BE HAPPY!

大山加奈選手、岩隈久志選手、ライコネン選手、浅田真央選手、阪神タイガース他好きなものがいっぱい。幸せ気分を発信したいな

デンソーにストレート勝利!!

2007-03-10 17:00:25 | バレーボール
     

 フューシャピンクのスイートピー。ピンクのスイートピーは定番ですが、フューシャはちょっと珍しい。私の大好きな色なので、東レの勝利を飾って貰いました。

 東レ 3  0 デンソー
       25-17
       25-22
       25-21

東レスタメン:向井、富田、木村、佐藤、荒木、中道 リベロ;濱口

今日は未希さんもベンチ入り。出番はありませんでしたが、コートに立てる状態になっているようですね
加奈さんもワンポイント出場

とにかく嬉しい久々の勝利 それもストレートの快勝です。
今日はサーブレシーブを崩すことを目的に、狙う選手も決めていたようです。
ミヤさんの力強いサーブで流れをつかみ、第2セット、リードされる場面はありましたが、最後まで流れを手放しませんでした。
今日はブロックも良かったようです。特にエリカさん、ブロックもスパイクも大活躍でした。
こういうバレーができるといいんですよね。
東レはサーブのいい選手が多いので、今日のようにしっかり狙っていけば主導権を握れると思います。
今季も残り少なくなってきましたが、まだファイナルへの望みは消えていません。
最後まで諦めずに、GO! GO! 東レ

加奈さんのユニ姿

2007-03-08 22:23:21 | バレーボール
       

 3月3日のパイオニア戦で、コートに戻ってきた加奈さんのユニ姿 知り合いがTV画面を写メしてくれました アリガトー
今年から新ユニになった東レ。加奈さんが着たらどんなだろうとずっと思っていました。凛々しいですねー。爽やかな白と青が似合っています。
Vスコで「5 大山」の文字を見るだけでジーンとしてましたが、画像を見るとまた格別です。

 東レのHPに、加奈さんのコメントが載っています。
ワンポイントブロッカーとしての出場だったそうですが、「スパイクを決めることができてすごく嬉しいです。でも、勝てなかったことがすごく悔しいです」
チームは厳しい状況ですが、加奈さんのコメントは前向きでした。

 今が一番大事な時期だと思うので、慎重に少しずつ調整していって下さい。

 加奈さんがベンチにいるだけで胸がときめく。試合は残念な結果に終わっても、加奈さんが一本スパイクを決めてくれたらすごく嬉しい。
加奈さんはやっぱりわたしたちの太陽です

狼の条件(7)

2007-03-07 17:32:04 | Angel ☆ knight
           ちびキョコも登場
  
「ミアイルって、近くでよく見ると、やっぱり素敵やな
「アアー、キョコたんは美形に弱いんだったー

 
ミアイルがロミオのクローン?
ウルフはカムイの話を思い出した。何から何までロミオにそっくりなコピー。
「あんたとロミオは、父親の話から、自分達が当然受け取るべきものと考えたメッシーナと草薙の利権を奪い取ることにした。だが、その矢先、ロミオがキナー病にかかっちまった。フェーズⅡに移行すれば寝たきりだ。そこで、あんたらはメッシーナのバイオテクノロジー部門を乗っ取って、ロミオのクローンを作り出したんだ。あんたは喜んで子宮を提供したんだろうな。この世で最も大切な片割れが免疫反応の心配なく臓器移植を受けることができる、理想のドナーバンクを生み出すために」
それで、ディアナはミアイルの健康を異常なほど気遣うのか。将来、ロミオに移植される臓器を損なわないために。ウルフはあまりのことに吐き気を覚えた。
「何のことをおっしゃっているのかわからないわ。たしかに、ロミオは腎臓を患っていますが、キナー病だなんて…」
笑い飛ばそうとするディアナを、ダンテは遮った。
「そのあたりは、ドクター・ヴァーミリオンに確かめればはっきりするさ。ロミオの主治医のな」
ディアナの顔がこわばった。なぜ、この男はそんなことを知っているのかという表情だ。ロミオがリラと同じ病院で同じ医師にかかっているとは夢にも知らないのだろう。
ひゅうっと喉が鳴る音がして、美雨が傍らのデスクによろけかかった。両手で顔を覆い、しぼり出すような声で言った。
「だめ。もうだめ。これ以上、ごまかせない。何という恐ろしいことを…!」
もはや彼女の仮面(ペルソナ)は粉々に砕けていた。仮面の下から現れた彼女の顔は、冷たい雨に打たれた花のように儚げだった。
「だから、あなたはミアイルのロボトミー手術を平気で命じられたのね。あなたは、あの子を臓器の詰まった袋としか見ていないのね!」
「おだまりなさい、ドクター・美雨!」
と叫んで、彼女に駆け寄ろうとしたディアナに、ナイトが言った。
「ディアナさん。どうやら、あなたからも色々お話しを伺わなければならないようだ。麻酔医の先生や、そちらのドクターと一緒に署まで来て頂けますか」
「いいえ」 ディアナはどこまでも気丈なところを見せた。
「令状に記載された罪名は誘拐罪と逮捕監禁罪だったわね。それについてはこちらの刑事さんが、カムイは自由意思でここへ来たと認めて下さったわ。それ以外のことをあれこれ調べるんでしたら、ちゃんと対応する令状を持って来て下さいな」
出し抜けに、場違いに明るいエンジェルの声が飛び込んできた。
「あら、こちら、まだ取り込んでるの?」
「エンジェルさん、どこへ行ってたんですか」
ナイトが訊くと、彼女は江流が持っていたのと同じマイクロレコーダーを掲げた。
「上でロミオと話をしてたのよ。病院で違法な臓器移植をやっていたとこととか、どうやって幹部に根回ししてタケル夫妻を殺害したかとか、ディアナから今夜カムイをバラバラにして、ミアイルにはロボトミー手術を施すと聞いていることなんかをね」
「ロミオが自白したんですか?」
ナイトは意外そうな声を出した。何年一緒に仕事をしていても、エンジェルのこの能力には驚かされるようだな、とダンテは思った。彼女にかかるとどんなに頑なな凶悪犯や自信満々の知能犯もぽろりと落ちてしまう。
「嘘よ。ロミオがそんなことしゃべるはずがないわ」
「もう悪あがきはやめるんだな」
ディアナに言い渡したのは、意外にもベーオウルフだった。
「おまえさんみたいな女狐に尻尾を出させるためには、多少の演技も必要かと思ったが、手の込んだ芝居をするまでもなく証拠が次々出てきたようだ。おまえも観念して、警察で洗いざらい白状した方がいいぜ」

