中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

武蔵美術野大学特別講義――「紬きもの塾」移動教室③

2012年12月07日 | 「紬きもの塾」移動教室
今年も11月30日に東京小平市にある武蔵野美術大学まで特別講義に行きました。

私のところからは遠いですね~。京都まで行く感じです~。
でも途中の多摩モノレールの高い車窓から見える木々の紅葉(武蔵野台地)は美しかったです。  


大学3年生の工芸工業デザイン科テキスタイル専攻の方に「紬織りと着物文化」について
駆け足で正味2時間半、糸引きから染、織り、デザイン、着物の着方、たたみ方の実技も加え話をしました。

とても熱心に聴講してくれ、質問もいろいろあり「楽しかった!」と声をかけてくれる学生もいました。私も楽しかったです。

蚕の吐き出す糸の形を見てもらうために繭を煮て黒い紙に巻き取ってもらったのですが、「そろそろ終わりに~~」と言ってもなかなか止めないでずうっと続けていたい様子でした。
「きれい!」「楽しい!」とのつぶやきも。

糸はただ真っ直ぐではないことに気付いてもらいました。
真綿から引き出す方が思うようにいかず難しいようでした。

また桜で染めた糸を自然光で見てもらいました。
こんなにたくさんの色が引き出されていることに驚いている様子でした。
生木の染であることと絹の光沢もあいまって糸が光を放っているのです。
その場でずうっと見ている学生も何人かいました。

またデザインも着物の場合は帯をはじめとして他の物との取合せがあり、やり尽くさないことも大切と話しました。

紬の着物も着てもらい半幅帯の結び方まで自分でやってもらいました。
思ったより苦しくないと言っていました。
振袖を着たときのイメージ=着物は苦しい――になってしまっているのですね。

着物のたたみ方も1回見てもらい、次にお一人にやってもらいましたがすんなりできました。
若い人はのみこみが早いですね。
たたまれた折り線どうりにやればいいだけです。

それから当日私が履いていた、鼻緒で擦り切れた足袋の繕いの部分を見てもらい、ソックスでも継ぎを当てて使うのは楽しいので皆さんにもお勧めしてきました~。
良いものを長く使おう!と。



学生から感想が送られてきました。
たくさんで入力が大変なので^^ごく一部の方だけ抜粋でご紹介します。

全体に糸の美しさや色の安らぎ、着物を纏ってみていいものだなぁという感想。
良いものを長く使うことへの気づきが感じられる内容でした。




自然をよく見つめ、自分を見つめ、自由(先入観をもたない)に着物を創り着て欲しいと思います。

                                


I.S.
様々な先生の糸や色に対する想いが伝わってきて、どうしようもない気持ちになりました。
うまく言葉にできないけど、季節が変わるにつれて、私たちは木や草の色を生きものの糸に染めて身につけてきた。
その感動と心の静けさは、昔も今も変わらないのだと感じた。先生が、「母を亡くしたときに色のものを着ることができなかった」でも、あるとき、このままではいけないと思い、前向きになったときに「黄色やピンクの色を着たいと思えた」という話が、色の持つ本当の美しさだと感じました。
泣きたくなりました。

「自然の持つ色は化学染料の持つ色とは違う」私はこのことを自分自身で実感したいと思いました。

色の持っている繊細な変化を、人生のどこかで受け止めたいと思いました。
あと、祖母にもらった着物を着れるようになりたいと思いました。


Y.I.
今日は草木染めの魅力を教えて下さって、自分の人生の価値観がより原初的に自然になじんでゆく気持ちになりました。ありがとうございます。
染めを通して、自分の生活を見直せることができることを、最近ひしひしと感じます。

私はまだ学生で、お金も無いですが、なるべくよいものを買って、長く使うことを心がけています。50年前のミシンを修理して使ったり、プラスティックのお弁当箱から曲げわっぱに変えてみたり……。
物が呼吸している気がするので、かんたんには捨てられません。
私は、自分の作品づくりも、そういうものを作れるように努力していきたいと強く感じました。
今日は、ありがとうございました。


U.K.
草木染めの色の話がとても興味深かったです。
普段、パソコンや染料や絵の具をまぜて色を作っているけど、植物に宿っている無限の色を引き出すという草木染めの感覚はそのどれとも違っていて、本当におもしろいと思いました。
日本の四季をこれまで以上に感じ、色の感覚を大事にしていきたいと思いました。


T.T.
桜の木を煮出した糸は桜色でなく、やわらかな人の肌のようだったり、赤土のよう色だったり、自然界のいたる場所に還元していくような、はかなさを感じました。
持ってきてくださった糸は手つむぎで、人が手でつむいだものの感じは大切だと思いました。


H.N.
草木染めの糸を見せていただいた時のお話、植物は染料になるために生まれてきたわけじゃない。
それぞれが本来の役割があって生まれてきていて、それぞれの様子をきちんと見ることが大事というのが、何か気付かされたような気がしました。
人々がなぜ色に名前をつけて、それらを必要とするのか、本来自然にあるべきことを、忘れてしまっていたのかもしれません。

着物の着方やたたみ方もとても勉強になりました。


T.M.
桜で染めている糸がとても綺麗で、バリエーションの豊かさに驚きました。
繭はとても繊細で、染めなくてもそのままで十二分に美しいと思いました。
一本で見た繭の糸はとても細く光沢があり、この糸で作られた着物は本当に贅沢なのだと思いました。
着物をすごく着たくなるようなお話でした。


W.R.
普段、着物を着る機会がなく、着物に対して遠い存在と感じてましたが、今回の講義で、とても興味が出ました。
草木染めのすてきな着物に触れて、改めてその良さを感じました。


N.M.
着物は取合せが大切とおっしゃていましたが、その通りだと思いました。
平安時代のかさねの色目も日本の四季が生み出した色彩感覚だと本で読んだことがあるのですが、着物もその文化をうけつぐものなんだなあと思いました。

消費、使い捨てのこの時代の中で、これからデザイナーが目指していくのは、長く使えて丈夫なものだなと思っています。とても勉強になりました。


S.T.
ずっと草木染めに興味があり、今日の講義で桜染めや梅染めを見て、一つの植物が無限にも色彩を含んでいることに、すごく魅力を感じました。
シルクの糸による独自の発色、季節を感じさせる色味というのは、私たちが生活する上で、自然界とともに生きている証のようなものです。


A.M.
良いものを長く使う。ほつれても繕って使うことにより、より愛着がわき捨てられなくなる。
本当にそうだろうなと思いました。
使えば使うほど美しくなるものはとても良いなあと、改めて感じました。
今後の制作や考え方に生かすことの出来ることを聞けてよかったです。



コメント
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