孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ネパール  毛沢東主義派が民主主義枠組みに留まる気になる結果が出るか?

2008-04-11 13:52:56 | 世相
ネパールの憲法を定める制憲議会選挙の投票が10日に行われました。
これにより、2006年の反王制民主化運動に始まり、同年の共産党毛沢東主義派内戦終結で本格化した国家再建プロセスは最終段階に入ります。

制憲議会は2年をかけて新憲法制定に当たりますが、暫定政権を構成している主要7政党は昨年、制憲議会の場で正式に連邦共和制国家を宣言することに合意しており、制憲議会に王制を復活させる権限はありません。
選挙が実施されたことで、240年続いた王制の廃止が確実となりました。

ただ、選挙の実施にあたっては暴力事件が相次ぎ、昨年2回延期されました。
今回も決してスムーズではなかったようです。

今回選挙には各国から選挙監視団数百人が派遣され、ネパール史上最も厳しい監視下での投票となりました。
4日には政府が酒類販売禁止令を出すなど厳しい警戒態勢がとられましたが、西部では8日夜、共産党毛沢東主義派と別の政党の支持者が衝突、毛派メンバー6人が警察に射殺。
同日西部の別の場所では毛派の候補者が暗殺される事件が発生。
9日この事件への抗議行動が建物や車を破壊する騒ぎに発展、参加していた毛派支持者1人が警官に射殺。
首都カトマンズや南部では小規模の爆発事件が頻発。【4月9日 AFP】

コイララ首相の地盤、南部ビラトナガルでは、首相の「ネパール会議派」とインド系少数民族マデシの「人民権利評議会」の支持者が衝突し、会議派側1人が死亡。
西部アルカハキ地区では、共産党毛沢東主義派の約15人が投票所を取り囲み、有権者に毛派の候補者に投票するよう威圧、投票所を放火。【4月10日 毎日】


上記のような“小競り合い”はあったようですが、なんとか実施に漕ぎついた選挙です。
国連ネパール支援団筋は「投票はおおむね平穏に進み、高い投票率が見込まれる」と評価しています。
それにしても、“射殺”“暗殺”という言葉が頻繁に使われています。
ネパールと聞くと“カトマンズの古い町並み”“ヒマラヤの神々しい景観”などを観光的にはイメージしますが、政治・社会情勢のほうは殺伐としたものがあるようです。

チベット問題にからみ、ネパールでも強権的な取り締まりで騒然とした状況があるようですが、“大国”中国の意向を配慮して・・・というだけではない、ネパール本来の政治・社会体質も根底にあるようにも思えます。

ネパールの選挙については、その結果が出てから書くつもりだったのですが、“結果発表までは約2週間かかる見通し”【共同】、“大勢判明には、10日間前後かかる見通し”【読売】、“結果確定まで2、3週間かかる見通し”【時事】と、随分時間がかかるようです。
車が入らないヒマラヤの山岳地帯に多くの村々が点在していますので、止むを得ないところなのでしょう。
ジンバブエのように結果を遅らせ、その間に・・・という訳ではないようです。
以前、ロシア大統領選挙の際に、シベリアでの選挙の難しさに触れたことがありますが、ネパールの選挙は更に大変なようです。

選挙では主流派の中道・ネパール会議派と中道左派・統一共産党が多数を占める見通しですが、単独で過半数を獲得する政党はないとみられています。
上記2党に対し共産党毛沢東主義派がどこまで議席を獲得できるかが最大の焦点です。

ジャングルや山岳部にいた戦闘員を国連が監視するキャンプに移動させ、暫定政府にも参加した毛派ですが、有権者に投票を強要していると非難されています。
一方の国王や軍の国王派も、選挙を妨害するため民族対立をあおったり、爆発事件を起こしたり、さらにはクーデターまで画策していると非難されています。
「闘争を繰り広げてきた毛派と国軍は、互いに政治的に譲歩する姿勢はなく、それぞれ勢力を維持しており、いつでも戦闘できる状態にある。」との意見も。

今回選挙のポイントを端的に表しているのは「専門家は、毛派が民主主義的な政治制度のうちにとどまる気になるほど十分な議席を得られるかが大きな焦点だとしている。」【4月9日 AFP】という見方です。
その意味で、対立政党にとっても難しい選挙です。
万一、共産党毛沢東主義派が大敗するようなことになると(普段の武力にものを言わせるやり方を嫌っている人々が多いので、ありえない結果ではありませんが)、包括和平協定合意の枠組みから離脱して再び内戦状態に・・・という事態も十分に懸念されます。

ネパールには毛派の問題のほかに、南部のインド系少数“マドヘシ”の問題があります。
南部低地の平原に居住する民族で、以前は毛派のなかで活動していましたが、毛派においても差別されているとして袂を分かち、独自の武装闘争を行っています。
(07年9月7日のブログhttp://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20070907参照)

マドヘシに関しては、国連ホームページに「ネパールにおいて、政府とマドヘシ族間の選挙合意がこのたび成立した。マーティン事務総長特別代表は首都カトマンズで報道声明を発し、この合意を歓迎した。」【2月28日】という記載がありました。
詳しい事情がわかりませんが、一応現在は落ち着いているようですが、これも選挙結果次第でしょう。

あと12月26日(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20071226)に紹介した、日本国籍を捨てて新党を創りネパールの選挙に挑む宮原さんはどうされているのでしょうか?
その結果も気になるところです。




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