻繁に行われています。
その場合、犠牲者は学校の生徒たちになります。
****ナイジェリアで武装集団が学校襲撃、43人殺害 ボコ・ハラムか****
ナイジェリア北東部で25日未明、イスラム過激派組織「ボコ・ハラム」とみられる武装集団が寄宿学校を襲撃し、就寝中だった生徒ら43人を殺害した。同地域では昨年から、学校を狙った襲撃が相次いでいる。
事件は同日午前2時(日本時間同10時)ごろ、ヨベ州ブニヤディの中等教育学校(日本の中学・高校に相当)「連邦政府カレッジ」で発生。昨年9月に発生し40人が殺害された襲撃事件に手口が類似している。
武装集団は、寄宿舎に爆発物を投げ入れ、各部屋に銃撃を浴びせ、多数の生徒を斬殺した。州都ダマツルにあるサニ・アバチャ専門病院の情報筋によると、武装集団が狙ったのは男子生徒のみで、女子生徒らは「容赦された」という。(後略)【2月26日 AFP】
*******************
“襲撃者は女子寮にも侵入したが、女子生徒らに西洋式の教育を受けないように言って帰宅を促し、女子生徒は難を免れた。一方、男子生徒は銃撃され、男子寮には火が放たれた。犠牲者の多くは焼死によるとみられている。”【2月26日 毎日】とのことです。
一番新しいところでは、3月1日の襲撃が報じられています。
****ボコ・ハラムの攻撃で74人死亡、ナイジェリア****
ナイジェリア北東部で1日、イスラム過激派組織「ボコ・ハラム」の犯行とされる3件の攻撃があり、少なくとも74人が死亡した。
同国では、ボコ・ハラムによりここ2週間で250人近くが殺害されており、今年に入ってからの犠牲者数は今回の攻撃により300人を超えた。
1日の攻撃は、いずれも北東部ボルノ州で発生。州都マイドゥグリの繁華街ゴマリ(地域では、2回の爆発により少なくとも35人が死亡。さらに同市近郊のマイノク村で、ボコ・ハラム戦闘員とみられる武装集団により、39人が殺害された。
ゴマリ地域の連続爆発について、同州警察のラワル・タンコ本部長はAFPの取材に対し、「(死者数は)まだ数え終わっていない。35人の遺体を確認したが、現場では救助隊との協力の下、まだ作業が続いている」と述べた。目撃者によると、爆発により約50人が死亡した恐れがあり、数十軒の家屋が損壊したという。
マイドゥグリから50キロメートルのマイノク村の住民によると、午後7時ごろに軍服を着た数十人の武装集団が村を襲撃。ロケットランチャーや爆発物、カラシニコフ銃を使って住民を無差別に襲い、39人を殺害したという。同村での事件について、軍と警察当局からコメントは得られていない。【3月3日 AFP】
**************
ボコ・ハラムは2009年以降に数千人を殺害してきていますが、“ここ2週間で250人近くが殺害”というのは、恐るべきハイペースです。血の乾く間もない凶行の連続です。
“軍は今年5月からボコ・ハラムに対する大規模な掃討作戦を展開している。”【2013年8月20日 時事】とのことですが、これだけ頻発していると、いったい軍・警察は何をしているのだろうか?という素朴な疑問も湧きます。
もちろんテロ組織の摘発が難しいのはわかりますが、治安当局は機能してるのでしょうか?