イリヤはベーオウルフの変わり身の早さに舌を巻いた。
さっきまで、ディアナとぐるだったくせに、形勢が逆転して庇いきれなくなったと見るや、それは芝居だったと言い出した。イリヤの目にはそう映ったが、違うと言い切れる根拠もない。
さすがのディアナも、こうも次々に足元が崩れれば踏みこたえようがなかった。呆然としたまま、ベーオウルフの部下達にパトカーへ連れて行かれた。
(あの女も力がほしかったのかもしれない)
ディアナの後ろ姿を見送りながら、イリヤは思った。
男と違って、女は美貌を武器にできていいとずっと思っていた。だが、あの女も自分の分身であるロミオ以外の奴には絶望するような目にばかりあってきたのかもしれない。ロミオと二人きりの世界に閉じこもり、その世界を守るために、メッシーナの財力と、草薙の暴力を必要としたのか。
「大丈夫か? 行くぞ」
カムイを抱いたウルフに声をかけられ、イリヤはその後について歩き出した。
ウルフと並んで歩きながら、イリヤはヤードの入所試験を受けようかと考えたことを話してみた。ウルフは予想通り、
「いいんじゃねえか?」と笑った。「そういうのも動機としてはありだと思うぜ」
ただ、とウルフは言った。
「ハイエナのようにたかってくる人間てのは、別に弱い奴ばかりを狙うわけじゃねえ。力にたかってくることもあるってのは覚えといた方がいいぜ」
「どういうことですか?」
「まあ、おまえが実際警察に入りゃすぐわかるだろうが、駐車違反を見逃してくれとか、子供が万引きしたから穏便にすませてくれとか、色々頼んでくる奴がいるんだよ。救助セクションにいた頃でさえそうだったんだから、刑事局や交通局に配属された奴はもっと鬱陶しい思いしてんだろうな」
イリヤはうんざりした。どうして、人間てのはこうなんだ。ハイエナのように、とウルフは言ったが、ハイエナが聞いたらきっと怒るぞ。
「ま、あんまり自分の持って生まれた特性をネガティブに捉えないことだな」
ウルフは言った。
「美形ってのも、けっこう武器になるもんだぜ」

カムイとミアイルは警察病院に連れて行かれ、短期入院してメディカル・チェックを受けることになった。ウルフが二人に付き添い、ダンテはいつのまにか姿をくらませた。
「どうせ二人とも、うちが引き取ることになるんだろうな」
病院から帰る道すがら、江流が言った。カムイは孤児になってしまったし、ディアナとロミオも今度のことでミアイルの親権を剥奪されるだろう。
「賞金がパーになっちまった上に、腹空かせたガキが42人に増えるのか。あー、不吉な数字だぜ」
江流はぼやきつつナイトの顔を窺った。
「なあ、そういうことだから、さっきのレコーダー、200万で買い取って貰えるとありがてえんだけどな」
「残念ですが」 ナイトはそつなく微笑んだ。彼は現場から戻る車の中で、江流が録取した麻酔医の供述をヘッドホンで聴いていた。
「あのような強度の脅迫下での供述を証拠にすることはできません。あのドクターには、後日裁判所に出頭して、まったく任意といえる状況で供述し直して貰わなければなりませんね。もちろん、一度お約束した以上、お金は払いますが、こちらの正直な気持ちとしては、増額どころか減額をお願いしたいぐらいですよ」
これには、江流もすぐに引き下がって最初の100万で満足するしかなかった。
江流をやりこめるなんて、この人、なかなかのものだ、とイリヤは思った。やはりシティ警察に入ると、こういうワザを身につけられるのだろうか。
「あの二人の面倒を見るつもりなら気をつけた方がいいぜ」
ベーオウルフが、目論見が外れたはらいせもあるのか、江流に言った。
「あいつらはどちらもマフィアの血筋だ。今はガキだから多少は可愛げがあるが、蝮の子は蝮だからな。成長すればどんな禍を呼ぶかわかったもんじゃないぜ」
この言い草にはなぜか強烈に腹が立って、イリヤは思わず言った。
「あんた、狼少女の話知らないのか? 人間だって狼に育てられれば狼になる。大事なのは、どんな奴に育てられるかだ。あんたみたいなのに拾われてたら、アマラもカマラも狼にも人間にもなれなかっただろうな。あんたみたいな蝮野郎が蝮を育てるんだ。て、こんな言い方、蝮が聞いたら怒るだろうけどよ」
そう言い捨てると、イリヤは一人ずんずん先に歩き出した。

ウルフがカムイを保護しながら、警察に報告せずダンテと二人で匿い続けたことは少なからず問題視された。ウルフ自身は懲戒免職も覚悟していた。結果オーライではあったものの、自分がカムイを危険に陥れた責任は痛感している。
「たしかに、その点は会議でも問題になりました」
スターリング本部長は言った。
「ただ、ベーオウルフ捜査官が私的にバウンティハンターを雇ったことも、それに関連してかなり議論になりました。彼は、そのう…組織に対し柔軟に対応しすぎるところがありますから」
エリートだけあって言葉の選び方が上手いな、とウルフは妙なところに感心した。あの柔軟性を、この人にも見せてやりたかったぜ。
「結論としては、あなたを10日間の謹慎及び減給処分とします。特別休暇で旅行した後、しばらく家でゆっくりしていて下さい」
ウルフがスターリングの顔を見直すと、彼は柔らかく微笑んでいた。イリヤが警察に入ってこの人を見たらどう言うだろう、とウルフは思った。

