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銀の騎士(3)

2007-03-30 16:40:39 | Angel ☆ knight


 組織犯罪対策課の刑事が銀の騎士に襲われた。
衝撃的なニュースは、シティ警察より先にメディアに流れた。『銀の騎士』が、繁華街へ続く一本道に倒れたジュリアーニ刑事の写真付メールを送りつけたからだ。
メールには、ジュリアーニがその日本部長から直々に、マフィア系クラブでの派手な遊興を厳重注意されたにも関わらず、反省の色もなく行きつけのクラブに向かおうとしたので、『銀の騎士』が制裁を加えたと書かれていた。
文章には必ずしも正確といえない箇所もあるが、問題はジュリアーニがスターリングに呼び出された事実が『銀の騎士』に筒抜けになっていたことだ。病院で意識を取り戻したジュリアーニは、ライトを消したオートバイが急接近してくるや、突然ビームサーベルで斬りつけられたと話しているので、『銀の騎士』が本人から呼び出しの事実を聞き出したのではないことがはっきりした。では、どこから洩れたのか?
ニュースでは、ジュリアーニと麗花を争っている客の一人、JJ0231がインタビューに答えて、ジュリアーニの横暴な振る舞いをまくしたてていた。最近、IT関連の若手起業家達の間では、メールアドレスやログインIDをビジネスネームに使うのが習慣になっている。
JJらがシティ警察のコンピューターをハッキングした可能性も調べられたが、科学技術室のアレフは、その形跡はないという。
―内部情報を漏らした奴がいるってことか?
口に出したくはない疑問が、署内の空気を重苦しくした。

 エルシードに続いてランスロットが病室に入ってくるのを見て、ジュリアーニは露骨に顔をしかめた。嫌な奴が来た。こいつに供述を録取されるなんて、屈辱的な気分だ。
ランスロットは、組織犯罪対策課の中では浮いた存在だった。身だしなみにうるさいベーオウルフ課長に、しょっちゅうシャツの着方がだらしないの、ネクタイが緩んでいるのとどやされても、まるで改めようとしない。そのくせ、課長が暗黙裏に推奨しているマフィアとのギブアンドテイクには極端に消極的で、おそらく課の中で一番厳しい取り締まりをする。しかし、他の連中と違い、マフィアにたかるような真似もしないので、構成員の間に妙な人望があり、ここぞという時に重要な情報を得ているらしいのも癪の種だ。
―ロードマスターとシルフィードに乗れるからって、お高くとまりやがって。
ジュリアーニは決まり悪さのあまり、いささか的外れな非難を胸裡に浮かべた。ヤード在籍中にロードマスターのライセンスを取得したのは、ランスロット、オリビエ、エルシードの三人だけ。シルフィードと両方となると、ランスロットただ一人だった。それなのに、ランスロットが救助セクションに入れなかったのは高所恐怖症だからだと聞いたことがある。シルフィードに乗って成層圏を飛ぶのは平気な癖に、ビルの屋上や断崖絶壁の上はダメなのだという。
対テロセクションにも入れなかったのは、小柄だからだろう。コマンダー・ユージィンになってから、身長175㎝以下の人間は一人も採用されていない。もちろん、公式にそんなことを認めているわけではないが、身長以外に落とされる理由が見当たらない人間を、おれも何人か知っている。おそらく、上背があってリーチが長い方が戦闘には有利だからだろう。こいつは、ダブルでライセンスを取得しながら、どちらのセクションにもはねられてしまったわけだ。
ジュリアーニはそう考えて、わずかに溜飲を下げた。
彼のランスロットに対する反感を察したのか、質問はもっぱらエルシードがした。いい女だな。ジュリアーニの目は、彼女の豊かな胸に釘付けになった。オリエンタルといってもミドル・イースタンだから、イースト・エイジアンの麗花とはかなり趣が違う。刑事特捜班のリーサル・ウェポンといわれているらしいが、胸の谷間で犯人を窒息させでもするのか?
エルシードに訊かれるままに、ジュリアーニは昨夜の状況を話していった。
坂を三分の一ほど下ったところで、黒いシルエットに気づいた。彼我の距離は50メートルほどだったか。それがオートバイだとわかった時には、黒い影がすぐ目の前まで迫っていた。瞬間移動したかのようなそのスピードに目を見張った瞬間、まごうかたなきビームサーベルのレーザーの刃が閃いた。
「ビームの色は何色でしたか?」
「ルビーだ」
ビームサーベルのビームは、出力が低い方から、オレンジ、ルビー、ヴァイオレット、ブルーと色を変える。ビームの長さは出力に反比例し、捜査官は犯人を逮捕する際、オレンジかルビーのビームをスタンガンのように使うことが多い。出力が低くてもビームが通過した場所によっては生命の危険を生じることがあるが、『銀の騎士』は巧みに急所を外していた。
「シルエット以外に何か見えたものはありませんか?」
「ないな。あのあたりは街灯もないし…だが、ビームの光でカウリングがちらっと見えた。黒っぽい色だったとしかいいようがないが」
「ここからは少し体力のいる作業になりますが、休憩をとりますか?」
「いや、大丈夫だ。続けてくれ」
エルシードはモバイルとタッチペンをジュリアーニに渡した。
「ここに、あなたが見たシルエットをできるだけ正確に再現して下さい」
「わかった」
エルシードの後ろでレコーダーを操作していたランスロットが、スイッチを切って一歩こちらに近づいた。

