「楽屋スベリ」
ずいぶん前のことですが、NHKの地上波で漫才コンビ、ダウン
タウンの松本人志が自作のコントを放映していて、たまたま視聴し
た時は、関西漫才界の巨匠西川きよしがかつて浮気がばれた時に奥
さんのヘレンさんが激怒して家の鍵をすべて掛けて入られなくした
ので、仕方なく家の外から何度も「ヘレーン!」と叫んだというエ
ピソードをネタにして、これは関西のお笑い界に通じている者なら
誰もが知っていることですが、その様子を面白おかしく再現して、
きよし師匠に扮した松本人志が二階を見上げながら「へレーン!」
と何度も連呼していたが、ただ、その事情を知らない者には皆目面
白さが伝わらない所謂「楽屋オチ」で、たぶん構想の段階では大い
に盛り上がったにちがいないが、実際に収録されると面白くも何と
もなかった。さて、今やこの手のお笑い芸人たちの「楽屋オチ」は
惜しげもなく披露されるが、肝心の創り上げられた台本によるお笑
いは久しく視聴しない。たぶん、これはアドリブの笑いにこだわっ
た萩本欣一やタモリの影響が大きいと思うが、いまやテレビのバラ
エティー番組は専ら行き当たりばったりの所謂「街ブラ」ロケ番組
か、芸人同士のプライバシーを貶し合う「ひな壇」番組しかやって
いない。見知らぬ芸人たちに関心のない視聴者にとってはまったく
退屈な限りである。例えをあげると、去年のMー1で優勝したミル
クボーイはあれほど漫才は面白いのにひな壇に座るとその存在感す
らない。ただ、多くの視聴者は一部のファンだけにしかウケない「
楽屋オチ」のネタよりも、どれほど楽屋ではスベッたとしても、そ
の度に構成を繰り返されたしっかりした台本による、つまり「楽屋
スベリ」のお笑いが見たいのだ。
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