 ロミオの供述から
…こうして何もかも終わってみると、全てが長い「ごっこ遊び」だったような気がします。世界があまりに敵だらけだったから、ぼくとディアナは二人きりで子供部屋に籠もり、夜になってもまた朝が来ても、気づかず遊び続けているうちにいつのまにか年月が過ぎて、体は大人になっていたような。
他人を敵か味方かに分類するのではなく、お互いに尊重しあえば素晴らしい人間関係が築けるとおっしゃるんですか? でも、他人がぼく達に向ける好意なんて、せいぜい外見を見てキャーキャー騒ぐか、この体に欲望を抱くだけでしたよ。悪意にいたっては、口にするのもおぞましい。ぼくを尊重してくれたのは、ディアナただ一人でした。
せめてミアイルだけでも愛せなかったかというんですか。それは無理ですよ。ぼく達はあの子を人間だと思っていませんでしたから。あの子はぼくの細胞から作られたクローンです。それなのに、自分でものを考えたりしゃべったりするのが、不思議でなりませんでした。草薙のカムイと仲良くなったり、タケルおじさんを殺したことを非難したり。ぼくと全く同じ遺伝子を持ちながら、なぜぼくと同じように感じ、同じように考えないのか。
あのエンジェルという人に、子供は皆親の細胞から生まれてくるけれど、親とは別の独立した人格なのだと言われて、ようやく、そういうものなのかと腑に落ちました。そういえば、ぼくも自分の親が大嫌いでしたからね。彼らもぼく達を愛したり尊重したりなんかしてくれませんでしたよ。ぼくは子供の頃から体が弱かったので、父に「できそこない」と疎まれましたし、母は母で、自分より美しいディアナに嫉妬していました。二人が離婚した原因をご存じですか? 父がディアナをレイプしたんです。それでも、母はそんな父のもとに僕たちを置き去りにしたんですよ。ぼく達がこの世で最初に出会った敵は両親でした。
何だか、すごく憐れむような目でぼくを見るんですね。でも、あなただって、自分で思っているほど尊重しあえる人間関係を結べているんでしょうか? あなたを尊重しているように見える人は、単にあなたが背景にしている権力におもねっているだけじゃないんですか?…

 ぼくとミアイルは江流に連れられて『安楽園』にやってきた。「おまえらを助けてやったのはおれなんだから、ありがたく思えよ」と江流は言ったけど、ぼく達は眠っていたのでよくわからない。イリヤはそんなことを真に受けてはいけないと言った。江流の言うことはあてにならないから、何かわからないことがあればシスター・シシィに聞けと。
シスター・シシィもウルフみたいにお花の匂いがする。でも、それは香水で、幸せ売りではないそうだ。
「誰が幸せ売りかじゃなくて、人と人がやさしく微笑み合うところに幸せ売りはいるのよ」と、シシィは言う。
シシィの言うことは、その時はよくわからなくても後になってわかることがあるので忘れずに覚えておくといい、とイリヤは言った。
イリヤは、ウルフは幸せ売りじゃなくて、ひ弱な子供を守れる狼だというけれど、ぼくはやっぱり幸せ売りだと思う。お父さんとお母さんが死んで真っ白に凍り付いた世界が、ウルフに会った途端、またもとの美しい場所に戻ったのをぼくは忘れない。
ウルフはこの間、ぼくとミアイルの様子を見に、『安楽園』に来てくれた。ここの子供達はみんなウルフに会いたがっていたので、ウルフは他の子達とばかり話して、ぼくらはちっともウルフと一緒にいられなかった。でも、幸せ売りを一人占めしようとするとどんなことになるか、ぼくはミアイルが読んでくれたご本でちゃんと知っている。だから、みんなが嬉しそうにウルフとしゃべっているのを見ていい気分になることにした。ウルフは帰り際、
「これから色んな事があると思うけど、負けんじゃねえぞ」
と、ぼくたちの頭を撫でてくれた。
ぼくは幸せ売りじゃなくて人間だけど、大きくなったら人に幸せをあげられるような人になりたいと思う。

(オシマイ)

狼の条件(6)

2007-03-05 17:02:29 | Angel ☆ knight
   
「ミアイルって、めっちゃ美形なロミオにそっくりやねんやろ?」
「そうだヨ!」
「その割には、あんたと五十歩百歩の顔してんなあ」
「それは、ボクもめっちゃ美形だって言いたいのかなー
「ええなぁ、クマたん、ポジティブ・シンキングで」

 ディスプレイに瞬く光点は、地図上の一点に数分間停まった後、また走り出した。エルシードはその動きに不自然なものを感じた。
彼女を追ってきた応援の車両に、引き続き光点の追跡を任せ、自分は車が一時停止した場所に向かった。光点が示していたのは、森に囲まれた広壮な邸宅だ。一見金持ちの別荘風だが、暗視(ノクト)ビジョンで見ると、赤外線が網の目のように張り巡らされている。照会をかけると、メッシーナの息がかかっていると見られる外科病院の保養所だった。
ナイトに知らせると、
―わかりました。おそらく、そちらが本命でしょう。われわれもそこへ向かいますので、座標を教えて下さい」
ナイトに座標を伝えると、エルシードは屋敷に一番近い大木に上ってカメラの望遠レンズを邸内に向けた。携帯用の、小型だが倍率の高いレンズだ。離れの窓のカーテンの隙間に、カムイらしい子供の姿を見つけた。二、三度シャッターを切ったが、距離がある上に角度が微妙なので、上手く室内の様子が写らない。
ほどなくして、ナイト達が到着し、ダンテが彼女にかわって木の上から写真を撮った。カムイの顔と、毛布に浮き出た手枷の形がくっきりと写っている。射撃の名手だけに、ターゲットにフォーカスを合わせるのが上手いのか。
ナイト達はその写真を裁判所に転送して捜索令状を取った。
やがて、組織犯罪対策課の捜査員が蟻の子一匹這い出せない包囲網を完成させると、ベーオウルフを先頭に、邸内に踏み込んだ。

