6月、7月は麻の着物でよく外出しました。
会う方からは「涼しそうですね」と声をかけていただくことが多いので、「はい涼しいです…」と答えるのですが、
周りの方には少なくとも涼しさを感じてもらえたなら嬉しいことです。^^;
たまに「この暑いのに着物で…(よくまあ~)」とおっしゃる無粋な方もあり
「いいえ涼しいです!」と反射的に答えてしまうのですが、~~;
幸田文(小説家 1904年~90年)『きもの』は紬塾のテキストでもありますが、
同じ幸田さんの随筆集に『月の塵』(講談社刊)というのがあります。
その中の1967年8月に書かれた「ひさご」という文章に、
最近涼しげな人をあまり見かけなくなったと、40代の女性が、
「襟も胸も膝も申し分なく開放されていて、涼しげではなく本当に涼しくなっている。
けれどもどうしてだか、涼しげに見える人はいないように思えるのが不思議できいてみた」と問いかけられ、
その時は何故なのか幸田さんは答えられなかったのですが、
一眠りした後にふっと解けた「和服だけしか着ていなかった時代には女はひとりでに、
和服による気取り、というものが備わっていたのだろう、と。
それが、げ、ではなかったろうか。今は消失したものである」と。
(「げ」とはたとえば「涼しげ」という場合の「げ」です。つまり「気」ですね。)
なるほど、確かに着物を着たときのある種の緊張感のようなもの、
それが気取りなのだと思うのです。
暑いときの着物は着てしまうと案外スキットした気持ちにもなりますし、
見る人にもそれが涼しげにも映るのだと思います。
さすが着物を着尽した人の言葉ですね。
この夏、“涼しげ”にきものを着てみませんか?