中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第9回紬きもの塾―― 自然で楽な着方とマイサイズ

2016年12月19日 | 紬塾 '13~'16
紬塾はいつものように終盤に入ってから着物の着方についての学びになります。
今期の方は全員が自分で着ることが出来るので、仮紐を使わない帯結の話だけサクッとで良いかと思っていましたが、、、けっこう大変でした~。(^。^#;)

やはり補正具や紐やゴム付きの帯板など、なくても済むものを使っていて、体型的に補正の必要のある方はそれでもいいのですが、判で押したようなシワひとつない着方はかえって着姿を老けさせ、布や着姿を生き生きしたものにしないように思います。

日常に着物姿を見かけることもなくなり、雑誌のモデルさんの撮影用の着付けが手本になってしまいましたが、補正下着でシワのない着方にこだわるより、自分にあった寸法で仕立てた着物をスッキリ着ることのほうが賢明かと思います。

ある和裁士さんは「着付けや所作を身につけ、短く作って長く使う」と言っておられます。名言ですね!

特に真綿系の紬の単衣などは身幅が大きめサイズですと、裾捌きも悪くなりますし、大島などのように滑る素材は腰紐をウエストで使うほうが着崩れしにくいですが、真綿系は腰骨で短めでもよいです。
また、単衣か袷かによっても若干の身幅などの違いも出てくると思います。

真綿系紬着物は紐やゴムベルト、補正下着などを使わずともその人なりの体型で楽に着るのが基本と思います。年代やその方が醸し出す雰囲気や、また時に応じてキリッとしたりゆったりしたり、それが出来るのが着物です。
また多少寸法の合わない着物も着方である程度はカバーできるのも着物の利点です。

裄の長さも今は妙に長くなっていますが、洋服の袖丈を図るように測りますと長すぎます。
袖の中で肘が曲がるわけですから腕に沿わせた筒状の洋服とは全く違います。
体は痩せているのに裄だけにこだわり長くすると肩幅や袖幅をギリギリ出すようなことになり、上身頃のだぶつきが出て着る時にその処理に手間取ります。

上記の和裁士さんは衣紋を抜くことで背中から袖口までバイアスが生まれ、肩周りや袖を長使え、またバイアスが生じることで身に沿い体型もスッキリ見せるとおっしゃってます。
繰越を大きくするより衣紋を抜いた着方をするほうが背から袖にかけバイアスが生じ肩周りも布がなじむわけです。

呉服屋さんに仕立てを40代半ばで頼んだ時に、「中年になったら繰越は大きい方がいい」と言われ、5分から7分にしてしまいました。肩の厚みもありませんし5分で良かったのだと今は思います。5分にこれから戻していこうと思っていますが、長襦袢の兼ね合いもありますので悩ましいです。。

和裁は小幅(着尺巾)のバイアスをうまく利用して人の体に沿うような知恵も潜ませていたのですね。
四角い風呂敷が四隅を結ぶだけでいろいろな形のものを包めるのはバイアス利用の知恵です。

布を織る立場から言いますと、私は太めの節の多い糸を使って織っていますが、タテ・ヨコ密度のバランスを考慮した地厚だけれど柔らかく、それでいてバイアスがきれいに出るようにしています。
紬は固くて突っ張リ肩がこる、という方もおられますが、たぶんバランスの悪い布なのだと思います。素材感を観ることも重要です。

せっかく着やすく織られた布が仕立ての寸法などで着にくいというのは残念なことです。
“着物を着る”ということは着方や和裁、小幅の特性を無視した寸法ではない、賢いマイサイズを知らないといけないということだと思います。
サイズだけにとどまらず、奥の深いことで二年や三年で到達できることではないですね。

新しく作る時や仕立直しの時にはサイズを見直すチャンスですので、自分の着やすい着物を着た着姿写真と寸法表を自分で測って作り、照らし合わせるのが良いと思います。
私も自分の着物の寸法を総点検したいと思っています。
一応マイサイズで作りながら、着にくい、胸や衿のあたりに大きなシワやたるみがでる、うまく畳めないのがあります。。(-_-;)

帯の長さもマイサイズがあります。
とても細身の方が既成の帯を持て余していたのですが、全通柄であれば単に長さを詰めることができますし、自分に合う帯の長さ、巾を知ることも大事です。

とことん着ていくことを考えている仕立てには布の命を生かす知恵、合理があります。
それを生かしつつ自分の着物サイズと着方を磨きたいと思います。

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次回年明け1月は紬塾最終回です。受講者のかたは今までのことを振り返り、わからないことなど質問や感想もまとめておいて下さい。


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