 ディアナは母屋を抜け出すと、離れへ続く道を懸命に走った。サツのガサ入れ? ありえない。サツはニーノが空き家になったアジトに引きつけているはずだ。それなのに、ベーオウルフは未成年者誘拐罪と逮捕監禁罪の令状を示して乗り込んできた。
普通なら、そのままディアナに建物の中を案内させるはずなのに、なぜかベーオウルフは、母屋に部下をなだれこませた。ディアナはその隙に裏口から外へ出た。セキュリティ・システムが解除され、屋敷は完全に包囲されている。
大丈夫。ディアナは自分に言い聞かせた。臓器密売のデータはここにはない。警察の目当てはカムイだけのようだ。それならいかようにも切り抜けられる。
突然、足音もなく脇に並びかけた気配に、さすがのディアナも、小さく「ひっ」と声を上げた。木の間から差し込む月明かりに、ベーオウルフの尖った顔が浮かび上がった。
「ガキは離れにいるんだな」 爬虫類を思わせる薄い唇が開く。
「そうよ」 ディアナは落ち着きを取り戻して言った。
「カムイはわたしたちを頼って逃げ込んできたの。とても消耗しているようだったから、離れで医者の診察を受けさせたわ。ちょうど息子も夕方から具合が悪かったから、一緒に治療を受けているところよ。誘拐だの、逮捕監禁だの、いいがかりもたいがいにしてほしいわ」
「なるほど。そういうことにしたいんだな。いいだろう」
ベーオウルフはニヤリと笑った。
「おれが一緒に診察室へ行って、あんたの言うとおりだと口裏を合わせてやるよ。なに、カムイがここに連れ込まれたなんて騒いでるのは特捜班の連中だ。捜索が空振りに終わっても、奴らが恥をかくだけで、おれの汚点にはならん」
意外な言葉に、ディアナは目を見張った。
「あなた、何を考えてるの?」
「おまえさんとロミオが組織をのっとった切り札に、おれも一枚噛ませて貰えればそれでいい」
「あきれた。とんだ蝮野郎ね。それでも警察官なの?」
ディアナの口角が愉快そうに持ち上がった。

ディアナとベーオウルフは二人の医師をせっついて、離れの偽装工作に取りかかった。
カムイとミアイルにクロロフォルムをかがせ、鉄の枷はベッドの内部に収納して、その上にマットレスを敷いた。そこに二人を寝かせて、ビタミン剤の点滴を始めると、間一髪、ナイト達が部屋に飛び込んできた。
「ナイト。どうやら、おまえさんの見込み違いだったようだぜ。ガキは自分から助けを求めてきたそうだ。それで、おばさんがオランジュ公園まで迎えに行ってやったんだとさ」
「とてもそんな風には見えませんでしたが」
「公園は暗かったし、おまえ達のいた場所からも距離があった。勘違いしてもやむをえんよ」
「誤解が解けたのなら、お引き取り願いたいわ。子供達の体に障りますから」
ダンテが写した写真は、それだけでカムイの誘拐・監禁の事実を立証できるものではない。ディアナがこう言い張り、ベーオウルフまで口添えしたのでは、捜査は困難になる。
「わかったな、ナイト。撤収するぞ」

「クロロフォルムの匂いがする」
今にも撤収コールをかけそうなベーオウルフを尻目に、エルシードが言った。
「ここは診察室です。いろいろな薬品の匂いがするのはあたりまえです」
白衣の女医が言った。能面のような顔。抑揚のない声。
「この点滴、まだほとんどいっぱいだな。今始めたばっかりみたいじゃないか」
「ええ。その前に、いくつか検査をしましたので」
「カルテはどこだ。この部屋にはないようだが、本当に診察したのなら書いているはずだ」
「患者に対する守秘義務があるので、カルテはお見せできません。どうしてもとおっしゃるなら、別途令状を取って下さい」
どこまでも落ち着き払って受け答えする女医に、エルシードは言った。
「あなたは仮面(ペルソナ)に答えさせている。自分の心に嘘をつかなければならないからだ。わたしは、本来のあなたに質問に答えてほしい」
女医ははっと目を見張った。表情が揺れる。しかし、
「ドクター・美雨。つまらない心理作戦に動揺しないで」
鞭打つようにぴしりと放たれたディアナの声に、揺らぎかけた美雨の仮面がまた固まった。この人はこの女に支配されている。
「とにかく、カムイが目を覚ますまで待ってみませんか。その方がおっしゃるように自分から助けを求めたのか、無理矢理連れてこられたのか、本人に訊けばわかるでしょう」
「おれがここに残って訊いてやるよ。おまえらは、いったん引き上げろ」
「いいえ。全員で待ちましょう」
ナイトが言うと、ディアナが彼を睨みつけた。
「目を覚ました時に、見知らぬ大勢の大人がものものしく詰めかけていたら、子供達がどんなにショックを受けると思うの?」
「おい、性格ブス」
ディアナの背後で声がした。
「嘘もたいがいにしとかねえと、地獄で閻魔様に舌引っこ抜かれるぜ。そのガキはおれの獲物だ。どいつもこいつも手を出すな」
一陣の風にカーテンがはためくとともに、江流が窓枠を乗り越えて部屋に入ってきた。

 イリヤと江流が飛び込んだのは、麻酔医の控え室だった。離れの一角が急峻な崖を背にしているので、そこを転がり落ちるようにして敷地に侵入した。そうでもしなければ、警察の包囲網に引っ掛かっていただろう。後でバイクを弁償して貰わなければ、とイリヤは思った。
一番手近な窓から押し入ると、麻酔医が母屋から伝わってくる騒ぎに、大慌てで器具を片付けているところだった。
「ほう。何だか大がかりな手術の予定が入っているようじゃねえか。どんな重病患者がいらっしゃるんだ?」
麻酔医はすっかり驚いて、腰を抜かしている。
「し、し、知りませんよ。わたしはただ、ここの医者に呼ばれて麻酔の用意をするだけで、何をやってるのかなんて、さっぱり…」
「素人だと思ってなめんじゃねえ。体のどの部分にどんな術式を施すかで麻酔の方法も変わってくる。手術中もずっと立ち会って加減を見なきゃなんねえんだろ? おれは、麻酔医がドジを踏んで意識が戻らなくなった患者の経も上げたんだぜ」
江流は、どこから持ち出したのか、いつのまにかメスを手にしている。
「あんた、ユーラシアンか。なら、こいつは馴染みのない話かもしれねえが、地獄には閻魔大王ってのがいてな。嘘つきの舌は残らず引っこ抜いちまうんだぜ」
言いながら、ゆっくりと麻酔医の前にかがみこんだ。
「だが、舌を抜いたらしゃべれなくなっちまうなあ。本当のことが言いやすいように、もうちょっと口を大きくしてやろうか」
いかにも楽しそうに麻酔医の口角にメスを這わせる江流を、イリヤはあきれ果てて眺めた。こいつは、正真正銘のサドだ。