 ジュリアーニが作成したシルエット・モンタージュは、午後の捜査会議で、捜査員達に見せられた。
ヘルメットのシルエットは、ジョーイを襲った犯人が被っていたものと酷似していたが、オートバイの方はロードマスターとは似ても似つかない形状だ。
「いや、ロードマスターでしょう」と言ったのは、ランスロットである。例によってシャツの襟元をはだけ、ネクタイがその下にだらんとぶらさがっていた。
「ジュリアーニ刑事は『信じられないスピード』とか『瞬間移動のような』という言い回しを何度も使っています。普通のオートバイなら、そんな印象は受けなかったでしょう。それに、現場はシティ警察本部にも近い場所でした。追跡を受けた場合に備えて、逃げ足の速いロードマスターを使用したはずです」
「しかし、このシルエットは…」
「ロードマスターには、警察業務に必要な機器が多数搭載されています。それを全部とっぱらえば車体は相当スリムになります。あとは外郭ボディを外して市販のカウリングに変えれば、一見して普通のオートバイと見分けがつかなくなるでしょう」
「でも、現実問題、そんな改造が可能かな」
強行犯課課長のヴァレリーが言った。彼もロードマスターのライセンス保持者である。ロードマスターは高性能なだけにデリケートなマシンだ。下手にいじれば、それこそ動かなくなってしまう。
「ロードマスターが強奪されてからジュリアーニが襲われるまで、約24時間。そんな短時間にそれだけの大改造を施せる?」
「まあ、事前に何度もシュミレーションを繰り返して、改造に必要な設備や材料が整っていれば、あるいは…」
「わたしは無理だな。優秀なメカニックがいればともかく」
エルシードが言った。
「そうだなあ。ランスが言うような改造を施すとなると、よほどマシンのメカニズムにも精通していないと」
ヴァレリーの言葉に、対テロセクションの隊員から声が上がった。
「そういえば、いたな。目を悪くしてライダーからメカニックに転向した奴が」
「劉水央(リュウ・ミズオ)か? そういや、メカニックになってからも、身体要件を緩和しろって、コマンダーにせっついてたっけ」
ナイトとエンジェルは目を見交わした。
「メモリーカードの中に、その人物のデータはありませんでしたね」
「ええ、オペセンに聞きに行ってみましょうか」

 「劉水央ですか? ええ、候補者リストには入っていません。身長が170㎝しかありませんから」
オリビエは、本部オペセンを訪ねたナイト達に言った。
「10㎝違えば、肩やウエストの位置がジョーイ巡査と同じにはなりませんし、ロードマスターのセッティングも変わってきます。乗れないほどではありませんがペダルの位置が違うのでかなり扱いにくくなります」
「それでも、ジョーイ巡査を襲ったような方法でロードマスターを奪うことは可能かしら。身長は、上げ底ブーツなんかで誤魔化すこともできるでしょう?」
エンジェルが言うと、オリビエは小さく頷いた。
「それは、不可能ではないと思いますよ。ジョーイは完全に不意打ちをくらっていましたからね」
「オリビエさん。申し訳ありませんが、ライダーとメカニック、双方の経験を有する退職者を検索して頂けませんか? 体格は違っていても構いません」
「わかりました」と、オリビエはサングラスのブリッジを押し上げて、パソコンに向かった。

