ウィトラのつぶやき

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日本の移動体通信のガラパゴス脱却のニュース2件

2010-07-07 08:32:55 | 経済
昨日から今日にかけて、日本の移動体市場に大きな影響があると思われるニュースが二つ入ってきた。

一つはドコモのSIMロック廃止の発表である。ドコモは来年4月以降発売する全ての乱末から従来かけていたSIMロックを廃止すると発表した。SIMとは携帯電話用のICカードのことで、もともと、ヨーロッパ域内のどこで発売された端末でも他の国で発売できるように加入者とオペレータの契約情報はSIMカードに閉じ込めてSIMをさしかえればどんな端末でも同じ契約で使えるように考えだされたものである。この考えが成功してヨーロッパ発のGSM方式が世界を席巻した大きな要因となっている。

日本でも海外で端末が使える3Gを導入した時から端末にSIMカードが導入されていたが、日本の端末はオペレータ主導の開発でオペレータの独自仕様がかなり入っていることから、端末発売時に他のオペレータのSIMでは動かないようにするSIMロックをこれまでかけていた。これが日本市場のガラパゴス化の一因であるとして総務省はSIMロックを解除する勧告を最近出したところである。

これに対して最も抵抗しているのがソフトバンクで、ソフトバンクはiPhoneを買ったユーザがドコモに移るのを防ぐためにSIMロックをかけている。総務省の勧告は強制ではないためソフトバンクはiPhoneのSIMロックを維持する見通しである。ドコモ名自らSIMロックの解除を発表することによって自分はオープンであるのにソフトバンクは閉鎖的であるというメッセージを社会に出してソフトバンクのSIMロックの解除を促した。

SIMロックを解除しても従来からの主力機種である900シリーズなどはiMode対応になっておりソフトバンクでは実質使えないと思われるが、4月5月の売れ筋機種であるXperiaはソフトバンクでも十分使える。そこを自分だけが解除に踏み切ったのはネットワークの品質に対するドコモの自信の表れだろう。ドコモにしては珍しく大胆な決定で拍手を起こりたい。

もう一つの話はルネサスエレクトロニクスのノキアの無線モデム事業の買収である。これにはLTE、HSPA、GSMの特許を含む技術と、フィンランド、インド、英国、デンマークの技術者1100人が含まれる。2億ドルでの買収である。ノキアは以前、ST-Microにモデム技術を移管しているが、まだ社内で技術者を抱えていた。その残りのチームが今回買収の対象となったようである。これも久々の日本の業界にとって積極性を感じさせるニュースである。

Nokiaは世界第1の携帯電話メーカーで優秀な技術者もたくさん抱えている。現在、無線モデムのチップは実質アメリカのQualcommとヨーロッパのST-Ericsson (ST-MicroとEricssonの合弁会社)の2社が強く、日本勢が太刀打ちできるとは私は思っていなかったのだがNokiaが加われば話は別である。第3極となる可能性が出てきたと思う。ただし2億ドルはずいぶん安いように思われ、Nokiaがどこまで本気なのか、今後の推移を見守る必要があるだろう。