「その麻酔医は色々面白いことをしゃべってくれたぜ。法律で禁止されてるはずの手術に何度も立ち会ったことや、今晩、カムイをバラして臓器を摘出する予定だってこともな。そっちの坊やはロボトミー手術をするそうだぜ。その話は全部このレコーダーに入ってる。ほしけりゃ100万で売ってやるよ」
「買いましょう」 すかさず、ナイトが言った。
ディアナが素早く銃を抜いてレコーダーを撃ち抜こうとしたが、その寸前、ダンテの弾丸が彼女の銃をはじいた。床に落ちた銃身を二発目が破壊する。
「相変わらず、いい腕だな」
エルシードが感心したようにダンテに言った。
ベーオウルフは感心などしなかった。ダンテの前にずいと歩み寄り、
「殺し屋が警察の捜査に混じって何をやってるんだ?」と凄んだ。
「最近、特捜班の連中と馴れ合ってるようだが、調子に乗ってんじゃないぞ。暴行と器物損壊の現行犯で逮捕してやる。山ほどある殺人の余罪も全部吐いて貰うからな」
それまでずっと黙っていたダンテが、初めて口を開いた。
「ごくろうなこったな。そうまでして、メッシーナのクローン技術の恩恵に預かりたいのか? ベーオウルフ」

「クローン?」
部屋中の視線がダンテに集まった。
「ああ。ミアイルは、ロミオとディアナが生殖行為をして生まれた子供じゃない。メッシーナのバイオテクノロジー部門が、ロミオの細胞から作り出したクローンだ。あんたらはその技術をぶら下げて幹部連を籠絡したんだろう。おまえも一緒に甘い汁を吸うつもりか? ベーオウルフ」

(続く)

東レ vs トヨタ車体

2007-03-04 16:26:38 | バレーボール
         かなり繁ってきました
     

 東レ 1  3 トヨタ車体
         25-10
         21-25
         17-25
         21-25

東レスタメン:芝田、富田、木村、向井、荒木、中道 リベロ;濱口

今日は、メイさんにかわってネネさん、ミヤさんにかわってダンさんがスタメンです。
そのネネさんの速攻、タクトさんのスパイクで、出だし良くセットをとったのですが、やはりトヨタ車体のサーブは要注意でした。
サーブで崩され、ブロックにかけられ、変化のある攻撃で切り返され、と相手のバレーをされてしまいました。
2LEGから、もう一歩というところでペースをつかみきれない試合が続いている東レ。試練の時が続いていますが、若い選手はやはり一度こういうところをくぐり抜けなければならないのでしょうね。
とにかく、気持ちを縮こまらせないで、思い切ってぶつかっていってほしい。結果を気にすると、あれこれ迷って動けなくなるので、いい意味で開き直って、自分が今持っている力をぶつけていってほしいです。

 加奈さんは、今日もワンポイント出場。スパイクで1得点を決めてくれました。
加奈さんがベンチにいるだけで、お日様が出たような気持ちになります。一回一回、心と体の調子を確認しながら、ゆっくり着実に一歩ずつ進んでいって下さい。急いだり、慌てたりしないでね。

 次回は、大阪・兵庫大会
3月10日(土)  デンソー (八尾市立総合体育館)
3月11日(日)  JT(神戸総合運動公園グリーンアリーナ神戸)

加奈さん登場!

2007-03-03 17:32:29 | バレーボール


 お雛様の右左。男雛が向かって右とかいわれますが、お雛様によってまちまちですよね。右左というのが、お雛様から見て右か、ひな壇に向かって右なのか解釈が分かれたのかと思っていましたが、「京風」「関東風」という二つの飾り方があるんだそうです。男雛が向かって右なのが「京風」です。

要するに     どっちでもいい     ということで


東レ 2  3 パイオニア
    22-25
    16-25
    25-20
    25-14
    12-15

東レスタメン: 芝田、西脇、木村、佐藤、荒木、中道 リベロ;濱口

試合結果はまたもフルセットの末敗戦という残念なものでしたが、結果なんかどっちでも良くなってしまうような大ニュース。


加奈さんがコートに立った


ワンポイントでしたが、スパイクを1本決めてくれました
ああ、Vスコに画像がないのが恨めしい
どんなスパイクだったのかなぁー。もう、思い切り打てるのかなぁー。
加奈さんが出てくれて嬉しいのはもちろんですが、チームが勝てないので無理をすることになっていないか、それだけが心配です。
どうか本当にきちんと回復して、少しずつ実戦の中でカンを取り戻していくという状態になっていますように。そして、加奈さんの気持ちも、「バレーをやりたい。コートに立ちたい」になっていますように
何はともあれ、加奈さんがコートに立ってくれただけで、なぜかウキウキ のお雛祭り試合でした。
明日は  トヨタ車体。レシーブで粘り、きっかけをつかむとサーブでたたみかけてくるチームなので、流れをつかんで一気にいこう 東レ


狼の条件(5)

2007-03-02 18:52:42 | Angel ☆ knight
  

 「見ろ。おまえが甘やかすから、こういうことになるんだ!」 
ダンテはウルフに怒鳴った。
「危険は、何も知らない小さな子供だからってよけて通っちゃくれねえ。まして、その危険が悪意を持っているならなおさらだ。そういうことは、ぶん殴ってでもわからせなきゃだめなんだよ!」
「落ち着いて下さい、ダンテ。ウルフを責めたって何の解決にもなりませんよ」
ナイトがダンテの肩に手を置いてなだめた。
彼とエンジェルは、痺れ薬の効き目が薄れて身動きができるようになると、ウルフ達が消えた方向へ歩き出した。そこへカムイが一人で駆けてきたので、まだ痺れの残る体で後を追った。ウルフの携帯もダンテの携帯も、電源を切ったままだ。おそらく電話機が発する電波で居場所をつきとめられないようにしているのだろう。
カムイはオランジュ公園に入って行き、噴水の側のベンチに座った同年配の子供に駆け寄ろうとした。ベンチに座った少年が何か叫ぶのと同時に、ファミリーの人間らしい黒ずくめの男がカムイを捕まえ、公園の出入口に停めてあった車に引きずり込んだ。
エンジェルもナイトもまだ完全には体の自由がきかなかった。車が発進する直前、発信器付きのナイフを後部ボディに突き立てるのが精一杯だった。
このナイフは警察の制式機器なので、捜査官は誰でも電波を受信することができる。既に、二人から連絡を受けたエルシードが、ロードマスターで出動し、信号を追っていた。
「カムイが連れて行かれた場所が確定し次第、組織犯罪対策課に連絡して包囲網を張って貰います」 ナイトは言った。
「ベーオウルフに知らせるのか?」ウルフは顔をしかめた。
「公式の捜査線にのせてしまえば、ベーオウルフも妙な裏取引はできません。永遠子局長やスターリング本部長にも話は通してあります」
ナイトの言うとおりだと思ったのか、ウルフは口を閉じた。
「われわれも、後を追いましょう。ダンテ、車を出して下さい」

