中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

「日本の素朴絵」展ー素朴さの中の大いなるもの

2019年08月22日 | 工芸・アート
 
 
お盆休みに三井記念美術館の特別展「日本の素朴絵」を観て来ました。(~9月1日まで.。9月21日~11月17日龍谷大学龍谷ミュージアム) かなり混んでましたが、愉しんできました。

まだ蒸し暑い中ではありますが、8月終盤、温度も湿度も管理された美術館でホッとされるのはいかがでしょうか? 
三井記念美術館は和服、浴衣の方は300円引きの1000円です。また金曜ナイトミュージアムも17時以降1000円です。70歳以上の方も1000円です。その他の割引はホームページでご確認ください。
 
最初の展示室1で「立体に見る素朴1」と題して古墳時代の埴輪から江戸期の陶製の狛犬までが点数は少ないながら素朴美を湛えるものとして展示されていて、その部屋が気に入りました。特に神像、懸仏が私のこころをとらえました。図録から少し紹介します。
 
 
 鏡像 子守若宮明神像(平安時代)
 
 懸仏「水分(みくまり)子守明神像」(平安時代)
銅造の打ち出しによるレリーフです。 女性が右手に扇、左手で子を抱く姿をざっくりと浮き彫りにしているだけのものですが、なんともとぼけた表情ですが、惹き寄せられる空気が実物からは漂います。  

男神・女神坐像(中世~近世) 
木造の神像たち。いろいろな表情に思わず笑ってしまいます。
素朴な手によるものですが、対象の核になるところをつかんでいて、一見真似できそうでそうはいかない、、何か純然たるパワーがあります。
 
三井記念美術館のHPの趣旨文によると
 [本展覧会では、ゆるくとぼけた味わいのある表現で描かれたこのような絵画を「素朴絵(そぼくえ)」と表現します。しかし、西洋絵画の「素朴派」とは異なり、「リアリズムを目指す表現の人為的・技巧主義的なものを超越した」という意味を含んでいます。]
とタイトルの定義づけがされています。
 
しかし、この展示を見ても思いますが、古代のものだからいいとか、作れたとかではなく、対象をよく観ているということが、あのようなゆるそうでいて大いなるもの、核になるものを内包している絵であり彫刻なのだと思うのです。
 
今までもこういったゆるい絵や彫刻も見てきていますが、あらあためて“素朴”を考える機会になりました。

例えば素朴な芭蕉布や丹波布などのような織り物も素直で飾らないものです。しかし、素材をよく見て、よく知り、生かし、シンプルな模様や簡素な色を調和させ、人の心をほっとさせる、和ませる力をもっています。存在感はあるけれど、見る側はゆるむのですね。そういうものを創りたいです。
 
“素朴”という使い慣れた、聞き慣れた言葉ですが、飾り気のない、素直な、無垢な、純朴な、簡素なという意味に実は普遍性をもった懐深い世界があると思います。
 
 
 
 
 
 
 
コメント
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