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大山加奈選手、岩隈久志選手、ライコネン選手、浅田真央選手、阪神タイガース他好きなものがいっぱい。幸せ気分を発信したいな

群青のミッドウェー 7

2015-10-08 21:59:20 | 群青のミッドウェー
   紺碧のダナウェイ~音楽は地球を救う~


 (このお話はフィクションです。実在の個人・団体とは一切関係ありません)

敵空母が三隻。
それは、つまり、1対2ではなく1対3の戦いになるということだ。これはかなりの違いだ。
メッシやネイマールも、ディフェンスが二人ならドリブルで抜いていってしまうかもしれないが、三人に囲まれるとちょっと苦しいんじゃないだろうか
なぜこんなことになったかというのは、前段がある。
ミッドウェー海戦の少し前に珊瑚海海戦というのがあった。この戦いで、日本は米空母ヨークタウンを大破した。
沈めはしなかったものの、ミッドウェー海戦には到底出てこられないだろうという程度にぶっ壊したのである。
しかし、ニミッツはヨークタウンを三日以内に修理するよう命じた。
ヨークタウンは突貫工事で修理され、つぎはぎだらけになりながらも、空母エンタープライズ、空母ホーネットと共にミッドウェー海戦に参戦した。
一方の日本は、ヨークタウンは戦闘不能と決めてかかり、最初から数に入れていなかった。
もう、この戦い、最初から最後まで情報がいいかげんだ。こんなんで戦争してたのか 帝国海軍。

そんなわけで、おれたちが敵艦の上空に近づくと、グラマンが雲霞のように群がってきた。
何しろ数が多いので、おれはつい敦の機から離れそうになる。
画面の右端で、味方の雷撃機が海面をなめるような低空飛行で魚雷をヨークタウンの後部に命中させるのが見えた。
「おれたちも、あれでいこうぜ」
敦の声に、おれも高度を下げた。今にも波をかぶりそうだ。グラマンはここまで降りてこれないようだ。
「見ろよ、すげえ芸の細かい作画だな」
風防に波飛沫が散って、細かい水滴がついている。そのうち、ヨークタウンの船体が赤く輝いた。魚雷の射程距離に入ったのだ。
味方機が後部に魚雷を命中させていたので、おれたちは前部を狙った。
投下された魚雷は水中で姿勢を安定させると、シュルシュルとヨークタウン目指して走って行く。
ヨークタウンは必死で回頭するが、多分当たるだろう。てか、そんなの最後までのんびり見定めていられない。
「敦、早く高度上げろ。体当たりする気か?」
「うわぁ、こんなとこで特攻はいやだぜ」
おれたちは、ヨークタウンの上部構造をかすめるようにして、どうにか飛び越えた。またグラマンが来襲する
自分だけなら、ぶっちぎって、一目散に飛龍に飛んで帰るのだが、敦の機を守らなければならない。
カンカンと石がぶつかるような音がして、おれの機体が何度か黄色くなった。なんか、やばい感じだ
それでも、何とか二人とも飛龍に帰り着いた。
おれの零戦は、やはりかなり被弾していて、次の攻撃には使い物にならないと、海へ捨てられてしまった
敦の機は新しい魚雷をとりつけられ、給油を受けている。おれには残っていた予備機が与えられた。
てことは、もう一回行くの? 必死のパッチで帰ってきたところなのに?
まあ、敵空母はまだ2隻いるんだからしょうがねえか。
山口は、敵空母が3隻いたことを聞いて、渋い顔をしている。
「それで小林隊の損害がこんなに大きかったんだな」
おれたちに続いて発艦した第二次攻撃隊は、おれたちがヨークタウンを大破させたので、敵空母は残り一隻だと思って出撃したらしい。
だからぁ、何でヨークタウンが大破したっていう都合のいい情報はそんなに早く伝わるのに、敵空母が3隻いたことが、今頃山口の耳に入ってるの 何かホウ・レン・ソウがなってない気がするんだよな。
しばらくして、第二次攻撃隊がエンタープライズ型空母を一隻大破させたという報告が入った。
これで、戦力は一対一だ。サシで勝負なら負けないぞ
そこへ、乗組員にぼた餅が配られた。そういえば、ミッドウェー島に攻撃をかけたのは夜明け頃だ。今はもう午後二時である。
まさに、腹が減っては戦ができないだ。
普段は洋菓子党の碧が、
「ねえ、たまに、どうしても今はあんこの甘味じゃないとダメ!っていう時がない?」
と言う。あるある。疲れてる時なんか、特に。
もちろん、画面上のぼた餅をおれたちが食べられるわけはないが、疲労困憊した乗組員の体にあんこの甘味がしみわたる感じは想像することができた(^q^)
だが、これが飛龍乗組員の「最後の幸せ」になってしまった。
第三次攻撃をかけたくても使用可能機がほとんどなくなってしまった飛龍目指して、エンタープライズから爆撃機が飛び立ったのだ。
え? エンタープライズは大破させたんじゃないのかって?
実は、第二次攻撃隊がやっつけたのは、既におれたちがヘロヘロにしていたヨークタウンだったのだ。攻撃がかぶってしまったのだ。
つまり、敵空母エンタープライズとホーネットは2隻とも健在なのである。(つづく)