ダンテはいつになく手荒な動作で車を駐車場から出した。
カムイが部屋を抜けだしたことに気づいて、彼もすぐに足取りを追った。こんな夜更けに小さな男の子が一人で走って行くのはそれなりに目立つ光景なので、終夜営業の店の店員らが何人か、その姿に注意を引かれていた。目撃者の話を辿ってオランジュ公園に行き、エンジェルとナイトに会って、カムイが組織の人間らしい男達に連れ去られたことがわかったのだ。
車を建物の玄関口に回すと、助手席にナイト、後部座席にエンジェルとウルフが乗り込んできた。バックミラーに、血がにじむほど強く唇を噛みしめたウルフの顔が映った。

 「おい、見ろよ。こんなもんがささってるぜ」
カムイとミアイルを乗せた車が郊外の一軒家に着くと、真っ先に下車してドアを開けようとした組員がナイトの放ったナイフに目を留めた。
カムイを抱えた兄貴分にそのことを伝えると、兄貴分は運転手のニーノに声をかけた。
「うるさい蝿がつまらん仕掛けをしたようだ。おまえ、適当に振り回してやれ」
「わかりやした」
ニーノはニヤリと笑って、発信器をつけたまま車をスタートさせた。

 「ホホホ、馬鹿な子ねえ。わたしたちがミアイルの携帯をチェックしていないとでも思ってたの?」
ディアナは豊かな金髪をかきあげて笑った。
カムイが行方不明になると、ディアナはすぐさま息子の携帯を取り上げた。ミアイルはカムイとやりとりしたメールを全て保存していたので、ディアナは、木の枝をつたって逃げ出す話や、息子がカムイを「クマたん」と呼んでいることを知ることができた。あとはミアイルの文体を真似てメールを送ればいいだけだ。上手い具合に、カムイの方から息子の携帯に連絡してきた。飛んで火に入る夏の虫とはこのことだ。
ミアイルは母親からカムイをかばうようにその体にはりついている。ディアナはミアイルがケガや病気をすることを極度に恐れていた。ミアイルが側にいると、カムイに手出しができなくなる。
「コピー。あなたは、もうお部屋へ戻りなさい。お母様はカムイくんにご用があるの」
「いやだ。クマたんも一緒じゃなきゃ、ぼく、どこへも行かない」
ディアナは息子を憎々しげに睨みつけた。ロミオのコピーのくせに、なぜこの子はこんな勝手なことを言うのだろう。
「ドクター・サーペンタイン」
ディアナは、白衣を着た痩身の男を振り返った。
「こっちのオリエンタルの子供はバラして臓器をさばいてちょうだい。子供の臓器は大人のものより高く売れるから」
それに続くディアナの言葉を期待するように、サーペンタインは蛇のような舌をちろりとのぞかせた。
「それから、コピーのロボトミー手術も一緒にやって貰える? この子は最近、親のいうことをきかない悪い子になってきたから」
サーペンタインは嬉しそうに舌なめずりして、手をすり合わせた。

 ニーノは、ずっと車の後をついてくる警察の車両らしいライトを、バックミラーで確認した。見事に引っかかりやがった。廃棄が決まって荷物もすべて運び出してしまった、あのアジトへ連れて行ってやろう。サツをいいように引き回すなんて、実に愉快だ。

 江流がむくりと起き上がる気配に、イリヤは、
「動けるようになったか?」と声をかけた。
江流はそれには答えず、
「おまえ、車持ってるか?」と訊ねた。
「持ってるわけねえだろ。バイクならあるけど」
イリヤが言うと、江流はちっと舌打ちした。
「ねえよりはマシだ。出せ」
「どこ行くの? こんな時間に」
「おれらの仕事に、こんな時間もあんな時間もあるか」
見ろ、と江流は窓の外を指した。パトカーが何台も、サイレンは鳴らさずに走って行く。捕り物の気配。
「おれらの仕事じゃない。あんたの仕事だ」
イリヤはつとめて興味がなさそうな声を出した。警察はあの子を見つけたのだろうか。ウルフはどうするのか。
「じゃあ、バイクを貸せ」 江流はキーを寄こせというように手を突き出した。
「あれはおれの唯一の財産なんだ」 イリヤは言った。
「あんたの荒っぽい運転で、壊されちゃたまんねえ」
イリヤは江流をリアシートに乗せて、パトカーの向かう方向へ走り出した。

 ドクター・美雨(ミウ)は、離れの医療棟でディアナに命じられた手術の準備をしていた。彼女はカムイの臓器摘出を、サーペンタインはミアイルのロボトミー手術を担当することになっていた。
子供達は隣の部屋でベッドに横たわっている。手足を鉄の輪で拘束されて。あんなベッドがなぜ必要なのかと、ここに来たばかりの頃は不思議に思った。今は、考える気力すら麻痺してしまっていた。
どうして、こんなところまで流れてきてしまったんだろう。
外科医になって最初に勤務した病院は、ユーラシアンが実権を握っていた。オリエンタルはマイノリティで、ユーラシアンが論文を書くための下働きばかりさせられた。それに懲りてオリエント系の病院に転職したのだが、そこには別の差別が根強く残っていた。
―女は小児科か産婦人科へ行けばいいんだ。外科の世界にしゃしゃりでてくるな!
そんな言葉を、公然と浴びせられた。
どこへ行っても、理不尽な扱いしかして貰えない。絶望しかけた時に、ディアナが夢のような話を持ちかけてきた。臓器移植専門の外科病院を設立するので、医長になってほしい。
ディアナの言葉は嘘ではなかった。美雨は最新の設備が整った外科病院の外科医長に迎えられた。そして、臓器売買の片棒を担ぐことになった。
臓器の注文主は大金持ちが多いので、美雨は法外ともいえる収入を手にすることができた。違法な手術ばかりしているわけではないので、珍しい症例に当たれば論文を発表することも可能だ。臓器移植の権威として名声を得ることも夢ではない。
(でも、何かが違う)
心の底の違和感をずっと押し殺してここまできた。でも、今夜、あのいたいけな子供達の手術を命ぜられた時は―
脳外科医長のサーペンタインは、嬉々として準備を進めている。母親が実の息子の前頭葉切除術を頼んだことに、何の抵抗も感じていないらしい。
美雨は思わず洩れそうになったため息を押し殺した。抵抗を感じようが感じまいが、ディアナに逆らうことなどできはしない。わたしたちは首までどっぷり臓器工場に浸かってしまっている。何を考えても無駄なことだ。
現に、体は機械的に動いて準備を整えてしまった。もうそろそろ、麻酔医を呼んだ方がいいだろう。心など殺してしまえ。そうすれば、楽になれる。
美雨は壁の電話を取ると、麻酔医が控えている部屋の内線番号をプッシュした。

