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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ダルフール、忘れられた「世界最悪の人道危機」 スーダン南部への日本のPKO派遣問題

2010-06-19 12:56:47 | 国際情勢

(ダルフールに暮らす女性 すべてを捨てて避難したのちに帰還、赤十字国際委員会から提供された種と道具で作物を作っています。今年3月頃の写真のようですが、今の状況は落ち着いているのでしょうか?
“flickr”より By ICRC http://www.flickr.com/photos/icrc/4406171858/)

【世界はダルフールヘの関心を失ったのか・・・】
5月27日ブログ「チャド 国連PKO撤退を要請 安定化したのか?」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20100527)でスーダン西部・ダルフールの状況を取り上げました。
世界最悪の人道危機と呼ばれたスーダン西部ダルフール地方の紛争によって、スーダンと国境を接するチャドは多数の難民を抱え、また、スーダンとチャド双方が相手国の反政府組織を支援しあう形で対立していました。
そのチャド政府が、スーダンとの関係改善もあって、PKOのチャドからの撤退を要請、国連安保理もこれを採択したというものです。

ただ、肝心のダルフール情勢については、反政府武装勢力各派とスーダン政府との間で和平交渉の枠組みはできましたが、“その後、スーダンは大統領選挙に突入し、(最大反政府武装勢力の)「正義と平等運動(JEM)」との最終合意交渉がどうなったのかよくわかりません。”と書いたように、最近あまり情報を目にしません。
事態はあまりよくないようです。

****スーダン 世界に忘れられたダルフールで続く悲劇*****
国連・アフリカ連合合同活動(UNAMID)の報告によると、スーダン西部ダルフール地方で5月に殺された犠牲者の数は約600人。07年に国連が介入して以降、最大の数字だが、なぜかあまり注目されていない。世界はダルフールヘの関心を失ったのか。
反政府組織「正義と平等運動」(JEM)は最近、政府軍の兵士35人を拘束した(6月9日に解放)。今年4月に行われた大統領選挙と総選挙を前に、政府とJEMの間では2月、和平に向けた枠組み合意が結ばれ、停戦が期待された。だが、5月にJEMが和平交渉を打ち切ってから戦闘はむしろ激化していると、英BBCは報道している。
人道危機は深刻で、「紛争地域への支援が圧倒的に不足している」と、国連の報告は警告している。国連の推定では03年以降、ダルフール紛争による同地域での死者は30万人に上り、260万人の難民が発生している。犠牲者数が増加した程度では誰も驚かなくなってしまったのかもしれない。【6月23日号 Newsweek日本版】
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世界がダルフールへの“関心を失い”、月600人“程度”の犠牲者では“誰も驚かなくなってしまった”・・・という状況のようです。
もちろん、本当に国際社会がダルフールを見捨てた訳ではなく、国連安保理はダルフール地方における戦闘の最近の急増に「深い懸念」を表明し、暴力を止めるよう求め、すべての反政府グループに、カタールのドーハで今月再開される予定の和平交渉に「建設的に取り組む」よう求めています。

【難航する和平プロセス】
ダルフール情勢については、この問題を扱うサイト「ダルフール・トリビューン」(中村公政氏 http://darfur-tribune.seesaa.net/article/118337284.html)に海外メディア情報などが紹介されています。
それによれば、2月23日、スーダン政府と和平枠組み合意に調印した最大反政府勢力「正義と平等運動(JEM)」は、期限として定めた3月15日を過ぎても最終合意に至らずドーハでの継続協議に入りましたが、その後、スーダン政府軍がJEMの拠点を攻撃していると非難、和平協議から離脱しています。
なお、JEMは以前チャド政府から支援を受けており、概ね機械化軍とのこと。

国際刑事裁判所(ICC)はダルフールでの戦争犯罪でスーダンのバシル大統領に対し逮捕状を出していますが、そのスーダン当局は、インターポールに対し、JEM指導者ハリル・イブラヒムを2008年のオムドゥルマンの攻撃を計画したことに関して逮捕するよう求めたそうです。
JEMは、もしもしその指導者ハリル・イブラヒムが逮捕されたら、「全面戦争」をするとしています。

スーダン解放運動指導者アブデル・ワヒド・ヌルが率いる「スーダン解放運動(SLA)」はなお政府を排除し、和平協議への参加を拒否しています。SLAは概ねダルフール中央山岳地域に拠点を持つ歩兵軍とのこと。

小規模組織10派が2月に統合した組織「解放と正義運動(LJM)」は、3月18日、スーダン政府と和平交渉の枠組み合意に調印、3か月の停戦に入っています。そして、JEMとSLMのボイコットにもかかわらず、スーダン政府と今月ドーハで協議を開始しています。
なお、最大勢力JEMは、このJIMと政府の動きに激しく反発しています。

チャドが反政府組織支援中止を明らかにしていることは交渉にプラスですが、反政府勢力側がいくつにも分裂しており、各派が牽制しあっている状況では、なかなか全体的な和平合意推進は難しそうです。
この間にも、犠牲者と難民が増え続けます。

【「スーダンはやらない」】
なお、スーダンでは西部ダルフールと並んで、南部と北部(中央政府)の対立・紛争がありましたが、この南北問題については南北包括和平合意が05年に成立。これを受けて停戦監視や選挙支援などのためのPKOとして、67カ国が軍事、警察要員約1万600人(5月末現在)を派遣しています。日本は08年10月から参加し、首都ハルツームの本部に司令部要員として自衛官を2人派遣しています。

昨年の総選挙のマニフェストで国連平和維持活動(PKO)への積極参加をうたう民主党政権のもと、国連から打診もあって、外務省などは国連スーダン派遣団(UNMIS)への陸上自衛隊ヘリの派遣について検討してきました。
“検討されているのは、来年1月のスーダン南部の独立を問う住民投票での支援。道路などの交通インフラが整っていない地域で、陸上自衛隊のヘリを使って、投票箱の輸送や選挙監視要員の移動を行うという案だ。ヘリ4機、隊員300人程度の規模が想定されている。” 【6月19日 朝日】

しかし北沢俊美防衛相は費用対効果への疑問から、この動きに待ったをかけたそうです。
“北沢氏は11日朝に岡田氏と会談した際、「スーダンはやらない」との考えを伝えた。アフリカは日本から遠く、活動地域も内陸側にあるため、ヘリ本体や部品、要員を運ぶための輸送費がかさみ、2カ月の活動で派遣費用が100億円にのぼる。自衛隊の存在感を示す効果も薄い。安全面での不安も残る。”【同上】
普天間問題で悪化した対米関係改善もあって、外務省は派遣すべきだとの考えで、菅首相が最終的に判断することになります。

和平合意ができているとは言っても、今のバシル政権のもと、スーダン南部の独立を問う住民投票がスムーズに行われるとは考えにくく、北沢大臣の安全面への懸念はもっともでもあります。
費用の問題もありますし、何より“日本で誰も関心を持っていないアフリカくんだりに出かけても・・・”というのが本音でしょう。

この地が将来とも戦闘行為が起きない安全地帯であるとは思いませんが、それだけに国際的な監視・支援が必要とされている地域でもあります。やるなら腹をくくってやる必要があるように思います。

コメント
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