「美しい村」の議員日記

南アルプス山麓・大鹿村在住。自給自足農業、在宅ワーカー、2011年春より村議会議員。

大鹿村でのリニア説明会・2回目

2013年10月16日 | リニア新幹線
 10月14日に開催された大鹿村2回目の説明会での質疑の概要。前回の質問者はすべて大鹿村民だったが、今回はお隣の中川村・曽我村長やイヌワシ研究会の方などからも質問があった。地元で30年間調査してきた人の意見と、アセスで2年調べただけの結果と、どちらが信用できるかは明白。

Q:地下水・水資源への影響について住民が納得できる説明を。大鹿村は破砕帯ばかり。予測範囲すべてで井戸や水資源の調査を実施してほしい。調査に所有者や村の立ち会い、結果の公表を。全線湧水を防止する工法で施工していただきたい。
 小渋川を橋梁で通過する理由は? 鳶ヶ巣岩壁は本村でも重要な地形、かつ断崖絶壁で危険な場所。どんな工法で行われるのか。橋脚のない構造に。
 大西公園から変電施設は見えないので影響ないと言うが、送電線や鉄塔が新設されるとかなり影響が大きい。送電施設はトンネルの中に設置できないか。3haの改変ではなく、できるだけ小さくできないか。住民意見を反映できるような協議の場を。
A:トンネルが通過する部分は風化の影響が及んでいない深いところ。周辺の地下水に部分的に影響あるが、全体的な影響は小さい。破砕帯においては先進ボーリングなどで地質の状況をしっかり把握し、止水工法などの補助工法を組み合わせて、安全かつ地下水の流入を抑える形で工事を進めたい。事後調査は基本的には予測検討範囲内だが、具体的な位置や頻度は実際の状況を見ながら判断。
 南アルプスの土被りをできるだけ小さく、天竜川は橋梁で渡河する計画で、合理的に縦断勾配を設定すると、小渋川は谷が深いので地上部を渡河せざるを得ない。
A:橋梁の具体的な工法、詳細は今後詰めていく。変電施設のレイアウト等、減らせるかどうかも今後検討していきたい。変電施設までの送電については、電力会社に極力景観を考慮したルートにしてもらうよう話をしていきたい。
Q:排土を村外に運ぶのにどの路線を使って搬出するのか。搬出道路の環境影響調査、観光産業へ及ぼす影響は今後算出するのか。豊丘村から掘ったトンネルを使って排土を搬出すれば問題がだいぶ少なくなるが、そういう考えはあるか。鹿塩温泉や小渋温泉を調べていないのはなぜか。
A:大鹿村からの搬出は、主体は県道59号線と考えている。全線が2車線で広いわけではないことは認識している。県、大鹿村、中川村と調整して、工事車両を通すための道路対策を計画していく。
A:最大約1700台が通ることを想定して、59号に出る手前のところできちんと騒音、振動を予測している。希少猛禽類については調べている。一部、猛禽類の生活環境に影響を及ぼす可能性があるが、保全措置をちゃんとして工事をやっていく。観光についてはアセスの直接的な評価項目ではないが、景観資源や人と自然との触れ合いの場で、公園やキャンプ場などは挙げている。
A:鹿塩温泉については、塩川から約4~5kmで小渋川、それよりも離れたところにトンネル。高さも塩川に比べて若干高い。基本的に鹿塩温泉にはトンネルの影響が及ばないと考えている。小渋温泉も検討範囲の中に入っていないので準備書の中では取り上げていない。状況に応じて事後調査の箇所や頻度を決めていく。
A:豊丘村からのトンネルを使って土を出せないかという提案は現実的でない。南アルプスのトンネルは非常に長く掘削の時間もかかるので、早期に取り掛かりたい。豊丘村からトンネルを掘って大鹿村まで届くのには相当な時間がかかる。大鹿村の中で出てきた土を大量に仮置きするのは難しい。
Q:中川村では説明会はないし準備書の送付もなく関係市町村の一覧にもないが、ほとんどの掘削土が中川村を通っていく。しかも、それについて中川村内では環境影響調査で問題にしていない。中川村では調査をせずに、そのままやったもの勝ちでいいと考えたのか。
 騒音の基準が70dBだが、69dBだから基準以下だという話があった。こちらは本当に静かな素晴らしい環境の中で住民の皆さんが暮らしている。国が一律に定めた基準以内であればいいという考え方では違うのではないか。
 事後調査をして、万が一想定外のことが起こった場合にはどのような対応をされるのか。工事期間中に継続的定期的に調査をして、万が一何かを超えてしまった場合には、それが改善されるまで工事を止めることも約束願えるのか。
