孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

世界食糧計画(WFP)  食料価格高騰で援助困難 日本政府へも資金提供要請

2008-04-03 16:46:21 | 世相
温暖化対策で世界の先頭を走る感のあるEU諸国ですが、その熱意にも若干変化があるようです。
エネルギー集約型の産業部門が、環境規制のゆるい国へと流出してしまう「炭素流出」(carbon leakage)と呼ばれる現象への懸念が広がっており、エネルギーを大量に消費する産業部門をいかにして保護するのかという点に各国首脳の関心が強まっているとか。

それでも、EUは2020年までに再生エネルギーの利用割合を1990年の水準に比べ20%引き上げる目標を設定しており、また20年までに、輸送用燃料に占めるバイオ燃料の比率を10%にする数値目標も定めています。
これに対し、世界食糧計画(WFP)は、バイオ燃料の使用が拡大することによって本来は食料生産のための畑が燃料生産に振り向けられ、食料価格が高騰してしまうとして、EUの計画を批判しています。

しかし、EUは、今年もバイオ燃料推進の姿勢を崩していません。
欧州委員会のマリアン・フィッシャー・ボエル農業担当委員は、「世界バイオ燃料市場会議」において、“EUが石油やガスをかなり対外的に依存していることを考えると、バイオ燃料の利用を促進することが重要になってくる”と語っています。【3月14日 IPS】
本来の温暖化の論点でも、世界の貧困層への配慮でもない、全く別次元で観点から動いているようにも見えます。

世界で進行する食料価格の高騰は、経済成長国での需要増加、原油価格の高騰、投機的な要因などもありますが、補助金などを背景に急速に進むバイオ燃料生産との競合も影響していることが常々指摘されています。
特に、今後バイオ燃料生産が本格化すれば、その影響は相当のものになることが予想されます。

関係方面からの批判も高まってきています。
食品最大手ネスレのレッツマット会長は、「予測されているとおり石油製品需要の増加分20%をバイオ燃料で代替すると、食用に回す穀物はなくなってしまう」と指摘。バイオ燃料製品への助成金について、「多額の助成金は倫理的に受け入れ難く、無責任な行為だ。競争の激化はトウモロコシ、大豆、小麦などの価格高騰を招き、耕作地の減少につながり、水資源を危機にさらす」と懸念を示しています。
2007年には国連・食糧の権利に関する特別報告官のジャン・ジグレール氏は国連総会演説で、「深刻な」食糧危機の回避策としてバイオ燃料の開発を5年間凍結する案を提唱しています。【3月24日 AFP】

トウモロコシ、大豆、小麦だけでなく米の国際価格も上昇しています。
その結果、40%の国民が1日0.55ドル以下で生活している東ティモールでは、米価上昇により世界食糧計画(WFP)からの食糧援助が削減される懸念が出てきています。

WFPへの主要なコメの提供国であるベトナムはタイに次ぐ世界第2位のコメ輸出国でもありますが、昨年ベトナムが国内事情からコメの輸出を制限し、それがきっかけとなって世界市場での米価が急上昇しています。
輸出制限は洪水被害による国内の食糧不足を回避するためとされていますが、他にも、原油価格の上昇による肥料、収穫、輸送コストの上昇、ドル安および中国の食糧需要の増大、経済成長による農地転用、バイオ燃料生産への関心の高まりなどの要因があると考えられています。【3月12日 IPS】

学校給食や難民キャンプへの食糧支援を行うWFPは先月20日、「世界的な穀物価格上昇の影響で食糧の供給量が不足する」として、日本を含む43カ国に追加資金を拠出するよう要請しました。
日本政府は7月の北海道洞爺湖サミットに向け「アフリカ支援」重視を打ち出したい意向ですが、小泉政権以来の政府開発援助(ODA)削減方針によって資金拠出が困難になっているとか。
日本のWFPへの07年の拠出額は約1億2000万ドル(世界5位)で、ピーク時(00年、2位)から約6割減っています。
国際機関への拠出金は2国間援助より「日本の顔」が見えにくいとして、大幅な削減傾向にあるそうです。【4月2日 毎日】

日本国内においても、年金を支えに暮らす高齢者にのしかかる医療費負担増加、生活保護の急増、そうした生活保護申請が門前払いされる実態、格差社会で暮らすワーキングプア層、災害被災者・・・資金手当てが必要な部分は山積みされています。
いくら資金があっても足りない状況で、国外の援助に資金を回すには相当の決断を要します。

ODA批判で取り上げられるような、提供資金が日本企業に還流する仕組みのような話は別にしても、国内的にも厳しい状況で資金提供する以上はなるべく「日本の顔」が見える形で実施したいという要望はわかります。
国際支援機関に提供して、結果どこからの資金提供かわからない形で使われるのでは・・・という思いです。

愛とかチャリティーというものは見返りを求めないものなのでしょうが、ビル・ゲイツが有り余るポケットマネーの一部を提供するのとは事情が違いますので、国際支援機関も資金提供国側のそうした要望への配慮があってしかるべきでしょう。

給食を食べる都度「日本の皆さん、援助ありがとうございます。」と言って欲しいなんて考えていませんが、授業のなかで資金提供国に関する情報を取り上げるぐらいの配慮はあっていいのでは。

一方、資金提供する日本国内にあっても、ODAは政府・外務省のポケットマネーではありませんから、負担者である国民に対し、どういう分野でどのように使っているということをもっとオープンにすべきかと考えます。
そうして使い道を公開すれば、確かに国内も厳しい状況ではありますが、コーヒー1杯分の援助で途上国の子供の給食や医療が支えられるのであれば、それを“けしからん”と言う人はそう多くはないと思います。
また、そのことで世界中の援助を必要としている国、人々に対する国民の認知も向上し、更なる援助も可能になるかと思います。

もちろん、いつも話題にされているような“税金の無駄使い”の是正を求める批判は強まるでしょうし、海外援助はいいにしても、“じゃ国内をどうするんだ”という声もあるでしょう。
それらは当然に政治が正面から向き合うべき問題です。

資金を提供する側、使用する側において、現実に即した対応を進めることでより円滑な支援・援助が可能となればよいのですが。

コメント
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