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川崎「核兵器禁止から廃絶へ」

2022-02-03 | 気になる本

川崎哲(2021)『核兵器禁止から廃絶へ』岩波ブックレット

 核兵器禁止条約が発効して1年経った。しかし、被爆国日本は加盟どころか、オブ参加も決めていない。岸田首相は広島出身である。核保有国アメリカに慮っているのだろうか。核保有5か国ですら、「核戦争で勝者はいない」と表明している。核による抑止力、敵基地攻撃能力は人類滅亡への道である。以下、本からのメモ書きである。

 核の恐ろしさを忘れてはならない。核は無くなくすことが出来るか?と聞くと、難しいと返事がくる。使われることがないだろう、と希望的観測である。

 ソ連が核実験を1949年に行い、イギリス、フランス、中国が加わり軍拡競争がすすんだ。1989年に冷戦が終結し、軍縮がすすんだ。2001年に9・11事件があり、アメリカは「テロとの戦争」で、アフガン、イラクへと軍事進攻した。世界で約3800発が実戦配備され、半数が短時間に発射できる。米のプリンストン大学のグループは、ヨーロッパに1発核兵器が打たれると、それを引き金に核戦争となり、数時間で9千万人以上が死傷すると、シミュレーションしている。

 イラクは大量破壊兵器の疑いで、フセイン政権は倒された。イランは開発疑惑があるが、「原子力の平和利用」だと主張している。核兵器は生物兵器、化学兵器と総称して大量破壊兵器と総称される。生物兵器禁止条約が1972年に、化学兵器禁止条約が1993年に作られ、対人地雷の禁止197年、クラスター爆弾の禁止2008年に、2017年に核兵器禁止条約が作られた。核兵器を規制するさまざまな取り組みが行われてきた。核兵器禁止条約で締結国は、開発、実験、保有だけでなく、使用の威嚇、協力することを禁止している。未臨界実験やコンピューターによるシミュレーションも禁止している

 核兵器は持って良い国、悪い国があるのではなく、核兵器そのものが悪である。日本政府が核兵器禁止条約に反対しているのは、日本の安全保障にアメリカの核兵器が必要と考えているからである。条約に加われば、アメリカによる核抑止力を損なう、と国会で答弁してる。東西冷戦で日本は、アメリカの軍事戦略に位置付けられた。朝鮮戦争が休戦した後、安保が改定され、アメリカが日本を防衛する代わりに日本は米銀基地を受け入れる日米安保体制が作られた。1967年佐藤首相は非核三原則を発表し、国是としてきた。が、持ち込ませずには密約があった。2013年安倍政権下で「核兵器の脅威に対しては、核抑止力を中心とする米国の拡大抑止が不可欠」とした。

 核抑止力という神話。1,抑止力とは、こちら側が攻撃する姿勢を示すことで、相手側が行動すること思い留まる(抑止)という軍事理論である。2,核保有国に核抑止の力が働くという仮説は、証明されていない。運がよかっただけである。3.抑止力を主張すれば、他の国も主張する。アメリカの銃社会が無くならない。4.核戦争になった時、結果責任を誰がとるのか。

 アメリカが率いる西側諸国は「自由、民主主義、人権など普遍的価値」を重んじると語られる。日本は、米中対立の中でアメリカ側の軍拡のプレイヤーになるのではなく、双方に軍縮義務の履行を働きかける立場に立つべきである。核兵器の廃絶は、紛争が瞬時に世界的破滅を招くような危険を回避するための取組である

 日本の場合、安全保障をメリカの軍事力一辺倒で考えることじたい時代にあわない。アメリカ自身、約20年間アフガニスタンやイラクで行ってきた「対テロ戦争」が挫折し、軍事力では平和や安定を築けないとういう現実に直面している。日本にとって、アジアにも軸足を置いた新たな国際協調のバランスを模索することは急務だ。

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