孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パキスタン 神学生のモスク立てこもり事件

2007-07-06 17:01:55 | 国際情勢

写真は「赤いモスク」外で竹の棒を手に警備を固める女性
(“flickr”より By openDemocracy)

パキスタンの首都イスラマバードでイスラム急進派の神学生らが「赤いモスク」に立てこもりを続けている事件は、これまでに19名の死亡者を出し、現在も続いているようです。
パキスタン政府当局は、立てこもっている急進派の指導者の1人 Ghazi師に投降するよう求めています。
Ghazi師の兄で、赤いモスクの最高指導者でもあるAziz師は、女性用のブルカを着用し女子学生に紛れて逃走をはかり逮捕されています。

食糧もなく、電気・水道も止められていますので、終結は時間の問題でしょう。
それにしても、4日には1400人が投降したとか、未だに1000人が残っているとか、すごい数の騒動です。
内部では銃を突きつけて投降を阻止して「人間の盾」をつくっているとも言われています。

写真は、政府施設に火を放ち逃走する神学生 2007年7月3日


事件の背景は以下のようなことのようです。
「Aziz師は4月に信者に自爆攻撃を勧めるなど「過激な指導者」で知られていて、05年7月のロンドン同時爆破テロでは、容疑者が同モスク隣接の神学校の出身者との情報から、英国の捜査当局が強制捜査を試みたそうです。
これが契機となり、パキスタン政府は過激派対策として国内の全神学校の政府登録を始め、神学校の外国人留学生受け入れも禁じました。
同モスクは政府登録に反対する中心的なモスクとなる一方、アフガニスタンの旧支配勢力タリバンとの関係も深めたとされ、パキスタン政府との対立を激化させていったようです。
一方で、国内各地の公営地に新たなモスクを次々と建設。
市民に対しても土地の立ち退きを迫ったり、米国の映画やCDを販売する店舗に放火するなど、市民の反感も高まっていたとも言われています。
同モスクは現在複数の神学校を持っていますが、武装勢力掃討作戦が続くアフガン国境に近いワジリスタン地方や北部カシミール地方の貧困家庭出身者が多く、反米感情や米国に協力するムシャラフ政権への反感が強いとも言われています。」(毎日新聞 2007年7月5日)

イスラム原理主義にはどうしても馴染めない、生理的に受け付けないものを感じます。
今回の神学生達も、偶像崇拝につながる映画・音楽を禁止するように求め、宗教警察まがいの活動を行っていたようです。
自分たちがそのような信条を守るのはある意味勝手ですが、その基準を「宗教的正義」の名の下に他人にも強制するという、価値観の個人差を認めず、個人の権利を圧殺する暴力に恐怖を感じます。

彼らが共鳴するタリバンがかつてアフガニスタンで発布した法令には次のようなものがあります。
・ 喫煙の禁止(家でも戸外でも 反イスラム的であるため)
・ 男子がヒゲを剃ることも禁止(ヒゲが薄い人は、その旨の証明書がないと外出できなかったそうです。)
・ 女性が洋服店で服をオーダーすることを禁止
・ 女性が顔を隠さず外出することを禁止
・ 音楽テープの所持を禁止
・ テレビも「悪魔の箱」として禁止
・ 凧揚げを禁止
・ 鳩を飼うことを禁止
・ 手品を禁止
・ 夫婦が路上で会話することを禁止
・ 髪の毛を“ビートルズスタイル”“タイタニックカット”にすることを禁止
・ 半ズボンも禁止(サッカーのパキスタンチーム選手は試合後逮捕され全員坊主頭にされたそうです。)
・ ヒンズー教徒は外出するときはサフラン色の衣服を着ること
(「大仏破壊」高木徹 より)

カブールの街を勧善懲悪省が雇った若者数千人がムチとカラシニコフ銃を持って「宗教パトロール」し、彼らが反イスラム的とみなす違反者には容赦なく暴力を加え、逮捕したそうです。
また、公開処刑を連日行い、娯楽を禁じられた市民に代替物として提供したとも言われています。
こうした規則はイスラムの教えとは無縁のものも多く、タリバンの出身部族の掟の影響があったり、単に彼らが無知・世間知らずの田舎者であったことに起因するものなどもあったようです。

このような異なる価値観を認めず、自らの独善的な“正義”の名のもとで個人の権利を圧殺するやり方は、イスラム原理主義に限らず、他の宗教的原理主義にも共通しています。
アメリカのネオコンもそのひとつかも。
また、宗教に限らず共産主義的国家主義も同じようなものでしょう。
戦前・戦時の日本の国家主義・軍国主義もまた同様でしょう。
当時の“民族主義的正義”に反するものを「非国民」「売国奴」と罵り徹底的に弾圧する姿は、滑稽なタリバンの施策と全く同列に愚かであり、生理的嫌悪感を感じます。


コメント (1)
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