孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

スリランカ  まだまだ続くLTTEとの戦い、自爆テロ、人権侵害

2008-04-24 15:55:28 | 国際情勢

(ジャフナで “flickr”より By Jana Mills
http://www.flickr.com/photos/janamills/84635240/)

スリランカではシンハラ人(多数派、仏教)主体の政府軍とタミル人(少数派、インド系、ヒンズー教)反政府勢力“タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)”の戦闘が続いており、その状況が連日報じられています。
02年にノルウェーの仲介で停戦合意が成立しましたが、06年7月から実質的内戦状態が再発、07年7月には東部のLTTE拠点を政府軍が奪還、今年1月には有名無実となっていた停戦協定をスリランカ政府が正式に破棄、最後の拠点である北部ジャフナ半島周辺にLTTEを追い詰め政府軍優位に戦いは展開しています。
(1月19日 http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080119 参照)

すでに3月7日時点で、年初来の死者は双方合わせて2000人を超えており、ひと月1000人ペースで増加しています。

23日未明には北部のジャフナ半島で、ここ1年半ほどでは最も激しい戦闘があったようです。
LTTEの発表では、政府軍兵士少なくとも100人を殺害、LTTE側戦闘員は16人が死亡。。
一方、国防省発表では、LTTEの戦闘員100人以上を殺害、政府軍兵士43人が死亡、33人が行方不明。
政府軍筋は、LTTEの防衛最前線に対し2方向から夜間攻撃を行ったが激しい反撃に遭い、撤退を余儀なくされたことを認めています。

両者の数字は食い違いますが、今回はかなり“近いほう”で、政府側は作戦失敗も認めています。
普段はもっと両者の数字、作戦の評価は大きく食い違い、お互い、もしくはどちらかが“大本営発表”そのものに思われます。

例えば、4月12日から13日の戦闘では、国防省はLTTEの77人、政府軍の12人が死亡した、と発表。
一方、LTTE寄りのウェブサイト「タミル・ネット」は、少なくとも政府軍の30人、LTTEの3人が死亡としていうような具合です。

お互いの数字がかみ合わないのでよくはわかりませんが、一般的には政府軍がLTTEを追い詰めつつあると報じられています。
追い詰められたLTTEは自爆テロなどの戦術を激化させており、4月6日にはマラソン大会での自爆テロで政府閣僚を含む14人が犠牲になっています。
3月22日には政府軍高速艇に対する海上自爆攻撃も行われています。

以前も触れたように、もともとLTTEは世界の過激派組織のなかで最初に“自爆”を攻撃戦術として使用した組織ですから、その取り組みも半端ではありません。
3月10日にはコロンボの花壇で爆発、3月2日には道路の路肩爆弾、2月24日にはオートバイによる自爆、2月23日はバスの中で小包爆弾、2月4日にはバスが遠隔操作地雷で爆破・・・爆破方法も多彩です。

このように激しい戦闘が続いていますが、「どうして政府軍はLTTEをいつまでも鎮圧できないのだろうか?」という素朴な疑問も感じます。
昔はともかく、現在では空軍力を始めその軍備には格段の差があるはずでは?(以前取り上げたようにLTTEも昨年“空爆”を敢行したことはありますが。)
海に囲まれた島国ですから、隣国に越境して稼動を続けるといったこともありません。
急峻な山岳地帯等で作戦行動が難しいというような地域でもないようです。
大規模な攻勢を政府軍がかければもっと短期に終結するのでは・・・というのは素人考えでしょうか?

“ひょっとして、敢えて戦闘状態を長引かせているのでは・・・”というのは下衆の勘ぐりというものでしょうか?
大体、軍隊は戦闘状態において最もその存在価値が高まります。
資金も国内・国外で大きく動きます。
もちろん現場の兵士達は関係ない話ですが、コロンボに陣取る軍幹部には別の思惑も・・・

政治的にも、もしLTTEを駆逐して戦闘が終了すると、タミル人との共存国家を建設するという、戦闘行為よりはるかに困難な、そして一部シンハラ人にはあまり気乗りしない事業が待ち構えています。
国際的にも注視されていますので、タミル人を不当に抑圧することもできません。
戦闘状態が続いている限りは、LTTEを北部に封じ込めておけば、政治的にはこれまでどおりの政治が継続できます。
戦闘を口実にある程度の手荒な行為もやりやすかったり・・・。

まあ、そんなことはないのでしょうが。
それはともかく、タミル人に対する人権侵害行為は相当に行われています。

****スリランカ軍の拉致相次ぐ 2年で1500人以上が不明に****
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(本部ニューヨーク)は6日、政府軍と反政府武装組織タミル・イーラム解放のトラによる内戦状態にあるスリランカで、政府軍や警察が絡む民族少数派タミル人の拉致事件が相次ぎ、昨年12月までの2年間に1500人以上が行方不明になったとする調査報告書を発表、スリランカ政府に対し責任者や実行役への処罰などを勧告した。【3月6日 共同】
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コロンボの「法と社会トラスト」(LST)によると、昨年1月から8月の間に、少なくとも1日平均5人がスリランカ全土で殺害あるいは誘拐されたとも報告されています。

昨年6月には、スリランカ政府がコロンボ近郊の避難民キャンプにいる少数民族タミル人約400人を、戦闘が続く北部地域へ強制移送したことが問題になりました。
“民族浄化”ではないかとの批判に、政府側は「LTTEも移送に同意した。」と主張(LTTEは否定)しています。

仏教徒は殺生をしないということになっているのですが(ですからスリランカでも漁業に従事する人が多い海岸部ではキリスト教の人が結構います。)、敬虔な仏教徒の国であるスリランカでもミャンマーでも、そんなことは関係ないようです。

コメント
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