孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ  “イスラエル建国”“ナクバ”60周年 高まるハマスへの支持

2008-04-16 17:31:46 | 国際情勢

(ガザ地区 イスラエル軍の攻撃で犠牲となった生後6か月の赤ちゃん
憎しみの連鎖が断ち切れません。
“flickr”より By khawaja
http://www.flickr.com/photos/khawaja/2309788568/)

昨日15日のAFPの記事、「ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザ地区に対し、イスラエルは16日から1週間ぶりに燃料供給を再開する。イスラエル国防省の広報官が14日発表した。」
ガザ地区への燃料・電気供給が現在どういう状態にあるのかよくわかりません。
“1週間ぶりに”ということは、ずっと止まっていた訳でもないようです。

周知のとおり、1月23日に壁が爆破され、2月3日にはエジプトが再封鎖。
2月末にはガザ地区からのロケット弾攻撃が激化し、3月1日にはイスラエルのガザ地区侵攻が本格化。
3月3日には一応イスラエル側が撤収。(パレスチナ側の死者は子供22人を含む116人)
イスラエルとガザ地区武装勢力の間の戦闘行為は、その後ない訳ではないですが、“小康状態”を保っています。

この間もガザ地区の生活環境は悪化を続けています。
アムネスティ・インターナショナルなど8つの国際人権団体が6日発表した報告書によると、ガザでは人口の約4分の3に相当する110万人が、国連などの食糧支援に依存しています。
電気や燃料の不足で、病院では1日8~12時間の停電が常態化。
ガザ地区にある約4000の工場の大半が、資材不足などで操業を停止。
失業率は約40%に達し、特に民間部門の労働者は約70%が失職したそうです。【3月6日 読売など】

また、住民生活の窮状を伝える報道も目にします。
「燃料不足はガザ地区に暮らす人々の日常生活に甚大な被害をもたらしている。街の交通機関はストップしているため、遠方から通う学生は大学に行くこともできない。行くことができても帰宅できる保証もない。
ガザ住民は暗闇と悪臭の中で厳しい生活を強いられている。家は昼でも真っ暗で、道路には下水設備の停止で汚水が溜まり放題である。健康被害や環境の悪化を懸念する声も次第に高まっている。」【4月12日 IPS】

当初、ハマスがガザ地区を実効支配し、イスラエルが封鎖を強めた時点では、個人的には「ハマスは戦略を誤ったのでは?これでハマスに封じ込まれた形のハマスの勢力は一網打尽になるか、やがては住民の支持も失っていくのではないか・・・」と思いました。
イスラエル敵視の対応を変えないハマスがネックとなってパレスチナの和平が進展しない、パレスチナが進展しない限り中東の安定もない・・・という状況で、このような“ハマス封じ込め”で事態が打開されるのではとも思いました。

しかし、現実はそのようにはいかなかったようです。
ハマス等の武装勢力側は“壁の爆破”によって、封鎖に対抗できることを示しました。
また、その後の封鎖継続、更に、3月初旬のイスラエル侵攻によって、パレスチナ住民の支持はハマスの側に流れる展開になっています。

ヨルダン川西岸とガザの両自治区、東エルサレムのパレスチナ人を対象に3月13~15日に行われた調査によると、ハマスの支持が急上昇しています。
「(パレスチナ自治政府の大統領にあたる)議長選挙が今日行われたら誰に投票するか」との質問に、ガザの「ハマス政権」を率いるハニヤ首相を選んだのは47%、現職のアッバス議長は46%と、支持が逆転しました。
昨年12月の前回調査ではハニヤ氏が37%、アッバス氏の56%でした。
“ハマスが封鎖破りに成功したとの評価と、軍事攻撃の犠牲者という同情を呼んでいる”とのこと。【3月24日 朝日】
この数字について、ガザ住民の約8割に食糧を援助する国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)ガザ事務所の副所長は「封鎖は失敗だ。若者を過激思想に走らせ、武装集団の勢力拡大を容易にするだけだ。」と断じています。

国際的な流れも、“ハマスを無視できない”“ハマスを交渉に取り込む”動きが最近目につきます。
先月23日にはイエメンの仲介による、アッバス議長の出身母体ファタハと、ガザ地区支配のハマスが自治区分裂を解消するための直接協議を始めることで合意したと報じられました。
ただ、すぐに“対話条件の食い違いが表面化”とも報じられています。
ハマスが前面に出ることを快く思わないイスラエル、アメリカの圧力があったとも。【3月28日 毎日】

ハマス側からも動きが。
ハマスの最高指導者で、シリアのダマスカスに拠点を置くハレド・メシャール政治局長は3月31日、パレスチナ自治政府のアッバス議長をガザ地区に招き、無条件で対話を行いたい意向を表明しています。

このハマスのメシャール政治局長とマメリカのカーター元大統領が会談することが明らかになって、アメリカ国内・イスラエルからは批判が出ました。
これに対し、カーター元大統領は「中東和平プロセスにハマスを参加させることは非常に重要」「誰かがハマス指導者の意見にも耳を傾ける必要がある」「中東和平プロセスにハマスも参加させなければならない」と訴えています。【4月14日 AFP】

なお、イスラエルのガザ侵攻で中断していたパレスチナ・イスラエルの交渉は、4月7日、約一ヶ月半ぶりにオルメルト首相とアッバス議長が会談するところとなりました。

イスラエルは5月8日、1948年の建国宣言60周年を迎えます。
式典には世界各国首脳らを招き、盛大に祝う計画のようです。
イスラエル建国ということは、同地に暮らしていたパレスチナ人からすると、70万人が難民として故郷を追われたという事実になります。
この事実をパレスチナ人らはアラビア語で「大惨事」を意味する「ナクバ」と呼びます。
パレスチナ側では、5月15日に開催する「ナクバ」60周年に向けた準備が進められているそうです。【4月14日 AFP】

表向きの言い様は別として、ハマスにも交渉の余地があるのであれば、その意向を取り込んでいかざるを得ない状況に思えます。
「建国宣言60周年」「ナクバ60周年」が血で塗られることがないように。

コメント
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