「えっ、先生、知りませんの、本屋に行くとトイレに行きたくなるといわれているのを」。70代半ばの男性から驚き声で言われました。「知りませんけど、そうなんですか」と答えました。
ネットで調べたら、1985年に「本の雑誌」に掲載された投書「私は何故か、長時間本屋さんにいると便意を催します」が反響を呼んだといいます。投書の主が若い女性だったこともあり、その人の名前から「青木まりこ現象」と呼ばれています。
週刊誌やテレビが取り上げ、有病割合は10~20人に1人とされ、日本全国に数百万人に上るといわれました。既往歴のある人は「書便派」と名付けられたそうです。
私は全く知りませんでしたし、本屋で便意を催したことはありません。でも、せっかく患者さんに教えてもらったことですので、トイレに行きたくなる理由を調べてみたら、9項目もありました。
①トラウマ、つまり心的後遺症(本を見るとリラックスして、生理的に活性化して、トイレに行きたくなる)②紙、インクのにおいが便意を誘う③狭い空間iにじっとしていることが便意を誘う
④まぶたスイッチ説(本を手に取り、まぶたを伏せて読むと、交感神経のスイッチが切れ、緊張がほどけて便意を催す)⑤リラックス説(好きな本を探せるということで精神がリラックスし、便意を感じる)
⑥プレッシャー説(本屋にはトイレがないか、少ないので、トイレに行けないというプレッシャーが便意を誘う)⑦過敏性腸症候群の一種説(目指す本を探さなくては、というプレッシャーが腸に影響する)
⑧幸福否定に基づく異常現象説(ヒトは幸福な方向に向かおうとすると、それに体が便意を催すことで抵抗するらしい)⑨条件反射説(本のにおいがトイレットペーパーを連想させ、それで便意が催される)
いずれも根拠はないそうです。私は本屋ではトイレに行きたいと思いませんが、長距離バスに乗る前、何度もトイレに行きたくなります。そのことは次回に。