ライダーからメカニックに転向した者は思いの外少なかった。新たにメモリーカードを作成するまでもなく、エンジェルとナイトはその場でデータを一覧することにした。全員旧仕様車の乗務経験しかなく、メカニックとしてではあれ仕様変更後のロードマスターに触れていたのは、先刻捜査会議で名前が上がった劉水央だけだった。
「旧仕様車にしか乗ったことがなくても、メカニックとしてマシンに触れていれば、新仕様車を乗りこなせると思いますか?」
「できるでしょうね。仕様変更によってライダーの負担が軽減されて、操縦はむしろやりやすくなっていますから」
「劉水央は目をやられてライセンスを喪失したということですが」
オリビエは頷いた。二人は同じ作戦で負傷したのだそうだ。
「水央とぼくは暗視装置(ノクトビジョン)を装着して、テロリストのアジトに侵入しました。対テロセクションでは、戦闘が予想される現場では、潜水艦のアクティブ・ソナーと同じ超音波タイプのノクトビジョンを使います。赤外線照射タイプや光量増幅タイプでは、他の熱源との識別が難しかったり、強い発光でコンデンサーが焼き切れたりしますからね。ところが、敵はぼくらに強力な超音波を浴びせてきた」
先頭に立って進んでいたオリビエと水央はひとたまりもなくその目つぶしをくらってしまった。失明こそしなかったものの、ロードマスターの視力要件を充たすところまでは回復しなかった。
ライセンスを失ったオリビエは、本部オペレーションセンターに転属し、水央はメカニックになった。
「劉水央はメカニックに転向後も、身体要件を緩和するようコマンダーに要請していたんですか?」
「ええ。ぼくも一緒に意見書を書いたり直談判に行ったりしましたよ。視力が0.8か1.0かというような形式的な数値ではねるのではなく、実際にロードマスターを操る能力の方を厳格にテストして、その成績で判断すべきではないかと。視力や聴力が低いせいで操縦に支障が出る人間なら、そのテストで自然にふるいおとされるはずです」
しかし、コマンダー・ユージィンも前任の本部長もまるで聞き入れてくれなかったと、オリビエは言う。それどころか、ユージィンは本来条件に含まれていないはずの身長にまでこだわるようになった。水央が退職を決意した原因の一つはそれだったのではないかと、オリビエは言った。
「劉水央の、ライダーやメカニックとしての腕はどうだったんですか?」
「どちらもAクラスでした。ライダーの中には乗るだけ乗って整備はメカニックに任せきりという者もいますが、水央はライダー時代からメカニックと一緒になって油にまみれていました。本当にロードマスターを愛していたんです。だから、メカニックになってからもいい仕事をしていましたよ」
「聞けば聞くほど『銀の騎士』像にはまるようですね。もちろん、捜査に予断は禁物ですが」
ナイトが言うと、オリビエは苦い笑みを浮かべた。
「彼は理想主義者でした。スラム出身で苦労したので、その分、世の中を正したいという気持ちが強かったんです。警察機構の矛盾にも、人一倍傷ついていたんじゃないでしょうか。その意味では、あの3つの要求はとても水央らしいかもしれない。もちろん、彼が『銀の騎士』だなんて思いたくないですが」

エンジェルとナイトは劉水央の住居を訪問した。水央は不在だった。
隣人に訊ねると、そういえばここ何日か見かけていない、という返事だった。
郵便受けにはダイレクトメールが何通か入ってだけで、新聞は溜まっていない。二人は近隣の新聞販売店を回ってみた。水央はデイリーニューズと契約しており、旅行するので配達を止めてくれと申し出ていた。
配達停止日は、ロードマスター強奪事件の前日だった。

 「おい、どこへ行くんだ? 倉庫はあっちだぞ」
リアシートの刑事が声を上げたが、ランスロットは細い搬送路を奥へ奥へと進んでいった。通路はロードマスターがぎりぎり通り抜けられる幅で、記憶の中の映像と寸分違わなかった。
どんつきのフェンスに到達すると、ランスロットは、「やはりな」と呟いた。フェンスの一部が焼き切られて、ロードマスターがそのまま通り抜けられそうな穴が開いている。
ランスロットはロードマスターから降りると、切断されたフェンスの先端をたんねんに検分した。その一本に白い塗料が付着しているのを見て、彼はわれ知らずため息をついた。
「鑑識を呼んで、この塗料がロードマスターのものかどうか調べて下さい。もしそうなら、2区をどんなに探しても、『銀の騎士』はいない」
「2区にいないって…じゃあ、奴はどこへ行ったんだ?」
盗犯課の刑事が訊ねる。
「この道が続いている先ですよ。第16方面区です」

(続く)

↓ 時事(?)小ネタあります

時事ネタ2

2007-03-30 16:39:11 | Weblog
       
「世の中にたえて野球のなかりせば 春の心はのどけからまし~」
「思い切りパクッてんなあ」
「『本歌取り』と言ってよ」

 パ・リーグに続き、いよいよセ・リーグも本日開幕!
今の若い人達はスポーツの好みもかなり多様化しているようですが、わたしの世代はまだまだ「日本のスポーツは野球と相撲!」という刷り込みをされているので、毎年プロ野球が開幕するこの時期になると、何となくソワソワムズムズ
ああ、また岩隈選手や阪神の勝敗に一喜一憂しなきゃならない季節がやってきたわ
クマたんの迷歌の本歌は「野球」ではなくて「桜」ですね。
昔から桜を愛でてきた日本人。風が吹いたり雨が降ったりするたびに、自分達がお花見に行く前に散ってしまうんではないかとハラハラドキドキしていたんでしょうね。こんなものなかったら、安らかに暮らせるのに…
でも、やっぱり好きなものにドキドキさせられる方が楽しいんですよね