孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラン ガソリン輸入と石打刑

2007-07-17 16:48:32 | 国際情勢

写真はイランでガソリン値上げが発表された夜(6月26日)の殺気立つガソリンスタンド。
(“flickr”より By DD/MM/YYYY)

「イラン政府は6月、ガソリン配給制度を導入した。導入された制度により私有の普通自動車で1か月に100リットル、1日に3リットルのガソリン購入が上限となった。
アフマディネジャド大統領の狙いは、ガソリン輸入量を削減することだ。産油国イランはガソリンの国内需要の40%を輸入に依存している。
これに対して一般市民の間では怒りの声が上がっており、一部では暴動も起きている。」【7月16日 AFP】
(余計なことですが、1日3ℓなのに何故1ヶ月が100ℓ?)

「イラン政府は先月5月にガソリン店頭価格を1リットル当たり800リアルから1000リアル(約13円)へと25%値上げした。6月26日夜には国営テレビを通じ、翌27日午前0時から割当制を導入すると発表した。自家用車は1カ月100リットル、タクシーは800リットルが上限で、これを超えると数倍の料金を払う「二重価格」となる。」(毎日新聞 2007年6月27日)

イランは世界4位とも言われる有数の産油国です。
そのイランがガソリンの40%を輸入?
私は知りませんでしたが、世間では結構知られたことみたいです。

基本的には製油所不足だそうですが、では何故製油所を増設しないのか?
国民サービスにお金が必要で、製油所建設の資金がないとか。

もうひとつの原因は、価格が安すぎること。
上記記事にもあるように、25%上がってなお13円!
ミネラルウォーターの3分の1の値段とか。
これでは無駄遣いが止まりません。
ガソリン・スタンドで垂れ流しになり失われるガソリンの合計量は、1日に25万リットルにも及んでいると言われています。
燃費向上のインセティブがないので、イラン国内で使用されている車の燃費は非常に悪く、ニュースに登場したイラン人経済学者は「英仏製に比べイラン車は8倍の高燃費」と言っていました。
(“8倍”というのはどうでしょうか・・・)
「生活物資」であるガソリンを低価格で流通させるために政府は膨大な補助金を投じているため、これが国家財政を圧迫しているそうです。
このためガソリン消費抑制策の導入はハタミ前大統領時代からの懸案だったようです。
しかし、ガソリン価格引き上げは国民の反発を買うことと(確かに写真でも、みんな殺気だっています。)、インフレを加速させる危険があるため、なかなか是正ができないとか。

不自然な低価格維持は財政負担増加、資源の無駄遣いだけでなく、経済をゆがめて闇市場を発達させます。
一日当たり約1000万リッターが小型船舶や駱駝によってイラク、パキスタン、UAEなどの国へ密輸されていると言われています。
(“ラクダ”で密輸というのが、イランっぽくて楽しいですね。)
今回の措置でも天然ガスを併用するタクシーは走行には天然ガスだけ使い、ガソリンは闇市場へ転売する者が多いとか。
闇市場の発達は、特定のコネや権益を持つ者だけに大きな不当利益を発生させ、格差を拡大します。

そして、このガソリンを輸入に依存していることで、将来経済制裁を課せられたときイランの大きな弱点になるであろうということも多くの方指摘しているところです。

このニュースで私が一番「ヘー・・・そうなんだ・・・」と感じたのは全く別のことです。
価格是正・消費抑制をしたくても国民の反発を懸念してままならないイラン政府の姿は、有権者の支持率低下に悩む安倍総理やブッシュ大統領と基本的に同じです。
イラン政府というとイスラム原理主義に基づく強権的なイメージがありますが、必ずしもそうとも限らないのかも・・・と感じた次第です。
以前、イラン古式体操“ズールハーネ”の話題についても同様の感じがあって、そのことを7月4日のこのブログにも書きました。

しかし、イラン社会が日本や西欧とやっぱり相当に異なる社会であることを伝えるニュースもあります。
今月11日のニュースで「イラン司法当局は10日、不倫行為で有罪判決を受けた男性の石打刑が執行されたと発表した。この男性は11年前、婚姻関係にありながら別の女性と同居していて逮捕された。相手の女性も別の婚姻関係にあったため同時に逮捕され、やはり石打刑の判決を受けている。現在2人の子どもと刑務所に収容されているが、刑は執行されていないと報道官は表明した。」というもの。
ちなみに“石打刑では男性の場合は腰まで、女性の場合は首まで被告の体を地中に埋め、石を投げつける”のだそうです。

こういう話を聞くと「やっぱりイランという国は・・・」と思ってしまいます。
まとめると、“悪の帝国”と言われるほど社会すべてでオドロオドロしい訳でもないけど、かなり異質な面もない訳でもない・・・ということですかね。
受け取る方が、どこに重点を置くかで印象も変わるかと思います。

“石打刑の執行で住民がこれを拒否し、仕方なく裁判官と警官で執行した”とも伝えれています。
住民が拒否したということで、少しホッとするものがありました。
コメント
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