A:県道59号の改良は別の道路事業となるので、今回の事業とは切り離したアセス。道路の工事計画の中できちんと説明していく。
 基本的なスタンスとしては、事業者のできる範囲で影響を小さくしていく。もし何か起きたときは、地元の方の生活の確保を第一に取り組んでいくし、工事との因果関係があれば、すぐ対応させていただく。
A:環境基準との整合性も一つの評価基準だが、事業者の実行可能な範囲内でできるだけ環境への影響を回避・低減するという観点から評価している。例えば工事用車両の走行であれば、工事を平準化するとか、車両の運行計画を適切に行う、低速で、しかも数珠つなぎにならないように間隔を開けて運行させるといった対策を取りながら、少しでも影響を少なくしていく努力はしていきたい。
Q:30年間この地方で猛禽類を調査している。大鹿村から南木曾までの間にクマタカが9ペア、イヌワシが1ペアいて、クマタカ5ペア、イヌワシ1ペアが工事の影響を受ける。クマタカ2~3ペアは非常口が営巣地に非常に近く、工事によっていなくなるのではないかと思われる。なぜ影響が少ないのか。イヌワシに関して、営巣地は遠いところと書いてあるが、ごく近いところで毎年繁殖活動をしているし、工事で影響を受ける狩り場が2~3か所ある。モニタリング調査で影響があった場合はどうするのか。
A:今回の準備書の中でも、猛禽類については全体的には影響は小さいが、中には生息環境が保全されない可能性があり、注意して見ていかなければいけないところがあることはお示ししている。環境省のマニュアルに基づいて2年間調査をしてきて、非常口や路線近傍の猛禽類の状況は把握できている。影響については専門家の意見も踏まえて予測している。モニタリングで影響があった場合は、専門家の意見や地域の方々のご意見もいただきながら、適切な対応を図っていく。
Q:小渋線の中川村部分は10km余。住民は環境悪化と生活への悪影響を心配している。工事は24時間のフル操業がされるのか、資材運搬等は夜間は行わないのか。
 道路の拡幅や改修は、3年後に工事が開始されるとしたら全く対応できるような期間ではない。シビアに県と打ち合わせをして的確な改良・拡幅を即時行っていただきたい。そうしてからでなければ、工事の着工は地元としては受け入れられない。特にダムサイトから下については、一般道利用ではなく、河川内に専用道路を渡場まで造って、資材・排土運搬をしていただきたい。
A:トンネル工事については基本的には昼夜両方。橋梁、変電施設についてはほとんどが昼。詳細については地元の意見を伺いながら調整。道路運搬も含めて、昼とは8時から夕方5時ぐらいが普通。通勤、通学、デイサービスなども考慮しながら時間設定していきたい。県とはぜひとも早急に調整していきたい。ダムの排砂トンネル工事のときに小渋川の河川敷を走ったという話だが、それは国交省の管轄になるので、今後国とも調整していきたい。
Q:南アルプスの土被りを浅くという根拠はコストか、工期か。
 大鹿村は日本で最も美しい村連合に加盟して景観にはかなり配慮している。高圧鉄塔が建つのは非常に大きな問題。電力会社との話だと逃げたが、これは大きな環境影響評価の中の一つ。高圧鉄塔、主な動力源がどこから来るのか、この場で説明いただくのが筋。
 2027年の開業ありきで話が進んでいる。どうしてもリニアを通したいのであれば、もっと丁寧な議論をしていただくべき。
A:土被りが深くなればなるほど、トンネルは地圧を受ける。なるべく土被りが薄い方が施工性が有利になるので、今回示している縦断線形が適切と考えている。
A:変電施設までの高圧鉄塔については基本的には電力会社が計画して進めるが、われわれも景観的な観点を考慮してもらうように、電力会社にはしっかりと伝えていきたい。
A:2027年の開業を目指しているが、手順を省くわけではない。環境影響評価の手続きを、きちんと法律にのっとってやっている。
Q:1日1700台の工事用大型車が国道を通過するが住民に対して影響はないというお答えだが、本当にそうか。娘はこの国道を横断して1km歩いて小学校へ通う。運行台数の時間制限だけで対応できるのか非常に疑問。子どもたちに対しては100%の安全を確保していただきたい。工事用車両の公道通過は避けて、取り付け道路を付けていただきたい。
A:具体的な発生土や工事用資材の運搬については今後詰めていく。事業者としても請負業者に対して、交通安全も含めて安全第一と考えているので指導・教育していく。実際、工事用車両が通るルートが本当にこの国道一本のみか、代替ルートが可能であれば、そういうことも含めて地元と調整させていただきたい。
