団塊タケちゃんの施術日記

一人二人生の旅立ち

新聞記者が消えた街で

2011-10-31 09:49:06 | 社会・経済

「新聞が弱いと困るんです。議員や有力後援会から理不尽な要求が出されることがよくあります。そのとき、先生がやろうとしていることが新聞に出たら、どうなりますか、といって断るのです。新聞が弱くなったら、そんな言い訳が通用しなくなります」。関西の知事さんから真顔でこういわれたことがあります。知事としては、支持する議員さんや有力後援者ですから、そうした要求を無下に断れません。それで「このことを〇〇新聞がつかんだら書かれますよ」と言って断るのだそうだ。

先日の朝日新聞の朝刊に「記者が消えたアメリカの街でどんなことが起こっているか」を報じたインタビュー記事が載っていました。「取材空白域で何が起こったか」を調査した元米誌記者、スティーブン・ワハトマンさんが答えていました。それによると、米国では、ここ5年で新聞の広告収入が半減し、地方紙・地域紙を中心に212紙が休刊しました。ここ20年で、全米で6万人いた新聞記者が4万人に減り、2万人が職を失いました。その結果、米国各地で「新聞記者がいない街」が出現しました。そんな街の一つ、カルフォルニア州の小都市ベルでは、市の行政官(事務局トップ)は月500万円の給与を十数年かけて段階的に引き上げ、月6400万円にしました。オバマ大統領の2倍の給与です。行政官は警察署長の給与を3600万円にアップするなど、市議、市幹部を抜かりなく抱き込んだので、批判されることもなく「法外な給与」がまかり通ってしまいました。

さらに、自治体選挙の投票率が下がり始めました。市長、議員ら現職の実績がまったく報道されないため、有権者は判断材料に困り、棄権するようになってしまいました。自治体選挙はどこも現職有利、新顔不利の傾向を示しています。

記者が消えると、知事さんがいう理不尽な要求を断る言い訳ができないばかりか、行政トップが法外なことをやろうとすれば、できてしまうのです。ワハトマンさんは「教師や議員、警察官、消防士などがどの街にも必要なように、記者も欠かせないと確信するようになりました」といい、NPO報道機関の設立を提唱しています。

テレビやネットがあるのではないか、という質問に、ワハトマンさんは「テレビは新聞が発掘したニュースの原石を加工して周知させるの巧みですが、自前でニュースを発掘しません。ネットは新聞やテレビが報じたニュースを世界に広げる力は抜群ですが、ニュースの原石を求めて坑内に入ることはありません。新聞記者が採掘する作業をやめたらニュースは埋もれたままで終わってしまいます」と話しています。

新聞の役割はつまるところ「権力の監視」です。権力が暴走したり、理不尽なことをしないよう「ウォッチ・ドッグ」(番犬)として目を凝らし、暴走行為があれば権力に噛みつかなければなりません。その力が衰えてきたと読者のみなさんに思われたことも「新聞離れ」につながっているのでしょう。

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