(続く)

狼の条件(4)

2007-03-01 15:45:43 | Angel ☆ knight


 「ダンテ、強ーい。ぼく、ダンテが一緒ならどこへ行っても平気だね」
三人が部屋に戻ると、カムイが言った。
「甘いな。今日はたまたまおまえを殺すつもりのない奴らばっかりだったから良かったんだ。組織の人間に見つかったら、有無を言わさずマシンガンだぞ」
本当に生き延びたいと思っているなら、食べたい物の一つや二つ我慢しろ、と厳しい口調で言われて、カムイは「ふみゅー」としぼんだ。が、五分と経たないうちに、
「ぼく、ミアイルに会いたいな」と言い出した。
「ミアイル? 友達か?」 ウルフが訊く。
「従兄弟だよ。ディアナおばちゃまとロミオおじちゃまの子供なの」
「おい、ちょっと待て」 ウルフは慌てて口をはさんだ。
「ディアナとロミオは双子の姉弟なんじゃないのか?」
「そうだよ。でも、みんな、ミアイルのお父さんはロミオおじちゃまだって言ってるよ。ディアナおばちゃまは、ミアイルのことをコピーって呼ぶの。何から何までロミオおじちゃまにそっくりだからって」
「コピー? 自分の息子をそんな風に呼んでるのか?」
何だか感じの悪い女だな、とウルフは思った。それに、何から何までロミオにそっくりとはどういうことだ? ディアナとロミオは双子なのだから、ディアナが自分に似た子供を産めば、ロミオにも似ているのは当然ではないか。
「なのに、何でそんなことが、ロミオが父親だっていう根拠になるんだよ」
「いや。あの双子は子供の頃からお互いにべったりで、自分達以外の人間には目もくれなかったそうだ。ディアナもロミオもあの美貌だから、言い寄る異性は大勢いるが、ことごとく袖にしてるみたいだぜ」
ダンテが言った。裏社会に通じている彼は、マフィアの内情にも詳しそうである。
なるほど、たしかに、そんなディアナがロミオ以外の男性と関係を結ぶとは考えにくい。
「しかし、それじゃ、あの二人は…」 近親相姦じゃねえか、という言葉をウルフは呑み込んだ。カムイの前でするべき話ではない。
「ミアイルは、ケガをしちゃいけないからって、外に出して貰えないの。ぼく、一回だけミアイルのおうちにお泊まりしたことがあるんだけど、ミアイルはぼくのおうちには来させて貰えないの」
「何だ、それ。すげえ過保護だな」
「ロミオおじちゃまと同じで体が弱いんだって。おじちゃまも、いつも具合が悪いってお部屋から出てこないから」
「だが、ミアイルは病気ってわけじゃねえんだろう? それなら、体を動かすことも大事だろうが」
「うん。だから、おうちの中にジムがあって、トレーナーさんと一緒に運動してるんだよ」
何とまあ、贅沢なこった。ともあれ、ディアナの息子になど会わせるわけにはいかない。
「まあ、今しばらくはここでおとなしくしてろ。今日うどんを食いに行っただけで、四人もおれたちのあとをついてきたんだからな」
カムイは「ふみゅー」と頷いた。

「さっき言ったナイトの話だが、おまえはどう考える?」
カムイがベッドに入ると、ダンテは言った。
「ベーオウルフに渡すぐらいなら、あいつに任せた方がいいだろうな」
ウルフは答えた。
「メッシーナのジェミニってのは、かなり歪んだ奴らみてえじゃねえか。そんな奴との取引材料にされたら、あの子が可哀想すぎる」
双子同士で子供を作ったという噂は嘘か本当かわからないとしても、わが子を「コピー」と呼ぶ感覚は、ウルフには理解できなかった。そうかと思えば、ケガを恐れて自宅に閉じこめるような、極端な愛情を示したりする。ロミオが体調不良なだけに、自分達の血を受け継ぐ者を大事に思うのだろうか。
「ロミオはどこが悪いんだ? 腎不全だっつう噂を聞いたことがあるが」
ウルフが言うと、「いいや、キナー病だ」と、ダンテは断じた。
「キナー病?」 内臓が次々に腐るという難病だ。これにかかると、生命維持装置につなぐか、次々と臓器移植を繰り返すしか生存する方法がない。
「ああ。リラが入院している病院で何度か見かけたことがある。身内に患者がいるとわかるんだよ。どのドクターにかかって、どんな検査をしているかで、大体な」
ダンテの恋人のリラもキナー病に冒され、生命維持装置を設置した病室から一歩も出られずにいる。ダンテはリラの医療費を支払うために、警察を辞めて殺し屋に転向したのだ。
「ロミオはまだフェーズⅠの段階なんだろう。だから、人工透析を受けるぐらいで自宅で暮らせるんだ。あいつらのことだから、いくらでも金をかけてフェーズⅠで食い止めるための治療をしているだろうが、それでも必ずフェーズⅡに移行する時がくる」
ダンテの声の重さに、ウルフは返す言葉を思いつかなかった。

