「杞憂」
広島県北部の中国山地の山間に島根県と県境を接する高野(たか
の)町という町があります。広島県と言えばどうしても瀬戸内海気
候で温暖なイメージを思い描きますが、しかし県北の山間部には約
15か所くらいスキー場があって、中でも高野町は県内有数の豪雪
地域です。そして、寒冷地でしか栽培できないリンゴが特産品でも
あります。私の住む三次市は高野町よりずっと南の方ですが、それ
でも冬には毎年積雪があってどうしても車をスノ―タイヤに履き換
えなければ生活できません。去年広島市内から来た人はこれまで一
度も冬用タイヤに履き換えたことがなかったので冬道の運転を怖が
っていましたが、幸い去年は暖冬でまったく雪が降りませんでした。
つまり、それほどまでに山間部と沿岸部では気温に違いがあります。
これまで高野町は市内からの直通道路がなかったので冬は「陸の孤
島」のようでしたが、しかし、山陽と山陰を繋ぐ横断道が開通して
から高野インターができて、そばにある「道の駅」は行き交う車の
中継地として降車する人々が絶えません。
私は仕事の関係でこれまでに何度か高野町に足を運びましたが、
先ほども言いましたが去年は暖冬で高野町でもまったく積雪がなく
、たまたま道端で立ち話した老女が呟いたことばを忘れもしないの
ですが、彼女は、これまで60年以上この地で暮らしてきたが雪が
まったく積もらなかった年は一度としてなかった、と言って、そし
て「何か空恐ろしい」と言いました。私は、まあそういう年も一度
くらいあるだろうと気にもしませんでしたが、今、2020年1月
2日の冬の真っただ中にもかかわらず、私の住む三次市では未だ一
片の雪も見ることなく新年を迎えました。杞憂であればいいのです
が、
「何か空恐ろしい」