A:工事に入る前の説明会で、交通安全についてどういうことを考えているかは、きちんと説明する。
Q:道路管理者と協議をされたのか。今後いつごろ進めていくのか。下市場に住んでいるが、あの周辺を一日300~500台通っても、高齢者はとても外へ出られる状態ではない。
A:長野県との具体的な協議はすぐにやっていきたい。国道だけを通るのか、迂回路を設けるのかという話についても、これから村や道路管理者と協議する。
Q:松川インター大鹿線を1700台というのは本当に現実的ではない。われわれの住環境や観光業に全く配慮がなされていない。JR東海の一方的な考えを説明されているだけで、一つとして住民目線になっていない。ぜひ一緒に考えるという姿勢を見せていただきたい。
A:今回は私どもの環境影響評価の評価結果をご説明する場。一方で、今回ルートや具体的な斜坑口、設備の場所を初めて発表した。次に考えていくのが工事の具体的な計画で、当然これは住民目線で、これから地元の方のご意見を聞きながらやっていかなければいけないと思っている。住民の方が納得されていないような段階で、無理やり工事着手はできないと思っている。そこは今後きちんとご意見は伺っていく。
Q:キャンプ場や公園が観光客がこの村に求めているものではない。小渋線の紅葉や新緑の季節に地蔵峠の方に抜けていくといった景観を求めて大鹿村に来ている。そういったことへの配慮をお聞きしたい。
 水源に関して、山梨では幾つも川が枯れて魚がいなくなったという記事をたくさん読む。継続的に補償していくと言っているが、それを永久的にやっていくとか、どれくらいで補償が切れるという決まりがあるのか。
 工事中もしくは工事後に地震や水害など大きな天災が起きたときに、工事箇所などについてどのようなマニュアルを持っているのか。
A:観光の話で、この地区で一番影響があるのは交通量の問題だと思う。もう少し観光という観点できちんと調べて、どれぐらいの影響があるのか、ないようにするにはどうすればいいのかは、工事車両の運行計画の中で事業者のできる範囲でやっていく。
 水資源の補償については基準がある。代替水源を作ったときに、水をどこかから汲み上げたり、水を運ぶ水路などの設備を作る。その設備は地域の方にメンテしていただくことになっている。そのメンテにかかる部分をおよそ30年の見積もりをして、その分を金銭で補償させていただく。
 例えば水害でいうと、当然、過去の水害の履歴は調べるし、現状の河川計画がどれくらいの水を想定しているか、過去にどれくらい水が来たかはきちんと把握して施工計画を作っていく。地震に関しても、工事用の仮設物に対しても一定の耐震基準をもって作っていく規則がある。関係する法令などをきちんと遵守してやっていく。
Q:品川から名古屋までの間に変電所は幾つ造られるのか。リニアは調べれば調べるほど大変な問題。私たちの村で工事が始まるというのは青天のへきれき。大鹿村民は一度も賛成と言った覚えがない。路線をほんの少し変えて大鹿村での工事はやめていただきたい。
A:変電施設は東京から名古屋までの間に10か所。うち長野県には2か所設置。
 今回初めてルートを発表したので、青天のへきれきと受け止められる方が多いのだろうと考えている。沿線住民にはこれからも丁寧に説明していく。賛成とはならないかもしれないが、少なくとも理解いただかないうちはなかなか工事もできないと思っている。

JR東海・リニア新幹線環境影響評価準備書ご意見フォーム

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1 コメント

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質疑応答録の作成 (大鹿村が大好きな男)
2013-10-19 06:54:50
説明会の質疑応答状況をお知らせいただきありがとうございました。質疑が進むにしたがい、JRが、たじたじになっていくことがうかがえて、興味深かったです。今後、言った言わないとならないように、まずは村とJRが、質疑応答録の作成を行うことが重要と思います。「住民の方が納得されていないような段階で、無理やり工事着手はできないと思っている。そこは今後きちんとご意見は伺っていく。」は、特に重要です。
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