「真理とは幻想である」
(2)
ところで、われわれが創り出した科学技術は絶対不変の真理に基
づいて構成されている。もしも「真理とは幻想である」とすれば、
われわれの創り出した近代科学文明社会もまたいずれ消滅する幻想
でしかないと言うことになる。すでに、再生をもたらす自然循環は
われわれの科学技術が創り出した人工物に阻まれて滞り、地球環境
はいよいよ目に見えて異変を起こし始めている。また、当然、無限
の化石燃料が限られた地球に埋蔵されているはずはなく、地球温暖
化問題の深刻さと比例するようにエネルギー資源の枯渇にも迫られ
てくるに違いない。つまり、何百年後の人類は自然環境の変化とエ
ネルギー資源の枯渇によって科学技術が無用になった世界で、かつ
て「神の死」によってニヒリズムに陥ったように、再びわれわれを
ニヒリズムが襲うことだろう。そもそも本来の生物進化を技術進化
に委ねたわれわれの生存能力は科学技術の無用化によって著しく退
化していることに気付かされるに違いない。もちろんそのような能
力は必要に迫られればいずれ再生されるに違いないが、それでは、
われわれの理性はもう一度原始に帰って生き延びるための生存競争
を繰り返す精神力をよみがえらせることができるだろうか。しかし、
精神力とは神への信仰からもたらされるもので、「神の死」によっ
て萎えてしまい、そして科学技術の無用化という相次ぐ価値の喪失
によってわれわれの理性は「神」「科学」を超える新たな価値を産
み出すことができるだろうか。理性が生存を超えた新たな価値を見
い出せなければニヒリズムから抜け出すことできない。
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