故人を偲ぶ会で会った新聞社の先輩の70代初めの男性の話を聞いて「ほんまかいな」とびっくりしました。1964年の東京五輪を目指して水泳選手として毎日、トレーニングに励んでいたことを知っていましたから、水泳が得意なことは知っていました。「でも、海の上で熟睡するなんて」
和歌山県に勤務していたときのことです。休日、海に泳ぎに行って、仰向けになって水に浮かんでいるうち、眠りについてしまったそうです。これまでも、静かな海ではよく眠っていたといいます。このときは、日ごろの疲れが出たのでしょうか、熟睡してしまったそうです。
周りを見渡すと、海原ばかりです。だいぶ沖まで流されてしまったようです。和歌山県の沖には、サメが泳いでいることがあります。「サメに食われたら、えらいことだ」と思いました。海岸は見えませんが、引き潮に逆らって泳げば、陸地にいつかは着くだろうと考えました。
引き潮の力は思った以上に強く、体は思うように進みませんでしたが、3時間かかって海岸にたどり着きました。「泳ぎには自信があったが、さすがに疲れた」
「水の上で眠る」を検索しても、空気を入れたビーチマットで眠る例は出てきますが、水に浮かんで眠る人の例は出てきません。水に浮かんで眠る動物としてラッコが有名ですが、ラッコのように眠るヒトがいたのは驚きでした。その先輩の特技の一つが、頭にかぶった帽子を足を上げて落とすことといいます。身体能力のすさまじい人はいるんやな、と感じた夜でした。