今年に入ってから二反分の着尺の設計、糸巻き、整経、経巻、織付け、柄決めと集中して進めてきました。間もなく織り上がります。
染織のどの工程も熟練を要し、またどれも手の抜けないものですが、特に整経と経巻が真っ直ぐな布を織るうえで最も重要で、最も難しい作業です。
整経をしているところ。少し足を開いて身体を固定、安定させて座ります。静電気が起きにくいよう冬は鍋の湯で保湿します。
整経ムラを出さないように整経をすることはもちろん大事で様々な注意を払いますが、手延整経でムラをゼロにすることはできません。
ムラは経糸を千切に巻き取る経巻の段階でほぼ完璧に修正します。緩めに巻くことで僅かなムラがわかりやすくなりますので、一回巻き取るごとに手のひらでテンションを確認し、緩んでいる場合は人手があれば手で引っ張ってもらいながら巻ます。一人でする場合はゴム紐で括ったり、軽く自分の手で引っ張りながら丁寧に巻き取ります。
経糸がきちっと整っていると織るのもスムーズで、織り上がった布も耳がワカメのようになったり、逆につれたりせず平になります。
節糸、真綿紬糸を使っていますので、巻き込みながら糸に捌きを入れます。不要に触らずに捌きます。
経糸は人生に例えると宿命などと言われ、自由に変えられない例えにされたりしますが、整経は建物で言えば柱を立てるようなものでしょう。長さが違ったり、斜めに建てられた柱で真っ直ぐな強固な家を建てることは出来ないように、織り方でなんとかしようと思っても不可能です。
織の基本を身につけるには、経と緯が直角に交わらなければならないという意識をもっていなければ何年やっても身につくものでもなく、ただ織るだけになってしまいます。テキトーでもなんとなく布にはなりますが、その良し悪しは一目瞭然です。
アシスタントにも絶えず織り前が真っ直ぐになっているか、機の中心に経糸がかかっているのかなどチェックをするように指導しています。チェックというとすぐにメジャーなど使いたがりますが、そうではなくまず自分の感覚で僅かな違いも「変だ‥」ということに気づけるようになることが大切です。
先日の五感のワークショップでもそうなのですが、染織の仕事でも視覚、聴覚、触覚は日々使います。
紬糸の複雑な形や撚糸の状態を見つめることは言うまでもありませんが、草木の生木で染められた色の複雑さの微妙な違いを見極め、機の音を自分で聴きながらテンションを決め打ち込みの加減をする。ルーペで糸の密度を数えなくてもいい状態で織り進んでいるかを感じ取る。
糸の糊付けの濃度を手で確認する。計量器で測るのではなく濃度の感触を身体で覚える。
機に糸をセッティンぐする際に先に尺指で測るのではなくまずは自分の目でまっすぐに左右の幅を見ながら掛ける。
確認のためにメジャーも必要ですが、目盛りを見間違えていても全体を自分の目で見ていなければ、「変だ‥」ということに気付けないでしょう。
大事なことは自分の身体にメジャーを持つことです。
意識し五感を通して糸や色や織ることと向き合うことが美しい善い織物につながるのです。
次世代に真っ直ぐな布を手織りすることを伝えるのは言葉よりも手本を示す姿を見せることです。
そしてそれをよく見て真似事でもいいので身体で覚えることが何よりも大切です。
師の、先輩の姿を見ておけることは幸せなことですね。
※次期紬塾の詳細は3月1日にUpの予定です。
染織のどの工程も熟練を要し、またどれも手の抜けないものですが、特に整経と経巻が真っ直ぐな布を織るうえで最も重要で、最も難しい作業です。
整経をしているところ。少し足を開いて身体を固定、安定させて座ります。静電気が起きにくいよう冬は鍋の湯で保湿します。
整経ムラを出さないように整経をすることはもちろん大事で様々な注意を払いますが、手延整経でムラをゼロにすることはできません。
ムラは経糸を千切に巻き取る経巻の段階でほぼ完璧に修正します。緩めに巻くことで僅かなムラがわかりやすくなりますので、一回巻き取るごとに手のひらでテンションを確認し、緩んでいる場合は人手があれば手で引っ張ってもらいながら巻ます。一人でする場合はゴム紐で括ったり、軽く自分の手で引っ張りながら丁寧に巻き取ります。
経糸がきちっと整っていると織るのもスムーズで、織り上がった布も耳がワカメのようになったり、逆につれたりせず平になります。
節糸、真綿紬糸を使っていますので、巻き込みながら糸に捌きを入れます。不要に触らずに捌きます。
経糸は人生に例えると宿命などと言われ、自由に変えられない例えにされたりしますが、整経は建物で言えば柱を立てるようなものでしょう。長さが違ったり、斜めに建てられた柱で真っ直ぐな強固な家を建てることは出来ないように、織り方でなんとかしようと思っても不可能です。
織の基本を身につけるには、経と緯が直角に交わらなければならないという意識をもっていなければ何年やっても身につくものでもなく、ただ織るだけになってしまいます。テキトーでもなんとなく布にはなりますが、その良し悪しは一目瞭然です。
アシスタントにも絶えず織り前が真っ直ぐになっているか、機の中心に経糸がかかっているのかなどチェックをするように指導しています。チェックというとすぐにメジャーなど使いたがりますが、そうではなくまず自分の感覚で僅かな違いも「変だ‥」ということに気づけるようになることが大切です。
先日の五感のワークショップでもそうなのですが、染織の仕事でも視覚、聴覚、触覚は日々使います。
紬糸の複雑な形や撚糸の状態を見つめることは言うまでもありませんが、草木の生木で染められた色の複雑さの微妙な違いを見極め、機の音を自分で聴きながらテンションを決め打ち込みの加減をする。ルーペで糸の密度を数えなくてもいい状態で織り進んでいるかを感じ取る。
糸の糊付けの濃度を手で確認する。計量器で測るのではなく濃度の感触を身体で覚える。
機に糸をセッティンぐする際に先に尺指で測るのではなくまずは自分の目でまっすぐに左右の幅を見ながら掛ける。
確認のためにメジャーも必要ですが、目盛りを見間違えていても全体を自分の目で見ていなければ、「変だ‥」ということに気付けないでしょう。
大事なことは自分の身体にメジャーを持つことです。
意識し五感を通して糸や色や織ることと向き合うことが美しい善い織物につながるのです。
次世代に真っ直ぐな布を手織りすることを伝えるのは言葉よりも手本を示す姿を見せることです。
そしてそれをよく見て真似事でもいいので身体で覚えることが何よりも大切です。
師の、先輩の姿を見ておけることは幸せなことですね。
※次期紬塾の詳細は3月1日にUpの予定です。