 カムイはベッドの中で自分の携帯電話の電源を入れた。
彼の服を洗濯する時に、ウルフが上着のポケットから取り出して渡してくれたので、銃撃を受けた際にそのまま持って逃げることができた。
ミアイルにメールを打って、ぼくが無事でいることを知らせよう。ミアイルはきっと心配してくれている。
ぼくの家に爆弾を仕掛けたり、お父さんとお母さんを殺させたのがおじちゃまとおばちゃまだということはわかっている。お父さんが撃たれる前に、「おまえら、メッシーナの手先か」と叫んだからだ。ぼくは、ドレッサーの中から二人が撃たれるのを見ていた。世界が真っ白になって、何も感じられなくなり、体だけが機械的に動いて、ドレッサーの床の抜け穴から外へ出た。世界に色が戻ってきたのは、ウルフの体からお花の匂いがしてくるのを嗅いだ時だ。幸せ売りがいる、と思った瞬間、色んな感覚が戻ってきた。お日様の光が暖かくて、空は明るい青だった。
幸せ売りの話を教えてくれたのはミアイルだ。ミアイルは外へ出て遊べない分、たくさん本を読んで、色んな事を知っている。ぼくはミアイルが大好きだ。しばらく会えないけど、ウルフもダンテも一緒だから大丈夫だよって教えてあげなくちゃ。おばちゃまたちには内緒だよっていえば、ミアイルは絶対黙っていてくれる。
カムイは手早くメールを打つと、ミアイルに送信した。

1時間もしないうちに、ミアイルから返事が来た。今から家を抜けだしてオランジュ公園に行くから、そこで落ち合おうというのだ。

『クマたんが前にお泊まりに来た時、庭の木がもうちょっと大きくなれば枝を伝って抜け出せるよって教えてくれたでしょ。今、あの木の枝がちょうどぼくの部屋の窓まで伸びてるんだ。だから、こっそり外へ行けるよ』

返信を読んで、カムイの胸は躍った。ミアイルに会える。
カムイのいるベッドルームは、窓の外が非常階段になっていた。設計ミスでそうなったらしいが、いざという時逃げるのに便利なので、ダンテはいつもこの部屋を借りるのだそうだ。
カムイは音を立てないようにそっと服を着ると、窓から部屋を抜けだした。

 イリヤは、痺れ薬を打たれた江流を自分の部屋に連れ帰って介抱した。安楽園に戻れば、警察が銃撃事件についてうるさく尋問しにくるだろう。万一参考人としてしょっぴかれても、ベーオウルフが手を回して釈放させるだろうが、こいつには一つぐらい恩を売っておいてもいいかもしれない。
ベーオウルフとウルフか。どちらも名前の中に狼(ウルフ)がある。狼はイリヤにとって特別な動物だった。
小学生の頃、学校で狼少女の話を聞いた。アマラとカマラとかいう名前の姉妹が狼に育てられたという話だ。発見された時、二人はまるで狼のように四足歩行し、夜になると遠吠えもした。しかし、周囲の人間の献身的な努力で、少しずつ人間らしさを取り戻し、言語も習得していったという。
この話は、人間にとって環境が―特に、幼児期の環境がいかに大切かを示すものとされている。しかし、イリヤはもっと別の疑問を抱いた。
人間の幼児のようなひ弱な生き物が、なぜ自然界で何年も生き延びられたのだろう。狼は何か特別な保護を二人に施したのだろうか?
安楽園では年長の子供がよく乳幼児の世話を任される。イリヤは一度、ミルクが切れていたので牛乳を温めて赤ん坊に飲ませたことがあった。赤ん坊は見事に腹を下し、彼はシスターに大目玉を食らった。アマラとカマラは狼と同じものを食べていたはずなのに、腸炎などを起こして死ななかったのはなぜだろう。
大体、狼のような体毛を持たない人間の子供がずっと戸外にいて風邪をひいたり肺炎を起こしたりしなかったというのも驚きだ。手足だって狼に比べてずっと弱いはずなのに、なぜ群れの移動についていけたのか。
教師に質問すると、この話で重要なのはそんなことではないと怒られた。わからねえなら、素直にそう言えよ、とイリヤはひとりごちたものだ。
彼の疑問にまともに取り合ってくれたのはシスター・シシィだけだった。シシィは動物図鑑や百科事典で狼の生態を調べてくれたが、謎は解けなかった。
―きっと、狼はとても強くてやさしい生き物なんでしょうね。
イリヤはがっかりしたが、その言葉は施設の壁に貼られたウルフという名の男の写真に重なり記憶に焼き付いた。ウルフに会えば長年の疑問が解けるような気さえした。
そして、今夜、彼は実物のウルフに会った。ウルフは狼のように、縁もゆかりもない子供を守っていた。カムイはその腕の中で安心しきっているように見えた。ウルフとダンテは、まるでつがいの狼のようだった。
イリヤが痺れるほど感心したのは、二人が江流を追い払った時の力加減だ。問答無用で麻酔針を突き立てる非情さと、それ以上は危害を加えないやさしさ。二人は、他人との間に絶妙の間合いで一線を引ける人間だった。これなんだ、とイリヤは思う。
彼を悩ませてきたのは、この一線をズカズカ踏み越えてくる奴らだった。いいだろう、友達なんだから助けてくれよ。イリヤくんなら優しいから許してくれると思って。おまえ、オレに逆らってやっていけると思ってんのか?
こういった輩を撃退するために、彼は力が欲しかった。自分は見た目ほど弱くも優しくも甘くもないということを周囲にアピールして、理不尽な攻撃のターゲットにならないために。イリヤは格闘技を習い、ナイフや銃の使い方にも習熟した。弁論術の教室に通ったこともある。だが、まだまだ不十分だ。
「やっぱり、権力か?」 イリヤは呟いた。
ウルフはシティ警察の警察官だ。江流によると、ダンテも元警察官だったらしい。シティ警察に入れば、求め続けていた力が手に入るのだろうか。
彼もそろそろ職業というものを真剣に考えねばならない年齢だった。シティ警察の訓練所(ヤード)を受けてみるのもいいかもしれないな、とイリヤは思った。

 夜道を走り詰めに走って、カムイはオランジュ公園に着いた。
ミアイルは、噴水の側のベンチに座っていた。
「ミアイル!」
と呼んで駆け寄ろうとすると、カムイに気づいたミアイルが叫んだ。
「来ちゃダメ、クマたん。早く逃げて!」

(続く)