40歳のとき、徹夜仕事が続いたうえ、忘年会、新年会の飲み会が重なり、血圧が160以上に上がり、脳循環不全を発症しました。過労が原因とされ、1週間、会社を休んで静養しました。血圧が不安定になると、めまいが起こります。そのつど、このまま死ぬのではないか、と強い不安感を抱きました。そうした不安感を何十回、何百回重ねていくうちに、この程度のめまいでは死ぬことがないことがわかりましたが、3年以上かかりました。
1週間の安静期間は、不安のかたまりでした。当時、流行っていたローラーゲームの前売り券を家族4人分を購入していたので、体調がよければ行こうとなりました。バスで最寄りの駅に向かいましたが、吊り革につかまり、車内で揺られたら、もういけません、めまいが起こり、不安感が募りました。
カミさんの腕をつかんで、「行くの、やめるわ」と言いました。すると、カミさんも「体調が悪そうやし、やめましょう」と答え、次の停留所で4人とも降りて、歩いて帰りました。不安になると、すぐ妻の名前を呼びました。「あの1週間のあなたは、本当にかわいらしかった」とカミさんは今でも振り返ります。
一人で亡くなるのでは、という不安感は私だけではありません。一過性脳虚血発作(TIA)を発症した高校時代の友人の男性は、奥さんに頼んで、どこに行くのも付き添ってもらいました。それまで腕を組んで一緒に歩いたことはなかったのに、友人は奥さんの腕をしっかりつかんで離しませんでした。半年もたたないうちに、病状は回復し、今では離島巡り、海外旅行に一人でも出かけています。
一人で生まれたのですから、一人で死ぬのは仕方のないことだ、とわかっていても、受け入れるのはとても難しい。