79歳の男性がポツリと言いました。「私の子ども時代、杖を突いて歩いている人はいなかった。今は杖を突いたり、手押し車を押していたりする老人ばかりや」
そのあと「高校生ぐらいまで、街で杖のお年寄りは見たことがなかった」と加えました。
男性より3歳下の私も、街で車いすや手押し車の老人を見た記憶がありません。そんなことがあって日本人の平均寿命の推移を調べてみました。
厚労省の平均寿命の推移表によると、1955年(昭和30年)が男性63.80歳、女性67.75歳です。1960年(昭和35年)は男性65.32歳、女性70.19歳です。
それがぐんぐんと伸び、1985年(昭和60年)は男性75.92歳、女性81.90歳、2021年(令和3年)が男性81.47歳、女性87.57歳です。ちなみに、私が生まれた1947年(昭和22年)は、男性50.66歳、女性53.96歳。
この男性が高校生だった昭和30年代の平均寿命は男性が60歳代、女性は70歳にかかったところですから、杖が必要な年齢ではなかったようです。また足腰が悪い人は外出を控えていたのかもしれません。
私が小学生の時、おじいさんといえば友人の祖父でした。浴衣の染色職人で背中に鯉をつかむ金太郎の入れ墨をした白髪の人でした。振り返れば、50代でした。高度成長期が始まる日本が元気な時代でした。