【資源の呪い】
こうした混乱を助長しているのが政治の腐敗です。
石油などの資源が豊富なだけに、利権にまつわる汚職も多いということで、「資源の呪い」の典型でもあります。
****ナイジェリア中銀総裁が職務停止=石油収入疑惑追及し政権批判****
ナイジェリア中央銀行は20日、同国政府がサヌシ総裁の職務を停止したと発表した。アラデ副総裁が総裁代理に指名された。
英メディアによると、サヌシ総裁はナイジェリア国営石油会社が石油収入200億ドル(約2兆円)を国庫に納めていないとの批判を展開していた。
同国では来年2月に大統領選が予定されており、ジョナサン大統領が大規模な汚職疑惑につながりかねないサヌシ総裁の言動を警戒し、実権の剥奪に動いたとみられる。サヌシ総裁は今年6月に退任する予定だった。【2月21日 時事】
********************
【イスラム過激派が跋扈するなかで、政府・当局の関心は同性愛者摘発?】
なお、ジョナサン大統領はキリスト教系の政治家です。
資源に呪われたナイジェリア政府が何をしているかと言えば、同性愛・同性婚の禁止です。
ナイジェリアは以前より同性愛禁止法を持つ世界78か国のうちの1国でしたが、さらに同性婚を禁止する法律が成立しました。
****同性婚に禁錮14年…ナイジェリアで新法成立、世界から怒りの声****
ナイジェリアで、同性同士で結婚をした者に禁錮刑を科すことを定めた法律が、グッドラック・ジョナサン大統領によって成立させられたことが13日に分かり、同国に対して世界各地から怒りの声が沸き起こっている。
「2013年同性婚(禁止)法」と名付けられたこの新法は、同性同士で結婚した者、もしくは結婚に準じた「シビルユニオン」の関係を結んだ者に対し、最高14年の禁錮刑を科すもの。また、他国で認められた同性婚なども同国では「無効」とみなされる。
さらに、ゲイクラブまたは同性愛者の団体や組織の運営・会員登録・参加や、同性同士の性的関係を直接的または間接的に公開した場合も、最高10年の刑を科される。
米国のジョン・ケリー国務長官は、ジョナサン大統領が同法案に署名したことに対する「深い懸念」を表明。
同性愛者の人権問題に取り組んでいる人権活動家ピーター・タッチェル氏は「世界で最も同性愛嫌悪的な法の一つ」だと表現し、また各地の人権団体は「悲劇」であり、平等な権利を求める闘いを後退させるものだと批判している。
ルーベン・アバティ大統領報道官が13日、AFPに語ったところによると、昨年議会を通過していた同法案は、今月にジョナサン大統領が署名。
同報道官は「ナイジェリア国民の90%が同性婚に反対している」と述べ、同法は信仰のあつい同国の世論に沿ったものだとして、国外からの懸念を一蹴した。
アフリカでは先月、ウガンダでも反同性愛法案が議会を通過し、ヨウェリ・カグタ・ムセベニ大統領による批准を待つ状態となっている。この法案については、バラク・オバマ米大統領が「忌まわしい」ものとして糾弾、南アフリカのデズモンド・ツツ元大主教もアパルトヘイト(人種隔離政策)になぞらえて非難した。
またナイジェリアの東隣のカメルーンでも、同性愛は最高5年の刑を科す犯罪とされている。
これら3か国ではキリスト教福音派が強大な影響力を持っており、ナイジェリアでは南部にキリスト教徒、北部にイスラム教徒が多く住み、国がほぼ二分された状態になっている。【1月14日 AFP】
*******************
全国各地ですでに逮捕が始まっていますが、北部バウチ州の警察は160人以上の名前を列挙したリストを作成し、逮捕の準備を進めているそうです。
この問題では、キリスト教福音派とイスラム教の足並みはそろうようです。
****ナイジェリアで同性愛者の弾圧強化、禁止法成立受け****
(北部)カノ州の宗教警察ヒズバの副長官を務めるウスマン・ナバハニ(氏は、AFPの取材に対し、同性同士の結婚と市民パートナーシップを禁止する新法は「歓迎すべき展開」と語り、「この法律の執行のためにたゆまぬ努力をする」と述べた。
ヒズバはこの数か月、イスラム教徒が多数派を占めるカノで売春組織と麻薬常習者の取り締まりを行ってきたが、今後は同性愛者に対しても同様の取り締まりを行うことを誓っている。ナバハニ氏は、国の法令を執行するために治安当局と連携して「ゲイとレズビアンに対して同様の摘発を実施する」と付け加えた。
これからは、健全な社会をめざし、カノ州の隅々までしらみつぶしに捜査して、売春や同性婚、飲酒(の禁止)の完全なる順守を徹底する」「われわれは、こういった問題に真剣な闘いを挑むための、さらに大きな権限と支持を得た」(後略)【1月16日 AFP】
*********************
“隅々までしらみつぶしに捜査”すべきは、同性愛者などではなく、「ボコ・ハラム」などのテロリストのはずですが、ナイジェリアではそうした常識は通用しないようです。
ナイジェリア関係者というと、ボビー・オロゴンしか思い浮かびません。
ボビーに「ナイジェリアはどうなっているの?」と訊いてみたい気がします。