孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ジンバブエ  遅れる大統領選挙の結果発表 不正操作の危惧

2008-04-01 14:57:24 | 国際情勢
南部アフリカのジンバブエ大統領選挙(旧ローデシア)は、80年の独立以来一貫して政権の座にあって事実上の独裁を敷き5期目(6期目とする考えもあります)を目指すムガベ大統領(84)に、与党から造反したマコニ元財務相(58)、最大野党「民主変革運動」のツァンギライ議長(56)が挑みました。

しかし、選挙結果がなかなか公表されません。
投票は29日に行われましたが、選挙管理委員会は31日、ようやく同時実施の総選挙について一部の選挙結果の発表を始めました。
地元の報道などによると、司法相、情報・広報担当閣外相が落選、選挙監視団体の分析では、この2人のほか副大統領、国防相など6閣僚が落選しているということです。

まだ一部発表で全体像がわかりませんが、野党「民主変革運動」は下院の6割の議席を獲得したと予想しています。
大統領選挙の結果はまだ報告されていませんが、独立系選挙監視グループは「民主変革運動」のツァンギライ議長が55%、ムガベ大統領が37%、与党を造反したマコニ元財務相が5%--の得票を予想しているようです。

野党側は発表の遅れに「不正操作が行われている」と警戒をつのらせており、野党「民主変革運動」は独自集計結果を基に「勝利を収めた」と同党のツァンギライ議長の事実上の勝利宣言を行っています。
大統領側はこれを「クーデターのようなものだ」と非難、治安部隊を各所に配置するなど危機感を強めています。

ジンバブエの抱える問題(年率10万%のハイパーインフレ、失業率80%)、それをもたらしている強引な黒人化政策についてはこれまでも取り上げてきました。
07年12月14日 「ジンバブエ  経済崩壊・人権侵害、それでも続くムガベ政権」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20071214
07年7月11日 「ジンバブエ経済崩壊 権力に固執するかつての独立の英雄」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20070711

また、今回大統領選挙にむけてのムガベ大統領の強権的な手法等についても扱いました。
今年2月8日 「ジンバブエ  経済崩壊のムガベ政権を批判し、元財務相が大統領選挙へ出馬」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080208

野党「民主変革運動」は2000年初頭には都市部貧困層を中心に与党を上回る人気がありましたが、支持基盤の都市貧困層が住む住宅を犯罪対策を名目に「ごみ一掃」と称して壊してしまうという政権側の弾圧(70万人が家を失ったとも言われます。)、更に野党内部での対立で勢いを失い、今回選挙でも統一候補を出せない状態と言われていました。
結果的にはツァンギライ議長が出馬して善戦しているようです。
(マコニ元財務相については、上記2月8日ブログを参照)

今回選挙でも、無人の小屋や原野に有権者登録がなされている「幽霊有権者」の不正が大統領側によってなされているとの批判が出ています。
なお、14か国による南部アフリカ開発共同体の選挙監視団は懸念される点を指摘しながらも、最終的に投票は「人々の意思の表現として平和的かつ信頼できるものだった」と宣言しています。

白人所有の農地の強制収用など強引に「黒人化」政策を進め、自らの経済失策を人種問題に転嫁しようとするムガベ大統領に対し、黒人でもあるアメリカ・ライス長官は先月30日「ムガベ政権はジンバブエ国民にとって恥であり、アフリカ南部およびアフリカ大陸にとって恥である」と厳しく批判しています。
ライス長官の怒りは、ムガベ大統領がかつてライス国務長官を評して「あのアンクル・トムの娘は、白人が黒人の真の友にはなり得ないと知るべきだ」と述べたことが背景にあると推察されます。

大統領選の開票が遅れ不正が危惧されている点について、EUの開発援助担当の広報官は31日、最終結果をできるだけ早く公表するよう求めたそうですが、これまで政権を我が物としてきたムガベ大統領が自分に不利な結果を公表させるか・・・かなり疑問です。

しかし、万一そのような操作なり隠蔽なりがなされることになると、“選挙”は強権政権維持の道具として使われただけの話となります。
偽装民主主義です。
“選挙”における国民の審判を仰ぐという民主主義の基本ルールが無視されるなら、国民に残された政治・社会改革のための方法は何があるのでしょうか。
仮にあったとしても、国民の多くの血が流されるようなものになってしまいそうです。

まあ、まだ結果が出ていない段階ですから、そのような取り越し苦労をすることもないでしょう。
間違ってもケニアのような惨劇が繰り返されなければいいのですが。
積極的な偽装ではなくても、“国民の多くが選挙を望んでいるが、今選挙を行うと大幅に議席を失いそうだから選挙はやらない・・・”というのも消極的な偽装民主主義かも。

コメント
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